・作品概要
三流大学・東淀川大学に通う菊池久彦、通称バイトくんとその仲間達。
彼らは貧乏学生であり、日々バイトをしたり昼寝をしたり食堂で定食を食べたり大学の講義に出たり試験を受けたりなど、多様な青春生活を送っている。
そんな彼らの日々を描く4コマ漫画作品である。
・解説
いしいのデビュー作であり(厳密には1968年、当時高校2年生の時COM(虫プロ商事)のぐらこん・基礎コースにて2度入選し、その作品が雑誌に掲載されている)、同時に初めての日刊連載作品である。
いしいが当時在籍していた関西大学の漫画同好会に、『日刊アルバイトパートタイマー情報(情報センター刊)』から漫画の連載依頼が来る。
さっそく情報センターの事務所にサンプルの4コマを持って行ったいしいは、後輩と1ヶ月交代で同誌に漫画を連載をする事に。
その後連載はいしい一人に任せられ、そのまま1981年ごろまで連載が続く。
同誌での連載が終わった後も別の雑誌で度々描かれ、いしいのライフワークとも言える作品である。
内容は当時の4コマと比べると斬新なものであった。
まず時代背景として連載開始当時の4コマといえば、主に新聞に載っている家族やサラリーマンを描いたものだった。
その昔、漫画界では会社、性、モテない男など大人の男の世界を描く大人漫画(ナンセンス漫画)が主流であった。
大人漫画は大抵1〜4ページほどの短い短編作品で、青年漫画雑誌や週刊誌などに掲載されていた。また、新聞にも大人漫画作家が4コマを描いていた。
代表的なのはサザエさん(長谷川町子)、フジ三太郎(サトウサンペイ)、まっぴら君(加藤芳朗)などである。
戦後初期、こうした4コマや大人漫画ブームが起こり独自の漫画文化が栄えていた。
だが手塚治虫らトキワ荘漫画家を主とする児童漫画(少年、少女漫画)の台頭により大人漫画の敷居が狭くなる。
それでも一定の人気があったものの、青年漫画誌に劇画ブームが到来してからは完全に漫画界の一線から退いてしまう。
青年漫画誌では劇画作品の添え物のように掲載され、週刊誌や新聞では一応連載されていたものの人気はほぼ無くなっていた(一応、この頃新人であった大人漫画作家・谷岡ヤスジの作品「ヤスジのメッタメタガキ道講座(少年マガジン連載)」が大ヒットした為大人漫画の人気が完全に無くなった訳ではないが、当時のベテラン大人漫画作家たちはヤスジを敵視していた)。
加えて4コマ漫画(大人漫画)の内容もマンネリ化し、各作品の主人公の個性もほぼ皆無と漫画としての魅力を失っていた。
そんな4コマの暗黒期とも言える状況の中、彗星の如くバイトくんが登場した。
主人公は大学生とテーマからして斬新であり、内容も起承転結に沿わない、構図が豊富、キャラクターが個性的、全く新しいギャグなど斬新づくめであった。
1974年に自費出版で単行本が出されると主に関西地方で読者に衝撃を与え、評判となる。
こうした斬新ないしい漫画は1979年、「がんばれ!!タブチくん!!(双葉社刊)」のヒットにより全国に広まり現在に至る。
そういう訳でいしい漫画の中でもたいへん重要な役割を担う作品である。
・連載期間
・単行本
〈単独の単行本〉
〜チャンネルゼロ工房刊行〜
Oh!バイトくん 全3巻
(解説)いしい初の単行本であり自費出版。その為入手が難しい。2、3巻は時折ヤフオクなどに出品されるが1巻は幻レベル。読むだけなら後述の電子書籍版が良い
〜プレイガイドジャーナル社刊行〜
バイトくん 全3巻
(解説)近畿圏で情報誌を出していたプレイガイドジャーナル社より発行されたシリーズ。上の自費出版よりは入手し易いがそこそこ高め。
〜チャンネルゼロ刊行〜
バイトくん全集1 屋根の上の午睡 全1巻
バイトくんブックス 全7巻
(解説)全集はレア、〜ブックスもそこそこレア。7巻以外、未確認なので恐らくですがどちらもこれにしか収録されてない作品があると思います。
〜双葉社刊行〜
バイトくん 全10巻(文庫版)
(解説)主に「ドーナツブックス」「スクラップスチック」「バイトくんブックス」など既刊に収録されてる作品を再録したもの、そのため底本を買い集めるとそれらと内容が被るので悩むシリーズ。だが比較的簡単に入手でき、更に底本がレアな場合もあるので初めて読むならお勧め。
〜講談社刊行〜
大阪100円生活 全1巻(加筆修正した文庫版がある)
(解説)比較的近年に刊行された為、入手はし易いと思われる。
〜(笑)いしい商店刊行〜
ドーナツボツクズ バイトくん昔話 (今の所)全2巻
(解説)コミティアにて売られたコピー本(同人誌)。そのため非常にレア。
〈本作が併録されている単行本〉
※本作は(キャラクターのスターシステムも含め)氏のほぼ全ての著作に登場している為、併録割合が多いもののみ記す。
〜双葉社刊行〜
ドーナツブックス 全39巻
(解説)氏の代表的な作品集。ほぼ全ての巻に本作が入っている。
・参考文献
・おまけ(後記)
前回の記事更新以降、心境の変化など色々ありいしい先生の誕生日の時も更新せずもうやめるつもりでした。
しかし「やはり書こう」と感じた為、こうしてまた更新しました。
以前の記事は文章等が恥ずかしいのでいくつか改稿、削除をしました。よろしくお願いします。
この記事はシリーズにするつもりなのですが、『赤塚不二夫保存会/フジオNo.1』様の記事を参考に構成している事を記しておきます。参考にしている事に対し問題があれば本記事を削除しますので、その旨コメントよろしくお願いします。