(この作品は私ブログ主ではなく、神島氏の作品です)
AKB48バトルロワイヤル 11巻
[第95話]
カンカンカン!
激しく刃と刃がぶつかり合う。
戦国時代とかってこんな感じだったのかな?松井珠理奈は思った。
「ほらほら!そんなんじゃ私に勝てないよ!」
松井玲奈は満面の笑みだ。
珠理奈を恨んでるような事を言っておきながら闘いを楽しんでいるように見えた。
カンカン!
「玲奈!私、何か玲奈にしたかな?」
珠理奈はそう言いながら刀を振り下ろした。
カン!
玲奈はそれを受け止めた。
「恨み?私はあなたの立場が欲しい!ただそれだけ!」
受け止めた刃を押し返した。
カンカン!カンカンカン!
いい勝負だ…。
でも、もし珠理奈が負けたら…次は私だ…
それに私だけじゃない。みなみやあーみんやらぶたんも…
あっちゃんと小森は私が来る前に死んでしまったようだ。
くそ…つまり後はここにいる6人だけか!
珠理奈…勝ってくれ!
その時だ。
「あぁ!」
珠理奈の声だ!
才加はしっかり前を見た。
珠理奈が左腕から血を流している。
「大丈夫?珠理奈?」
玲奈は蔑んだ目で珠理奈を見た。
「こんなんじゃ終われない!ハァ!」
珠理奈が玲奈に刀を振る。
玲奈はそれを受け止めた。
「そんなしょぼい刀じゃ…私には勝てないんだよ!」
ザシュッ
玲奈は刀を打ち返し珠理奈の腹を切った。
「あぁ!」
珠理奈は仰向けで倒れた。
そんな…
玲奈が珠理奈の首筋に剣先をつけた。
「珠理奈。おしまいだね。あんたはやっぱ実力ではアタシには勝てない。」
玲奈が剣を振りあげた。
バンッ
才加が玲奈の右手を撃った。
やはり私がやるしかないか…
「邪魔をするな!」
バンッバンッ
玲奈は銃を腰から出し才加を撃った。才加は玲奈が銃を持っているとは知らず油断した。
「キャア!」
弾は才加の腰と左肩に命中した。
まさかそんな…
「珠理奈。私あんたが羨ましかった。だって若くてダンスが上手いだけでエースにしてもらえるんだもん。」
玲奈は銃をしまい日本刀を左手で持った。
「私のほうが人気なのに!なんであんたが?それでも私は我慢した。選挙で組織票で負けようと永遠の二番手と言われようと。」
珠理奈はじっと玲奈を見た。
「だけどやっぱり実力は私のが上。今この瞬間決まったわね。さよなら珠理奈。悔しい?」
すると玲奈は珠理奈から衝撃の言葉を浴びせられた。
【残り6人】
[第96話]
「私…エースなんかじゃなくていい。」
……………………………………………………………………………………はぁ?
玲奈は意味がわからなかった。
「何それ?意味わかって言ってんの?」
「うん…」
珠理奈は続けた。
「むしろ私はエースなんて…器じゃないよ…。だって…玲奈を止めることができなかったし…玲奈がエースやりたいならいいよ…秋元先生に相談しよう…」
「なに死にかけだからって適当な事言ってんのよ!そんな訳ないじゃない!誰だってエースが」
「適当なんかじゃない!」
珠理奈は玲奈の目をしっかり見据えていた。
「私は誰かの為にできる事が一つあればいい…たった一人のお客さんが「今日の珠理奈よかったね」ってそう言ってくれればそれでいい…!」
玲奈は黙った。
「玲奈だってそう…玲奈は玲奈のポジションがある…玲奈にしかできないパフォーマンスがある…私と玲奈は違う…玲奈は私なんかより全然すごいよ…」
珠理奈は口の端から血を流しながら言った。
「そんなこと…今更言わないでよ…」
玲奈は唇を噛み締めた。
「私バカみたいじゃない!珠理奈の事恨んで沢山人殺して!私のやってた事ってなんだったの?私の事恨みなさいよ!憎みなさいよ!」
玲奈は珠理奈の首に更に強く剣先をあてた。
「そんなこと…出来ない…だって…」
「玲奈の事大好きだもん。」
その時だった。
才加は最後の力を振り絞って爆弾に火をつけ突進した。
「珠理奈!みんな!下がれ!」
ドガーーン!!
「くっ…」
玲奈はなんとか力を振り絞り立ち上がった。
「珠理奈…珠理奈?」
玲奈は倒れている珠理奈を発見した。
「珠理奈!」
「玲奈…」
珠理奈はまだ生きていた。
「珠理奈!しっかりしてよ!まだ話は終わってない!」
玲奈は倒れている珠理奈を抱き起こした。
その顔は悪魔の様な玲奈ではなかった。
バトルロワイアルに参加する前の優しい玲奈の顔だった。
「良かった…玲奈…戻ったんだ…」
「戻ったんだじゃないよ!なんであんたっていつもそうなの?自分が死にそうなくせに他人の心配ばっかりして!」
「玲奈…」
珠理奈はポケットから石とスイッチを取り出した。
「これ…やっぱり首輪にはめるんだと思う。玲奈が持ってて…」
そういうと珠理奈は玲奈にそれを手渡した。
「私達ずっと……SKE48のダブルエースだから…ね。」
それだけ言うと珠理奈は静かに眠った。
【残り5人】
[第97話]
すごい爆発だった…
高橋みなみと前田亜美と多田愛佳は爆風の中に消えた3人を探した。
「……………。」
みなみは前田敦子を失った悲しみでもう何も信用できなくなった。
もう誰が死のうが関係なかった。
「秋元さん!」
声をあげたのは亜美だった。
秋元才加が倒れている。全身火傷を負い酷い状況だ。
「いや…死んじゃいや…」
愛佳は次々に人が死ぬ状況に胸が苦しくなっていた。
みなみは才加を見たがすぐに視線を変えた。
倒れている珠理奈が玲奈と何か話している。
みなみは爆風の中に向かった。
玲奈はどうしたらいいかわからなかった。
なぜここまでされて珠理奈は…
既に亡骸となった珠理奈の顔を見た。
笑っている。
「ダブルエースか…はっ!」
玲奈は思い出した。
首輪の事を。
玲奈は珠理奈から貰った石を見た。その時だった。
「それを渡して。」
後頭部に冷たいものが当たる。銃口だ!
