最近出かける用事が多く土日が忙しくて、はっきり言って子供達に何もしてあげられない。
皆で毎年欠かさず行っていた黒滝の蛍も今年は見させてあげられそうにないのだ。
圧倒的にキャンプに行く時間がなく、実家にも帰れていない。
子供達の用事でもあるのであからさまに文句を言ってくることはないが、物足りない様子であることはハッキリと判る。
夏休みも勿論当分はこの状態が続きそうで困っていたところ、友達からのアドバイスでモルモットを飼う事になった。
それからせっせと情報収集。
モルモットの本を買って読ませてみたり、値段のチェックをしたり、色々なお店で個体を見てみたり。
どうせどこにも行けないなら、家で自主性も育めるだろうし、情緒教育にもピッタリ!と、言う事で、この日は車を走らせているときに目についていた初めてのペットショップにモルモットを見に行った。
のだが・・・モルモットがいなかった、と言うか、犬専門のペットショップだったのだ。
犬が嫌いな伴侶はショップのドアをくぐるにはくぐったが、すぐに「スーパーの方行ってくる」と出て行ってしまった。
ま、入った物は仕方ないのでしばらくこいちゃん、いっくん、私の3人で軽くひやかすことに。
生後2か月のチワワや、まだまだ赤ちゃん座りのプードルなどに目を奪われて店内を奥に進んでいたら、店長さんらしき人がニコニコと話しかけてきた。
「ここにもいますよ」と脇に無造作に置かれた段ボールを指さす、と、中には・・・
超ラブリーな、ヨークシャテリアの赤ちゃんが。
5月15日生まれの生後約1か月。(来店したのは6月23日)
お店にやってきたのが前日の夕方と言う事で、まだケージにも移されていないばかりか、値札すらない状態。
まだ慣れていないのか、フルフルと小刻みに震えつつ甘えた声を出す様子に3人とも悩殺されてしまった。
店長さんの「抱っこしてみますか」の言葉にあがらう術すら知らず・・・3人でたっぷり抱っこさせていただき、「スタッフ以外で抱っこしたお客さんは初めてです」の言葉にドキドキしてしまった。
「主人は犬が嫌いなので~。お金もないしねぇ~。」と、いつもの常套句でのらりくらりと話を切り上げようとしていたのだが、腕の中でうつらうつらとし始める赤ちゃんを見ていると何だか変なスイッチが入ってしまった。
「ちょっと・・・主人呼びますわ・・・・」
伴侶に電話をすると渋い顔をした伴侶が店内に入ってきて、犬を抱っこしている私達を見て嫌な顔をした。
値段を聞いて、驚いた表情をしたあとに「無理」と全く取り合う様子はなしで、別の商品の所に行ってしまった。
私はと言うと、「はっきりこの店長の前でNOって言って~!」な気分だったのだが、子供達の「お願い、かってぇ~!毎日頑張る(何を?)から、お願い~。」と必死の哀願を見ているうちにもう何が何だか分からなくなってきた。
おまけにこいちゃんの2分の1成人式ともいえる重要な年齢、10歳の誕生日は明後日に迫っていた。
脇の下にはびっしょり汗をかきつつ、冷静な判断が出来なくなりつつある自分に焦るばかり。
伴侶の「こんな高いのに!」の言葉に「私のお金で買うから、これからのエサ代も自分で払うから」と気が付いたら伴侶を説得する側に回ってしまっていた・・・
結局・・・すぐさまコンビニに走り、現金をおろして、買ってしまった!即金一括払い!!
会計を済ませながら、夢の中にいるようでフワフワと足が地についていない不思議な感覚。
子供達はお互いのほっぺたや、私の首(自分のにしてほしい)をつねりながら「夢じゃないんだねぇ!!」とおおはしゃぎ。
伴侶は憮然とした表情で最後まで納得することはなく、私は自分のしでかした事(と金額・・・)の大きさに愕然となりながら、何度も「これで良かったの!?大丈夫なの!?」と自問自答していた。
「現金で払ったのですぐに一緒に帰れますよ~」と言われ隣のホームセンターで先にケージ必要なセットを購入して赤ちゃんの入った箱を抱えて車に乗った。
この子の体には大きすぎるケーキ箱のような手提げ箱に入れてもらい、こいちゃんといっくんの座る後部座席に真ん中に置いた。
帰宅すると子供達がケージを組み立て、慎重に赤ちゃんを入れる。
触りたくてたまらない2人はその都度喧嘩をするのだが、ストレスにならないように大きな声や物音が異常なくらい気になった。
もう、本当に小さいし、ヨタヨタしているのだが、それでも不思議なことにヨチヨチと子供達の方に寄ってくる様子を見ていると、「あぁ、もう飼う運命だったんだろうな~」と妙に心の中で納得してしまった。
きっとこの子の赤ちゃんフェロモンを前にしては無駄な抵抗だったのかもしれない・・・
ペット販売のシステムや、捨て犬、のめりこみすぎる飼い主など、賛否両論で私も常日頃から「そこんところ、どうなの?」といいイメージを持っていない事は否定出来ないがそれらを子供達としっかり話し合った上で大切に育てていきたいと思った。
この夜中は私が大変であった。
子供達も伴侶も全く気が付かなかったと言うが、興奮で眠れなかった私は子犬が小さく甘えるように「クンクン」と夜通し啼き続けた為、寝不足になってしまった。
休日だと言うのに6時に鳴き声で起こされ、階下に降り餌をあげると大喜びで小さな尻尾を振って食べた。
こっちが相手を出来なくても遊んでほしければ啼くし、ウンチ一つ、大騒ぎをしながらでなければまだ出来ない生後1か月。
子供達はその不便さに戸惑いつつも、言葉を話せない小さな生き物の考えている要求を必死にはかろうとして焦っていた。
朝ごはんを食べ、すっかり安心しきって自分の膝の上で眠ってしまった子犬にこいちゃんはひどく感動し、
「私がお母さん代わりになって、頑張るよ」と言っていた。
と同時に「生まれてすぐにお母さんから引き離されて可哀想・・・」としんみりとつぶやいていた。
小屋の掃除をしたり、ウンチをとってあげたりして二人はかいがいしく世話をした。
今はワクチンもすべては終わっておらず、特に手指消毒が欠かせない。
女の子だったので、名前は「桜」に決定。
色々な候補を出してくれて、最終的にこいちゃんやいっくんの名前に共通する点を持つこの名前を提案してくれた名付け親は伴侶であった。
犬の寿命は10年くらいだし、長生きする子は17年くらい生きるらしい。
こいちゃんが20歳の頃は、さくらは10歳である。
こいちゃん、いっくん、さくらの3きょうだいで、仲良く成長してくれることを願っている。