トラ君は「おなもみ村」に住んでいました。
トラ君の楽しみは変わった形や、変わった色の小石を集めることでした。
秋まつりのコマ大会に行く日、トラ君は奇妙な石をみつけました。
深い海のように青く、お星様のようにキラキラ光る青い石。
トラ君は嬉しくて、とびあがりました。
青く光る石を握りしめ、きのこ畑を通り、バッタ林の森をぬけ、おち葉トンネルを通って、どんぐり広場ら行きました。
広場では、こま大会が始まりにぎやかです。
今日3人の、こままわしの優勝者が決まります。この大会で勝ったものは、
森のケーキやさんが用意してくれたどんぐりたっぷり特製ケーキを持って帰られるのですから、みんな真剣です。
トラ君は、青い石をどんぐりの木の穴にそっと隠し、こま大会に参加しました。
さぁ今年は誰が、特製ケーキを持って帰ることになるのでしょうか。
日が暮れ、楽しかったおまつりも終わり、森の動物たちは家に帰っていきました。明日トラ君は森の動物たちに青い石をみせてあげよう!! こう思い、走って帰りました。
その日の夜は、なかなか眠れません。
びんに入れた青い石をながめながら、トラ君はうとうとと眠りにつきました。
次の日トラ君はとても早く目が覚めました。びんに入れていた青い石はコロンと転がり出て、虹色の花が一輪咲いているではありませんか。
窓の外には大きな虹がかかり、住んでいた家も、森の動物たちも、みんな虹色になっていました。
このことに驚いた動物たちは、虹色の花をみに集まりました。
なんて不思議な花なのでしょう。
虹色に変わった姿を動物たちはとても気にいりました。そして、この花をたいせつに大切にしました。
日ごとに寒くなり、この葉がにしきになりました。
やがて、この葉が落ちて草が枯れました。
この頃虹色の花も枯れましたが、たくさんの種を実らせてくれました。
驚いたことに虹色だった動物たちはもとの色にもどっていることに気がつきました。虹色の種を集め、はっぱボールの中に入れ、大切にしました。
大地が春のお日様にあたためられて草が芽ぶく頃、はっぱボールが虹色に変わり、中の種がはじけ散ります。
森じゅうに散った虹色の種は、やがて目を出し、秋には沢山の花を咲かせます。
虹色の花が沢山さく頃、もりの動物たちも虹色に変わり、秋まつりを楽しみます。
おしまい