後ろにいるのは高橋みなみか。
既に抵抗する気のない玲奈はみなみに石とスイッチを渡した。
「ねぇ。」
みなみの声だ
「玲奈ちゃん、今どんな気持ち?ずっと殺したがってた珠理奈が死んで嬉しい?」
いつものみなみとは違う、落ち着いた喋り方だ。
玲奈は殺されるのを覚悟で素直に答えた。
「私はずっと心のどこかで珠理奈が羨ましかった。その気持ちをこのゲームで爆発させてしまいました。でも珠理奈が死んでも心など晴れなかった。私は無意味な事をしていました。」
みなみは黙って聞いていた。
「珠理奈は死ぬ前に言ったんです。私達ずっとSKE48のダブルエースだよって。ダブルエース…それで良かったのにどうして私は自分の立場が納得行かなかったんだろう。」
「後悔したんだね?」
みなみは問った。
「……………………はい。」
「人を呪わば穴二つ。珠理奈を憎んだから玲奈ちゃんは後悔した。私もあーみんもらぶたんも才加も嫌な思いをした。」
…………玲奈は何も答えなかった。
「だから人を憎んじゃいけないの。だから私も玲奈ちゃんを殺さないし憎んだりしない。」
みなみは銃口を玲奈の頭から離した。
「こっちへ来て。みんな集まってる。」
みなみは敦子については触れなかった。そんな事をしても、敦子はもう二度と生き返らないのだから。
【残り5人】
[第98話]
「キャアアアアアア!」
多田愛佳は松井玲奈の顔を見ると叫んだ。
「もう大丈夫。玲奈ちゃんは危険な子じゃない。」
みなみは愛佳は諭した。
怯えるといけないので日本刀は置いてきてもらった。
もちろん、もう使わないが。
「そんなの信じられない!だってあれだけ殺して…」
「うるさい。もう終わったんだ。」
みなみは愛佳を睨んだ。
「あの…珠理奈さんは…」
今度は亜美だ。
「珠理奈ちゃんは死んだ。でも才加の爆弾のせいじゃない。玲奈ちゃんから受けた傷で既にもう致命傷を負ってたから。」
「そんな…珠理奈ちゃん…」
また愛佳は泣き出した。
「玲奈ちゃんも軽傷とは言え怪我をしてる。さっ玲奈ちゃん。あの話を。」
みなみは玲奈を見た。
「はい、これは珠理奈から預かりました。」
珠理奈の石とスイッチを制服のポケットから出した。(一回みなみは奪ったが説明させる為に再度玲奈に渡した。)
「珠理奈はこの石を首輪の穴にはめると言ってました。なので石を出して確認しました。」
玲奈はピンク、緑、青、赤、黄色の石を袋からだした。
「よくみたら、この石。一つ一つに文字が書いてあったんです。」
玲奈は愛佳と亜美に石をよく見せた。
「本当だ!ピンクはA、緑はK、青にはBって書いてある!薄くだけど…」
「赤は4、黄色は8って書いてありますよ!」
二人は驚いた。
玲奈は更に続けた。
「私は今まで首輪を集めていました。理由は最初に殺した人の首輪を見たら文字が書いてあったので気になったからでした。多分、集めるとボーナスとかがあるのだと。」
これは斬首で殺す玲奈だから気づいたのだろう。
「そして法則に気づきました。A、K、B、4。ここまで集めれば何になるかは簡単にわかりますよね?ですが、肝心な8はどれだけ探してもみつかりませんでした。」
だから8がどうとかボーナスがどうとか言ってたのか。
「そういえば自分の首輪の文字を確認していないと気付いた私は民家で自分の首輪の数字を確認しました。するとなんと追い求めていた8でした。」
民家という言葉に愛佳はドキッとした。
「私はそれぞれ首輪と数字を見て法則を導き出しました。簡単です。グループに入った次期です。1期、1.5期がA。(つまり篠田麻里子はAだ。)2期がK。3期がB。それ以降は全て4。そしてSKE48の私と珠理奈のみが8です。」
玲奈はさらに続けた。
【残り5人】
[第99話]
松井玲奈は首輪の説明をしている。
「だから私は珠理奈を殺す以外に首輪も欲しかった。石についてはさっきのは知ったかぶりです。珠理奈に聞いて初めて知りました。」
「ほぅほぅ…」
多田愛佳は関心した。
「ちなみにその黄色い石はさっき珠理奈の首輪にはめてみました。」
「えっ?」
愛佳と前田亜美は同時に言った。
「ですが…はまりませんでした。死んでいる人には無意味な様です…。」
つまり玲奈が首輪を集めた意味は0だったのだ。
「ところで…これをはめるとどうなるの?」
愛佳は直球に聞いた。
「わかりません。」
「えっ?」
「可能性としてはやはり優勝した時のボーナス、あとは禁止エリアの走行可能証。」
どちらもいらない…
「もしくは…………………………首輪が外れてゲーム終了…」
「それがいい!てかそれ以外はいらない!」
愛佳は今さっきまで玲奈を怖がっていたのにいつの間にか普通に会話していた。
「それに賭けるしかないですよね!」
亜美も言った。
「ですが…」
玲奈はまだ続けた。
「トラップで首輪爆発。この可能性もあります。」
愛佳と亜美は怖くなった…
「それでも、やるしかない。そうでしょ?」
みなみはやっと発言した。
「うん…それしかないよ!」
「死ぬときはみんな一緒ですね!」
「全員賛成でよろしいですか?」
「あっ…愛佳は才加を見た。辛うじて生きているがとても喋れる状態ではない。」
「大丈夫。才加なら。」
みなみは言った。
「では…」
