AKB48解析研究所

AKB48時事ニュースを研究して解析します。

AKB48バトルロワイヤル 11巻

2010年12月03日 20時24分40秒 | 研究解析
(この作品は私ブログ主ではなく、神島氏の作品です)


AKB48バトルロワイヤル 11巻


[第95話]

カンカンカン!

激しく刃と刃がぶつかり合う。
戦国時代とかってこんな感じだったのかな?松井珠理奈は思った。
「ほらほら!そんなんじゃ私に勝てないよ!」
松井玲奈は満面の笑みだ。
珠理奈を恨んでるような事を言っておきながら闘いを楽しんでいるように見えた。
カンカン!
「玲奈!私、何か玲奈にしたかな?」
珠理奈はそう言いながら刀を振り下ろした。
カン!
玲奈はそれを受け止めた。
「恨み?私はあなたの立場が欲しい!ただそれだけ!」
受け止めた刃を押し返した。
カンカン!カンカンカン!

いい勝負だ…。
でも、もし珠理奈が負けたら…次は私だ…
それに私だけじゃない。みなみやあーみんやらぶたんも…
あっちゃんと小森は私が来る前に死んでしまったようだ。
くそ…つまり後はここにいる6人だけか!
珠理奈…勝ってくれ!
その時だ。
「あぁ!」
珠理奈の声だ!
才加はしっかり前を見た。
珠理奈が左腕から血を流している。
「大丈夫?珠理奈?」
玲奈は蔑んだ目で珠理奈を見た。
「こんなんじゃ終われない!ハァ!」
珠理奈が玲奈に刀を振る。
玲奈はそれを受け止めた。
「そんなしょぼい刀じゃ…私には勝てないんだよ!」
ザシュッ
玲奈は刀を打ち返し珠理奈の腹を切った。
「あぁ!」
珠理奈は仰向けで倒れた。
そんな…
玲奈が珠理奈の首筋に剣先をつけた。
「珠理奈。おしまいだね。あんたはやっぱ実力ではアタシには勝てない。」
玲奈が剣を振りあげた。
バンッ
才加が玲奈の右手を撃った。
やはり私がやるしかないか…

「邪魔をするな!」
バンッバンッ
玲奈は銃を腰から出し才加を撃った。才加は玲奈が銃を持っているとは知らず油断した。
「キャア!」
弾は才加の腰と左肩に命中した。
まさかそんな…
「珠理奈。私あんたが羨ましかった。だって若くてダンスが上手いだけでエースにしてもらえるんだもん。」
玲奈は銃をしまい日本刀を左手で持った。
「私のほうが人気なのに!なんであんたが?それでも私は我慢した。選挙で組織票で負けようと永遠の二番手と言われようと。」
珠理奈はじっと玲奈を見た。
「だけどやっぱり実力は私のが上。今この瞬間決まったわね。さよなら珠理奈。悔しい?」
すると玲奈は珠理奈から衝撃の言葉を浴びせられた。

【残り6人】


[第96話]

「私…エースなんかじゃなくていい。」
……………………………………………………………………………………はぁ?
玲奈は意味がわからなかった。
「何それ?意味わかって言ってんの?」
「うん…」
珠理奈は続けた。
「むしろ私はエースなんて…器じゃないよ…。だって…玲奈を止めることができなかったし…玲奈がエースやりたいならいいよ…秋元先生に相談しよう…」
「なに死にかけだからって適当な事言ってんのよ!そんな訳ないじゃない!誰だってエースが」
「適当なんかじゃない!」
珠理奈は玲奈の目をしっかり見据えていた。
「私は誰かの為にできる事が一つあればいい…たった一人のお客さんが「今日の珠理奈よかったね」ってそう言ってくれればそれでいい…!」
玲奈は黙った。
「玲奈だってそう…玲奈は玲奈のポジションがある…玲奈にしかできないパフォーマンスがある…私と玲奈は違う…玲奈は私なんかより全然すごいよ…」
珠理奈は口の端から血を流しながら言った。
「そんなこと…今更言わないでよ…」
玲奈は唇を噛み締めた。
「私バカみたいじゃない!珠理奈の事恨んで沢山人殺して!私のやってた事ってなんだったの?私の事恨みなさいよ!憎みなさいよ!」
玲奈は珠理奈の首に更に強く剣先をあてた。
「そんなこと…出来ない…だって…」


「玲奈の事大好きだもん。」


その時だった。
才加は最後の力を振り絞って爆弾に火をつけ突進した。
「珠理奈!みんな!下がれ!」

ドガーーン!!

「くっ…」
玲奈はなんとか力を振り絞り立ち上がった。
「珠理奈…珠理奈?」
玲奈は倒れている珠理奈を発見した。
「珠理奈!」
「玲奈…」
珠理奈はまだ生きていた。
「珠理奈!しっかりしてよ!まだ話は終わってない!」
玲奈は倒れている珠理奈を抱き起こした。
その顔は悪魔の様な玲奈ではなかった。
バトルロワイアルに参加する前の優しい玲奈の顔だった。
「良かった…玲奈…戻ったんだ…」
「戻ったんだじゃないよ!なんであんたっていつもそうなの?自分が死にそうなくせに他人の心配ばっかりして!」
「玲奈…」
珠理奈はポケットから石とスイッチを取り出した。
「これ…やっぱり首輪にはめるんだと思う。玲奈が持ってて…」
そういうと珠理奈は玲奈にそれを手渡した。
「私達ずっと……SKE48のダブルエースだから…ね。」
それだけ言うと珠理奈は静かに眠った。

【残り5人】


[第97話]

すごい爆発だった…
高橋みなみと前田亜美と多田愛佳は爆風の中に消えた3人を探した。
「……………。」
みなみは前田敦子を失った悲しみでもう何も信用できなくなった。
もう誰が死のうが関係なかった。

「秋元さん!」
声をあげたのは亜美だった。
秋元才加が倒れている。全身火傷を負い酷い状況だ。
「いや…死んじゃいや…」
愛佳は次々に人が死ぬ状況に胸が苦しくなっていた。

みなみは才加を見たがすぐに視線を変えた。
倒れている珠理奈が玲奈と何か話している。
みなみは爆風の中に向かった。

玲奈はどうしたらいいかわからなかった。
なぜここまでされて珠理奈は…
既に亡骸となった珠理奈の顔を見た。
笑っている。
「ダブルエースか…はっ!」
玲奈は思い出した。
首輪の事を。
玲奈は珠理奈から貰った石を見た。その時だった。
「それを渡して。」
後頭部に冷たいものが当たる。銃口だ!
後ろにいるのは高橋みなみか。
既に抵抗する気のない玲奈はみなみに石とスイッチを渡した。
「ねぇ。」
みなみの声だ
「玲奈ちゃん、今どんな気持ち?ずっと殺したがってた珠理奈が死んで嬉しい?」
いつものみなみとは違う、落ち着いた喋り方だ。
玲奈は殺されるのを覚悟で素直に答えた。
「私はずっと心のどこかで珠理奈が羨ましかった。その気持ちをこのゲームで爆発させてしまいました。でも珠理奈が死んでも心など晴れなかった。私は無意味な事をしていました。」
みなみは黙って聞いていた。
「珠理奈は死ぬ前に言ったんです。私達ずっとSKE48のダブルエースだよって。ダブルエース…それで良かったのにどうして私は自分の立場が納得行かなかったんだろう。」
「後悔したんだね?」
みなみは問った。
「……………………はい。」
「人を呪わば穴二つ。珠理奈を憎んだから玲奈ちゃんは後悔した。私もあーみんもらぶたんも才加も嫌な思いをした。」
…………玲奈は何も答えなかった。
「だから人を憎んじゃいけないの。だから私も玲奈ちゃんを殺さないし憎んだりしない。」
みなみは銃口を玲奈の頭から離した。
「こっちへ来て。みんな集まってる。」
みなみは敦子については触れなかった。そんな事をしても、敦子はもう二度と生き返らないのだから。


【残り5人】


[第98話]

「キャアアアアアア!」
多田愛佳は松井玲奈の顔を見ると叫んだ。
「もう大丈夫。玲奈ちゃんは危険な子じゃない。」
みなみは愛佳は諭した。
怯えるといけないので日本刀は置いてきてもらった。
もちろん、もう使わないが。
「そんなの信じられない!だってあれだけ殺して…」
「うるさい。もう終わったんだ。」
みなみは愛佳を睨んだ。
「あの…珠理奈さんは…」
今度は亜美だ。
「珠理奈ちゃんは死んだ。でも才加の爆弾のせいじゃない。玲奈ちゃんから受けた傷で既にもう致命傷を負ってたから。」
「そんな…珠理奈ちゃん…」
また愛佳は泣き出した。
「玲奈ちゃんも軽傷とは言え怪我をしてる。さっ玲奈ちゃん。あの話を。」
みなみは玲奈を見た。
「はい、これは珠理奈から預かりました。」
珠理奈の石とスイッチを制服のポケットから出した。(一回みなみは奪ったが説明させる為に再度玲奈に渡した。)
「珠理奈はこの石を首輪の穴にはめると言ってました。なので石を出して確認しました。」
玲奈はピンク、緑、青、赤、黄色の石を袋からだした。
「よくみたら、この石。一つ一つに文字が書いてあったんです。」
玲奈は愛佳と亜美に石をよく見せた。
「本当だ!ピンクはA、緑はK、青にはBって書いてある!薄くだけど…」
「赤は4、黄色は8って書いてありますよ!」
二人は驚いた。
玲奈は更に続けた。
「私は今まで首輪を集めていました。理由は最初に殺した人の首輪を見たら文字が書いてあったので気になったからでした。多分、集めるとボーナスとかがあるのだと。」
これは斬首で殺す玲奈だから気づいたのだろう。
「そして法則に気づきました。A、K、B、4。ここまで集めれば何になるかは簡単にわかりますよね?ですが、肝心な8はどれだけ探してもみつかりませんでした。」
だから8がどうとかボーナスがどうとか言ってたのか。
「そういえば自分の首輪の文字を確認していないと気付いた私は民家で自分の首輪の数字を確認しました。するとなんと追い求めていた8でした。」
民家という言葉に愛佳はドキッとした。
「私はそれぞれ首輪と数字を見て法則を導き出しました。簡単です。グループに入った次期です。1期、1.5期がA。(つまり篠田麻里子はAだ。)2期がK。3期がB。それ以降は全て4。そしてSKE48の私と珠理奈のみが8です。」
玲奈はさらに続けた。

【残り5人】


[第99話]

松井玲奈は首輪の説明をしている。
「だから私は珠理奈を殺す以外に首輪も欲しかった。石についてはさっきのは知ったかぶりです。珠理奈に聞いて初めて知りました。」
「ほぅほぅ…」
多田愛佳は関心した。
「ちなみにその黄色い石はさっき珠理奈の首輪にはめてみました。」
「えっ?」
愛佳と前田亜美は同時に言った。
「ですが…はまりませんでした。死んでいる人には無意味な様です…。」
つまり玲奈が首輪を集めた意味は0だったのだ。
「ところで…これをはめるとどうなるの?」
愛佳は直球に聞いた。
「わかりません。」
「えっ?」
「可能性としてはやはり優勝した時のボーナス、あとは禁止エリアの走行可能証。」
どちらもいらない…
「もしくは…………………………首輪が外れてゲーム終了…」
「それがいい!てかそれ以外はいらない!」
愛佳は今さっきまで玲奈を怖がっていたのにいつの間にか普通に会話していた。
「それに賭けるしかないですよね!」
亜美も言った。
「ですが…」
玲奈はまだ続けた。
「トラップで首輪爆発。この可能性もあります。」
愛佳と亜美は怖くなった…
「それでも、やるしかない。そうでしょ?」
みなみはやっと発言した。
「うん…それしかないよ!」
「死ぬときはみんな一緒ですね!」
「全員賛成でよろしいですか?」
「あっ…愛佳は才加を見た。辛うじて生きているがとても喋れる状態ではない。」
「大丈夫。才加なら。」
みなみは言った。
「では…」
玲奈はそれぞれ首輪に書かれた文字の石を支給した。
カチャッ
カチャッ
カチャッ
カチャッ
4人は早速セットした。
「秋元さん…」
カチャッ
愛佳が才加の首輪に緑の石をセットした。
……………………何も起きない。
「まだスイッチを押してません。」
「おいこら!」
ついつい愛佳とみなみはツッコミをいれてしまった。
「それではいきます…。」

【残り5人】


[第100話]

「まさかやってくれるとはな…」
「可能性は0%じゃないんですか?」
「ほぼだ。ほ!ぼ!つまり1%くらいは可能性があった訳だ。」
「あり得ない…」
分校は大騒ぎだった。
「秋元さん?」
「私一人で伝えてくる。護衛もいらない。」
中年の眼鏡をかけた男はそう言った。




石をはめた5人はスイッチを押した。
全員で目を閉じた時だった…

……………………ウィーンパカッ。
……………………
……………………
「首輪が…」
「取れた!」
「やったー!」
「良かった…」
5人の首輪は見事に外れた。
彼女達を縛る物はもう何もないのだ。
「ありがとう…」
ずっと動かなかった秋元才加が声を出した。
と同時に才加の体の力が抜けていた。
「秋元さん!」
「うそ?なんで?私達助かったんだよ?」
亜美と愛佳は才加が息絶えた事に絶望した。

