J3で奮闘していたユ・インス、野澤が躍動し、アディショナルタイムに逆転勝ちを掴んだFC東京。前節・新潟戦に続いてのドラマティックな展開となったが、チームは依然として不安定な要因を抱えたままだということは忘れてはならない。
立ち上がりからことごとくセカンドボールを拾われ、磐田に支配され続けると、早くも7分に右エリア奥のこぼれ球にオーヴァーラップで反応した藤田のクロスから4月以来のスタメン起用の森島のヘディングシュートであっさりと失点。このゴールをはじめ、ディフェンス陣は森島、アダイウトンにことごとく競り負けていた。そして、自陣から見て左サイド、SB小川のサイドが狙われての失点に対応出来ずに終わったのは今後の大きな課題だ。小川自身の軽率なプレーもあるが、同じ左サイドのムリキが攻撃にほぼ専念して戻って守備することが少なく、ボランチの田邉がスペースを埋めるために高橋とともに左右に振られて小川の前にスペースが生まれてしまいやすいことも攻め込まれる原因の一つだろう。
FC東京は27分にエリア内でムリキが藤田に倒されてPKを獲得。一度はやり直しとなるも冷静に右隅へ決めて前半のうちに追いついたのは大きかったが、それもつかの間。後半の立ち上がり52分、右サイドから中央に切れ込んだ小林祐希にGK秋元が一歩も動けないポスト直撃の強烈なミドルを食らう。シュート自体は打った小林を褒めるしかないが、小林にボールを持たせてしまった過程が最悪。小川のはっきりしない後手の対応でボールを奪われた直後の失点だっただけに、小川には猛省を促したい。
だが、全体的にディフェンス陣の対応は浮足立っていた。必ず最終ラインでパスの交換を2、3往復しなければ前方へパスを出してはならないという不文律でもあるかのごとく、自陣での緩い横パスの嵐で相手がプレッシャーを掛けることが出来る隙を生み、球離れが遅くパスの出しどころに迷って足下にボールを保持するところを狙われる場面が多発。さらには、特に徳永や東だが、ボールを奪ってハーフウェーラインを越えてアタッキングサードあたりまで持ち上がるもスローダウン。出しどころに迷っている間に競り掛けられてボールを奪われカウンターを受ける場面も少なくない。最終ラインを高く上げ、前線もこれから相手陣内へと前へ重心がかかっている時にそのようなイージーミスをされると、最終ラインは戻るために長く走らされ、折角の好機もあっさり逃すという、肉体的にも精神的にもストレスになる状況は早急に改善しなければならない。
この試合では後半から終盤にかけて磐田の疲労も手伝ってかオープンな展開になったゆえ、途中交代で入ったフレッシュなユ・インスと野澤も奏功して（主審による磐田GK志村のムリキへのファールのミスジャッジでFKを得た幸運も手伝って……志村とムリキの接触はなく通常ならムリキのシミュレーションだし、ファールをとるならエリア内だったためPKとなるはず）、土壇場で逆転弾が決まる展開となったが、それはあくまでもパフォーマンスが落ちていた磐田が相手だったからだ。前後半ともに入りが悪くボールを支配され失点する展開、終始横パスや停滞感の漂う攻撃の連発では、東京より上位のチーム相手には通用しないと考えるのが普通だ。
さらに、攻撃でも課題は残った。前半ムリキのPKで追いついた後は東京が攻勢の時間帯が続いたが、35分に高橋からスルーパスを受けてのループシュートが枠外へ、38分に左サイドからエリア内へドリブルで切り込んだムリキの中央へお膳立てのパスをこれまた外した河野。後半でも69分、右サイドの徳永からのクロスを東が頭でファーサイドへ落としたところ駆け込んだムリキが右アウトサイドで合わせて同点に追いついた後、72分にムリキの中央へのドリブル進出からエリア境右寄りへパスを出すもフリーでありながら枠外へ外した前田など、決定機を決められない以前に枠内へシュートを打てない状況が試合を苦しくしている状況も以前と変わらない。
追いついては失点、流れを呼び込みかけた好機をモノに出来ず。結果として勝ち点3を得ることが出来てはいるが、それはあくまでも偶然性の高い結果であり、継続性や積み重ねで勝ち得たものではない。その点を肝に銘じて、目の前の試合に奮闘努力していかなければ、上位陣に再び圧倒的な質の差を見せつけられて終わる可能性を高めてしまう。
ただ、好転への契機も芽生えてきた。内容は褒められたものではないにせよ泥臭く勝ち点3を奪えたこと、明確な意志を持った選手交代でチームの意識づけを高め、さらに起用されたフレッシュな選手が結果を出したこと。もちろん、これらのことは継続しなければ意味がない。J3で揉まれてきたユ・インス、野澤がトップチームで表現出来たことの波及効果が生まれたことは嬉しいが、今後は異なる相手に同様のパフォーマンスが出来るかが重要になってくる。
篠田・東京となって連勝してはいるが、まだバタバタとした不安定さがあるのは否めない。今節に高橋が警告を受けたため、次節のアウェイ神戸戦は中盤の高橋を欠いた状態で臨むことになる。野澤がスタメン起用されるのか、それともまた異なる形で対するのか。なかなか苦しい状況が続くが、頭と身体をフルに駆使してこの壁を乗り越えていってもらいたい。
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【J1リーグ戦 第7節】
2016年08月06日／味の素スタジアム／19:04キックオフ
観衆：28,291人
天候：晴
気温：28.6度／湿度：71％
主審：松尾一／副審:三原純、清水崇之／4審：佐藤貴之
FC東京 3（1-1、2-1）2 磐 田
得点：
（東）：ムリキ（29分、PK）、ムリキ（70分）、ユ・インス（90+1分）
（磐）：森島康仁（8分）、小林祐希（52分）
≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
02 DF 徳永悠平
