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「必中の狩人・ケパロス」

2010-07-22 17:50:02 | ギリシャ神話

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 「不幸は女神の横恋慕から始まった」


 「自分は王女プロクリスと婚約しています。女神さまと共に暮らす気はありません。どうか帰してください」


 ここは曙の女神エーオースの城。彼女は、美貌のケパロスを恋するあまり、無理やり連れてきてしまったのだ。どうしてこう、神さまって強引なんだろうか…… 。


 ケパロスには婚約者がいた。そのうえ、彼はこの炎の神を持つ女神が嫌いだった。エーオースは自分の思いが伝わらない苛立ちから、プロクリスの不実さを訴えた。


 「それでは賭けをしない? あなたが姿を変えてあの女の前に現れて、誠実さを試してみるのよ」


 「いいでしょう。無駄な事とはっきりさせて見せます」


 賭けは成立した。エーオースはケパロスの外見だけを変えると、プロクリスの元へ帰したのである。


 愛するケパロスが行方不明になり、ひとり寂しき思いをしていたプロクリスの前に、見知らぬ若者が現れた。
 プロクリスは、この見知らぬ若者の中に、どういうわけかケパロスを思い浮かべてのだ。そりゃそうだ。本当はケパロスなんだから。
 実はこれがエーオースの策略だったのだ。もし彼の人格も変えていたのなら、見知らぬ若者に慕情を抱く、などということはなかっただろう。しかし、愛するケパロスの面影が映る若者に、彼女は愛の告白をしてしまったのだった。
 途端、若者は、元のケパロスの姿に戻る。


 「なぜだ。なぜ他の男に心を奪われたんだ、プロクリス!」


 裏切られたと思ったケパロスは彼女を責めた。彼女もまたひどく傷つき、森へと逃げたのだった。
 そして、彼女はアルテミスの従者になる。アルテミスは彼女を大変気に入って、彼女に、決して的を外さない槍を与えた。


 プロクリスは、狩猟好きのケパロスに、仲直りの証として、この槍をプレゼントするのだった。
 こうして二人は誤解を解いて、めでたく結婚したという。


 ところが話しはまだ続く。


 結婚したけれど、あのエーオースが、そう簡単にケパロスのことを諦めるはずもない。もしかしたら、ケパロスとどこかで逢引しているんじゃ…… 。
 そんな疑念を抱いたプロクリスは、こっそりと狩りをしに出かけたケパロスの後をついて行った。


 ケパロスは、葉がざわついたのを耳にして、その方向へ槍を投げる。そう例の槍だ。百発百中のやりは獲物を仕留め、その獲物を拾いにいった彼の目に映ったものは―― 。
 槍が刺さって血を流している瀕死の妻だった。結局プロクリスは死んでしまい、ケパロスは悲嘆してその地を捨て、流浪の旅に。
 そして二度と再び、帰ることはなかったそうだ。



「悲運な予言者・カッサンドラー」

2010-07-21 10:39:01 | ギリシャ神話

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 「的中率100% でも誰も信じない予言」


 太陽神アポローンに好かれてしまったゆえに、不幸になってしまった美女の話。
 清楚で控え目な、それでいて、黒き瞳に燃えるような情熱を湛えたカッサンドラー。アポローンは、その心を虜にされてしまう。
 永遠の若さと美貌を備え、限りない知恵と力の持ち主であるアポローンに愛されるのが、どうして不幸なのかって? まあ、カッサンドラーにだって選ぶ権利があるってことかな(太陽神だけに暑苦しかったのかも…… 失礼しました)。


 カッサンドラーは、どういう理由からか、アポローンからの求愛を拒み続けていた。しかし、アポローンは、ともかくアタック。――押してもダメなら押し破る―― と、いろんな贈り物をせっせと彼女に与えた。


 「カッサンドラー、どうか私に振り向いてほしい。私は貴女を愛して止まないのだ。私の愛を受けてくれるなら、もっと素晴らしい贈り物をしよう」


 そう言って、彼女の意志も聞かずにアポローンは、自身が放つ光で彼女を愛撫した(よく分からんが、器用なことで)。


 すると、その光の影響で、カッサンドラーに未来を予言する力が身についてしまったのだ。その恐ろしく正確な予知能力をプレゼントされ、アポローンの半ば強引な求愛に膝を折ろうと考えた彼女だが、この贈り物はとんでもないことも見せてくれた。
 なんとアポローンが、後にカッサンドラーに飽きてしまい、彼女を見捨てていく姿を鮮明に映し出したのだ。


 「ひどいっ、あんまりですっ」


 これは痛い、痛いぞアポローン。当然カッサンドラーは前にも増してアポローンを拒むようになった。


 「アポローン様を信じようとした、わたしが愚かでした」(今頃気がついたか)