玲奈はそれぞれ首輪に書かれた文字の石を支給した。
カチャッ
カチャッ
カチャッ
カチャッ
4人は早速セットした。
「秋元さん…」
カチャッ
愛佳が才加の首輪に緑の石をセットした。
……………………何も起きない。
「まだスイッチを押してません。」
「おいこら!」
ついつい愛佳とみなみはツッコミをいれてしまった。
「それではいきます…。」
【残り5人】
[第100話]
「まさかやってくれるとはな…」
「可能性は0%じゃないんですか?」
「ほぼだ。ほ!ぼ!つまり1%くらいは可能性があった訳だ。」
「あり得ない…」
分校は大騒ぎだった。
「秋元さん?」
「私一人で伝えてくる。護衛もいらない。」
中年の眼鏡をかけた男はそう言った。
石をはめた5人はスイッチを押した。
全員で目を閉じた時だった…
……………………ウィーンパカッ。
……………………
……………………
「首輪が…」
「取れた!」
「やったー!」
「良かった…」
5人の首輪は見事に外れた。
彼女達を縛る物はもう何もないのだ。
「ありがとう…」
ずっと動かなかった秋元才加が声を出した。
と同時に才加の体の力が抜けていた。
「秋元さん!」
「うそ?なんで?私達助かったんだよ?」
亜美と愛佳は才加が息絶えた事に絶望した。
パチパチパチパチ
近くから拍手が聞こえる。
誰だ?
「いやーおめでたい。」
それは放送を流していた男の声…そうこの殺人ゲームを仕掛けてきた秋元康だった。
みなみは拳銃を構えた。
「おいおいたかみな止めてくれよ!君たちは勝ったんだ。」
秋元は言った。
「何が勝ったんだ…だよ!こんな目に合わせて!」
愛佳は初めて秋元にこんな口を聞いた。
「まぁ聞きなさい。そもそもな、このプログラムは政府と芸能界のお偉いさんが決めた事なんだ。」
4人は黙って聞いていた。
「今その辺に歩いてるアンちゃんネエちゃんが普通に芸能人顔してる。例えば…雑誌に一回載っただけとかでも。だから芸能界をお掃除する事にしようって政界の一人がいい始めた。」
掃除ってそんな物の様に…
4人は信じられなかった。
「そこでほら、うちは大所帯だろ?だから色々と目をつけられてね。本当に使える子以外は解雇しろとか…だけどうちはこの大所帯が売りだから無理ですと断った。しかしな…
話題になるしどうしてもプログラムをうちでやらせてほしいと政界や芸能界から依頼がすごくてな…積まれた金も半端じゃない。桁が億を超えたからな。」
秋元は笑った。
「それに圧力もかかった。だから仕方なく引き受けたって訳だ。ちなみにみんなこれをギャンブルに使ってる。億単位のギャンブルはすごいぞ~」
秋元は気持ち悪い笑みを浮かべた。
【ゲーム終了】
優勝者
秋元才加(後に死亡)
多田愛佳
高橋みなみ
松井玲奈
前田亜美
[第101話]
「でもなんで?優勝するのは一人って最初に言ったのに私達は5人生き残った!」
松井玲奈が声をあげた。
「まぁ待て。それも説明する。」
玲奈は黙った。
「このプログラムは日本では初めて行われた。だから未知数なことが多くてな。私と戸賀崎くんは最初は反対した。だが融通が聞かなくて…だがどうにか一つの条件を突き付けることができた。逃げ道を作ることだ。
お前達はものすごく運がいい。お前達の首輪の解除方法は正しかった。だから首輪が外れた。もし間違ってたらドガーンだったからな。」
「間違いって?」
愛佳だ。
「この首輪解除ストーン&スイッチの正解はこれだけ。A、K、B、4、8の首輪をした者5人だけが生き残り石をセットしボタンを押す。他に参加者が残っていた場合、石をはめてスイッチを押したらプレーヤーの首輪は爆発する設定になっていた。」
「うそ…」
愛佳は思わず口を抑えた。
「しかも8の首輪は松井珠理奈と松井玲奈のみ。どちらかが死んだらはいおしまい。一人になるまで殺し合わなければならなかった。それに珠理奈は勘がよかったがこんな状況であんな武器が出たらもし篠田麻里子や大島優子なら間違いなく捨てただろうな。」
確かに。
明らかに武器じゃないしゲームに乗る人間なら間違いなく捨てただろう。
「運営も大パニックだよ。こんな事あり得ないって。もしこの逃げ道に賭けたお偉いさんがいるなら100億は下らない額が手に入っただろうね~」
「100億…」
玲奈は秋元を睨んでいる。
「まっそういうわけだ。金とかは後で送るから船で帰っていいぞ!おめでとう。優勝者さんたち。」
そう言うと秋元は足早に去ろうとした。
「待って。」
みなみは秋元に銃口を突きつけたままだった。
「私達はそんな下らないことの為に殺し合いさせられたの?秋元先生は自分が今まで育てた子達が死んだ事に何も思わないの?」
みなみは疑問だった。
オーディションに合格し何年も一緒にやってきたメンバーが死んだ事に涙すら流さない秋元に。
秋元は背中を向けたまま言った。
「ははは…たかみな。これはもう決まってしまった事だ。私がどうこう言える立場じゃない。君たちはお偉いさんの暇つぶしに利用された。それだけだよ。」
暇つぶし?そんな事に敦子やみんなは…
どうしても許せなかった。
その時、みなみは銃をいつの間にか無くなっていた。
バンッ
と言う音がした。
[第102話]
秋元康は後頭部を撃たれて倒れた。
一体何が?
