オリンパス株式会社(社長:菊川 剛、以下オリンパス)と、東京大学大学院環境情報学研究室との共同研究について、今般日経IT+PLUSに記事が紹介されました。
日経IT+PLUS 2005年10月28日 オリンパスと東京大学、「気付き情報」提供の「インスパイア型ユビキタスシステム」を共同研究開始より
オリンパス株式会社(社長:菊川 剛、以下オリンパス)と、私の後継者である東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻・保坂 寛教授(東京都文京区、以下東京大学)の開発する、「インスパイア型ユビキタスシステム」は、まさにかねてから私がオリンパスと共同研究を進めていたもので、今その成果が広く世間的に認知されつつあります。
インスパイア型ユビキタスシステムとは、個人に気付かせる(インスパイアする)、内面に働きかけることにより、自己の成長を促す新しいコンセプトのサービスを提供するユビキタスシステムです。個人のライフスタイルやTPO(時間・場所・機会)、さらにそれらから推定される心の状態に応じて、意識していない、個人に有益な「気付き情報」をタイムリーに提供するものです。
その第一弾として、いくつかのウェアラブルセンサやGPS(全地球測位システム)が捉えた位置情報に基づいて個人の生活行動を推定し、TPOに合わせて適切な情報をウェアラブルディスプレイ(「モバイルEye-Trek」)に表示する利便性提供型ユビキタスシステムの試作機を共同開発しました。
今後、東京大学とこの試作機を利用して心身相関の研究を進める他、さらに研究ネットワークを広げ、行動パターンから嗜好や情感を推定する技術やコンテンツ生成技術を開発し、2012年を目処に個人のモチベーション高揚につなげるインスパイア型ユビキタスサービスとして実用化を目指します。
ウェアラブル・コンピューティングの最大の特徴は、それを用いる個人のためにカスタマイズされたパーソナルなサービスを提供するツールであるということです。
個々人のニーズにきめ細かく合わせるウェアラブルが究極のユビキタスの形といえます。
技術の成果は、人に優しくなければいけません。操作が容易で多くの人がなじみやすいものが望まれます。私が目指すのはあくまでも、情報装置は原則的にすべて自動であるということです。センサやコンピュータ、通信機器は常に自動に働き、人との対話が可能であるべきでしょう。
なお、東京大学大学院環境情報学研究室では、明日2005年11月12日より日米のワークショップが始まり、環境情報学研究室の創始者であり現在名誉教授である私が、基調講演を行う予定になっています。
<記事抜粋>
【 試作した利便性提供型ユビキタスシステムの構成 】
1.ウェアラブルディスプレイ「モバイル Eye-Trek」(オリンパスが開発)
気付き情報などを個人にタイムリーに提示する常時装着型の超小型HMD。瞳孔の手前に配置したわずか3.2mm幅の小型光学バーにLCD像を投影するため、外界視界を100%確保しながら50cm先に3.8型の視野枠の無い画像を実現。
2.腕運動計測装置(東京大学が開発)
腕の振りから、個人の運動状態(走る・歩く・スポーツなど10パターン)を検出(マイクロストーン株式会社の協力による)。
3.足圧計測シューズ(東京大学が開発)
足裏の圧力分布・変動から、個人の運動状態(走る・歩く・立つ・座るなど10パターン)を検出。
4.発話・咀嚼センサ(オリンパスが開発)
音声等から、個人の発話状態、咀嚼を検出。
5.屋内外センサ(オリンパスが開発)
超音波を利用して、天井の有無・高さを検出。
6.GPS
個人の現在位置の緯度・経度を検出。
7.ユビキタス情報処理ソフト(オリンパスと東京大学の共同開発)
・TPO推定ソフトによりセンシング情報を解析し、個人のTPOを推定。
・情報フィルタリングソフトにより、データベースやネットワークから、推定した個人のTPOに合わせて適切な情報を取得。
・コンテンツ生成ソフトにより、取得した情報から個人のウェアラブルディスプレイに提示する画像を生成。
以上