パチパチパチパチ

近くから拍手が聞こえる。
誰だ?
「いやーおめでたい。」
それは放送を流していた男の声…そうこの殺人ゲームを仕掛けてきた秋元康だった。
みなみは拳銃を構えた。
「おいおいたかみな止めてくれよ!君たちは勝ったんだ。」
秋元は言った。
「何が勝ったんだ…だよ!こんな目に合わせて!」
愛佳は初めて秋元にこんな口を聞いた。
「まぁ聞きなさい。そもそもな、このプログラムは政府と芸能界のお偉いさんが決めた事なんだ。」
4人は黙って聞いていた。
「今その辺に歩いてるアンちゃんネエちゃんが普通に芸能人顔してる。例えば…雑誌に一回載っただけとかでも。だから芸能界をお掃除する事にしようって政界の一人がいい始めた。」
掃除ってそんな物の様に…
4人は信じられなかった。
「そこでほら、うちは大所帯だろ?だから色々と目をつけられてね。本当に使える子以外は解雇しろとか…だけどうちはこの大所帯が売りだから無理ですと断った。しかしな…
話題になるしどうしてもプログラムをうちでやらせてほしいと政界や芸能界から依頼がすごくてな…積まれた金も半端じゃない。桁が億を超えたからな。」
秋元は笑った。
「それに圧力もかかった。だから仕方なく引き受けたって訳だ。ちなみにみんなこれをギャンブルに使ってる。億単位のギャンブルはすごいぞ~」
秋元は気持ち悪い笑みを浮かべた。

【ゲーム終了】
優勝者
秋元才加(後に死亡)
多田愛佳
高橋みなみ
松井玲奈
前田亜美


[第101話]

「でもなんで?優勝するのは一人って最初に言ったのに私達は5人生き残った!」
松井玲奈が声をあげた。
「まぁ待て。それも説明する。」
玲奈は黙った。
「このプログラムは日本では初めて行われた。だから未知数なことが多くてな。私と戸賀崎くんは最初は反対した。だが融通が聞かなくて…だがどうにか一つの条件を突き付けることができた。逃げ道を作ることだ。
お前達はものすごく運がいい。お前達の首輪の解除方法は正しかった。だから首輪が外れた。もし間違ってたらドガーンだったからな。」
「間違いって?」
愛佳だ。
「この首輪解除ストーン&スイッチの正解はこれだけ。A、K、B、4、8の首輪をした者5人だけが生き残り石をセットしボタンを押す。他に参加者が残っていた場合、石をはめてスイッチを押したらプレーヤーの首輪は爆発する設定になっていた。」
「うそ…」
愛佳は思わず口を抑えた。
「しかも8の首輪は松井珠理奈と松井玲奈のみ。どちらかが死んだらはいおしまい。一人になるまで殺し合わなければならなかった。それに珠理奈は勘がよかったがこんな状況であんな武器が出たらもし篠田麻里子や大島優子なら間違いなく捨てただろうな。」
確かに。
明らかに武器じゃないしゲームに乗る人間なら間違いなく捨てただろう。
「運営も大パニックだよ。こんな事あり得ないって。もしこの逃げ道に賭けたお偉いさんがいるなら100億は下らない額が手に入っただろうね~」
「100億…」
玲奈は秋元を睨んでいる。
「まっそういうわけだ。金とかは後で送るから船で帰っていいぞ!おめでとう。優勝者さんたち。」
そう言うと秋元は足早に去ろうとした。
「待って。」
みなみは秋元に銃口を突きつけたままだった。
「私達はそんな下らないことの為に殺し合いさせられたの?秋元先生は自分が今まで育てた子達が死んだ事に何も思わないの?」
みなみは疑問だった。
オーディションに合格し何年も一緒にやってきたメンバーが死んだ事に涙すら流さない秋元に。
秋元は背中を向けたまま言った。
「ははは…たかみな。これはもう決まってしまった事だ。私がどうこう言える立場じゃない。君たちはお偉いさんの暇つぶしに利用された。それだけだよ。」
暇つぶし?そんな事に敦子やみんなは…
どうしても許せなかった。
その時、みなみは銃をいつの間にか無くなっていた。
バンッ
と言う音がした。


[第102話]

秋元康は後頭部を撃たれて倒れた。
一体何が?
高橋みなみが隣を見ると驚愕した。
なんと前田亜美が残り一発しかなかった拳銃を秋元に向けて放っていたのだ。
「あーみんどうして?」
みなみは驚いた。
「こいつだけは許せません!こんな暇つぶしの為に私達を売ってあっちゃんやこもりんやみんなは…!」
亜美は見事に最後の一発を命中させた。
きっと敦子が生きていたら同じ事をしただろう…これで少しは恩返しができたかな。と亜美は思った。
秋元は即死だった。
秋元が死んでも4人は運営には何も言われず、船に乗りそれぞれの家路についた。
ゲームについては大々的にニュースで取り上げられ世間は一時パニックになった。
だがそんな事はすぐに忘れられた。
AKB48はラストシングルを発売した。タイトルは「桜の花びらたち~forever~」
アルバムに現在のメンバーで再録するという名目でゲームが始まる少し前に最近チームに加入したメンバーは収録していた。彼女達のインディーズデビューシングルの新録だった。
既に収録してあるとはこういうことか。
みなみはテレビを見て思った。
ラストシングルだが再録の上に当然握手会などないこの曲は対して売れなかった。( 一応ファンの追悼運動によりオリコン1位にはなったが)
生活補償は受けたみなみだったが芸能界は引退した。
あんなところはもうまっぴらごめんだ。
そう思ったからだった。
前田亜美と多田愛佳はソロデビューしたがそこまでテレビにはでていなかった。
芸能界の補償といっても所詮はこんなものか。
AKB48は無くなったがSKE48は無くならなかった。
松井玲奈が当然センターだと思ったが玲奈は突然卒業宣言をした。
その後5期SKE48研究生オーディションを受けた玲奈は研究生として頑張っているそうだ。
きっと玲奈なりに何か考えがあるのだろう。
みなみはそう思った。
それにしても平和だ。
だがこんなに平和な事を喜びに感じるみなみは自分は少し変かな?と思った。
そして何となく空を見上げた。
虹が出ている。
さっき降ったにわか雨のせいだろう。
みなみはAKB48のメンバーの顔を一人一人思い出した。

「たかみな!」

誰かに呼ばれた気がしてみなみは後ろを振り返った。
しかし、誰もいない。
気のせいか。
「敦子…みんな…ずっと見守っててね。」
みなみは独り言を言った後に、しばし涙が止まらなかった。

【fin.】


[エピローグ]

秋元才加は松井玲奈が松井珠理奈を殺そうとするのを見ていられなかった。
2箇所も撃たれて意識が遠退き、声はよく聞こえなかったが玲奈は珠理奈にとどめを刺そうとしていた。
もしここで珠理奈が死んだら勝ち目はない。
玲奈が優勝する。
才加はそう思い増田有華から預かった爆弾を見た。
雨が降っているがこれしか方法はない。
よく爆弾を見たが点火する場所がない。
そうか、あの大砲みたいのに入れて使うものだからか。
ならば仕方ない。走って玲奈がいる直前に火をつけて爆発させるしか。
そうすれば玲奈は確実に死ぬだろう。
また、自分も…
珠理奈もあの様子だと長くはなさそうだができれば生き延びてほしい。
才加は意を決して走った。
だが既に体のバランスがおかしくなっていた才加は珠理奈の近くで点火してしまった。
玲奈もかなり近くにいたが位置的には珠理奈のほうがダメージは大きかっただろう。
私はなんて最低なミスを犯したんだ…
それでも才加は本当に間一髪のところで生きていた。
喉が熱くてしゃべれないし目もほとんど見えないが…
高橋みなみが松井玲奈を連れてきて前田亜美と多田愛佳に何かを話していた。
玲奈はあの日本刀を持っていなかった。

カチャッ

愛佳か?私の首元らへんに何かの音がした。

ウィーン

また何かの音だ。
なんだろう…なんだか首が軽くなったような…
それにしても眠い…
気づくと才加はAKBシアターの楽屋にいた。
かながふざけている。全くいつもいつも。
めーたん相変わらず派手な下着だな…
あっなちのんは漫才の練習か。
そろそろ笑えるくらいになってよー。
真奈美はまたダンスをちゃんとやってない!もう…
さすが梅ちゃんは大人だな。見てて落ち着く。
明日香は本当にいい子だな。はいはい、えれぴょんもね。
近野怒れてる意味わかってるのか?
なっつみー。忘れてないからそんなしょげないの。
ともーみは相変わらず甘えん坊だなぁ。
有華!何個たこ焼き買ってるんだ?
佐江、いつもサポートしてくれてありがとう。
優子。信頼してるからな。

みんな本当にいつも

「ありがとう…」
……………………

「秋元さん!嫌です!」
「死んじゃだめ!」
前田亜美と多田愛佳の言葉は才加には届かなかったが才加はこれからもずっとAKB48でいるだろう。

そう、いつまでも。





AKB48バトルロワイヤル 10巻

2010年12月03日 20時22分03秒 | 研究解析
(この作品は私ブログ主ではなく、神島氏の作品です)


AKB48バトルロワイヤル 10巻


[第85話]

「珠理奈ちゃん、やっぱ疲れてたのか…」
秋元才加は松井珠理奈の寝顔を見て呟いた。
疲れていた才加だったがなんだか色々心配になり1時間で起きて珠理奈と交代した。
色々とはもちろん佐江や有華やみなみなど参加者もそうだったが家で待つ家族の事など全て含めてだった。
6時にH-8。つまり集落は禁止エリアになるがそれは才加達のいる左端の家屋は無関係だった。
集落の左のほうはI-8で禁止エリアではなかったからだ。
「珠理奈ちゃん…」
まだ若いのにこんな苦労を重ねる珠理奈を才加は可哀想に思った。
自分が13歳の時なら耐えられなかっただろう。
「強い子だよ…」
才加は思わず呟いた。
その時だった。
パラパラ…
雨?
パラパラパラパラザァァァァァー
突然雨が降ったと思ったらそれは土砂降りに変わった。
家屋に居て良かった…
この悪天候で外は厳しい。
そう才加が思った時だった。
パララララ!
この音は?
マシンガンかなにかの銃声だろうか。
パララララ!
「キャアアアアアア!」
微かにだが悲鳴が聞こえた。
妙に甲高い声……河西智美しかいない!
智美が襲われている?
松井玲奈は刀を持っていた。
マシンガンを持っていたのは…
「優子!」
才加は思わず叫んだ。
そのせいで珠理奈が起きてしまった。
「どうかしましたか…?」
珠理奈は目を擦って才加を見た。
才加は優子が元チームKのメンバーを襲っている所を想像したらいてもたってもいられなかった。
「ごめん珠理奈!私優子を止めなきゃ!」
才加は立ち上がった。
突然の事に驚いた珠理奈だったが才加の真っ直ぐな目を見たら何も言えなかった。
「秋元さん!」
入口へ向かう才加に珠理奈が声をかけた。
「絶対に死なないで下さいね。」
珠理奈は力強い目線で言った。
「当たり前だ!」と才加は言う前に家を飛び出した。

【残り12人】


[第86話]

「佐江~また会えたね~」
大島優子は何だか嬉しそうだった。
「佐江ちゃん…とも怖かったよ…」
河西智美は泣き出した。
「ともーみを守るって言っただろ?」
その時見た佐江は智美が今まで見たどんな男よりもかっこよかった。
「そんな場合ちゃうで!」
パララララ!
優子がまたマシンガンを乱射してきた。
「キャアアアアアア!」
3人は木の陰になんとか隠れた。
「優子どうしちゃったの?あんなの優子じゃないよ!」
智美が声をあげた。
「このままじゃみんな殺されてまう…」
有華は悲しそうな声を出した。
そこに佐江が言った。
「優子を元に戻そう。」
「元に戻すってどうやって…」
パララララ!
「キャアアアアアア!」
「佐江~ともーみ~ゆった~ん出てきて遊ぼうよ!チームKの絆じゃない。」
優子が3人を探しながら言った。
「優子はまだチームKの絆を忘れていない!私達と…あと才加がいればよかったんだけど…」
佐江は言った。
「説得するってこと?」
「それ以外方法はない。チームKの絆を完全に思い出させるんだ!そうすればとりあえず私達には攻撃して来ないはずだ!」
佐江はずっと優子を尾行していてわかった。
優子は梅田彩佳の言ったチームKの絆の意味を取り違えている。
優勝することではなくみんなで助け合い脱出する事だと元チームKのメンバーで教える。
それ以外の方法はないと佐江は思った。
だからこそ、佐江は才加、有華、智美を探していた。
「でも失敗したら?」
有華が言ったところで
パララララ!
パララララ!
「まずい!居場所がバレた!走るよ!」
佐江はそういうと一目散に走り出した。
智美も疲れていたが全速力で、有華に至っては怪我した足が引きちぎれるかと思うほど痛かったが走るしかなかった。
「待ってよみんな!みんなも協力して!私優勝してAKB48を背負って生きるの!」
パララララ!
優子が追いかけてきた。
「キャッ!」
有華は走っている途中でついに足に限界が来て転んでしまった。
まずい今しかない!
優子が有華に銃口を向けた。
「待って!優子聞いてほしいんや!」
「私からも!優子聞いて!」
「優子!とものお話聞いて?お願い!」
3人は一斉に言った。
優子が笑いながら3人を見た。
まだ撃ってはこない。
3人は一代決心で話し始めた。

【残り12人】


[第87話]

「優子、聞いて?あんたの言うチームKの絆は間違ってる。本当の仲間なら私達みたいに助け合わなきゃいけない。」
佐江は話し始めた。
「優子。あんたは最高のエースだよ。あんたみたいに芯が通ってて真っ直ぐな人間を私は見たことない。それをファンのみんながわかってくれたから選挙でも1位になれたんだと思う。」
優子は黙って聞いていた。
続いては智美が話始めた。
「優子、とも優子が大好きだったよ。ううん、今でも大好きって言いたいけど…」
智美は言葉を詰まらせた。
「今の優子は間違ってる!自分だけ生き残ってAKBを守るなんてズルいよ!私達みんな揃ってAKB48でしょ?みんなで一緒に帰ろうよ!」
優子の様子がなんだかおかしかった。
気にせずに有華が話始めた。
「優子、ウチ優子のことすごい尊敬してたし今でももちろんしてる。だって優子はチームKのエースやもんな。」
有華は痛む足を抑えながら続けた。
「せやけどな優子。今のアンタは尊敬できんわ。だって自己中やん。一人だけ生き残ろうなんて。ウチらみんな一緒に帰ろうや。帰ってまた振り付け教えてや!ウチ歌は得意やけどダンスは苦手やから…」
優子は泣いているように見えた。
「優子!一緒に帰ろう!」
「優子!とも優子が大好き!」
「優子!みんな一緒や!」