 拒むうえに冷淡になったカッサンドラーを、アポローンは謝るどころか、この贈り物にも後悔せず、彼女を憎み、呪った(元を糺せば、あんたに非があるんでしょが―― )。
 一度神が与えたものを取り戻すことは、プライドが許さない。


 「カッサンドラーは確かに真実の予言を行なう。だが、その予言を誰一人として信じるものはいないのだ……!」と、酷な付けたしをした。


 カッサンドラーは祖国トロイアの滅亡を予言したが、誰も彼女を信じなかった。彼女は、ギリシャ軍の総帥アガメムノーンに捕らえられ、妾にされて子供を儲けさせること、そして自分がアガメムノーンの正妻の手によって殺されることも予言する。
 当然、信じる人はいなかったが、予言どおりにこの世を去ったのだった。


 ここまでくると不幸というより悲劇だね。神の愛はまさに気まぐれというやつだねぇ。



「羊飼い・エンデュミオーン」

2010-07-18 16:21:58 | ギリシャ神話

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 「夢の中へ、行ってみたいと思いませんか…… 」


 月の女神アルテミスが銀の戦車に乗って夜空を駆け巡っていると、ラトモス山の中腹に一人の若者が眠っているのを見つけた。
 その眠りが安らかで美しいことに感動した彼女は、その若者の夢の中へ入り込んだ。


 「あ、あなたはいったい…… 、誰っ」


 驚く若者に女神は微笑む。


 「わたくしはアルテミス。あなたの寝顔があまりに美しく、平和で優しかったので、起こすのには忍びなく、こうして夢に現れました。 ……名を名乗りなさい」


 「僕の名はエンデュミオーン。羊飼いをしております。昼間の仕事に疲れてしまい、ここで眠っておりました。もしお気に障りましたらお許しを…… 」


 「何を言います、わたくしがこうして夢に現れたのは…… 」


 そう言ってアルテミスは、エンデュミオーンに優しくキスをするのでした。


 美貌と謙虚さを持つエンデュミオーンを、彼女はすっかり気に入ってしまったというわけ(なんと言う甘い展開っ、虫歯になりそうな…… 。勝手にやってくださいよ、と言いたくなってきた)。
 二人は夢の中で楽しい時を過ごす。エンデュミオーンは光栄で、嬉しさのあまり、こんなことを口走ってしまう。


 「ああっ、アルテミスさま。僕はこのまま、ずっとこの夢が覚めなければいいと願います」


 たぶん、戯れて言ったことだろうが、甘いっ、甘いぞ! エンデュミオーン。神さまというのは、冗談が通じないんですよねぇ。


 静かで、密やかなこの夢を守り続けたい。そう願っていたアルテミスは、渡りに船とばかりに喜んだ。


 「もちろんです。ましてやあなたが、老いて死ぬなんて考えたくもないわ」


 そう言ってゼウスに願った。


 「エンデュミオーンが夢をずっと見続けることができるよう、永遠の休みない眠りと永遠の若さをお与え下さい」


 好き者ゼウスは、喜んで願いを聞き入れた。
 こうして、エンデュミオーンは神話の時代が続く限り永遠に、ラトモス山の洞窟で眠り続けたという。


 アルテミスは、毎晩彼の夢に現れ、何と娘を五十人も儲けたそうだ(ううむ、五十人とは、たぶんギネスもんだね)。
 ちなみにアルテミスさん、アテーナーを敬愛していて、同じ純潔の誓いを立てていたんですが、な~にが神だ、聞いてあきれ……ああ、いえいえ、愛の前に脆くも崩れ去ったというわけ…… ええ、違うって、夢の中の出来事ですから…… なるほどっ。 



「吟遊詩人・オルペウス」

2010-07-18 11:40:46 | ギリシャ神話

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 「愛のために、黄泉の国へ赴く男」


 「黄泉の国から、きっとエウリュディケーを連れ戻してみせる―― 」


 決意の血の涙(……か、どうかは定かではありませんが)を拭きさり、神話上、最高の詩人オルペウスの旅がはじまった。


 事の次第はこうだ。エウリュディケーは彼の最愛の妻であり、新婚の二人はこれから幸福の人生を歩んでいくはずだった。
 しかし、運命の悪戯か、美しいエウリュディケーに懸想した男がいた。その抱擁から逃れようとした彼女は誤って毒蛇を踏み、咬まれて殺されてしまう。
 可哀相なエウリュディケー。いいや、愛する妻にこんな形で先立たれ、残った夫の悲しみはいかばかりなのか。
 そうして、愛に燃えるオルペウスは決心したのだった。


