板生清の”到来!「コンピュータを着る」時代”

環境情報誌『ネイチャーインタフェイス』(総監修)
NPO法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構 (理事長)

みなさんのご参加をお待ちしています!

2006-03-08 15:18:42 | ウェアラブルコンピューティング

セコム科学技術振興財団総合研究 報告会
(第31回WIN定例講演会)のお知らせ



******************* 講演会 *******************
『地理情報と安心・安全サービス』
日時 : 2006年3月10日(金)14:30~17:30
場所 : 学士会分館 (東大赤門隣)
会費 : 会員:1万円 (一般1万5千円)

【 第1部 】

 1.14:30~14:40 『セコム科学技術振興財団による研究助成の報告』
WINの会理事長 板生 清

2.14:40~15:10 『地理情報を利用した安全・安心サービスの高度化』
東京大学 教授 佐々木 健 氏

3.15:10~15:40 『安心安全のための画像処理技術
-インテリジェントルームの構築-』
中央大学 助教授 梅田 和昇 氏

<休息20分>


【 第2部 】  安全・安心サービスの具体例

4.16:00~16:30 『地図型ブログを用いたコミュニティ作りと災害時への応用
-「みやけエコネット」を例に-』
㈱NTTデータ ビジネスイノベーション本部 課長代理 藤村 剛 氏

5.16:30~17:00 『 地域の安全・安心をサポートするカジュアルな地図サービス』
㈱サイバーマップ・ジャパン 社長 村田 岳彦 氏  

6.17:00~17:30 『レーザースキャナを利用した空間情報取得への試み』
      東京大学 空間情報科学研究センター 客員助教授 趙 卉菁 氏    

7.17:30 閉会



******************* 懇親会 *******************

日時 : 2006年3月10日(金)17:30~
場所 : 学士会分館
会費 : 5千円
本件問合せ先:WIN事務局03-5252-7382, http://www.npowin.org/win_home.html

リスナーさんからのメッセージに感激

2006-02-24 23:08:06 | ウェアラブルコンピューティング
2月8日(水)、J-WAVE:GOOD MORNING TOKYOで、私どもが開発中の冷暖房服についてレポートしましたところ、
さっそく、リスナーさんから、下記のメッセージをいただきました。

「私は外肺葉形成不全という障害者です。身体を組織する外側の器官に障害のある、一生治癒しない遺伝的な障害です。汗も出ません、故に自分の体で温度調節ができず外部で温度調節せざるを得ません。特に夏は生活していく上で過酷を極めます。国の障害者認定も難病指定もされずに本人達はこんなにも苦しんでいるのに認定されておりません。そんな今朝の報道を知りありがたく、この報道をしてくださったことに感謝し早速調べてみます。」

あらためて、少数であるが故に苦しんでいらっしゃる方がいるのだということを感じさせられました。
一日も早く冷房服を実用化し、少しでもお役に立ちたいです。
そして、弱者に優しい社会に向けての開発に精進したいと思っています。

車いす用冷房ウエア開発へ

2006-02-20 17:04:46 | ウェアラブルコンピューティング
1月20日の日刊工業新聞に、私どもが開発中の「車いす用冷房ウエア」の記事が紹介されました。

冷房ウエアの一番の特徴は、なんといっても、これまではベストの裾に付けていた電池の重さが解消されたことです。ですから、利用者に身軽に羽織っていただけることでしょう。

私どもの「ユニバーサル・ケーププロジェクト」は、肩から掛けるケープ(マント)の内側に2種類の金属接合部に電流を流して冷熱をつくるペルチェ素子を付け、電池は車いすにセットすることにしました。そうすると、ケープがとても軽くなります。ですから、大いに実用に供するウエアであると期待しています。

高齢者・障害者の方々の夏の脱水症状や熱射病対策として考案されたケープ。
今夏の銀座の歩行者天国に繰り出して、ぜひ、多くの方々に試着ぶりを見ていただきたいと、張り切って開発を進めています。

また、試着イベントやデザインコンペも企画中です。
良き共生社会の実現に向けて、みなさまのご賛同をお願いします。

日経記事:冷暖房服実用化の紹介

2006-02-04 14:15:32 | ウェアラブルコンピューティング
1月27日の日経記事・テクノロジーの頁でお読みになった方も多いと思います。私たちのNPO法人WINが開発中の冷暖房服が紹介されました。