「チームKの絆だ!」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」
優子はその場に泣き崩れて号泣した。
「梅ちゃん…みゃお…なっつみぃ…ウッチー…はるきゃんれいにゃんはるごんはーちゃんさきっぺ…みんなごめんなさい!ごめんなさい!」
それは紛れもなくAKB48の大島優子の顔だった。

優子は正気に戻ったのだ。

「やったーーー!」
佐江、智美、有華は大喜びした。
「優子…優子が戻った…」
その時だった。
パララララ!
…………
…………
…………
「え?」
優子はマシンガンを持って3人を撃った。
「みんなごめんね…私もう戻れないよ…だから私と一緒に…死んで?」
優子がマシンガンを自分の胸に当てた時だった。
バンッ!
優子の耳元で銃声がした。
「私…死んだのか…」
優子は静かに倒れた。
その後ろで泣いている人物がいた。
「優子…アンタってヤツは!」
秋元才加は静かに優子の頭に引き金を引いた。

【残り11人】


[第88話]

「佐江!有華!ともーみ!」
才加は3人の元へ走った。
「才加…」
「才加だ…」
「才加…また会えたな…」
宮澤佐江、増田有華、河西智美の3人は大島優子の銃弾を受けたが即死は免れた。
「3人とも死んじゃダメだ!」
才加は叫んだ。
「すぐに診療所に!」
「診療所はもう禁止エリアやで…」
才加は忘れていた。
「才加、落ち着いて?優子、戻ったよ?あれは優しい優子の顔だった…」
智美は苦しそうに言った。
「もうしゃべるな!すぐに手当てする!」
「最期に才加に会えて良かった…」
「ともーみ?ともーみ!」
智美は静かに息を引き取った。
「才加。」
有華が話しかけた。
「ウチのデイパックに爆弾が入ってる…雨やから火はつかんかもしれんけど一応もって行きや…名付けてたこ焼き爆弾や。」
有華は声を枯らして喋りながら笑った。
「喋るな有華!すぐに珠理奈も呼んで集落に運ばせる!左のほうは禁止エリアじゃないん…」
「無駄や…」
有華は喋り続けた。
「ウチ、もう足が…これじゃ踊れん。それに喉を撃たれたから声がでないねん…こんなんアイドル失格やん…」
「大丈夫だ有華!手術すればすぐ良くなる!」
「才加……ありがとう………」
有華はそこまで言うと静かに眠った。
「こんなの嘘だ!佐江?佐江は大丈夫だよね?」
倒れている佐江を抱き上げた。
「才加…私、才加に会えて…AKB48に入れて本当に幸せだった…」「帰ってからもまたみんなでできるよ!絶対できるから!」
「才加…お願い…このゲームを終わらせて…もう誰も死なせないで?」
「死なせない!佐江も死なせない!」
「ありがとう。才加……大好き。」
「佐江?佐江?」
佐江は笑顔のまま才加に抱かれて眠った。
「嫌だ…嫌だよ!みんな私だけ置いてくなんてズルいよ!ズルいよ…」
…………
…………
「嫌だああぁぁぁぁぁぁ!」
才加の泣き声だけが辺り一面に響いた。奇跡は間に合わなかったのだ。

【残り8人】


[第89話]

「はぁっはぁっ秋元さん…」
秋元才加が向かった先から複数の銃声を聞いた松井珠理奈は走っていた。
きっと何かあったんだ…
雨が酷いせいで前が見えない上に足場も滑りやすくなっていた。
「はぁっはぁっ急がなきゃ…あっ!」
髪が長い比較的体格のいい女性が座っている。
才加に間違いない!
「秋元さん!」
……………………
……………………
反応がない。
珠理奈の声は聞こえなかったのか。
「秋元さ…」
珠理奈は更に近づいた時に気付いた。
死体が4つ!
「ともーみ…有華…佐江…優子…」
才加は悲しそうにそこにある4つの亡骸の名前を呼んだ。
「秋元さん!」
才加はチームメイトを4人も失い絶望のどん底に突き落とされた。
なぜもっと早く来なかったのだろう。
自分がもっと早く来ていればこんな事にはならなかった。
なぜだ…なぜだ…なぜ
「秋元さん!」
パシッ!
いつまでも応答しない才加の顔を珠理奈は平手打ちした。
「珠理奈…」
「何があったかは説明を聞かなくてもわかります!でも秋元さんがそんな風になっちゃったら誰がみんなを助けるんですか?」
「珠理奈…」
「死んでしまったみんなもきっと秋元さんを尊敬していたはずです!秋元さんがこんなところでへこたれてたら天国にいるみんな泣いちゃいますよ!」
そうだ…佐江も。有華も。ともーみも。そして…優子も。
きっと見守ってくれてる。
私がこんなところで座ってたらきっとみんな怒るだろう。
「約束…」
「えっ?」
「約束したんだ…佐江と…もう誰も死なせないって。だから…」
才加は立ち上がった。
「行こう!」
「はい!」
バンッ
その時東のほうから銃声が聞こえた。

【残り8人】


[第90話]

「たかみなを知らない?」
前田敦子は少女に尋ねた。
「たかみな?さぁ?」
松井玲奈は不気味な笑みを浮かべながら答えた。

高橋みなみを探していた前田敦子、前田亜美、小森美果、多田愛佳は島の丁度中央辺りで颯爽と歩いていた松井玲奈に遭遇した。
愛佳は既に敦子の陰に隠れていた。
「それよりもね…珠理奈知らないかしら?あの子どっか行っちゃったみたいで…」
玲奈はまたしても不気味な笑みを浮かべた。
「知らない!知ってても教えないし。」
敦子は強気に言った。
「そっかぁ…じゃあ……………………死ね。」
玲奈は鞘から日本刀を出した。
敦子は銃を腰から出し引き金をひいた。
「3人とも隠れて!」
バンッバンッ
玲奈を撃ったが玲奈は木の陰に隠れてそれを避わした。
バンッ
玲奈もこちらに発砲してきた。
「キャアアアアアア!」
「銃を持ってる?」
敦子は愛佳に玲奈は刀しか持っていないと聞かされていた。
バンッバンッバンッ
玲奈が敦子に向けて何発も発砲した。
他の3人は草の茂みに隠れた。
玲奈は3人の居場所はわかるが敢えて無視した。
バンッバンッ
バンッバンッバンッ
お互い一歩も譲らなかった。
ここで勝たなきゃ死ぬ。
敦子はそう悟ったからだったが玲奈は単に人数減らしくらいにしか思っていなかった。
バンッ!
「そんなものなの?さっきの背の高い子のがまだましだったわ。」
玲奈は敦子の銃弾をヒョイと避わして言った。
背の高い子?
まさか篠田麻里子か?
だとしたら麻里子は優子ではなく玲奈にやられたという事になる。
麻里子を倒した相手…
敦子は逃げる事しかできなかった麻里子を思い出して少し恐くなった。
「でも…」
「でも絶対に負けない!みなみと会うまでは!」
敦子は玲奈に向けて発砲した。
バンッバンッカッカッ
まずい。弾切れだ。
敦子は弾を装填しようとした時だった。
「隙あり!」
玲奈が敦子の前に日本刀を構えて立っていた。



銃声…この方向は島の中央らへんだ!
マシンガンの音は聞こえない。
だとしたら愛佳の言ってた玲奈か?
だが玲奈は刀を使うと言っていた。だとしたらこの銃は?
まさかと誰か玲奈と戦っているのだろうか?
どっちにしても東寄りに敦子達はいるはず…
「まさか…違うよね?」
高橋みなみは嫌な予感がした。
【残り8名】


[第91話]

「隙あり!」
もうダメだ。
終わった。
そう前田敦子が思った時だった。
ブスッブスッブスッ!
「ウガァ!」
玲奈の刃が止まった。
良く見ると腕に1本、太ももに2本、矢のようなものが玲奈に刺さっていた。
「前田さん!そこから離れて!」
言われるがまま敦子は地面を横に転がった。
ブスッカンッカンッ
矢は1本玲奈の手に当たったが2本は日本刀で弾かれた。
「クソ野郎…」
玲奈は鬼を通り越して悪魔のような顔をしていた。
「こもりん!気をつけて!」
吹き矢を上手く玲奈に命中させた小森美果は玲奈の標的になった。
「キャアアアアアア!」
美果は背中を向けて走り出したが追い付かれ、背中を一刀両断された。
「こもりん!…………あんたの相手はあたしでしょ?」
バンッ
弾を装填した敦子は玲奈に向けて銃弾を放った。
それは玲奈の背中に命中した!
やった!
だが玲奈は一瞬倒れたかと思いきやまた起き上がり敦子を襲った。
「何で?」
敦子は玲奈の日本刀を避けながら疑問に思ったが今はそれどころではない!
「こもりん!こもりん!」
亜美が泣きながら美果に近寄ったが美果に返事はなかった。
「そんなの嫌だよ!置いてっちゃいや!」
亜美は泣き叫んだ。
愛佳はただただその様子を呆然と見ていただけだった。
バンッバンッバンッ
敦子はまた玲奈を撃った。
日本刀を両手で振り上げた玲奈はガードできずに胸に二発、腹に一発見事に喰らった。
「よし!」と思ったその時だった。
敦子は玲奈の一太刀を喰らった。
「キャアアアアアア!」
敦子の脇腹から血が吹き出した。
玲奈は首を狙ったが防弾チョッキを着ていたとはいえ3発も撃たれたせいで軸がぶれて狙いを外した。
「こもりん…こもりん…」
亜美は呼ぶがやはり返事はない。
残念ながら息絶えたようだ。
敦子は血の出た脇腹を押さえた。
目の前には玲奈がいる。
美果は死んだし武器を持つ仲間はいない。
終わった…
敦子の首が玲奈によってはねられる直前だった。
バンッ
「ぐぅ!」
玲奈は背中に一発銃弾を喰らい防弾チョッキを着ていたが前のめりに倒れた。
敦子は何がなんだかわからなかった。
その時、敦子の視線の先にはとある人物がいた。
「敦子…ずっと会いたかったよ…」
敦子の視線の先にには銃を構えた高橋みなみが立っていた。

【残り7人】


[第92話]

《絶対に生きて帰ろう》

前田敦子は声を出すのが怖かったので高橋みなみに何度も口だけ動かして言った。
みなみは無言で頷いてくれた。
だが分校を出た時みなみはいなかった。
大島優子や篠田麻里子に会ったとき、もう敦子はみなみに会えないような気がした。
だけど…

「敦子…ずっと会いたかったよ…」
危機的状況にも関わらず敦子はみなみと再び出会えた事に感動した。

しかし、それどころではなかった。松井玲奈は立ち上がり悪魔のような顔でみなみを見た。
「あたしが相手になるよ。」
みなみは格好つけて言ったつもりだったが正直かなり絶望的な状況だった。
警察署で愛佳から貰った拳銃に弾は6発しか入っていなかった。
今、敦子を助ける為に一発撃った。
残り5発しかない。
「許さない…」
小森美果の吹き矢を合計4発喰らった玲奈だが痛そうな様子はなかった。
むしろどちらかと言えば興奮している様子だった。
「はぁ!」
玲奈がみなみに刀を振ってきた。
「キャア!」
みなみはしゃがみどうにか避けた。
だがこれは玲奈が首輪を集めるために首を執拗に狙う癖がある為だ。
もしこの癖がなければみなみは一刀両断されていただろう。
そんな事を知らないみなみは玲奈から避けて敦子に近づいた。
怪我の具合が気になったからだ。
「敦子!怪我平気?」
「うん…なんとか…私もたかみなにずっと会いたかった…」
二人は約1秒だけ見つめあった。玲奈が来た。
みなみは絶対に当てるつもりで2発撃った。
バンッバンッ
だがその銃弾はみごとに避わされた。
玲奈の動きがさっきより早い気がする。
「くそ!」
バンッバンッ
みなみはまた2発撃った。
当たらない…
まずい。弾はあと一発だ。
玲奈が木陰に隠れた。
どうすれば…
「たかみな…」
敦子がみなみを呼んだ。
「どうしたの?」
「玲奈ちゃん…多分防弾チョッキを着てる…あんなに撃たれたのに血が出てない…それになんか体がモコモコしてるし…」
そうだったのか。
みなみは撃たれても平気な玲奈の謎をやっと理解した。
だがみなみは気付いた。
玲奈はどこだ?
木陰に隠れてから気配がしない…
その時だった。
木の上から何か落ちてくる…
「ハアァァァァ!」
玲奈が刀を構えて上から降りてきた。

【残り7人】


[第93話]

「木の上から………!」
後ろに前田敦子がいるので避けられない…高橋みなみは目を瞑った。
ザクッという音がした。
痛くない…まさか痛みを感じる前に死んだのか………………………………
いや、違う。私は死んでない。
みなみが恐る恐る目を開けようとすると悲鳴のような声が聞こえた。
「いやあぁぁぁぁー!あっちゃぁぁぁん!」