高橋みなみが隣を見ると驚愕した。
なんと前田亜美が残り一発しかなかった拳銃を秋元に向けて放っていたのだ。
「あーみんどうして?」
みなみは驚いた。
「こいつだけは許せません!こんな暇つぶしの為に私達を売ってあっちゃんやこもりんやみんなは…!」
亜美は見事に最後の一発を命中させた。
きっと敦子が生きていたら同じ事をしただろう…これで少しは恩返しができたかな。と亜美は思った。
秋元は即死だった。
秋元が死んでも4人は運営には何も言われず、船に乗りそれぞれの家路についた。
ゲームについては大々的にニュースで取り上げられ世間は一時パニックになった。
だがそんな事はすぐに忘れられた。
AKB48はラストシングルを発売した。タイトルは「桜の花びらたち~forever~」
アルバムに現在のメンバーで再録するという名目でゲームが始まる少し前に最近チームに加入したメンバーは収録していた。彼女達のインディーズデビューシングルの新録だった。
既に収録してあるとはこういうことか。
みなみはテレビを見て思った。
ラストシングルだが再録の上に当然握手会などないこの曲は対して売れなかった。( 一応ファンの追悼運動によりオリコン1位にはなったが)
生活補償は受けたみなみだったが芸能界は引退した。
あんなところはもうまっぴらごめんだ。
そう思ったからだった。
前田亜美と多田愛佳はソロデビューしたがそこまでテレビにはでていなかった。
芸能界の補償といっても所詮はこんなものか。
AKB48は無くなったがSKE48は無くならなかった。
松井玲奈が当然センターだと思ったが玲奈は突然卒業宣言をした。
その後5期SKE48研究生オーディションを受けた玲奈は研究生として頑張っているそうだ。
きっと玲奈なりに何か考えがあるのだろう。
みなみはそう思った。
それにしても平和だ。
だがこんなに平和な事を喜びに感じるみなみは自分は少し変かな?と思った。
そして何となく空を見上げた。
虹が出ている。
さっき降ったにわか雨のせいだろう。
みなみはAKB48のメンバーの顔を一人一人思い出した。
「たかみな!」
誰かに呼ばれた気がしてみなみは後ろを振り返った。
しかし、誰もいない。
気のせいか。
「敦子…みんな…ずっと見守っててね。」
みなみは独り言を言った後に、しばし涙が止まらなかった。
【fin.】
[エピローグ]
秋元才加は松井玲奈が松井珠理奈を殺そうとするのを見ていられなかった。
2箇所も撃たれて意識が遠退き、声はよく聞こえなかったが玲奈は珠理奈にとどめを刺そうとしていた。
もしここで珠理奈が死んだら勝ち目はない。
玲奈が優勝する。
才加はそう思い増田有華から預かった爆弾を見た。
雨が降っているがこれしか方法はない。
よく爆弾を見たが点火する場所がない。
そうか、あの大砲みたいのに入れて使うものだからか。
ならば仕方ない。走って玲奈がいる直前に火をつけて爆発させるしか。
そうすれば玲奈は確実に死ぬだろう。
また、自分も…
珠理奈もあの様子だと長くはなさそうだができれば生き延びてほしい。
才加は意を決して走った。
だが既に体のバランスがおかしくなっていた才加は珠理奈の近くで点火してしまった。
玲奈もかなり近くにいたが位置的には珠理奈のほうがダメージは大きかっただろう。
私はなんて最低なミスを犯したんだ…
それでも才加は本当に間一髪のところで生きていた。
喉が熱くてしゃべれないし目もほとんど見えないが…
高橋みなみが松井玲奈を連れてきて前田亜美と多田愛佳に何かを話していた。
玲奈はあの日本刀を持っていなかった。
カチャッ
愛佳か?私の首元らへんに何かの音がした。
ウィーン
また何かの音だ。
なんだろう…なんだか首が軽くなったような…
それにしても眠い…
気づくと才加はAKBシアターの楽屋にいた。
かながふざけている。全くいつもいつも。
めーたん相変わらず派手な下着だな…
あっなちのんは漫才の練習か。
そろそろ笑えるくらいになってよー。
真奈美はまたダンスをちゃんとやってない!もう…
さすが梅ちゃんは大人だな。見てて落ち着く。
明日香は本当にいい子だな。はいはい、えれぴょんもね。
近野怒れてる意味わかってるのか?
なっつみー。忘れてないからそんなしょげないの。
ともーみは相変わらず甘えん坊だなぁ。
有華!何個たこ焼き買ってるんだ?
佐江、いつもサポートしてくれてありがとう。
優子。信頼してるからな。
みんな本当にいつも
「ありがとう…」
……………………
「秋元さん!嫌です!」
「死んじゃだめ!」
前田亜美と多田愛佳の言葉は才加には届かなかったが才加はこれからもずっとAKB48でいるだろう。
そう、いつまでも。
AKB48バトルロワイヤル 11巻
[第95話]
カンカンカン!