冷暖房服の開発は、体温調節ができない難病患者さんも普通の生活ができるようにお手伝いしたいとの思いから始まりました。

見回してみると、夏の暑さの中で仕事をする消防士や客待ちのタクシー・ドライバーも冷房服があったらよいと思われるのではないでしょうか。

私などは、JR各線の冷房がきつすぎて困るんです。今は、低冷房車が連結されているようですが、毎回、その車両を探すのもたいへん。個々人の体調に合った冷房服が欲しいですね。
それに、個人差に合わせた冷房服なら、熱資源を無駄に使わない省エネ対策になりますしね。

今夏にはカッコイイ冷房服を着て、患者さんともども銀座祭に繰り出そう!
これを合い言葉に、関係者はいま頑張っています。

寒中お見舞い

2006-01-23 23:24:11 | ウェアラブルコンピューティング
寒中お見舞い申し上げます。
旧年中は大変お世話になりました。篤く御礼申し上げます。
昨春に妻の母を、昨夏に実父を見送りましたため、
年頭のご挨拶を失礼致しておりました。

昨年に引き続き、今年も
① 社会人中心の技術経営人材の育成(MOT)
② センサ・ネットワーク技術による研究開発型NPOの経営(WIN)
③ 社会貢献を目的とした社学連携情報誌ネイチャーインタフェイスの発刊
④ 文部科学省下の法人(JST)戦略的創造研究事業におけるバーチャル
  研究所長として「安全・安心を実現するセンシング技術」研究領域の運営
⑤ 環境プランナーの育成と環境プランニングの運営

など産官学NPO法人活動を多くの皆様と共に進めてゆく所存です。
今後もぜひ皆様のさらなるご参画をお願い致します。

                       板生清

万物は情報を発信する

2006-01-06 17:48:04 | ウェアラブルコンピューティング
こんにちは。
<ネイチャーインタフェイスの世界>のコンセプトは、<万物は情報を発信する>です。
古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは、<万物は流転する>として世界を捉えました。<世界には何ら固定不動なものは存しない。一切はただ運動変化においてある>と述べています。
私も、地球上の一切の自然や人工物や宇宙までも刻々と生成変化していると考えます。ですから、それらの現象の誕生から消滅までの変化の過程では、何らかの情報を発信しているはずです。<ネイチャーインタフェイスの世界>とは、ですから、私たち人間や自然や人工物が内部から発している情報を、端末機器たるウェアラブル・コンピュータを用いて、それぞれが外界と接している面(接合面、界面)すなわちインタフェイスから得ようということなのです。
例えば、人間のインタフェイスとは<皮膚>でしょう。端末機器は<皮膚>を通して、人体内部のいろいろな情報を読み取り、それを医療機関等に自動送信して、予防や治療等の必要な患者に情報をフィードバックする、というネットワークの構築が<ネイチャーインタフェイスの世界>の目標です。
これは、現代の莫大な医療費の節約につながる構想といえるでしょう。

「“人体通信”事情」のラジオ放送ご案内

2005-12-21 13:43:38 | ウェアラブルコンピューティング
12月22日(木)午前7:40~50分 ニッポン放送の番組
「森永卓郎 朝はニッポン一番乗り」にて
私がかつて学生指導のテーマとした「“人体通信”事情」が放送されます。

人体通信は、1995年、MITの学生だったZimmermanが発表して以来、日本でも企業や大学などが研究開発を進めてきています。

具体的な例としては、世界で初めて実用化された松下電工の「タッチ通信システム」が挙げられます。
店の販売員がリストバンドを着けて商品タグに触れると、リストバンドが情報を蓄積する。次に、プリンタのリーダに触れると、商品名やグラム単価などの商品情報を呼び出してくれるという仕組みです。

NTTも人体通信デバイスを実用レベルにまで開発していますが、これらのウェアラブル情報機器間の信号伝送への利用は2年以内に実現可能だろうと考えられています。

さて、このような“人体通信”機器がユーザーたる市民社会に広く受け入れられるには、人体に電気を通すことへの拒絶反応に対して、技術者が健康面等への安心、安全をきちんとした根拠に基づいて真摯に説明をしていくという不断の努力が大切です。