「えっ?」
みなみが目を開けた時そこには絶望的な光景が広がっていた。
敦子が血を流して倒れている。
まさか自分を庇って?
「敦子?ねぇ敦子?」
敦子から返事はない。
まさかそんなはずは…
「うふふっあなたを庇って死んだみたい。」
松井玲奈は笑っていた。
そんな…
「敦子?嘘でしょ?ねぇ敦子起きて?起きてよ!」
敦子は目を開かない。
そんな…そんな馬鹿な…自分のせいで死んだ?
みなみは何故か頭にゲームが始まる前の事が頭に浮かんだ。

《絶対に生きて帰ろう》

「敦子ぉぉぉぉーー!」
玲奈がしゃがみこんだみなみの首をはねよう日本刀を構えた。
「やめてぇぇぇー!」
「いやあぁぁぁぁ!」
亜美と愛佳が同時に叫んだ。
「さよなら。」
玲奈が刀を降り下ろす瞬間だった。
バンッバンッバンッ
西からする突然の銃声に玲奈は驚いて振り返った。
そして満面の笑みを浮かべた。
「やっと来た…」
玲奈はみなみをシカトして銃声がするほうを向き一言だけ言った。

「お帰りなさい。珠理奈。」


「ただいま。玲奈。」

松井珠理奈は玲奈の狂気に満ちた目をしっかり見据えた。

【残り6人】


[第94話]

「遅いじゃない。待ってたわよ。」
玲奈は待ちくたびれた表情で言った。
「玲奈…」
珠理奈は複雑な表情をした。
その時だ。
「たかみな!あーみん!らぶたん!無事か?」
珠理奈の後ろから秋元才加が現れた。
銃声で気を引いたのは才加だったのだ。
「松井玲奈…」
才加は玲奈を睨み付けた。



高橋みなみは前田敦子が死んだショックで今にも倒れそうだった。
そこに前田亜美が駆け寄った。
「たかみなさん…」
「……………………。」
みなみは何も答えられなかった。
敦子は最期に何を思って死んだのだろう。
私を恨んでいるだろうか…
みなみはショックで声が出なかった。


亜美はこのゲームで最初に敦子を尾行し始めた事を思い出した。
突然殺しあいをしろと言われ怖くて一人でいるのは無理だった。
勝手についてきた私を敦子は優しく迎えてくれた。
敦子が居なければ確実に自分は死んでいただろう。
「あっちゃん…」
亜美は何か恩返しをしたいと考えていた。


一方、珠理奈と玲奈は何か話していた。
「珠理奈…あなたを殺して私はあなたを超える…絶対的エースになるの!ついでに首輪のボーナスも…」
「首輪のボーナス?玲奈何か知ってるの?」
珠理奈は玲奈が首輪の謎を何か知っているのか知りたかった。
「知ってるわ。だから沢山集めた……でもあんたの首輪がないと揃わないのよ!」
玲奈は声を荒げた。
「あんたを殺して8の首輪を取るわ。そしてボーナスをもらう…」
「ボーナスって何?石は?」
「石?」
「首輪に小さな穴が空いてる。そこに何かはめるんだと思うんだけど…」
玲奈は知らなかった。
だが知ったかぶりをした。
「あぁ…石…ね。」
「私の持ってる石は入らなかったんだけど…」
玲奈は珠理奈がポケットから取り出した石を見て驚愕した。5色…絶対そうだ!
「ふふふ…珠理奈。あんたを殺す理由また増えちゃった。行くわよ。」
玲奈は日本刀を再度構えた。

10分ほど前に珠理奈はあらかじめ才加に言っておいた。
「これは私と玲奈の戦いです。玲奈も私に負ければ目が覚めると思うんです。勝てるかわからないけど…だから………………………………私が死んだら、よろしくお願いします。秋元さん。」

「戦うしか…ないんだね。」
珠理奈は農家の家で見つけた短刀を構えた。
才加はその様子をただじっと見つめていた。
【残り6人】


AKB48バトルロワイヤル 9巻

2010年12月03日 20時11分52秒 | 研究解析
(この作品は私ブログ主ではなく、神島氏の作品です)


AKB48バトルロワイヤル 9巻


[第75話]

「せーの、いただきます!」
増田有華、横山由依、河西智美は集落の一つで遅い夕食の最中だった。
「このパスタうまぁ!」
「サラダもおいしい!」
有華も由依も同時に声をあげた。
「本当に?うれしい!スープも飲んで?」
智美は独特の甘い声で二人に自慢のスープを勧めた。
「コーンスープ大好きやねん!いただくわ~」
有華が飲んだ。
「いただきますね~」
由依が飲んだ。
智美はドキドキしながら由依を見た。
「あっ…」
由依の様子がおかしい。
「どうしたの?由依ちゃん、お腹痛い?」
智美は心配するフリをした。
由依のスープには由依の武器の毒薬を2滴だけ垂らした。
2滴くらいなら腹が痛くなるくらいだろう。と智美は思った。
そうすれば少しでも有華と二人でいれる。由依なら自分は大丈夫と言うだろうと思った。
智美は有華と二人が良かった。
だが……
「ウッウッウゲエエェェーー!!」
由依はスープと一緒に血を吐き出した。
「キャアアアアアア!」
こんな事になると思わなかった智美は叫んだ。
「由依ちゃん?由依ちゃんどうしたん?苦しいん?」
有華も突然血を吐き出した由依に驚き背中を擦った。
バタン!
その瞬間由依は机から崩れ落ちた。
「えっ?えっ?」
智美は何が起こったかわからなかった。
有華は由依の脈を計ったが既に止まっていた。
「嘘……こんなの嘘!」
智美はその場にしゃがみ泣き崩れた。
「どういうことや?ウチは何も起きなかったのに何で由依ちゃんだけ死ぬん?なぁ、ともーみ答えて?スープになんかいれたん?」
有華がしゃがんでいる智美の肩を強く揺すった。
「違うの!私ゆったんと二人で話したかっただけなの!由依ちゃんとあんまり話した事ないしゆったんに色々聞いてほしいこととかあったの!」
「そんな事聞いてへん!由依ちゃんに何したんや?何入れたんや?」
智美は涙をボロボロ溢して言った。
「由依ちゃんの武器の毒…でも2滴だけ!毒なんて2滴じゃお腹痛くなるくらいだと思っ…」
有華が智美が言い終わる前にキッチンの近くに置いてあるデイパックから由依の毒薬を出した。
「これは青酸カリや!一滴でも飲んだら死んでまう!そんな事も知らんのか!」
有華は大声を張り上げた。
「ごめんなさい…由依ちゃん…本当にごめんなさい!」
既に生存者は二人しかいない部屋に智美の声が響いた。

【残り12人】


[第76話]

才加達が集落に着いた時、既に時間は深夜の2時を回っていた。
途中で教会に寄りたいと珠理奈が言ったからだ。
「神様…どうか私達をお守り下さい。」
才加も珠理奈と共にお祈りをした。
絶対に今生きているメンバーで帰る。
玲奈ちゃんも。
そう……………………優子も。
才加は優子の笑顔がフラッシュバックした。
必ず元の優子に戻る。
才加はそう信じていた。

玲奈…
私、何か玲奈にしちゃったかな?
悪い所は直すよ。
中学生だって意外とちゃんと考えてるんだから。
また一緒に買い物したり、クレープ食べたりできるかな?
私はまだ玲奈のこと大好きです。
きっと玲奈は元のいい子に戻る。
珠理奈は信じた。

「行きましょうか…」
「うん…」




二人は集落の左端のほうにある家に入った。窓からだが…
「珠理奈ちゃん疲れてない?寝てないでしょ?」
才加は疲れているであろう珠理奈を気遣った。
「大丈夫ですよ!あとちょっとで放送ですしね。」
珠理奈は両手でゴリラの様なポーズをした。
「っていうか秋元さんのが休んだほうがいいですよ。いっぱい走ってるんだし…」
才加は大丈夫と言いたい所だったが正直疲れは限界にきていた。
「うん…じゃあ少しだけ寝かせてもらうよ。珠理奈ちゃん、眠くなったらいつでも起こしてね。」
「わかりました!任せてください!」
才加はなんだか安心した。
そして次の放送で佐江や有華が呼ばれない事を願い、眠りについた。

【残り12人】


[第77話]

「皆さん!皆さん皆さん!起きてますか?深夜3時ダヨ!全員起床~!それでは死んだ人の名前をあげます!大家志津香、篠田麻里子、横山由依。以上3名!すくなっ!まぁみんな序盤にいっぱい殺したもんね。
続いて禁止エリアです!4時からI-6、6時からH-8、8時からC-10です。二日目からも頑張れよ!お前ら!」


秋元先生のウザったい放送が終わった。
「とりあえず禁止エリアは大丈夫か。」
前田敦子は地図にしっかりメモをした。
篠田麻里子が死んだ。
大好きだったけど渡辺麻友や平嶋夏海を殺した麻里子。
殺したのはきっと優子だろう。
前田亜美と小森美果は寝ていた。野宿だというのにぐっすり寝ている。
高橋みなみを探しに出たはいいが怪我をした亜美をそんなに連れ回せない。
美果も疲れている様子だったし。
それにみなみが移動している可能性もある。
それだと行き違いになってる可能性だって…
みなみはどこにいるのか。

《絶対に生きて帰ろう》

あの教室で誓った。
そう。私達は生きて帰る。
絶対に。
美果から聞いた首輪の話…
きっと何かこの首輪に隠されてる。
敦子はAで亜美は4だった。みなみと美果も同じ組み合わせだったそうだ。
A…4…わからないがきっとみなみも何か情報を得ているはずだ。
「すぅ…すぅ…」
子供の様に眠る二人の顔を見た。
呑気なもんだな。
敦子は何となく笑ってしまった。



敦子達のいる50mほど東を高橋みなみは歩いていた。
敦子達は島の中央少し南東にいたがみなみはそこから北東に向かい歩き出した。
麻里子が死んだ…悲しかったがなんだか複雑だった。
多田愛佳と宮澤佐江は大丈夫だろうか。
さっき南のほうで例のマシンガンの音がした。
「誰か優子を止めて…」
みなみは独り言を呟いた。

【残り12人】


[第78話]

「佐江どこかな?悲しいよ~」
大島優子はそう言うと地面に寝っころがった。
宮澤佐江はどうにか優子を振り切ったが、未だ優子のすぐ近くにいた。
優子はなぜおかしくなった?
たしかに誰がどう見ても精神異常者だ。
だがそもそもなぜ優子はあんな風になったのか。
その原因がわからないと優子は元に戻らない。
佐江はそう思った。
麻里子は死んだ。
佐江は少しだけ安心した。
そしてたかみなも愛佳も才加も珠理奈も有華も智美も敦子もみんな生きてる。
必ず全員で帰りたい…。
そう優子だって…。
佐江がそう思った瞬間だった。
「梅ちゃん…」
優子は確かにそう言った。
明らかにおかしくなっている優子だがしっかり放送は聞いていた。
きっと生きたい。という意思はあるのだろう。
だがなぜ今更梅田彩佳の名前を呼んだのか。
彩佳は第一回の放送で既に名前を呼ばれた。
たまに死んだ人の名前を呟くのでそのせいだろうか。
だが佐江はその後驚愕した。
「梅ちゃん…見てる?私少しずつ夢に近づいてるよ。私が優勝してAKB48を守るからね。チームKの絆だもんね?梅ちゃんが言ったんだもんね…?」
優子は空を見ながら言った。
どういう事だ?
優子はただおかしくなって殺人を楽しんでいた訳ではない?
まさか優勝したいしっかりした目的があるのか?

チームKの絆…

佐江は昔のチームKを思い出した。
2期生オーディションに合格した17人。
最終的にはメンバーも変わり16人だったが佐江にとってそれは一番愛するべき存在。支えだった。
きっと皆同じ考えだっただろう。
優子ももしやそれを忘れていない?
だとしたら…
佐江はまたデイパックから取り出した生首と話ながら進む優子を再び慎重に尾行し始めた。

【残り12人】


[第79話]

放送で横山由依の名前が呼ばれた。
「ごめんね…ごめんね…」
河西智美は未だに泣いていて既に目が腫れていた。
「……………………。」
増田有華はどうしたらいいかわからなかった。
命の恩人の由依を智美は殺した。
智美もまた腕を治療をしてもらったというのに。
智美が普通に料理できたのだって由依の治療のおかげだ。(元々智美の傷は有華のものより軽かったが。)
智美をどうするか。
一緒に居ては危険な気もするが…

「ゆったん…」
智美が口を開いた。
「とも…間違ってた。ともね、人見知りするじゃない?だから最初はあんまり誰とも仲良くなれないの。」
「……………………。」
「でもそれはともの性格がいけないんだって。もう死んじゃった由依ちゃんには何も言ってはあげれないけど、ともやり直したい…まだどこかで生きてる佐江ちゃんや才加やあっちゃんや優子やみんなと帰りたい!」
「ともーみ…」
「とも、もう逃げない。ともはずっと逃げてた。まぁちゃんからもれいにゃんからも由依ちゃんからも…でも、これから先は戦いたい!みんなと一緒に!」
智美は有華の手を取った。
「ゆったんも戦おう?こんな争い絶対ダメ!あと二日あるんだからみんなで脱出する方法を考えよう?ね?」
有華は智美の目を見た。
今までの智美とは違う真っ直ぐな目をしていた。
「ともーみ……信じていいんやな?」
「うん!」
有華は智美をもう一回だけ信じることにした。
「でもこれからどうするん?みんなどこにおるかわからんし…」
有華は迷っていた。
できればここに暫くは隠れるつもりだった。
あと3時間で禁止エリアになるとさっき通告を受けてしまったが…
「あのね、ともこのへんに倉庫みたいなの見た気がするの。そこに何か武器になるものがあると思わない?」
倉庫…たしかに怪しい響きだ。
「それどこにあったん?」
「このお家より右のほうかな…」
二人がいる家は集落のちょうど真ん中らへんだ。
「とりあえずそこに行かへん?作戦を練ろうや。」
「うん…ゆったん…」
智美は上目遣いで有華を見た。
「どうしたん?」
有華はその色っぽさにちょっとドキッとした。
「大好き!」
智美は有華に抱きついた。

