
●「副業詐欺」のイメージ写真
先日、「デーリー東北」(9月4日付け)で報道された「警察官や検察官を語る詐欺事件」についての記事を書いたが、同紙には、いわゆる「副業詐欺」に関する2件の記事も紹介されていた。その3日後にも「副業詐欺」関連の記事が載った。その一方で、新潟県では70代の女性が、警察官を名乗る男からの電話によって、6000万円の詐欺被害が発生したというニュースも飛び込んできた。不幸なことに、犯人グループからすれば、日本は「詐欺天国」になってしまった感が否めない。
本稿では主としてこの「副業詐欺」問題を取り上げてみたい。
1件目は、青森県内在住の20代女性が副業サポート名目で現金420万円をだまし取られたという事件だ。事件を時系列に追ってみる。
①女性は8月29日にインターネット上で副業を紹介するサイトを見つけ、ライン登録した。
②その後、副業サポート担当者を名乗る男から電話があり、女性は副業報酬の受け取り口座を開設し、暗証番号資産取引業者のアプリをインストールした。
③翌30日に同じ男から電話があり、「申し込みをするサポートプランの金額次第で収益が変わる」などと言われたが、手持ちの金が少ないことを伝えると、男は金融業者からの借金を提案した。
④女性は画面共有アプリで男の指示に従い、消費者金融から借り入れをしたうえで、指定する口座に3回に分けて現金計420万円を振り込んだ。
もう一件の50代女性が被害の事件も、副業詐欺で、入会金やサポート費名目で80万円を詐取されたという点では共通しているし、9月7日付けの記事のSNSの「いいね」を押すだけで送金を要求される。こちらも分野別では「副業詐欺」に入る。
いずれにしても、昨今の「賃金が上がらない」「高物価で暮らしが大変」という経済情勢を巧みに悪用した詐欺行為だろう。我々国民は、ある種「人を見たら泥棒と思え」「生き馬の目を抜かれないように気を付けろ」くらいの「性悪説」に立ったほうが自己防衛になるという何とも世知辛い世の中になったものだ。詐欺集団は、まるで「毒蜘蛛」のごとく、蜘蛛の糸という「見えない罠」を巧みに仕掛けていることが先の記事から分かる。おそらく副業サイトだけではなく、特にアクセスが大量にあるサイトなどは「要注意」だと思う。
1件目の女性が被害に遭わないためには何が必要だったろうか。そもそも、副業アプリを見つけ、ライン登録したところから「悪夢」が始まっているが、それは結果論だろう。普通の善良な副業サイトもあるから、それを見極めるには、企業情報や相手側の対応、接客態度、要求内容などから判断せざるを得ないところに事の難しさが潜んでいる気がする。
最初の防止できるチャンスは、詐欺を企んでいる男からの最初の接触電話のなかで出された「申し込みをするサポートプランの金額次第で収益が変わる」などと言われたが、手持ちの金が少ないことを伝えると、男は金融業者からの借金を提案してきたという段階で、「直感的におかしい」と思い、断固拒否し、即座に最寄りの警察署に相談したほうがよかったと思われる。
同時に、男の電話番号は即座に「着信拒否」の設定が必要だろう。なまじ、副業収入が欲しいという欲求がここでは「アキレス腱」的に働いている気がするのだ。彼らは、手持ち資金がなければ金融機関からの借金を勧め、預貯金があればそこからの送金を勧める。ともかく現金をつかみさえすればそれで良いのだ。すりや窃盗犯は直接お金を盗んだりするが、詐欺犯らはネットや銀行口座などに送金させるなどして間接的にお金を詐取する。それにしても、420万円は、われわれ庶民の感覚からすればあまりにも高すぎる。一日も早い容疑者らの逮捕と被害金の回収が実現することを祈りたい。
最後に具体的な「副業詐欺」を見破り、被害を未然に防ぐためのチェックポイントを紹介しておく。是非、参考にしてほしい。
①短時間で高収入を謳う:短時間で簡単に高収入が得られると宣伝している副業は、詐欺の可能性が高い。
② 断定的な表現に注意する: 「絶対に儲かる」「誰でも稼げる」といった断定的な表現を使っている場合は、詐欺の可能性が高い。投資などで確実な利益を保証することはできないことを知るべき。
③高額な初期費用やサポートプランに注意する:副業を始めるために初期費用や登録料を請求される場合は、詐欺の可能性がある。信頼できる副業は、初期費用が低いか、無料で始められることが多い。
④運営会社の情報や業務内容を確認する: 詐欺サイトは運営実態がないことが多いため、会社情報が存在するか確認することが大事。仮に存在してても、具体的な仕事内容が不明確な場合は注意が必要である。また、公式ホームページや口コミサイトでの評判をチェックすることも重要。悪い口コミが多い場合は、詐欺の可能性が高い。
⑤過度な勧誘:しつこく勧誘してくる場合は、詐欺の可能性が高い。
※早い段階で警察や弁護士、専門家に相談する: 少しでも怪しいと感じた場合は、警察や弁護士、消費者センターに相談して良きアドバイスを受けることも大事である。