技術は、まさに市民に認知されてこその技術なのです。


ドラッカーさんとネイチャーインタフェイス

2005-12-04 12:14:20 | ウェアラブルコンピューティング
こんにちは。
10、11月は、ウェアラブル・コンピュータによるセンサー技術が、実際に社会のどのような現場で活用されているかについて紹介してきました。
流通界や労働・医療等の現場では、それらがますます活躍する日もそう遠くないなと感じていただけたでしょうか?
さらには、これらの個々のセンサー技術は、どういったコンセプト(概念)に基づいて開発されているのだろうと考えた方もいらしたかもしれませんね。中には、人間がコンピュータを身に着け操作されるのは恐いと感じた方もいらしたことでしょう。(当然のことです!)

今回から、そうした不安にお答えする意味でも、センサー技術が基盤とするコンセプト<ネイチャーインタフェイスの世界>へみなさんをご案内しようと思います。

私が提唱する<ネイチャーインタフェイスの世界>とは、技術のための技術を開発しているような現代のハウツーの氾濫に対するアンチテーゼかもしれません。

先日亡くなった経営学者P.ドラッカーは、マネジメントとは実務であり、唯一絶対はなく、「値打ちは、医療と同じように科学性によってではなく患者の回復によって判断しなければならない」(新版『企業とは何か』)と述べています。
つまり、立派な方法論に終始するのではなく、生身の人間にどのくらい役に立ったかを尺度とすることの大切さ・必要性を説いています。

<ネイチャーインタフェイスの世界>とは、まさに、ドラッカー論の科学技術版といっていいものではないかと、私は実はひそかに自負しているのですけれど(笑)、市民たる人間の特に福祉の向上に役立つ<市民技術>の開発をこそ、その中心に据えています。

それでは、次回から、<ネイチャーインタフェイスの世界>の扉を開けて、みなさんに中を具体的にご案内いたしましょう。楽しみにアクセスしてください!

オリンパスと東京大学、「気付き情報」提供の「インスパイア型ユビキタスシステム」を共同研究

2005-11-11 19:14:12 | ウェアラブルコンピューティング
オリンパス株式会社(社長:菊川 剛、以下オリンパス)と、東京大学大学院環境情報学研究室との共同研究について、今般日経IT+PLUSに記事が紹介されました。

日経IT+PLUS 2005年10月28日 オリンパスと東京大学、「気付き情報」提供の「インスパイア型ユビキタスシステム」を共同研究開始より


オリンパス株式会社(社長:菊川 剛、以下オリンパス)と、私の後継者である東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻・保坂 寛教授(東京都文京区、以下東京大学)の開発する、「インスパイア型ユビキタスシステム」は、まさにかねてから私がオリンパスと共同研究を進めていたもので、今その成果が広く世間的に認知されつつあります。

インスパイア型ユビキタスシステムとは、個人に気付かせる(インスパイアする)、内面に働きかけることにより、自己の成長を促す新しいコンセプトのサービスを提供するユビキタスシステムです。個人のライフスタイルやTPO(時間・場所・機会)、さらにそれらから推定される心の状態に応じて、意識していない、個人に有益な「気付き情報」をタイムリーに提供するものです。

その第一弾として、いくつかのウェアラブルセンサやGPS(全地球測位システム)が捉えた位置情報に基づいて個人の生活行動を推定し、TPOに合わせて適切な情報をウェアラブルディスプレイ(「モバイルEye-Trek」)に表示する利便性提供型ユビキタスシステムの試作機を共同開発しました。
今後、東京大学とこの試作機を利用して心身相関の研究を進める他、さらに研究ネットワークを広げ、行動パターンから嗜好や情感を推定する技術やコンテンツ生成技術を開発し、2012年を目処に個人のモチベーション高揚につなげるインスパイア型ユビキタスサービスとして実用化を目指します。

ウェアラブル・コンピューティングの最大の特徴は、それを用いる個人のためにカスタマイズされたパーソナルなサービスを提供するツールであるということです。
個々人のニーズにきめ細かく合わせるウェアラブルが究極のユビキタスの形といえます。
技術の成果は、人に優しくなければいけません。操作が容易で多くの人がなじみやすいものが望まれます。私が目指すのはあくまでも、情報装置は原則的にすべて自動であるということです。センサやコンピュータ、通信機器は常に自動に働き、人との対話が可能であるべきでしょう。