【残り12人】


[第80話]

「ここやな…」
増田有華と河西智美は暗い倉庫内に恐る恐る足を踏み入れた。
「なにかあるかな?」
倉庫には謎のアンテナやコードなど二人には到底理解不能なものが大量にあった。
「武器になりそうな物は…」
二人で広い倉庫内を手分けして武器になるような物を探した。
「なんか変な物ばっか…キャアアアアアア!」
智美の叫び声だ!
まさか優子がいた?
「どうしたんや!?」
有華は智美に近づくと突然智美が抱きついてきた。
「あ…あれ…」
有華が恐る恐る智美の視線の先を見ると…
カサカサカサカサ…
そこにはたまに家とかに出る黒いアレが動いていた!
「……………ってそんな事かい!」
有華は思わずツッコミをいれた。
「だって…とも虫怖い…」
やれやれ、有華は智美の頭を優しく撫でた。
だが有華は気付いた。
黒いアレがいた近辺に何やら粉のような物があった。
「なぁ、あの粉なんやろか?」
それは小麦粉や片栗粉に似たような白い粉だった。
「粉?」
智美は気になったが黒いアレのせいで近づけない。
仕方ないので有華が確認した。
なにやら怪しい。
まさかここはそういう怪しいクスリとかをしまう倉庫?
有華は一瞬そう思った。
だが恐る恐る粉を開封すると有華は気付いた。
「なんかマッチとかを消した後みたいな匂い…これ火薬やんか!」
そう、有華達が発見した粉は火に良く燃える火薬だった。
実はこの村では毎年花火大会があり、その為に未開封でしまっておいた火薬だったがそんなことを二人は知るよしもなかった。
「すごい!でもこれどうやって使うの?」
「爆弾を作るんや。」
「えっ?作るってゆったん作れるの?」
「わからん、でも粉の他に火薬を積めるような半分に割れとる丸い入れ物がある。多分花火を作る時に使うやつや。」
「花火…」
「これに火薬を積めてガムテープかなんかで固定して縄をつければ多分できる…と思う。」
有華は顎の辺りを抑えながら言った。
「これ、たくさん作ってあの分校に投げ込めんかな?届くかはわからんが…」
分校…そう。私達の敵はメンバーじゃない。
このゲームを仕掛けてきた秋元率いる大人達だ。
あの大人達がいなくなればここを脱出できるんじゃないだろうか?
有華は更に考えた。

【残り12人】


[第81話]

「佐江ちゃん…」
多田愛佳は一人で泣いていた。
寝ぼけていたが今なら思い出せる。
宮澤佐江は自分を庇って大島優子の元に飛び出した。
自分が寝ぼけて声を出したせいでこうなったのだ。
だが佐江は放送では呼ばれていない。
どこかで生きているのだ。
愛佳は一人になった事に震えた。
分校を出た時にはもう誰もいなかった。
大家志津香を待とうともしたが愛佳は突然の恐怖にその3分が待てずに走り出してしまった。
指原莉乃と出会えたことは奇跡だった。だがもう死んでしまった。
そうだ。もう莉乃とは二度と会えない…
渡辺麻友や平嶋夏海や仲川遥香、柏木由紀も米沢瑠美も片山陽加もみんなもう二度と会えない…
「ひっくひっく…」
優子かや玲奈に聞こえたら大変なので声をおし殺した。
ここは後10分で禁止エリアだ。
もうこのまま死んでしまおうかと思った。
こんなに死の恐怖に怯え生きるならばいっそのこと死んだほうがましではないか?
きっと誰にも会わなければ愛佳は死んでいただろう。
カッカッカッカッカッカッ
「警察署?」
「本当だ。こんなとこにあったなんてビックリ。」
「でももうすぐ禁止エリアですね…」
誰かの声がする。
それに複数いる。
愛佳は窓から外を見た。
「あっ…」
すぐに愛佳はわかった。
そしてそれと同時に何も持たずに愛佳は警察署を飛び出した!



カッカッカッカッカッカッ
「何か足音しないですか?」
「しかも走ってません?」
大島優子かもしれない。
前田敦子は銃を構えた…………が
その姿を見た敦子は気が抜けた。
「ずっと会いたかった…恐かったよ!」
飛び出してきた多田愛佳は突然敦子の胸に飛び込んだ。

【残り12人】


[第82話]

先ほど禁止エリアとなった警察署を後にしてから一時間が経過した。
多田愛佳は今までの事を前田敦子、前田亜美、小森美果に全て打ち明けた。
松井玲奈に襲われたこと、高橋みなみと会ったこと、宮澤佐江が自分を庇って大島優子に追われていること。
「じゃあたかみなは私達と同じ辺りにいた可能性が高い…私達も北東から南東に来たから。やっぱり入れ違っちゃったのか…」
敦子は肩を落とした。
「そんな…玲奈ちゃんが…」
亜美と美果は驚いた。
やはり普段玲奈は落ち着いたイメージのようだ。
「私…もう一人が辛くて死のうとしてました…3人に会えて良かった。」
また愛佳は泣き出した。
「多田さん、泣かないでくださいよ!」
「そうですよ。会えたんだからいいじゃないですか!」
亜美と美果は愛佳をなだめた。
「でも」
敦子だ。
「どんな理由だろうて自殺は絶対ダメだよ。強く生きなきゃ。生きてれば絶対いいこともみつかるんだから。」
敦子は平嶋夏海を思い出した。
身体を張って助けてくれた夏海。
彼女が助けてくれなかったら敦子も亜美も確実にこの世にはいなかっただろう。
「はい…ごめんなさい…」
愛佳は涙を拭った。
「もう…らぶたん泣き虫すぎ!」
敦子はちょっと馬鹿にしたように笑った。
「とにかくたかみなは私達を探しに北東にいるんだね?」
「はい。向こうに歩いてったから多分…」
「残り12人で玲奈ちゃんと優子がゲームに乗ってる。全滅する前に二人をなんとかしなくちゃ。」
敦子は拳を握った。
「じゃあたかみなさんを探しに行きますか!」
亜美が言った。
4人は北へ足を進めた。




その頃みなみは北東の端のある神社でお参りをしていた。
「敦子が…小森が…みんなが無事に帰れますように。」

【残り12人】


[第83話]

増田有華と河西智美は倉庫内をさらに探索し、ガムテープを発見した。
有華は花火用のボールに火薬を詰めて、智美はそれをガムテープで巻いていた。
ロープは見つからなかった。
「火薬って案外臭いなぁ…」
手袋も探したかったが倉庫があるエリアは3時間後に禁止エリアになる。
二人は急いで作業をした。
「でもこれさ、どうやってあそこに投げるの?」
智美は疑問だった。
分校があるエリアはすでに禁止エリアだし、その隣のエリアから投げるとしても分校まではかなり距離がある。
「それが問題やけど…」
有華は少し考えてから言った。
「これを使うしかないと思うねん。」
それは何やら倉庫に有った大砲のようだった。
「なにこれ?」
「花火を打ち上げるやつや。」
「えー!?」
智美は驚いた。
「花火を打ち上げるやつってそんなのどうやって使うの?」
有華はまたしても手を顎に持ってきた。
「この中に今作っとる玉を入れてここについてる縄に火をつける。横向きにしてな。そしたらあそこまで届くんちゃう?」
有華は本気か嘘かわからない事を言った。
「でもこんなのどうやって運ぶの?」
「そりゃウチとともーみで運ぶしないな。禁止エリアになるまであと約2時間…そろそろ運ぶか…」
特性火薬玉は約10個できた。
これだけあれば十分だ。
「でもゆったん足怪我してるんだよ!大丈夫なの?」
「大丈夫も何もない。あそこを爆破すれば全て終わる…」
有華は遠い目をした。
「あとの問題は首輪だけや。こんなことして爆破されんかな?」
有華は気になっていた。
こんな事どこかで聞かれていたら遠隔操作で首輪が爆破されるのではないかと。
「それはともも怖い…大丈夫かな…」
智美は下を向いた。
「でも…考えても仕方ない。やるしかないんや。行くで!ともーみ!」
「うん!」
二人は分校にでっかい花火を打ち上げる為に歩き出した。

【残り12人】


[第84話]

増田有華と河西智美が打ち上げ花火マシーン(仮)を運び始めて約1時間半。
二人は予定よりも早くあと30分で禁止エリアになる集落を抜けた。
「もうちょっとや…がんばれともーみ!」「うん!」
女二人で運ぶには重すぎたがどうにか二人は分校の右隣のエリアの真ん中辺りにまで来ていた。
隣エリアギリギリで打ちたい…
ちなみにさらに右隣は昨日由依も合わせた3人でいた診療所のあるエリアだった。
「もうすぐや…もうすぐウチの打ち上げ花火をぶちこんだる!」
有華がそう意気込んだ時だった。まさか二人は予想していなかっただろう。内部の人間でも参加者でも無いところに最大の【敵】がいたなんて…
二人が隣エリアギリギリに着く5分前だった。
「きゃっ!」
智美が突然声をあげた。
「どうしたんや…とも…」
有華は空を見上げた。
「そんな…そんなアホな!」

パラパラ…
「やめて!やめてや!」
パラパラパラパラ…
ザァァァァァァー
「キャア!すごい雨!」
そう。最大の【敵】とは天気。
有華達が着く寸前に空が大粒の涙を溢したのだった。
「ダメや!いまやるしかない!」
有華は大砲を横にしてに玉を入れた。 そして倉庫に有ったライターで火をつけた。……………………が、
「駄目やつかない!」
「そんな!?」
一瞬で土砂降りとなった雨の中、火はつかなかった。
「なんでや!何で邪魔するねん!」
有華は大声で叫んだ。
「止んで!お願い!」
智美も叫んだ。
この計画が狂ったらおしまいだ。
「いやや!いやや!止め!止むんや!」
「お願い!私達、昔みたいに戻りたいだけなの!お願い!助けて!」
二人は空に向かって叫び続けた。
そう周りに聞こえるような大声で。
「二人とも大丈夫?」
二人の後ろから声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
そう何年も。
「優子…」
二人は声を揃えた。
「大丈夫?私がすぐに助けてあげるよ。」
大島優子は二人にマシンガンを構えた。
「優子やめるんや!」
「優子やめて!優しい優子に戻って!」
「ばいばい。」
パララララ!
優子がマシンガンを乱射した。
「キャアアアアアア!」
二人は目を瞑り叫んだ瞬間倒れた。
何かに押し倒されたように。
「えっ?」
智美が目を開けた。
そこにいたのは……
「佐江ちゃん!」
「二人共大丈夫か?」
宮澤佐江は二人を間一髪で救った。

【残り12人】


AKB48バトルロワイヤル 8巻

2010年12月03日 20時09分23秒 | 研究解析
(この作品は私ブログ主ではなく、神島氏の作品です)


AKB48バトルロワイヤル 8巻


[第66話]

「渡辺さん…平嶋さん…」
前田亜美はまだ泣いていた。
どうにか井戸に着いて喉の渇きは癒えたが前田敦子も亜美も心は渇いたままだった。
「あーみん…」
敦子の予想通り、平嶋夏海と渡辺麻友は絶命していた。
大好きだった小嶋陽菜も…
陽菜もまさか麻里子が?はたまた優子だろうか?
敦子は考えたくなかった。
「また二人になっちゃいましたね…」
亜美は悲しそうにそう呟いた。
そうだ。
最初は二人だった。
正直敦子は亜美に最初は一切興味がなかった。
ただ同じチームAでたまたま名字が同じだけ。
話す事などないから亜美の事など一切知らなかった。
だが今はこうして手を繋ぎあっている。
亜美を必要としている。
もしこのゲームが無ければ亜美とこんな関係にはなれなかった。
敦子は初めてこの馬鹿げたゲームに感謝した。
その時だ。
ザッザッザッザッ
誰かが走る音だ。
麻里子かもしれない。
亜美を抱き寄せ敦子は銃を構えた。
その瞬間、茂みから誰かの頭が見えたと思ったらその人物は思いきり正面から転んだ。
「いったーい…」
手から何かオレンジ色の物が転がった。
「ミカン…?」
敦子はつい口にだしてしまった。
「あっ私のミカン…」
その人物が顔をあげた瞬間、亜美が声をあげた。
「こもりん!?」
「あーみん?」

……………………………

「やったー!ずっとずっとずぅーっと会いたかった!」
「あーみん…私も!」
一定の間の後同期の二人は奇跡の再会をした。
「やったー!やったやったやったー!」
亜美は小森美果に思いきり抱きついた。
敦子は嬉しくなった。
今まで先輩にしか遭遇していなかった亜美が初めてタメ口を利いていた。
「あっ前田さん!」
美果が突然はっきりした口調で敦子を見た。
「たかみなさんが心配してましたよ。」
「たかみな?たかみなに会ったの?」
「会ったも何もさっきまで一緒に居ましたから。」
敦子は驚いた。
美果の話によると高橋みなみは大島優子に襲われて走っていた時に突然自分が囮になると別方向に走ってしまったそうだ。
美果は自分がトロいのに気づいていなかった。
「それでたかみなはどっちに?」
「確かに向こうのほうに…」
美果は南を指した。
「行こう!」
優子に襲われたら危険だ。
たかみな…絶対死なないでよ!
【残り15人】


[第67話]