激しく刃と刃がぶつかり合う。
戦国時代とかってこんな感じだったのかな?松井珠理奈は思った。
「ほらほら!そんなんじゃ私に勝てないよ!」
松井玲奈は満面の笑みだ。
珠理奈を恨んでるような事を言っておきながら闘いを楽しんでいるように見えた。
カンカン!
「玲奈!私、何か玲奈にしたかな?」
珠理奈はそう言いながら刀を振り下ろした。
カン!
玲奈はそれを受け止めた。
「恨み?私はあなたの立場が欲しい!ただそれだけ!」
受け止めた刃を押し返した。
カンカン!カンカンカン!
いい勝負だ…。
でも、もし珠理奈が負けたら…次は私だ…
それに私だけじゃない。みなみやあーみんやらぶたんも…
あっちゃんと小森は私が来る前に死んでしまったようだ。
くそ…つまり後はここにいる6人だけか!
珠理奈…勝ってくれ!
その時だ。
「あぁ!」
珠理奈の声だ!
才加はしっかり前を見た。
珠理奈が左腕から血を流している。
「大丈夫?珠理奈?」
玲奈は蔑んだ目で珠理奈を見た。
「こんなんじゃ終われない!ハァ!」
珠理奈が玲奈に刀を振る。
玲奈はそれを受け止めた。
「そんなしょぼい刀じゃ…私には勝てないんだよ!」
ザシュッ
玲奈は刀を打ち返し珠理奈の腹を切った。
「あぁ!」
珠理奈は仰向けで倒れた。
そんな…
玲奈が珠理奈の首筋に剣先をつけた。
「珠理奈。おしまいだね。あんたはやっぱ実力ではアタシには勝てない。」
玲奈が剣を振りあげた。
バンッ
才加が玲奈の右手を撃った。
やはり私がやるしかないか…
「邪魔をするな!」
バンッバンッ
玲奈は銃を腰から出し才加を撃った。才加は玲奈が銃を持っているとは知らず油断した。
「キャア!」
弾は才加の腰と左肩に命中した。
まさかそんな…
「珠理奈。私あんたが羨ましかった。だって若くてダンスが上手いだけでエースにしてもらえるんだもん。」
玲奈は銃をしまい日本刀を左手で持った。
「私のほうが人気なのに!なんであんたが?それでも私は我慢した。選挙で組織票で負けようと永遠の二番手と言われようと。」
珠理奈はじっと玲奈を見た。
「だけどやっぱり実力は私のが上。今この瞬間決まったわね。さよなら珠理奈。悔しい?」
すると玲奈は珠理奈から衝撃の言葉を浴びせられた。
【残り6人】
[第96話]
「私…エースなんかじゃなくていい。」
……………………………………………………………………………………はぁ?
玲奈は意味がわからなかった。
「何それ?意味わかって言ってんの?」
「うん…」
珠理奈は続けた。
「むしろ私はエースなんて…器じゃないよ…。だって…玲奈を止めることができなかったし…玲奈がエースやりたいならいいよ…秋元先生に相談しよう…」
「なに死にかけだからって適当な事言ってんのよ!そんな訳ないじゃない!誰だってエースが」
「適当なんかじゃない!」
珠理奈は玲奈の目をしっかり見据えていた。
「私は誰かの為にできる事が一つあればいい…たった一人のお客さんが「今日の珠理奈よかったね」ってそう言ってくれればそれでいい…!」
玲奈は黙った。
「玲奈だってそう…玲奈は玲奈のポジションがある…玲奈にしかできないパフォーマンスがある…私と玲奈は違う…玲奈は私なんかより全然すごいよ…」
珠理奈は口の端から血を流しながら言った。
「そんなこと…今更言わないでよ…」
玲奈は唇を噛み締めた。
「私バカみたいじゃない!珠理奈の事恨んで沢山人殺して!私のやってた事ってなんだったの?私の事恨みなさいよ!憎みなさいよ!」
玲奈は珠理奈の首に更に強く剣先をあてた。
「そんなこと…出来ない…だって…」
「玲奈の事大好きだもん。」
その時だった。
才加は最後の力を振り絞って爆弾に火をつけ突進した。
「珠理奈!みんな!下がれ!」
ドガーーン!!
「くっ…」
玲奈はなんとか力を振り絞り立ち上がった。
「珠理奈…珠理奈?」
玲奈は倒れている珠理奈を発見した。
「珠理奈!」
「玲奈…」
珠理奈はまだ生きていた。
「珠理奈!しっかりしてよ!まだ話は終わってない!」
玲奈は倒れている珠理奈を抱き起こした。
その顔は悪魔の様な玲奈ではなかった。
バトルロワイアルに参加する前の優しい玲奈の顔だった。
「良かった…玲奈…戻ったんだ…」
「戻ったんだじゃないよ!なんであんたっていつもそうなの?自分が死にそうなくせに他人の心配ばっかりして!」
「玲奈…」
珠理奈はポケットから石とスイッチを取り出した。
「これ…やっぱり首輪にはめるんだと思う。玲奈が持ってて…」
そういうと珠理奈は玲奈にそれを手渡した。
「私達ずっと……SKE48のダブルエースだから…ね。」
それだけ言うと珠理奈は静かに眠った。
【残り5人】
[第97話]
すごい爆発だった…
高橋みなみと前田亜美と多田愛佳は爆風の中に消えた3人を探した。
「……………。」
みなみは前田敦子を失った悲しみでもう何も信用できなくなった。
もう誰が死のうが関係なかった。
「秋元さん!」
声をあげたのは亜美だった。
秋元才加が倒れている。全身火傷を負い酷い状況だ。
「いや…死んじゃいや…」
愛佳は次々に人が死ぬ状況に胸が苦しくなっていた。
みなみは才加を見たがすぐに視線を変えた。
倒れている珠理奈が玲奈と何か話している。
みなみは爆風の中に向かった。
玲奈はどうしたらいいかわからなかった。
なぜここまでされて珠理奈は…
既に亡骸となった珠理奈の顔を見た。
笑っている。
「ダブルエースか…はっ!」
玲奈は思い出した。
首輪の事を。
玲奈は珠理奈から貰った石を見た。その時だった。
「それを渡して。」
後頭部に冷たいものが当たる。銃口だ!