なお、東京大学大学院環境情報学研究室では、明日2005年11月12日より日米のワークショップが始まり、環境情報学研究室の創始者であり現在名誉教授である私が、基調講演を行う予定になっています。


<記事抜粋>
【 試作した利便性提供型ユビキタスシステムの構成 】

1.ウェアラブルディスプレイ「モバイル Eye-Trek」(オリンパスが開発)
 気付き情報などを個人にタイムリーに提示する常時装着型の超小型HMD。瞳孔の手前に配置したわずか3.2mm幅の小型光学バーにLCD像を投影するため、外界視界を100%確保しながら50cm先に3.8型の視野枠の無い画像を実現。

2.腕運動計測装置(東京大学が開発)
 腕の振りから、個人の運動状態(走る・歩く・スポーツなど10パターン)を検出(マイクロストーン株式会社の協力による)。

3.足圧計測シューズ(東京大学が開発)
 足裏の圧力分布・変動から、個人の運動状態(走る・歩く・立つ・座るなど10パターン)を検出。

4.発話・咀嚼センサ(オリンパスが開発)
 音声等から、個人の発話状態、咀嚼を検出。

5.屋内外センサ(オリンパスが開発)
 超音波を利用して、天井の有無・高さを検出。

6.GPS
 個人の現在位置の緯度・経度を検出。

7.ユビキタス情報処理ソフト(オリンパスと東京大学の共同開発)
 ・TPO推定ソフトによりセンシング情報を解析し、個人のTPOを推定。
 ・情報フィルタリングソフトにより、データベースやネットワークから、推定した個人のTPOに合わせて適切な情報を取得。
 ・コンテンツ生成ソフトにより、取得した情報から個人のウェアラブルディスプレイに提示する画像を生成。

以上

自然環境保全と環境経営

2005-11-08 20:08:34 | ウェアラブルコンピューティング
『カトリーナ』と『リタ』という2つのハリケーンによって、米国は甚大な被害にさらされました。AP通信によれば、米国における自然災害は、まったく新しい、危険なレベルへと変貌したといいます。こうした巨大な災害に打撃を受けるケースは、今後20~30年の間にさらに増えるだろうと指摘する専門家もいます。
気候パターンの悪化、人口動向の変化、そして政治の無策といったさまざまな悪条件が重なり合った結果、何百万人もの人々が被害に合い、死者が続出、政府の機能も麻痺・・・といった事態を招きました。
近年、自然環境の悪化による異常気象の報告が後をたちません。毎年、世界のどこかで深刻な自然災害が起こっています。

2005年1月27日付の英科学誌『ネイチャー』によると、分散コンピューティングを使った史上最大規模の気候シミュレーションで、温室効果ガスの影響による地球温暖化を予測したところ、世界の平均気温が最大で約11度上昇する可能性があるという結果が出たそうです。従来考えられていた上昇温度の約2倍にあたります。温室効果ガスの影響はこれまで考えられていた以上に大きなものといえます。

自然破壊や人類滅亡を認める思想を抱いている人はさておき、自然と人と人工物の三角関係において、対決の構図はあってはなりません。自然系として、自然と人とがある。一方に人工物がある。そして人が緩衝体となって、自然と人工物を仲介することが求められています。
そのためには、人がこれまでの人間中心主義から一歩も二歩も引いて自然環境保全の視点をいっそう徹底させなくてはなりません。

自然環境保全が世界共通の緊急課題であるなか、環境問題への対応は、企業経営においても、益々重視されるようになり、不可避かつ重要な問題となっています。
激しい競争の中で企業が発展してゆくためには、環境経営の実務を推進するための組織の構築及び人材育成が急務とされます。

私は、早くからウェアラブル機器やマイクロマシンによる、自然系(自然と人)、人工物系をすべてひっくるめたセンサー無線通信システムを提案してきました。
さらに、大学・学会に代表される「知」と企業、消費者を「環境」をキーワードに三位一体として結びつけ、環境経営に関するより実践的な知識を持った人材を育成する「環境プランナー」の輩出に尽力し、教育プログラムの監修をしています。

現時点では日本の企業にとって、環境への取り組みは、他と差別化するための経営戦略です。しかし、数年後には、今の先進的な取り組みが当たり前になり、他の会社から差別化されないためのものになってくると思います。