「見て!逮捕しちゃうぞ!」
多田愛佳はミニスカポリスの真似をした。
「らぶたん、あんまふざけないの。」
宮澤佐江は愛佳を諭した。
二人は玲奈から逃げたあと島の南東にある警察署に隠れていた。
当然だが助けてくれる「お巡りさん」はいなかった。
だが二人がここに来たのには理由があった。
「ちゃんと探して!」
「はーい。」
二人は警察署なら拳銃の一丁や二丁くらいはあるような気がした。
二人には今武器がない。
先ほど頂戴したデイパックは佐江が管理していたので地図などは大丈夫だった。
「全く。さっきは泣いてたと思ったら…」
愛佳は先ほど放送があった時はずっと泣いていた。
渡辺麻友や平嶋夏海や仲川遥香が死んだせいだろう。
他にも今回の放送では元チームBが多かった気がする。
無理もない。
だが愛佳は少しするとまた元気を取り戻した。
「泣いても死んじゃったみんなは報われないよね…。」と一言だけ言って。

「あっこれは?」
佐江が見ると愛佳の手に握られていたのは間違いなく拳銃だった。
「弾は?」
「えっとこうやって開けるのかな…」
愛佳は初めて触った拳銃をなんとか開けて確認してみた。
「入ってるよ!でも替えの弾はわからないや…」
替えの弾がなくては足りないかもしれない…
「弾がどこかにあるかもしれないし探そう。」
そう愛佳に言った。
その時だった。
カッカッカッカッ
誰かが走る音だ。(この辺は草があまり生えてない。)
「誰か見える?」
愛佳と佐江は警察署から外を確認した。
「誰だろう…暗くて顔は良く見えないや…でもポニーテールだ。玲奈ちゃんや麻里子じゃない。それに結構小さい…と思う。」
佐江は見える限りの情報を言った。
そこに愛佳が尋ねた。
「ねぇ佐江ちゃん、その子頭にバカみたいなリボンしてない?」
「バカみたいなリボン?あぁ…多分あれがそうかな…………ってことは……」

「たかみなだ!!」

二人同時に言った。
「たかみな!」
佐江は声をあげた。
すると人影が近付いてきた。
「えっ?誰?…………って佐江!らぶたん!」
やはりそうだ。
小柄で茶髪でポニーテールにバカリボン。
高橋みなみ以外はあり得なかった。
「良かった…無事で…でもごめん、私急いでるの。」
「えっ?」
二人は顔を見合わせた。

【残り15人】


[第68話]

「待ってよ!どうしたのたかみな?折角会えたのに。」
佐江は悲しそうな顔をした。
「実はね…小森を探してるの。会ってないかな?あの子一人でどこかにいるはずなんだけど…」
みなみは小森美果を探していた。
どうにか大島優子からは逃げたが別々に逃げた為、行方が気になった。
ただでさえボーっとしているのに…
「こもりんか…見てないよ。ごめんね。」
佐江は申し訳なさそうに言った。
「そっか…じゃああっちゃんは?」
みなみは前田敦子がやはり心配だった。
「ごめん、あっちゃんも会ってないや…私達は才加と珠理奈ちゃんとともーみを探してる。あと有華も。」
佐江は会いたい人を片っ端から言った。
「ごめん…全員会ってない…私達運悪いね…」
みなみが暗い顔をした。
すると今まで黙っていた愛佳が
「まぁまぁ!いいじゃん会えたんだしさ!たかみなさんも急ぐのも大事だけど少しは落ち着きましょうよ!きっとこもりんならその辺で寝てますよ!」
その辺で寝てる…
簡単に想像がつくのが妙におかしくて3人は笑った。


「とりあえずらぶたんその格好やばいよ!」
警察署に入る事にしたみなみは未だミニスカポリスの愛佳の格好を笑った。
「えー似合わないかな…」
愛佳は不満足そうだ。
「まぁまぁ!それでたかみな、なんだっけ?」
佐江が話を遮った。
「うん、優子がマシンガンを持ってておかしくなったって話したでしょ?あと麻里子は亜美菜を殺したし、二人の話では玲奈ちゃんもやばいんだよね?」
三人は今まで出会った危険人物について話していた。
「とりあえずこの3人をどうにかしないとみんな死ぬ一方だよ…。」
みなみは悲しそうに言った。
「止める方法は無いのかな?」
佐江は提案したがあの3人は話し合いで解決できる相手ではないと言うことで意見は纏まった。
「それじゃあどうしたらいいんだよ~…」
愛佳はため息をついた。
その時みなみは思い出した。
「あっ首輪!二人とも首輪を見せて?」
みなみは二人の後ろに回り首輪の後ろを見た。
「KとB…」
佐江がKで愛佳がBだ。
やっぱりチームのアルファベット?いや、愛佳は元Bだが今はAだ。
それに美果や倉持明日香や石田晴香は4だった。
「あっ!」
その時みなみは勘づいた。
もしかしたら首輪の裏の文字はA、K、B、4、8じゃないだろうか。
そしてその首輪の5人が揃うと何か起こる…
みなみは更に考えた

【残り15人】


[第69話]

なんで?なんで誰にも会わないの?
大家志津香は強運どころか超強運をまさかの今発揮していた。
2年以上正規メンバーになれずじゃんけん大会も見事に敗退。
選挙でも圏外。
はっきりいって今までは運が無すぎた。
後輩のメンバーには抜かれに抜かれ干されているのにAKBINGOの干され特集にはなぜかベテランメン扱い。
私が何をしたんだ。
まさか研究生オーディションで全て運を使い果たした?
そう諦めかけたときもあった。
だがその運は今日の為にあったのだ。
あちこちで銃声が聞こえる中、志津香は普通に外にいるのに誰にも会わなかった。
いや、途中あまりにも寂しいからわざわざ銃声がするほうに行ってみたりもした。
だが志津香が着く頃にいるのは死体死体死体。
今まで死体だけならかなりの人数に会った。
だが生きている人間にはまだ一度も会えていない。
そうこうしているうちにいつの間にか残り15人。
志津香はもしかしたらこのまま優勝するんじゃないかと思った。
そうすればソロデビューに生活保障。芸能活動保障に1億円。
志津香は妄想が膨らんでいた。
折角防弾チョッキという心強い武器が出たが完全に無意味だ。
だが一応着ておいた。
明らかにモコモコして不自然だが仕方ない。
そこに…
ザッザッザッザッ
足音がする。
どうするか…多分行っても会えないんだろうけど…
一応気になるし足音のするほうに歩いてみた。
やっぱり誰にも会えないのは寂しい。
足音はこのへんから聞こえたが…
やはり誰もいないか。と思ったその時
耳元にバンッと言う音が聞こえた。
また銃声か。
懲りないなぁ…
はぁ…誰もいない…
なんだか志津香は眠かった。
その時、遠くに人影が見えた。
あれ?誰かいる?
やっと人に会えた?
志津香はたくさんのメンバーを見た。20人以上はいる。
「みんな探したよ!」
志津香は笑顔になった。

「何でこいつ笑いながら死んでんの?キモッ。てか誰だっけこいつ。」
志津香の頭を撃った篠田麻里子は顔を見たがいまいち誰か思い出せなかった。
「おーいえだっけ?違うな…てかおーいえ元気かな?あいつ前電話したときAVやるかもとか言ってたしな…あっ」
志津香の体を見て麻里子は思った。
なんか着てる。
脱がしてみると防弾チョッキのようだった。
「いいもん持ってんじゃん。」
麻里子が防弾チョッキを着たその時だった。
「酷いことするのね…」
茂みから声が聞こえた。

【残り14人】


[第70話]

麻里子は銃を構えた。
「誰だ?」
木陰から現れたのは綺麗な黒髪の少女…SKE48の松井玲奈だった。
「酷いわ…いきなり頭をバンッなんて…」
玲奈は呟いた。
「だから?世の中弱肉強食なんだよ。」
麻里子は銃口を玲奈に向けて言った。
「それなら…」
玲奈が下を向いた瞬間だった。
「あなた!私に食べられちゃうわね!」
玲奈は刀を鞘から抜いた。
バンッバンッバンッ
その瞬間、麻里子が玲奈に向けて三発発砲した。
玲奈はサッと木陰に隠れた。
「いくら刀を持ってようと銃には敵わないよね?」
バンッバンッバンッバンッ
麻里子はさらに発砲した。
そこに…
バンッ
麻里子の銃ではない音がした。
見ると玲奈が笑いながら銃を構えていた。
玲奈は銃を持っていたのだ!
「美しくないからあまり好きじゃないけど…うるさいし…」
玲奈は呟いた。
玲奈の放った銃弾は麻里子のヘソ辺りに命中したが、麻里子は今さっき大家志津香から奪った防弾チョッキを着ていたのでピンピンしていた。
「それでおしまいかよ?」
バンッバンッ
麻里子が更に銃弾を放った。
玲奈は木陰に隠れる。
チョロチョロとムカつく女だ。
麻里子も木陰に隠れて弾を装填した。
バンッバンッ
玲奈が撃ってくる。
麻里子は木の陰に隠れているので当たらない。
麻里子は勝つ自信があった。
初めて防弾チョッキを着たがすごい。
まともに喰らったのに全然痛くなかった。
バンッバンッバンッバンッ
麻里子が更に発砲した。
玲奈は突然撃ってこなくなったと思ったら隠れてしまって居場所がいまいちわからなくなってしまった。
移動する音は聞こえなかったから多分あそこにいるのだろう。
麻里子は構わず撃った。
バンッバンッバンッバンッバンッバンッ
麻里子は連弾した。
「ほらほら隠れてたらつまんないじゃん!出てこいよ!それとも恐くなっちゃった?」
麻里子の煽りにも言葉はない。少し変に思った。
まさかもう死んでいる?
弾の補充にしては長いしこんなに長い時間応答がないなんて変だ。
麻里子が一旦撃つのをやめたその時だった。

ドガーーーン!!

ものすごい爆発音と爆風に煽られ麻里子は倒れた。
直撃は免れたものの麻里子は体全体を負傷した。
「くそ…まさか爆弾まで持ってるなんて…」
だが麻里子はまだ銃がある。
なんとか撃つ力くらいはある。
麻里子は決着をつける時だと悟った。

【残り14人】


[第71話]

「どこだ!出てこいよ!」
バンッバンッバンッバンッ
麻里子は居場所がわからない玲奈に向かって何度も発砲した。
どこだ…どこにいる…
「こんな姑息な手使って恥ずかしくないの?だから珠理奈に勝てないんだよ!」
麻里子は煽りのつもりで言ったが…
うん?なんだか手に違和感がある…
麻里子は手を見た。
「ギャアアアアアア!」
麻里子が拳銃を持っていたはずの右手の指はすでに無かった。
これでは拳銃が持てない!
「くそっどこに」
「ここよ。」
玲奈はうつ伏せの麻里子に股がり日本刀を麻里子の首筋に当てた。
いつの間に…
「珠理奈になに?」
玲奈は鬼、いや悪魔のような顔だった。
爆弾のせいで回りの木が燃えていて暑かった。
「なっなんでもないよ!あんなの嘘!玲奈ちゃん、争いはやめよ?」
麻里子は精一杯可愛い声をだして続けた。
「私ね、ずっと怖かった…突然殺しあいをしろなんて言われて…本当は嫌だった!それは玲奈ちゃんも一緒でしょ?」
玲奈は黙っていた。
「私ね、今すごい悔やんでることがあるの。大好きだったまぁちゃんや陽菜を殺しちゃったの!
私、自分が生きる事しか考えられなかった!でもね、今は違う。私達は昔の仲良しなアイドルグループに戻れると思うの!」
麻里子の目からはボロボロ涙が流れた。
「私、昔みたいに戻りたい!みんなで歌ったり踊ったり握手会やったりしたい!これは本当に嘘じゃないの!」
麻里子の顔を玲奈はただ見ていた。
「だからね、私今から謝りに行く。私が傷つけたたかみな、才加、佐江、ともーみ、あっちゃん、あーみん…みんなに!もう死んじゃった人は無理だけど生きてればなんでもできると思うの!」
……………………
「だから玲奈ちゃんも一緒に行こう!今なら間に合うよ!」
麻里子は涙を拭った。
……………………
玲奈は無言で麻里子の首筋から刀を離し麻里子から降りた。
「ありがとう…玲奈ちゃん…」
今だ。
麻里子が腰にある銃を左手で掴み玲奈に銃口を向けた。………………………………瞬間だった。
玲奈は麻里子の首を日本刀で一瞬にしてはねた。
麻里子は「なんで…?」と口を動かす前に息絶えた。
麻里子はこのゲームの説明を受けている時にこう思った。


「奪われるくらいなら奪ってやる。私は誰にも屈っさない!」


「醜い人…。」
玲奈は一言だけ言うと麻里子から防弾チョッキを奪いその場から去った。

【残り13人】


[第72話]

「じゃあ【A、K、B、4、8】の首輪を集めるの?」
宮澤佐江は高橋みなみに尋ねた。
「集めるって首についてるのに…」
多田愛佳は怖がった。
「そこなんだよ。どうやって首輪を集めるか。そもそも何の意味があるかもわからないけど…」
みなみは困惑した。
「でもただの記号とは思えない。絶対に何か意味があるはず。あとはこの穴も疑問だけど…」
みなみは考える度に頭が痛くなった。
「穴…どんな穴?」
愛佳は佐江の首輪の後ろを見た。
「この大きさ…珠理奈ちゃんが持ってた謎の石の大きさと同じくらいな気がする…」
「謎の石?」
みなみは愛佳から珠理奈の謎の武器の話を聞いた。
「それ絶対怪しい!よし、珠理奈ちゃんを探そう。他にも探す人はいっぱいいるし…」
みなみは美果と敦子の事を思い出した。
「私、そろそろ行かなきゃ。二人はここにいる?」
みなみは言った。
「うん…珠理奈ちゃんや才加達を探したいけど、私達まだ武器を持ってないんだ。」
武器!みなみは大事な事を忘れていた。
「あたしも持ってない!オオバカだ~!」
「それなら。」
愛佳の声だ。
「これ持ってってください。それしか弾ないけど。」
それは愛佳が先ほど見つけた拳銃だった。
「でも、これ一つしかないんでしょ?二人は…」
「私達はここに隠れてるし、誰か来たらここから確認できるから大丈夫。」
佐江は警察署の窓を指さした。
いいのだろうか…
「その代わり…」
愛佳だ。
「その代わり絶対死なないでくださいよ!首輪の謎を解明しましょう!もしかしたら首輪が外れるのかもしれないし…」
みなみはその可能性も考えていなくは無かった。
だがわざわざこんなゲームを仕掛けておいてそんな逃げ道を用意するだろうか。
みなみは疑問だったが、可能性は0じゃない。
信じるしかなかった。
「うん。行ってきます。二人も絶対死んじゃダメだからね!」
みなみはそういうと警察署から北に歩き始めた。
美果…敦子…無事だろうか。
そして珠理奈に会って首輪の謎を解明しなくては…
みなみは歩き始めた。