 本来、生身の人間は、黄泉の国には入れないのが定めだ(そりゃそうです)。ところが、そこは天才詩人音楽家。なんたって彼が歌い、竪琴を奏でると、野獣・山川・草木・石に至るまで、その素晴らしさに聞き惚れて彼の周りに集って仲良く耳を傾けた、と言うほどなのだ。


 オルペウスの奏でる音色を前にして、三途の川の渡し守・金の亡者であるカローンは渡し賃を取るのも忘れ、かの地獄の番犬ケルベロスまで飼い犬同然、地獄の魔物どもも、襲うどころか、すっかり聞き入ってしまった。
 そうして、とうとう彼は冥界の王ハーデースと、その妃ペルセポネーの前に立つ。


 「愛する妻を返して下さい…… 」


 切々と訴える哀切の調べに、ペルセポネーは大きく心を動かされた。実はハーデースは乗る気がしなかったが、妃の口添えにやむなく心を動かす。


 「 ……わかった。ただ一つだけ守ってもらうことがある。お前はエウリュディケーの前を常に歩き、地上に帰り着くまで決して後ろを振り向いてはならん。よいか、決して振り向くな」と条件を出して許した。


 当然ながら、喜び勇んだオルペウスは、地上に向かって歩き始める。やがて彼の目に地上の光が差し込んできた。


 「やったぞ、わが妻よ!」


 地上に出て、振り向いた彼の後ろに悲しみの表情を浮かべたエウリュディケーがいた。


 「ああ、あなた……っ、さよなら…… 」


 なんと、早すぎた。エウリュディケーの足は半歩、まだ冥界にあったのだ。目の前でかき消されていく愛妻。
 同じ手は二度と効かず、こうしてオルペウスはすっかり厭世的になったとも、また川に身を投げて死んでしまったとも伝えられている。



「美しき熊少女・アタランテー」

2010-07-17 15:24:58 | ギリシャ神話

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 「欲望の快速ランナー、愛もほどほどに」


 アタランテーは純潔神アルテミスと同じく、女狩人。父親は、男の子を望んでいたために失望して彼女を捨ててしまう(おいおい)。
 可哀相に、アタランテーは牝熊に育てられ、子熊たちが彼女の兄弟姉妹だった。狼少年ならぬ熊少女というわけだ。


 アタランテーは、やがて猟師に拾われて養育される。そのため成人した彼女は狩猟を好み、またそれが上手で足も大変速くて腕っ節も強い、とてもワイルドな美女だった(当たり前か)。
 そんなものだから結婚にも、女性としてたしなみも関心を示すことがなかった。


 しかし、そんな美しくもワイルドな彼女を愛した人物がいる。自分に向けられた激しい愛に前に、心動かされないに女性はいないようで。
 その人は、メレアグロス。彼は見事彼女の心を射止めた。共に狩りをして得たイノシシの皮を、メレアグロスはアタランテーに与えるが、なんと、その皮をメレアグロスの母の兄弟が横取りしてしまったのだ。
 怒ったメレアグロスは、彼らを殺すが、メレアグロス自身も母親に殺されてしまう(この母親は、息子より兄弟の方が大事なのね……)。


 結局アタランテーの結婚はお流れに―― 。唯一愛したメレアグロスを失い、以前にも増して結婚の意志をなくした彼女だが、美女であるがゆえに周りが放っておかなかった。それ程までに美しかったのである。


 「メレアグロスは、もういない! チャンスだっ」


 求婚者は山となす。仕方なしにアタランテーは、こう言った。


 「あたしと徒競走をして勝った方と結婚しますわ。でも…… 負けたら、その首を頂戴しますから」(なんか格好良いぞ~)


 今度は敗者の首が山となす。


 「普通にやったら勝てない」


 青年ヒッポメネースは、アプロディーテーに助けを請うて一計を案じ、女神自らもいだ三つの黄金のリンゴを手に入れる。
 彼は、そのリンゴをアタランテーに追いつかれそうになると転がした。アタランテーは、黄金のリンゴが欲しかったのか、いや、彼を勝たせたかったのかもしれないが、その度にリンゴを拾って、ついに負けてしまうのだ、徒競走に、ではなく、彼の愛に(でもこの話、日本の昔話に似てませんか?)。


 さあ、結婚だ。ところがこの二人。家に帰る途中、アプロディーテーの神殿で結ばれた。家まで我慢できなかったんだねぇ…… (何をだっ!)。


 「わたくしの神殿で何をなさっているのよっ!」


 怒ったアプロディーテーは(そりゃ怒るよな……)、二人をライオンに変えてしまう。
 当時のギリシャでは、ライオン同士は交わることなく、ライオンは豹とだけ交わると信じられていた。
 つまり、二人は永遠の貞潔を強いられたというわけ。愚かということなかれ、若気の至りだね、これは…… 。