当院ではこれまでのところインフルエンザの患者さんはいらっしゃいませんが、今後日本からインフルエンザウイルスが持ち帰られ、ハノイの日本人コミニュティーで流行することが予想されます。インフルエンザに関して重要なのは、治療薬タミフルについての誤解です。なんと世界のタミフルの75%が日本で消費されているのです。WHOやアメリカ疾病予防管理センター(CDC)などは、健常者がインフルエンザにかかってもタミフルなどの抗ウイルス薬は必要ないとしています。欧米先進諸国やここベトナムにおいても、インフルエンザにタミフルは原則処方されていません。タミフルを内服しても、患者さんの入院や、肺炎・脳炎といった重症な合併症を減らすことはないというデータが明らかになっているからです。治療効果は、症状のある期間をわずか16時間短縮するにすぎず、その一方で比較的多くの患者さんに吐き気の副作用が見られることも理由です。インフルエンザは休養のみで自然治癒します。当院でもWHOやCDCのガイドラインに基づいた診療を行い、インフルエンザの患者さんには、原則解熱剤など症状を緩和する薬剤のみを処方いたします。ガイドラインでは、妊婦さん、気管支喘息、心臓病や糖尿病の方、高齢者、5歳以下の小児などについては、患者さんと相談の上タミフル処方を検討するとあり、当院でもそのようにいたします。日本の医療は最先端ではありますが、インフルエンザに関しては、日本だけが科学的根拠に基づかない診療を継続しているという現実をご理解いただければと考えております。