みなみが旅立ってから約一時間後。
警察署の近くを誰かが歩いていた。
「たかみな…どこイっちゃったの?寂しいよ…」
大島優子は真っ暗の中をさ迷っていた。

【残り13人】


[第73話]

「ふぁ~。」
時計の針は夜の11時を指していた。
愛佳は眠そうに目を擦った。
「結局銃はたかみなに渡した一丁だけか…」
佐江は残念そうに言った。
「警察署のくせに銃が一丁しかないってなんだよ!ばか!」
愛佳は眠気のせいでイライラした。
高橋みなみに渡した銃の弾も見つからなかった。
「らぶたん、代わりばんこで寝ない?二人寝る訳にはいかな…」
「その意見賛成!最初あたしね!おやすみ~」
佐江の提案が言い終わる前に愛佳は警察署の奥にあるソファーで寝始めた。
「もう…」
佐江はやれやれと思ったが後輩の上に年下だ。
面倒を見なければならない。
佐江は一人で座って考えた。
みなみは大丈夫だろうか。才加は?珠理奈は?智美は?
自分が見捨てた事により奥真奈美は幼い命を引き取ってしまった。
全て自分のせいだ。
佐江は愛佳の寝顔を見た。
この子だけは必ず守らなければいけない。
自分が犠牲になったとしても!
そう佐江が決心した時だった。
「泣きなが~ら微笑んで~」
この歌は!
佐江は恐る恐る窓から確認した。
大島優子だ!
才加やみなみの言う通り明らかに様子がおかしい。
佐江は息を止めてそっと愛佳に近づいた。
「らぶたん…らぶたん…」
佐江はいつでも逃げられるように愛佳を起こそうとした。
だがそれが悲劇を起こした。
「な~に?もう時間?」
愛佳の声は少し大きい。
しっ!しっ!
佐江は人差し指を口の前にあてた。
外から聞こえた歌が止んだ。
「だ~れ?」
優子の声だ!
「えっ?な~に佐江ち…」
今度は愛佳の口を塞いだ。
歌声が止んだ。
「さえ?さえ~?いるの?」
まずい気づかれた!
「らぶたんそこにいて。すぐ戻る。」
「えっ?佐江ちゃ…」
愛佳が言い終わる前に佐江ちゃんは外へ出た。
「優子!こっちだよ!」
佐江は東へ走った。
「あっさえ~!あ~そ~ぼ!」
優子はそう言うとマシンガンを構えた。
パララララ!
みなみ…才加…あんたたちもこうやって弱い子を助けてきたんだよね?
「あんた達にできて私にできないわけないよね?」
佐江はそう言って全速力で走り抜けた。

【残り13人】


[第74話]

「やっと着いた~!」
「ここなら大丈夫そうですね。」
「とも、みんなのデイパックあっちに置くよ!」
増田有華、横山由依、河西智美の3人は集落の中にある比較的大きめの家屋に腰を降ろした。
もっともどこも鍵が掛かっていたので窓を少し割って不法侵入した訳だが…
この状況では仕方ない。
「疲れた~!」
有華が一番にソファーに座った。
「ねぇねぇゆったん!こっち来て~」
智美の声だ。
私だけ?どうしたのだろうか。
有華は片足を引きずりながら智美がいるキッチンへ向かった。
「どうしたん?」
「見て!こんなに食材があったの!ゆったんお腹すかない?ともが作るよ!」
智美は昔家庭科部だっただけに料理が上手い。
有華は嬉しかった。
「ホンマ?嬉しいわ!」
「何がいいかな?お肉も野菜もたっぷりあるから何品か作ろうかな~!」
有華は少し気になる事があった。
「なぁともーみ?」
「なぁに?」
「なんでウチだけ呼んだん?由依ちゃんもおるやん。」
有華は智美がわざわざ自分の名前だけ呼んだのが気になった。
「なんでってダメ?ともはゆったんが好きだから呼んだんだよ?迷惑だった?」
智美は悲しそうな顔をした。
そういう訳ではないのだが…
だが悲しそうな表情の智美を見て有華はそれ以上何も言わなかった。
「ううん、そんな事ないで。ともーみのご飯楽しみにしとるな!」
有華は笑顔で言った。




みぃちゃん…まぁちゃん…れいにゃん…ともちん…何でみんな居なくなっちゃったの?
とも、みんなが大好きだったよ。今も生きてるゆったんも才加も佐江も優子もまりちゃんもたかみなもあっちゃんも大好き。
でもね、とも、ゆったんと二人がいいな。突然入ったあんな意味わかんない子、とも嫌だよ…
大丈夫だよね…
バレないよね…

智美は使い終わったそれをデイパックに戻した。


「二人ともできたよ!」
智美は二人を呼んだ。
「うわ!うまそ~!」
「すごい!河西さんって料理上手なんですね!」
智美はパスタ、スープ、サラダと3品も作った。
見た目からしてプロのシェフが作ったみたいに美味しそうだった。
「ちゃんと取り分けたからね!はいゆったん!」
有華の皿を置いた。
「これ由依ちゃんのね。」
智美はできるだけ笑顔を作って由依の皿も置いた。

【残り13人】


AKB48バトルロワイヤル 7巻

2010年12月03日 20時07分28秒 | 研究解析
(この作品は私ブログ主ではなく、神島氏の作品です)


AKB48バトルロワイヤル 7巻


[第57話]

前田敦子、前田亜美、渡辺麻友の3人は井戸へ向かう為に森を歩いていた。
途中首と体がバラバラの死体がいくつか転がっていて気味が悪かった。
なぜわざわざそんな殺し方をするのか…
死体がある度に敦子は亜美に見せないように目隠しをした。
15歳の少女に見せていいものじゃない。
麻友は意外と死体を良く見ていた。オカルトとかが好きなんだろうか。
その時だ。
「誰か自殺したのかな…」
麻友が突然言った。
麻友の目線の先を見ると木に輪になったロープを吊るしてぶら下がっている人影が見えた。
自殺か…こんな状況なら有り得なくもない…
敦子は悲しくなった。
「あの…」
亜美が喋りだした。
「どうしたの?」
「あの人、まだ動いてませんか?」
亜美の言葉に敦子と麻友は再度首吊り死体を見た。
本当だ!微かに動いている!
「大変助けなきゃ!」
敦子は走り出した。
亜美と麻友もその後を追った。
そしてその人物を見た時麻友は叫んだ。
「なっちゃん!」
そう。麻友と同じチームB、そして渡り廊下走り隊メンバーの平嶋夏海だった。
「なっちゃん!?大変!あーみん、ロープを持ってて。私とまゆゆで下におろすから!」
敦子もまた同じ一期生の夏海が死にかけているのに気が動転した。
亜美がロープを両手で持った。
「せーの!」
敦子と麻友が同時に夏海の体を地上に降ろした。
「なっちゃん!」
どうにか降ろした夏海だが意識がなかった。
「あたし人工呼吸する!」
敦子が夏海を仰向けにして互いの唇を重ねた。
「フーッフーッフーッ」
そして両手で思いっきり腹を押した。
「なっちゃん死んじゃダメ!」
敦子は一生懸命腹を押した。
「チームが変わってもずっと一緒にやってきたじゃん!」
敦子は泣き始めた。
「次あたしがやります!」
泣き始めた敦子に代わりに麻友が人工呼吸を始めた。
「なっちゃんお願い!帰ってきて!」
今回ばかりは麻友も真剣だった。
「お願いなっちゃん!」
「なっちゃん死んじゃイヤ!」
「平嶋さん!生きて下さい!」


私を呼ぶ声がする。
怖くて怖くて…
人を殺すなんてできない。でも殺されるのもイヤ。
だから自殺しようと思ったんだっけ…
あれ?まゆゆとあっちゃんの声…まゆゆも死んじゃったんだ…
天国でも渡り廊下やりたいね…
「なっちゃん!」
泣き顔の美少女がそこにいた。
まるでCGみたいに綺麗だった。

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[第58話]

「あれ…まゆゆ…生きてるの?」
夏海は重たい瞳を静かに開いた。
「生きてるのってこっちのセリフだよ!もう心配したんだから!」
麻友は夏海に抱きついた。
「なっちゃん良かった…本当に…。」
敦子は涙を拭った。
「あーみんが見つけたんだよ!あーみんに感謝しなさい!」
麻友は子供を叱るようにに言った。
「ありがとう…あーみん。」
「いえいえ!生きてて良かったですよ!」
亜美は笑顔だった。
落ち着いた所で夏海に今までの経緯を聞いた。
分校を出てから鈴木まりやの死体を見た夏海は怖くなり断崖のほうへ足を進めた。
だが断崖には首を斬られた梅田彩佳の死体があった。
人を信用できなくなった夏海はずっとその断崖の近辺に隠れていた。
だが16時にその場所は禁止エリアになった。
禁止エリアになる一時間ほど前に仲谷明香が断崖の絶壁に座った。
様子がおかしかったので声はかけなかったが禁止エリアになる直前までいたが明香は動かなかったので多分自殺したのだろうと思った。
その時に「そうだ。誰かに殺されるくらいならいっその事自分も自殺しよう。」と思い禁止エリアに行こうとしかたが決心がつかず足が動かなかった。
その後、武器のロープを木に結びつけたはいいものの、なかなか決心がつかず先ほどどうにか首を吊ったそうだ。
敦子達が通ったのは夏海が完全に帰らぬ人となる直前だった。
「バカ!死んでもしょうがないでしょ?」
麻友は怒った。
「本当にごめんね、まゆゆ。ともちんや、あやりんや、さしこが死んじゃってからは余計に辛くなっちゃって…」
夏海は俯いた。
「もう自殺なんて考えちゃダメだよ。私達と一緒に生きる方法を考えよう。」
「まゆゆ…あっちゃん…ありがとう。」
「さっもう行こう。喉渇いちゃったし。」
敦子が立ち上がったその時だった。
バンッ
「キャアアアアアア!」
麻友の背中が何者かに撃たれた。
バンッバンッ
何者かはさらに発砲してくる。
「誰なの?正体くらい見せなよ!」
敦子は叫んだ。
「じゃあ見せてあげるよ。あっちゃん。」
敦子は信じたくなかった。
まさかそんな…
木の陰から現れたのは敦子が信頼を置いていた人物。篠田麻里子だった。

【残り17人】


[第59話]

「佐江ちゃん大丈夫?」
多田愛佳は自分達の元にわざわざ駆けつけてくれた宮澤佐江が元気がないのに気づいていた。
「大丈夫だよ。ちょっと疲れちゃって…」
佐江は奥真奈美を見捨てて逃げた事を愛佳と松井珠理奈に言うことができなかった。
もしそんな事がわかったら自分達もいざとなったら置いて逃げるんじゃないかと愛佳達が心配すると思ったからだった。
真奈美…生きてるといいけど…
既に時計は夜7時を回っていた。
3人は井戸に着き水を飲んでいた。
ペットボトルにも予備の水を入れた。
ちなみにこのペットボトルは…
「死んじゃった人から取るのはあれだけど…」
3人はデイパックがなかったので井戸より少し南に行ったところにあった高城亜樹と中田ちさとの死体の側のデイパックを拝借した。
誰かに爆弾を投げられたのか死体は酷い状態だった。
デイパックもかなりボロボロだったが何とか一つは中身が綺麗な状態で残っていた。
「はぁ~喉はもう大丈夫だけどお腹すいたよ…」
拝借したデイパックからパンを3人で割って食べたが愛佳はそんな物では空腹は満たされなかった。

「食べ物か…やっぱ民家とか農家の家、後は集落らへんかな?」
「民家はダメ!」
愛佳は玲奈の恐怖を思い出した。
もしまだ居たら確実に殺される。
「まさか玲奈ちゃんがね…」
佐江は篠田麻里子の他に松井玲奈がゲームにのっていることが驚いた。
そこまで交流はないが大人しいタイプだと思っていたからだ。
「じゃあこの農家の家にしませんか?集落は遠いし…」
口を開いたのは珠理奈だった。
「農家の家か…いいかもね。」
「農家って事は牛とかいるのかな?」
佐江も愛佳も乗り気で行き先が決まりそうなその時だった。
ザッザッザッザッ
足音がする。
しかも速い。走っているようだ。
「走ってる?」
「佐江ちゃんみたいに誰かから逃げてるのかな?」
だとしたらいい人物だろうか。
「殺す殺す殺す!」
声がした。あの声は……
「玲奈の声!」
珠理奈が声をあげたと同時に誰かが茂みから出てきた。
「才加!」
今度は佐江が声をあげた。
「佐江!らぶたん!珠理奈ちゃん!無事で良かった!けど…」
才加が続けた。
「今は逃げろ!」
才加が大声をあげたと同時にもう一人茂みから現れた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」
茂みから現れたのは鬼のような形相をした松井玲奈だった。

【残り17人】


[第60話]

