遺言書・遺産相続の用語解説 【遺言・相続サポートセンター 行政書士松本法務事務所】

遺言・相続についての基本的な用語の解説(遺言・相続サポートセンター 行政書士松本法務事務所編)

寄与分

2010-05-10 | 寄与分

共同相続人の中に、相続財産の維持、増加に多大な寄与をした者がいる場合、その寄与について考慮することなく具体的な相続分を算定すると、不公平な結果となってしまいます。

そこで民法は、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産場の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分としています。

たとえば、相続人が子3人(子a、子b、子c)、相続開始時における被相続人の財産総額が3500万円で、子aが実家の事業を手伝っていたとして500万円分の寄与分が認められる場合を例にすると…

被相続人の財産総額3500万円から寄与分である 500万円を引いた3000万円を相続財産とみなします

それを3人で均等に割って1人1000万円

これに子aには寄与分500万円があるのでこれを加えて1500万円

結果としてそれぞれの具体的な相続分は、
子a : 子b : 子c = 1500万円分 : 1000万円分 : 1000万円分

…となるのです。

なお、寄与分といえるためには、被相続人の財産の維持・増加についての『特別の』寄与でなければなりません。

たとえば、実家の農業や商売を手伝っていたとしても、他人を雇ったときと同様の報酬を得ていたときは寄与分とはいえません。報酬が非常に安かったり、報酬を貰っていなかったときに初めて寄与分といえます。

また、被相続人の療養看護についても一定以上のものである必要があるでしょう。

そして、寄与分といえるか、また寄与分としてどれだけの金額に換算するかは相続人の協議で決定することになります。この協議が整わないときは、寄与した者の請求によって家庭裁判所が定めることになります。

最後に注意点を1つ。寄与分が認められるのは相続人に限られます。

たとえば、長男の嫁が義父の療養看護に尽くしたとしても、嫁本人には寄与分は認められません。なぜなら、長男の嫁は義父の相続人ではないからです。

ただ、その療養看護を金銭換算して、そのうちのいくらかを長男(長男は相続人である)の寄与分と考えることは可能でしょう。

もし被相続人である義父が長男の嫁本人に何らかの財産を確実に残したいのならば、その旨の遺言を書いておく必要があるということになります。

参考条文 民法904条の2


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