後ろにいるのは高橋みなみか。
既に抵抗する気のない玲奈はみなみに石とスイッチを渡した。
「ねぇ。」
みなみの声だ
「玲奈ちゃん、今どんな気持ち?ずっと殺したがってた珠理奈が死んで嬉しい?」
いつものみなみとは違う、落ち着いた喋り方だ。
玲奈は殺されるのを覚悟で素直に答えた。
「私はずっと心のどこかで珠理奈が羨ましかった。その気持ちをこのゲームで爆発させてしまいました。でも珠理奈が死んでも心など晴れなかった。私は無意味な事をしていました。」
みなみは黙って聞いていた。
「珠理奈は死ぬ前に言ったんです。私達ずっとSKE48のダブルエースだよって。ダブルエース…それで良かったのにどうして私は自分の立場が納得行かなかったんだろう。」
「後悔したんだね?」
みなみは問った。
「……………………はい。」
「人を呪わば穴二つ。珠理奈を憎んだから玲奈ちゃんは後悔した。私もあーみんもらぶたんも才加も嫌な思いをした。」
…………玲奈は何も答えなかった。
「だから人を憎んじゃいけないの。だから私も玲奈ちゃんを殺さないし憎んだりしない。」
みなみは銃口を玲奈の頭から離した。
「こっちへ来て。みんな集まってる。」
みなみは敦子については触れなかった。そんな事をしても、敦子はもう二度と生き返らないのだから。
【残り5人】
[第98話]
「キャアアアアアア!」
多田愛佳は松井玲奈の顔を見ると叫んだ。
「もう大丈夫。玲奈ちゃんは危険な子じゃない。」
みなみは愛佳は諭した。
怯えるといけないので日本刀は置いてきてもらった。
もちろん、もう使わないが。
「そんなの信じられない!だってあれだけ殺して…」
「うるさい。もう終わったんだ。」
みなみは愛佳を睨んだ。
「あの…珠理奈さんは…」
今度は亜美だ。
「珠理奈ちゃんは死んだ。でも才加の爆弾のせいじゃない。玲奈ちゃんから受けた傷で既にもう致命傷を負ってたから。」
「そんな…珠理奈ちゃん…」
また愛佳は泣き出した。
「玲奈ちゃんも軽傷とは言え怪我をしてる。さっ玲奈ちゃん。あの話を。」
みなみは玲奈を見た。
「はい、これは珠理奈から預かりました。」
珠理奈の石とスイッチを制服のポケットから出した。(一回みなみは奪ったが説明させる為に再度玲奈に渡した。)
「珠理奈はこの石を首輪の穴にはめると言ってました。なので石を出して確認しました。」
玲奈はピンク、緑、青、赤、黄色の石を袋からだした。
「よくみたら、この石。一つ一つに文字が書いてあったんです。」
玲奈は愛佳と亜美に石をよく見せた。
「本当だ!ピンクはA、緑はK、青にはBって書いてある!薄くだけど…」
「赤は4、黄色は8って書いてありますよ!」
二人は驚いた。
玲奈は更に続けた。
「私は今まで首輪を集めていました。理由は最初に殺した人の首輪を見たら文字が書いてあったので気になったからでした。多分、集めるとボーナスとかがあるのだと。」
これは斬首で殺す玲奈だから気づいたのだろう。
「そして法則に気づきました。A、K、B、4。ここまで集めれば何になるかは簡単にわかりますよね?ですが、肝心な8はどれだけ探してもみつかりませんでした。」
だから8がどうとかボーナスがどうとか言ってたのか。
「そういえば自分の首輪の文字を確認していないと気付いた私は民家で自分の首輪の数字を確認しました。するとなんと追い求めていた8でした。」
民家という言葉に愛佳はドキッとした。
「私はそれぞれ首輪と数字を見て法則を導き出しました。簡単です。グループに入った次期です。1期、1.5期がA。(つまり篠田麻里子はAだ。)2期がK。3期がB。それ以降は全て4。そしてSKE48の私と珠理奈のみが8です。」
玲奈はさらに続けた。
【残り5人】
[第99話]
松井玲奈は首輪の説明をしている。
「だから私は珠理奈を殺す以外に首輪も欲しかった。石についてはさっきのは知ったかぶりです。珠理奈に聞いて初めて知りました。」
「ほぅほぅ…」
多田愛佳は関心した。
「ちなみにその黄色い石はさっき珠理奈の首輪にはめてみました。」
「えっ?」
愛佳と前田亜美は同時に言った。
「ですが…はまりませんでした。死んでいる人には無意味な様です…。」
つまり玲奈が首輪を集めた意味は0だったのだ。
「ところで…これをはめるとどうなるの?」
愛佳は直球に聞いた。
「わかりません。」
「えっ?」
「可能性としてはやはり優勝した時のボーナス、あとは禁止エリアの走行可能証。」
どちらもいらない…
「もしくは…………………………首輪が外れてゲーム終了…」
「それがいい!てかそれ以外はいらない!」
愛佳は今さっきまで玲奈を怖がっていたのにいつの間にか普通に会話していた。
「それに賭けるしかないですよね!」
亜美も言った。
「ですが…」
玲奈はまだ続けた。
「トラップで首輪爆発。この可能性もあります。」
愛佳と亜美は怖くなった…
「それでも、やるしかない。そうでしょ?」
みなみはやっと発言した。
「うん…それしかないよ!」
「死ぬときはみんな一緒ですね!」
「全員賛成でよろしいですか?」
「あっ…愛佳は才加を見た。辛うじて生きているがとても喋れる状態ではない。」
「大丈夫。才加なら。」
みなみは言った。
「では…」