米産牛肉の輸入再開とウェアラブル・コンピュータ

2005-11-06 15:48:20 | ウェアラブルコンピューティング
米産牛肉の輸入再開が目前に迫っています。

食品安全委員会プリオン専門調査会の答申案を受け、12月に米国とカナダ産牛肉の輸入が解禁される見通しとなりました。
輸入再開に向けた結論は条件付き。

(1)日本向けは生後20カ月以下の若い牛に限る
(2)脳や脊髄(せきずい)などプリオンの集まりやすい部分を取り除く

これらの2件が米国とカナダで守られれば、日本と米、カナダの牛のBSE(牛海綿状脳症)の危険性の差は非常に小さいと結論付けられています。

米国で牛の月齢を確認する手法としては出生証明書を使う方法と、肉質から判別する方法があります。
しかしながら出生証明を得ている牛は全体の約10%。肉質から判定できる体制が整っているのも約10%にすぎません。
これら以外の約8割の牛の肉が日本に輸入されないという保証はなくただ米国やカナダでは生後20カ月以下に限るなどの輸入再開条件を確実に守る体制が整っておらず、消費者の不安が払拭(ふっしょく)されたとは言い難い状況です。

2005年11月1日/日本経済新聞 朝刊 より

BSEや食品の偽造表示などによって、食の安心・安全の確保が急務となっています。その解決策のひとつとして、トレーサビリティシステムの整備が始まっています。
トレーサビリティとは、あらかじめ製品に識別番号をつけておいて、誰から仕入れ、誰に販売したかを、流通のあらゆる段階で記録し、それによって製品の行き先と履歴情報の両方を追求するシステムのことです。

EUでは、BSEが人間に感染する可能性が言及された翌年の97年から、いちはやくトレーサビリティシステムを導入し、成果をあげてきました。
日本での導入がなかなか進まない背景には、食品の多くを輸入に依存しているだけでなく、流通経路も複雑で、関連する生産者や業者が多岐にわたっているという現実があるからです。

そこで期待されるのが、食品にICタグをつけ、インターネットで情報を閲覧するという手法です。
現在牛肉に関しては、BSE検査の後、解体された枝肉には、ID番号がつけられ、小売業者へと移送されています。ところが、枝肉は各小売店頭でさらに小分けにされて少量パックにつめられるため、その時点でID番号が消失し、消費者は情報が追えなくなっています。
トレーサビリティをもっと簡単に、手軽に実現するにはICタグの導入が不可欠といえるでしょう。

トレーサビリティに求められるのは、何よりも信頼性ですが、一方で情報の扱いやすさも大きな課題です。今後の展開に期待したいと思います。

食の安心・安全と、最新のテクノロジーの関係をもっと詳しく知るには...
月刊 総合環境情報誌 「ネイチャーインタフェイス」 第27号 (2005/09/01) 特集 食と農とテクノロジー 

労働者の安全を守る最先端のウェアラブル

2005-11-02 13:38:50 | ウェアラブルコンピューティング
労働者の安全を守る最先端のウェアラブルについて、お話します。

米国ミネソタ州に本拠をおくグローバル・メディカル・インストゥルメンテーション(GMI)社の新しいサングラス『テックエクストリーム』には、鼻パッド部分に着用者の脳の温度を測定する最先端のセンサーパッチが組み込まれています。

両目の端の皮膚と脳内の温度には関連があり、この領域を「脳温度トンネル」(BTT:Brain Temperature Tunnel)といいます。テックエクストリームのセンサーパッチは、BTTが、脳の温度の状態を直接表皮へと伝えるという特質を利用し、脳内温度を測定しています。本製品の特徴は、身体の中核部の温度を非侵襲的に(組織を傷つけたり体を痛めたりせずに)測定できることにあります。

センサーによる測定結果は、スポーツウォッチに無線で送信されて数値で表示されます。アスリートや建設作業員といった熱中症の危険にさらされる人たちは、このサングラスをかけることで命が救われるかもしれません。

脳の温度を測定して熱中症を防ぐサングラス 9/15 hotwired japan より

労働者の安全を守るウェアラブルは、日本でも研究が進められています。

元大阪市立大学教授で、現宝塚造形芸術大学教授の志水英二氏は、作業員の安全を守るために、現場で着る作業着のIT化を図るという研究開発を行っています。ここでは主に、HMDや各種センサーを仕込んだ靴などが用いられています。