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
25 DF 小川諒也 → 水沼宏太（86分）
04 MF 高橋秀人 → 野澤英之（66分）
27 MF 田邉草民
17 MF 河野広貴 → ユ・インス（76分）
38 MF 東慶悟
11 MF ムリキ
20 FW 前田遼一
≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
29 DF 吉本一謙
22 MF 羽生直剛
32 MF ユ・インス
34 MF 野澤英之
48 MF 水沼宏太
09 FW 平山相太
≪マネージャー≫
篠田善之
◇◇◇
【J1リーグ】
≪2ndステージ≫
第01節 2016/07/02(土)19:00✕FC東京 2-3 鳥 栖（A・ベアスタ）
第02節 2016/07/09(土)19:00〇FC東京 1-0 甲 府（H・味スタ）
第03節 2016/07/13(水)19:00✕FC東京 1-2 福 岡（A・レベスタ）
第04節 2016/07/17(日)19:00✕FC東京 0-1 柏 （H・味スタ）
第05節 2016/07/23(土)18:30✕FC東京 0-1 川 崎（A・等々力）
第06節 2016/07/30(土)19:00〇FC東京 1-0 新 潟（A・デンカＳ）
第07節 2016/08/06(土)19:00〇FC東京 3-2 磐 田（H・味スタ）
第08節 2016/08/13(土)19:00 FC東京×神 戸（A・ノエスタ）
第09節 2016/08/20(土)00:00 FC東京×横浜FM（H・味スタ）
第10節 2016/08/27(土)00:00 FC東京×名古屋（A・豊田ス）
第11節 2016/09/10(土)00:00 FC東京×湘 南（H・味スタ）
第12節 2016/09/17(土)00:00 FC東京×浦 和（H・味スタ）
第13節 2016/09/25(日)00:00 FC東京×Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第14節 2016/10/01(土)00:00 FC東京×広 島（A・Ｅスタ）
第15節 2016/10/22(土)00:00 FC東京×鹿 島（H・味スタ）
第16節 2016/10/29(土)00:00 FC東京×仙 台（H・味スタ）
第17節 2016/11/03(木)00:00 FC東京×大 宮（A・NACK）
◇◇◇
≪1stステージ≫
第01節 2016/02/27(土)19:00✕FC東京 0-1 大 宮（H・味スタ）
第02節 2016/03/06(日)15:30〇FC東京 2-1 仙 台（A・ユアスタ）
第03節 2016/03/11(金)19:00〇FC東京 1-0 神 戸（H・味スタ）
第04節 2016/03/19(土)15:00✕FC東京 0-2 鹿 島（A・カシマ）
第05節 2016/04/02(土)16:00〇FC東京 3-2 名古屋（H・味スタ）
第06節 2016/04/10(日)19:00✕FC東京 0-1 柏 （A・ 柏 ）
第07節 2016/04/16(土)15:00✕FC東京 2-4 川 崎（H・味スタ）
第08節 2016/04/24(日)14:00△FC東京 1-1 甲 府（A・中銀スタ）
第09節 2106/04/29(金)17:00✕FC東京 0-1 福 岡（H・味スタ）
第11節 2016/05/08(日)16:00〇FC東京 1-0 湘 南（A・ＢＭＷス）
第12節 2016/05/13(金)19:00△FC東京 0-0 鳥 栖（H・味スタ）
第14節 2016/05/29(日)17:00〇FC東京 1-0 Ｇ大阪（H・味スタ）
第15節 2016/06/11(土)15:00△FC東京 0-0 磐 田（A・エコパ）
第10節 2016/06/15(水)19:00△FC東京 1-1 広 島（H・味スタ）
第16節 2016/06/18(土)19:00△FC東京 1-1 新 潟（H・味スタ）
第13節 2106/06/22(水)19:30✕FC東京 2-3 浦 和（A・埼 玉）
第17節 2016/06/25(土)19:00〇FC東京 1-0 横浜FM（A・日産ス）
≪1stステージ 順位表≫
01 鹿 島 39／17／12／3／02／29／10／+19
02 川 崎 38／17／11／5／01／33／15／+18
03 浦 和 33／17／10／3／04／26／16／+10
04 広 島 29／17／08／5／04／32／18／+14
05 大 宮 26／17／07／5／05／17／18／-01
06 Ｇ大阪 24／17／07／3／07／22／20／+02
07 柏 24／17／06／6／05／20／21／-01
08 磐 田 23／17／06／5／06／21／23／-02
09 FC東京 23／17／06／5／06／16／18／-02
10 仙 台 23／17／07／2／08／20／25／-05
11 横浜FM 22／17／06／4／07／21／19／+02
12 神 戸 20／17／05／5／07／23／25／-02
13 新 潟 18／17／04／6／07／19／25／-06
14 名古屋 17／17／04／5／08／24／29／-05
15 鳥 栖 17／17／04／5／08／10／15／-05
16 湘 南 16／17／04／4／09／18／27／-09
17 甲 府 15／17／03／6／08／18／31／-13
18 福 岡 11／17／02／5／10／11／25／-14
※（勝点／試合数／勝／分／負／得点／失点／得失点差）
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