玲奈はそれぞれ首輪に書かれた文字の石を支給した。
カチャッ
カチャッ
カチャッ
カチャッ
4人は早速セットした。
「秋元さん…」
カチャッ
愛佳が才加の首輪に緑の石をセットした。
……………………何も起きない。
「まだスイッチを押してません。」
「おいこら!」
ついつい愛佳とみなみはツッコミをいれてしまった。
「それではいきます…。」
【残り5人】
[第100話]
「まさかやってくれるとはな…」
「可能性は0%じゃないんですか?」
「ほぼだ。ほ!ぼ!つまり1%くらいは可能性があった訳だ。」
「あり得ない…」
分校は大騒ぎだった。
「秋元さん?」
「私一人で伝えてくる。護衛もいらない。」
中年の眼鏡をかけた男はそう言った。
石をはめた5人はスイッチを押した。
全員で目を閉じた時だった…
……………………ウィーンパカッ。
……………………
……………………
「首輪が…」
「取れた!」
「やったー!」
「良かった…」
5人の首輪は見事に外れた。
彼女達を縛る物はもう何もないのだ。
「ありがとう…」
ずっと動かなかった秋元才加が声を出した。
と同時に才加の体の力が抜けていた。
「秋元さん!」
「うそ?なんで?私達助かったんだよ?」
亜美と愛佳は才加が息絶えた事に絶望した。
パチパチパチパチ
近くから拍手が聞こえる。
誰だ?
「いやーおめでたい。」
それは放送を流していた男の声…そうこの殺人ゲームを仕掛けてきた秋元康だった。
みなみは拳銃を構えた。
「おいおいたかみな止めてくれよ!君たちは勝ったんだ。」
秋元は言った。
「何が勝ったんだ…だよ!こんな目に合わせて!」
愛佳は初めて秋元にこんな口を聞いた。
「まぁ聞きなさい。そもそもな、このプログラムは政府と芸能界のお偉いさんが決めた事なんだ。」
4人は黙って聞いていた。
「今その辺に歩いてるアンちゃんネエちゃんが普通に芸能人顔してる。例えば…雑誌に一回載っただけとかでも。だから芸能界をお掃除する事にしようって政界の一人がいい始めた。」
掃除ってそんな物の様に…
4人は信じられなかった。
「そこでほら、うちは大所帯だろ?だから色々と目をつけられてね。本当に使える子以外は解雇しろとか…だけどうちはこの大所帯が売りだから無理ですと断った。しかしな…
話題になるしどうしてもプログラムをうちでやらせてほしいと政界や芸能界から依頼がすごくてな…積まれた金も半端じゃない。桁が億を超えたからな。」
秋元は笑った。
「それに圧力もかかった。だから仕方なく引き受けたって訳だ。ちなみにみんなこれをギャンブルに使ってる。億単位のギャンブルはすごいぞ~」
秋元は気持ち悪い笑みを浮かべた。
【ゲーム終了】
優勝者
秋元才加(後に死亡)
多田愛佳
高橋みなみ
松井玲奈
前田亜美
[第101話]
「でもなんで?優勝するのは一人って最初に言ったのに私達は5人生き残った!」
松井玲奈が声をあげた。
「まぁ待て。それも説明する。」
玲奈は黙った。
「このプログラムは日本では初めて行われた。だから未知数なことが多くてな。私と戸賀崎くんは最初は反対した。だが融通が聞かなくて…だがどうにか一つの条件を突き付けることができた。逃げ道を作ることだ。
お前達はものすごく運がいい。お前達の首輪の解除方法は正しかった。だから首輪が外れた。もし間違ってたらドガーンだったからな。」
「間違いって?」
愛佳だ。
「この首輪解除ストーン&スイッチの正解はこれだけ。A、K、B、4、8の首輪をした者5人だけが生き残り石をセットしボタンを押す。他に参加者が残っていた場合、石をはめてスイッチを押したらプレーヤーの首輪は爆発する設定になっていた。」
「うそ…」
愛佳は思わず口を抑えた。
「しかも8の首輪は松井珠理奈と松井玲奈のみ。どちらかが死んだらはいおしまい。一人になるまで殺し合わなければならなかった。それに珠理奈は勘がよかったがこんな状況であんな武器が出たらもし篠田麻里子や大島優子なら間違いなく捨てただろうな。」
確かに。
明らかに武器じゃないしゲームに乗る人間なら間違いなく捨てただろう。
「運営も大パニックだよ。こんな事あり得ないって。もしこの逃げ道に賭けたお偉いさんがいるなら100億は下らない額が手に入っただろうね~」
「100億…」
玲奈は秋元を睨んでいる。
「まっそういうわけだ。金とかは後で送るから船で帰っていいぞ!おめでとう。優勝者さんたち。」
そう言うと秋元は足早に去ろうとした。
「待って。」
みなみは秋元に銃口を突きつけたままだった。
「私達はそんな下らないことの為に殺し合いさせられたの?秋元先生は自分が今まで育てた子達が死んだ事に何も思わないの?」
みなみは疑問だった。
オーディションに合格し何年も一緒にやってきたメンバーが死んだ事に涙すら流さない秋元に。
秋元は背中を向けたまま言った。
「ははは…たかみな。これはもう決まってしまった事だ。私がどうこう言える立場じゃない。君たちはお偉いさんの暇つぶしに利用された。それだけだよ。」
暇つぶし?そんな事に敦子やみんなは…
どうしても許せなかった。
その時、みなみは銃をいつの間にか無くなっていた。
バンッ
と言う音がした。
[第102話]
秋元康は後頭部を撃たれて倒れた。
一体何が?