常に危険を伴う肉体作業を強いられる現場では、めまいや立ちくらみ等の些細な体調不良が、生命にかかわる大事故を引き起こしかねません。一人ひとりが今どのような状態にあるのかをリアルタイムにモニタリングし、必要に応じて人員をスイッチできれば、あらかじめ大事故を防ぐことができるでしょう。
高所作業者には、靴にバランスセンサを入れておけば、身体の傾きをとらえて注意を促すことも可能となります。

労働者の安全を守るものに、同教授が開発中である「知的消防服」もあります。消防士は頭部赤外線カメラを装着することで、炎や煙などで視界のさえぎられる消火活動においても、倒れている人を発見できます。また、消防士自体が生きているかどうかのセンシングも大変重要です。消防士の位置を把握する位置情報システムを装着すれば、消防士と外部に居る監督者とがリアルタイムに連絡をとりあえます。

常に危険と背中合わせで働く作業員にとって、ウェアラブル・コンピュータの活用が生命を守るでしょう。

ウェアラブルで流通が変わる

2005-10-29 20:21:47 | ウェアラブルコンピューティング
今日は、物流業界におけるウェアラブル・コンピュータの活用についてお話します。

今年4月より、米ウォルマート・ストアーズ社流通センターに、RFIDタグ 『RFID』(Radio Frequency IDentification)付パレットの搬入が開始されました。現在フィールドテスト段階にあり、ウォルマート社の流通センターにRFIDタグ付きの商品を納入している業者は、130社以上存在します。過去1年間で同社の流通センターが受け取ったタグは約540万個。同社は来年1月までに、さらに200社の納入業者が加わると見ており、タグ付きの商品を受け取る準備も、約1000の店舗と倉庫で整えています。
各店舗で商品の在庫切れが過去12ヵ月で16%減少し、RFIDタグが付いている商品の在庫補充は、付いていない商品の3倍のスピードで可能とのことです。

「ウォルマート『RFIDタグで在庫補充が3倍効率的に』」 10/27 hotwired japan より 

小売業界において絶大な影響力を誇るウォルマートの動きには、ターゲットをはじめとする競合他社の中にも既に追従の動きが見られています。
ウェアラブル(装着する)・コンピュータの流通業界への普及がいよいよ実現に近くなりました。

日本でもRFIDを用い、人間がウェアラブルを身につけ、物流の現場を効率化する方法が実践されています。
たとえば、単眼のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)のメーカーとしても知られる島津製作所では、実際に同社の物流倉庫で、HMDを用いて、荷物に装着したRFIDタグからの在庫情報をチェックしたり、仕分け先の指示を受け取っています。ハンズフリーでいつでも在庫情報を確認できる上、仕分け時の作業ミスも防ぐことができます。

ところで、物流業界におけるウェアラブルの活用事例といえば、WINとウベパレットレンタルリーシング株式会社が共同開発した「パレット追跡システム」も見逃せません。
「パレット追跡システム」は、パレットにPHS端末を装着するだけで、定期的にパレットの追跡結果を知らせてもらえるというシステムです。
パレット(荷台)は物流の現場では必要不可欠なものですが、商品とともに倉庫から倉庫へと広範囲に移動するために、紛失が絶えなく、その損失額は業界全体で約数十億円ともいわれています。しかし、本システムを使用することで、パレットの紛失をなくすことが可能になりました。

本システムでは、PHSを用いているのが特徴です。バーコードやRFIDの管理とは異なり、リーダ装置による近接読み取りの作業が要らず、バッテリー寿命も半年と長いので、電池交換の手間が少なくすみます。またGPSのように衛星の電波を使うのではないので、倉庫内やトラック内にあっても、追跡が可能となっています。

これは移動するモノとつねに行動できる、ウェアラブル活用の好例といえるでしょう。

鳥インフルエンザから守るウェアラブル・コンピュータ

2005-10-27 19:09:55 | ウェアラブルコンピューティング
今日は中国、東南アジア、ヨーロッパで被害が広がっている鳥インフルエンザから我々を守るウェアラブル・コンピュータについてご紹介します。