「キャアアアアアア!」
愛佳は玲奈を見て思わず叫んだ。
だが玲奈はそんな愛佳には目もくれなかった。
「珠理奈…また会えたね。」
玲奈は気持ち悪いほど満面の笑みだった。
「玲奈…」
「死ねええぇぇ!」
玲奈は珠理奈に日本刀で襲い掛かった。
だが……………………またしても転んだ。
才加が上手く足を引っ掻けたのだ!
転んだ玲奈だがずっと死闘を共にしてきた武器の日本刀は離さなかった。
「玲奈の狙いは私です!私が一人で逃げるので皆さんは別の方向に逃げて下さい!」
珠理奈は声をあげた。
だが才加は珠理奈の腕を掴んだ。
「そんな事できる訳ないだろ。一緒に行こう。」
「でも!」
「佐江!らぶたんは頼んだよ!珠理奈は私が責任もって預かる!」
才加は佐江を真っ直ぐ見て言った。
「才加……せっかく会えたのに…」
佐江は悲しそうな目をした。
「必ずまた会える。」
才加は断言した。
そうこうしてる間に玲奈が起き上がろうとしていた。
「お前は一生寝てろ!」
才加が玲奈の背中にかかと落としを喰らわせた。
「ぐぁ!」
「珠理奈、走れる?」
「はい!もちろんです。秋元さん…ありがとうございます!」
「お礼は逃げ切った後にしてよ。走るよ!」
「はい!」
才加と珠理奈は全速力で東のほうへ足を進めた。
「私達も行こう。」
「うん…珠理奈ちゃん大丈夫かな…」
佐江と愛佳は大急ぎで南に足を進めた。




「くそっあの怪力ゴリラ女…」
玲奈が起き上がった時、周りにはもう誰も居なかった。
「珠理奈もあいつも絶対許さない!私が優勝してついでにボーナスもいただくんだから!」
玲奈は自分の中で珠理奈への執念が今までの倍以上増したような気がした。

【残り17人】


[第61話]

「おいしそー!たかみなさん、食べて大丈夫だと思いますか?」
小森美果はオレンジ色に熟れたミカンを見て言った。
「大丈夫じゃない?人様の物を勝手にいただくのはあれだけど…」
高橋みなみは一瞬嫌な想像が頭に過った。
もしここで死んだらミカンを食べる事ももうできないのだ。
それなら別に食べても問題ないだろう。と。
そんなみなみとは裏腹に美果は既に食べ始めていた。
「おいし~甘~い!」
悠長な美果を見てなんだかみなみは笑ってしまった。
その時だった。
美果以外に誰かがミカンを食べる様な音がした。
空腹に耐えられなくなり誰かが食べているのだろうか。
みなみはチラッと覗いた時に後悔した。
見てはいけないものを見てしまった。
「はい、はるごんあ~ん。美味しい?」
そこにはあのチームKのエース、大島優子が何かにミカンを食べさせていた。
それが鳥や猫ならよかったのだが…
優子がミカンを食べさせていたのは仲川遥香と思われる生首だった。みなみは思わず「キャアアアアアア!」と叫んでしまった。
優子と美果がみなみを見た。
「たかみなさん?」
「たかみなだ!たかみなも一緒にあ~そ~ぼ!」
優子は恐ろしい目つきで、だが満面の笑みでそう言った。
「小森!逃げるよ!」
咄嗟の事で腰が抜けそうなみなみだったがここで立ち止まったら確実に死ぬ。
そう悟った。
美果は何が何だかわからない様子だった。
「たかみなさん?」
「早く!」
みなみはミカンを片手に持ったままの美果の手をひいて走り出した。
「たかみな?こもりん?会えて嬉しいよ~会いたかった~会いたかった会いたかった~Yes!」
パララララ!
優子はAKB48のお馴染みの定番曲を歌うとお馴染みマシンガンを乱射した。
ブチュッ
ミカンが多数潰れる音が聞こえた。
「キャアアアアアア!」
事の重大さに気付いた美果も全速力で走り出した。
まずい。このままでは二人とも追いつかれてしまう。
だがこんな状況なのに美果はなんだかトロくて走る気があるのか無いのかわからなかった。
だがこのままでは確実に優子に追いつかれて死んでしまう。
みなみは叫んだ。
「小森!あんたはそっちいきな!あたしが優子を引き付けるから!」
「えっでもたかみなさんが…」
「いいから!」
美果は一瞬困ったが言われる通り東へ走った。
「優子!こっちだよ!」
みなみは南へ走る。
「たかみな~待ってよ!」
優子が迫ってきた。

【残り17人】


[第62話]

「麻里子!どうして?どうしてまゆゆを撃ったの?」
背中を撃たれた麻友はうつ伏せに倒れていた。
「どうして?って優勝する為にきまってるじゃん。」
「優勝…そんな…」
敦子はまだ信じられなかった。
麻里子が…まさか麻里子が…
「じゃあ、あんた達もさっさと死にな。」
バンッバンッ
確かに敦子に向けて麻里子は撃ったがそれは木の高い部分に当たった。
「平嶋!お前ふざけんな!」
麻里子が撃とうとした瞬間、平嶋夏海は麻里子の足に突進した。
「ふざけてんのは麻里子じゃん!こんな事して…よくもまゆゆを!」
「うるせぇよ。」
麻里子は思いきり夏海を蹴り飛ばした………………………が、夏海は麻里子の足を持ったまま離さなかった。
「どけよブス!」
「どかない!せっかくまゆゆ達が助けてくれた命だけど…ここで死んでやる!あんたと一緒にね!」
夏海は麻里子の足に噛みついた。
「きゃっ!平嶋お前…」
麻里子は銃口を夏海に向けた。
「あっちゃん早く!あーみんを連れて逃げて!」
敦子は戸惑った。せっかく夏海は生き延びたというのに…
その時だった。
ヒュルル~バンッ!
何かが麻里子の手元に投げられ、麻里子は銃を落としてしまった。
「なっ…ちゃん」
麻友はまだ生きていた。
武器のブーメランを投げて見事麻里子の手に命中したのだ。
「あっちゃん早く…私となっちゃんも…すぐ行きますから…」
麻友は苦しそうに言った。
「くそくそくそくそ!どいつもこいつも!」
麻里子は腰から別の銃を出した。
「早く行け!」
夏海の言葉で敦子は亜美の手をとり走りだした。
まゆゆ…なっちゃん…絶対勝って!
バンッバンッバンッ
後ろから銃声がしたが敦子は振り返らなかった。
亜美もまた泣きながら全速力で走った。



麻友は背中に3発の銃弾を撃ち込まれて完全に動かなくなった。
「まゆゆ…」
夏海は背中に2発撃ち込まれたが執念で生きていた。
「平嶋…残念だったね。」
麻里子は笑った。
「残念なんかじゃ…ない…」
もうすぐ死ぬというのに夏海は笑っていた。
麻里子は意味がわからなかった。
「あんたを…足止めできただけ…良かった…本当は…殺してやりたいけど…」
「お前じゃ無理だよ。」

バンッ

銃弾は夏海の頭に直撃した。
だが夏海は息絶える寸前に真に思った。
自殺しなくて良かった…
敦子達の役に立てて良かった…と。

【残り15人】


[第63話]

「皆さーん!夜の9時になりましたよ!起きてますか?それじゃあ死亡した人の名前を言います!今回も多いぞ!奥真奈美、柏木由紀、片山陽加、小嶋陽菜、近野莉菜、仲川遥香、仲谷明香、平嶋夏海、藤江れいな、松井咲子、渡辺麻友。
以上11名。あと15名のみんな、がんばれよ~。先生期待してるからな!それでは禁止エリアを発表します!まずは22時からF-6、0時からG-3、2時からH-3だ。ちゃんとメモしたか?じゃあ、健闘を祈る。」
放送は終わった。

横山由依は河西智美の腕を治療しながらメモを取った。
「ここ…0時に禁止エリアになっちゃいますね…」
由依は言った。
あと3時間あるとは言っても怪我した増田有華と智美を連れてあまり移動したくはなかった。
「まぁちゃん…れいにゃん…そんな…」
智美は自分が見捨てた奥真奈美と藤江れいなが死んだ事を深く悲しんだ。
「仕方あらへん。ともーみも必死だったんやから…」
有華は智美の手を握った。
才加や佐江は呼ばれていない。
また優子も…
安心と不安が混ざりあったような感情だった。
「どこへ行きますか?あまり歩かない場所のほうがいいですよね…」
由依は重い話題になりそうだったので話をこれからの事に変えた。
「そうやな…近い場所言うたらやっぱこの集落とかちゃう?」
集落…確かに物資がたくさんありそうだし隠れるには最適な場所だ。
「それにろくな武器もないしな…」
現在武器は有華のぬんちゃくと由依の毒薬のみだった。
智美はデイパックを置いてきてしまったが診療所にあった誰かのデイパックを一つ拝借することにした。
3つのデイパックのうち1つに武器は無く、他は2つはオモチャの拳銃とトンカチがそれぞれ入っていた。
使えるかはわからないが智美はとりあえずそれをデイパックに入れた。
「それじゃあ出発しよか!」
「河西さん、手大丈夫でしたか?」
「うん、平気。」
智美は由依の問いかけに何故か冷たく答えた。
集落で一体何が待ち受けるのだろうか。
「才加…絶対まだ生きててや…」
有華は呟いた。

【残り15人】


[第64話]

「あと一時間後に禁止エリアか…」
今後の行き先を決めていない秋元才加は思い悩んだ。
才加と松井珠理奈がいるこの農家の家はあと一時間で禁止エリアになってしまう。
「あの…」
悩んでいる様子の才加に向けて珠理奈が話し出した。
「さっき、玲奈が秋元さんを追いかける前に首輪を確認してたって言ってましたよね?」
才加は玲奈から逃げた時、玲奈がすぐに追っては来なかったのに気づいていた。
走る最中ふいにふと後ろを振り返ると近野莉菜の遺体の首元を見ているようだった。
あれは多分首輪を見ていたのだと才加は思った。
「うん…わざわざ追わずに確認するって事は何かあるんだと思うんだけど…」
気になった才加は珠理奈とお互いの首輪も見せあった。
珠理奈の首輪には後ろにJurina Matsuiの文字と大きく8の数字、そして小さな穴があった。
才加の首輪にも同じくローマ字で名前とあとは英語で大きくKと書かれていてあとは小さな穴があるそうだ。
「これ何なんだろう…名前はまだしも8とかKとか…」
才加は首輪の謎の文字に困惑した。
「もしかしたら…」
珠理奈がポケットから石の入った袋を取り出した。
「これ、この穴に入りませんか?」
珠理奈は才加の首輪部分に赤い石を当ててみた。……………………だが、石の大きさは微妙に違い入らなかった。
「微妙に違うや…関係ないのかな…」
珠理奈は残念そうに言った。
「とりあえず他の子の首輪も見ないとわからないな…。その前にどこに行くかだけどさ…」
才加は首輪の事を気にしながらも今後の事を話し始めた。



松井玲奈は才加達がいる農家の家のすぐ近くの民家にいた。
もちろん才加達が近くにいるのは知らない。
ここももうすぐ禁止エリアなのでどっちにしろ出なければいけないが…
「ふふふ…わかった…やっぱりそうだ……。珠理奈、待ってなよ…」
玲奈は民家に合った鏡を割り、合わせ鏡で自分の首の後ろを見ながら気味の悪い笑みを浮かべた。

【残り15人】


[第65話]

なかなか行き先が決まらないので秋元才加はミルクを飲んでいた。
多分ここの農家で取れた物だろう。
人の家の物を勝手に飲むのはあれだったがこの状況ではそうも言ってられない。
まずは心を落ち着かせなくては。
「この家すごいですね。」
松井珠理奈は突然言った。
「すごいって何が?」
才加にはどう見てもただの田舎の家にしか見えないが…
「だって兜とかなんか昔の古そうな物がいっぱいありますよ!」
本当だ…多分江戸時代にらへんに描かれたであろう掛軸などがそこら中に飾ってあった。
「確かに…」
才加は桜の絵が描かれた掛軸の側に寄って見てみた。
「綺麗だ…」
とても良くできている。
「あっ!秋元さん!こっちに来てください!」
なんだろう…
才加は珠理奈の声のする部屋に恐る恐る入った。
「なんだこれは!」
そこには昔使われていたであろう刀や拳銃が飾られていた。
ここの家の主のコレクションだろうか。
それにしてもすごい量だ。
拳銃はまだしも刀は悠に10本以上はあるだろう。
「秋元さん…」
珠理奈は才加の名を呼んだ。
「私達…武器無いですよね?」
確かに。珠理奈は謎の石とスイッチだけだし才加に至ってはシャーペンだ。
「珠理奈…まさか…」
才加の予想は的中していた。
「私、引き出し開けたらこの拳銃の弾を見つけたんです。」
珠理奈は置いてある拳銃に既に弾をセットしていた。
「だけど珠理奈…」
「私、いずれは玲奈と戦わなくちゃいけないと思うんです。だから、武器が必要だと思います。」
才加は迷った。
珠理奈にはできるだけ戦わせたくない。
だがもし自分が死んでしまったら…
才加は迷った挙句答えをだした。
「わかった。でもこの拳銃は私が預かる。珠理奈ちゃんはあそこにある小さな刀にしな。」
才加の目線の先には刃渡り45cmくらいの小さな刀だった。
他の刀はかなりの大きさだったがそれだけは珠理奈の様な少女でも持てるような大きさだった。
「これで玲奈に勝てるかな…」
珠理奈は迷っていた。
「戦う前に話をつけよう。戦いなんて無意味だ。」
才加は感慨深く言った。
「そうですね…。」
才加は再度地図を開いた。
「ここからなら比較的集落が近い。まだ西には行ってないし、どうかな?」
才加は提案した。
「私も西には行ってないです。もしかしたら誰かいるかも…」
珠理奈は賛成した。
「必ずこんなゲーム終わらせてやる。」
才加は拳を握った。

【残り15人】