高橋みなみが隣を見ると驚愕した。
なんと前田亜美が残り一発しかなかった拳銃を秋元に向けて放っていたのだ。
「あーみんどうして?」
みなみは驚いた。
「こいつだけは許せません!こんな暇つぶしの為に私達を売ってあっちゃんやこもりんやみんなは…!」
亜美は見事に最後の一発を命中させた。
きっと敦子が生きていたら同じ事をしただろう…これで少しは恩返しができたかな。と亜美は思った。
秋元は即死だった。
秋元が死んでも4人は運営には何も言われず、船に乗りそれぞれの家路についた。
ゲームについては大々的にニュースで取り上げられ世間は一時パニックになった。
だがそんな事はすぐに忘れられた。
AKB48はラストシングルを発売した。タイトルは「桜の花びらたち~forever~」
アルバムに現在のメンバーで再録するという名目でゲームが始まる少し前に最近チームに加入したメンバーは収録していた。彼女達のインディーズデビューシングルの新録だった。
既に収録してあるとはこういうことか。
みなみはテレビを見て思った。
ラストシングルだが再録の上に当然握手会などないこの曲は対して売れなかった。( 一応ファンの追悼運動によりオリコン1位にはなったが)
生活補償は受けたみなみだったが芸能界は引退した。
あんなところはもうまっぴらごめんだ。
そう思ったからだった。
前田亜美と多田愛佳はソロデビューしたがそこまでテレビにはでていなかった。
芸能界の補償といっても所詮はこんなものか。
AKB48は無くなったがSKE48は無くならなかった。
松井玲奈が当然センターだと思ったが玲奈は突然卒業宣言をした。
その後5期SKE48研究生オーディションを受けた玲奈は研究生として頑張っているそうだ。
きっと玲奈なりに何か考えがあるのだろう。
みなみはそう思った。
それにしても平和だ。
だがこんなに平和な事を喜びに感じるみなみは自分は少し変かな?と思った。
そして何となく空を見上げた。
虹が出ている。
さっき降ったにわか雨のせいだろう。
みなみはAKB48のメンバーの顔を一人一人思い出した。
「たかみな!」
誰かに呼ばれた気がしてみなみは後ろを振り返った。
しかし、誰もいない。
気のせいか。
「敦子…みんな…ずっと見守っててね。」
みなみは独り言を言った後に、しばし涙が止まらなかった。
【fin.】
[エピローグ]
秋元才加は松井玲奈が松井珠理奈を殺そうとするのを見ていられなかった。
2箇所も撃たれて意識が遠退き、声はよく聞こえなかったが玲奈は珠理奈にとどめを刺そうとしていた。
もしここで珠理奈が死んだら勝ち目はない。
玲奈が優勝する。
才加はそう思い増田有華から預かった爆弾を見た。
雨が降っているがこれしか方法はない。
よく爆弾を見たが点火する場所がない。
そうか、あの大砲みたいのに入れて使うものだからか。
ならば仕方ない。走って玲奈がいる直前に火をつけて爆発させるしか。
そうすれば玲奈は確実に死ぬだろう。
また、自分も…
珠理奈もあの様子だと長くはなさそうだができれば生き延びてほしい。
才加は意を決して走った。
だが既に体のバランスがおかしくなっていた才加は珠理奈の近くで点火してしまった。
玲奈もかなり近くにいたが位置的には珠理奈のほうがダメージは大きかっただろう。
私はなんて最低なミスを犯したんだ…
それでも才加は本当に間一髪のところで生きていた。
喉が熱くてしゃべれないし目もほとんど見えないが…
高橋みなみが松井玲奈を連れてきて前田亜美と多田愛佳に何かを話していた。
玲奈はあの日本刀を持っていなかった。
カチャッ
愛佳か?私の首元らへんに何かの音がした。
ウィーン
また何かの音だ。
なんだろう…なんだか首が軽くなったような…
それにしても眠い…
気づくと才加はAKBシアターの楽屋にいた。
かながふざけている。全くいつもいつも。
めーたん相変わらず派手な下着だな…
あっなちのんは漫才の練習か。
そろそろ笑えるくらいになってよー。
真奈美はまたダンスをちゃんとやってない!もう…
さすが梅ちゃんは大人だな。見てて落ち着く。
明日香は本当にいい子だな。はいはい、えれぴょんもね。
近野怒れてる意味わかってるのか?
なっつみー。忘れてないからそんなしょげないの。
ともーみは相変わらず甘えん坊だなぁ。
有華!何個たこ焼き買ってるんだ?
佐江、いつもサポートしてくれてありがとう。
優子。信頼してるからな。
みんな本当にいつも
「ありがとう…」
……………………
「秋元さん!嫌です!」
「死んじゃだめ!」
前田亜美と多田愛佳の言葉は才加には届かなかったが才加はこれからもずっとAKB48でいるだろう。
そう、いつまでも。