各国で鳥インフルエンザの被害が広がっているというニュースが日々報道されています。

中国では、19日に内モンゴル自治区フフホト市でH5N1型に感染した家禽2600羽が死んだと発表し、25日には安徽省東部農村の鳥飼育場で毒性の強いH5N1型の鳥インフルエンザが発生、家禽(かきん)550羽が感染して死んだと発表しました。
また欧州やその周辺でも、今月に入ってから、ルーマニアやトルコ、ロシアでH5N1型のウイルスが確認されました。

鳥インフルエンザのもとになるウイルスにはいろいろなタイプがあるそうです。専門家によると、恐ろしいウイルスは、鳥から鳥へ感染するだけではなく、鳥から人にも感染し、さらにその人から他の人へと感染する毒性の強いタイプだといいます。
日本の厚生労働省のあくまでも試算ですが、鳥インフルエンザが流行すると、最悪の場合、日本人の4人に1人が感染し、死者は6万9千人~16万7千人と推計されています。

中国大陸ないし朝鮮半島からの渡り鳥が、鳥インフルエンザのウイルスを運んでくるのなら、あらかじめ現地で鳥を捕えてその行動を捕捉することが必要です。また渡り鳥の飛来する地域の鳥類についてもあらかじめ手をうっておくことも感染防止の対策となるでしょう。

将来的に、このようなケースにおいて鳥に装着するウェアラブルなセンサーが活躍するでしょう。
すでに私の研究室では、従来のアルゴスシステムに加え、PHSとGPSを使ったウェアラブルセンサーによる鳥類の行動、生態観測の実験に成功し、いまなお研究が進められています。

野生動物に装着して信憑性のあるデータがえられる実験端末の総重量は、動物体重の約4~5%と言われます。測定対象の体の大きさと距離にあわせて、最適な測定手段を選択することになります。
位置情報を得るだけでも本来、野生動物の生態に関する有益な情報を多く得ることができますが、健康状態情報、動作状態情報(体調、行動、移動速度、羽ばたき数、捕食など)を得ることにより、多くの部分が解明されます。

日本の環境省は、渡り鳥の日本への出発地のひとつ、韓国と協力して300羽の鳥類を追跡する準備をはじめています。そして、どんな鳥を対象にするのか、何を調査するのか、調査期間はどのくらいにするのかなどによって、装着装置のセンサー、通信方法、電源などを検討していくことになります。

最新のウェアラブルファッション

2005-10-24 20:35:39 | ウェアラブルコンピューティング
今回は、今まで皆さんの反響が多かった、
最新のウェアラブルファッションについてご紹介します。

2005年8月3日、ロサンゼルスにて開かれた
CGの国際会議・展示会『シーグラフ』が主催する年次イベント、
今年で4回目となる『サイバーファッション
の舞台では、数々の最新ウェアラブル・ファッションが披露されました。

ファッションショーには、10ヵ国から35組の出展者が参加し、
ウェアラブル・コンピューター、CAD/CAMで製作した宝飾品、
電子機器で装飾された服のデザインなどを披露しました。

日本のウェアラブル環境情報ネット推進機構(WIN)からも、
いくつかのウェアラブル・ファッションを展示しました。
そのうちの1つ、隠密行動をとる未来のジャーナリスト向けに
デザインされた、レトロ調トレンチコート『リポート・ザ・ワールド』には、
10台の隠しカメラが取り付けられていて、360度の全方位パノラマ画像が
撮影できます。
コート前面のポケットには小型コンピューターを収納でき、
指輪に組み込まれたスピーカーからは、位置情報に基づく地域データを
音声で受け取れます。
ヘッドマウント・ディスプレーは、オーストリアのスワロフスキー社の
クリスタルガラスでスタイリッシュに飾られています。

WINは、子ども向けの『ドッグ・アット・ウォッチ』のデモも行ないました。
手首に装着された犬ぬいぐるみのような機器に、GPSセンサー、
音声ダイヤル機能で親に発信できる携帯電話、装着者の安全を監視する
アラームセンサーが密かに搭載されています。
ウォッチ・ドッグは着信時や通話時などに犬の目の色や鳴き声が変化するなど
子供にとって楽しいインタフェイスとなっています。
最近の日本には、一昔前には考えられなかった物騒な犯罪が横行しています。
子供の安全を確保するための、ウェアラブル・コンピュータが活躍する日も
近いでしょう。