プライベート臍帯血バンクは有用なのか？

思い出したように再開です。
Newsweek　2009/1/21版に臍帯血バンクに関する記事（『へその緒は奇跡のビジネス？』）がありました。
この記事で、話題にしているのは、将来のリスクに備えて、自己移植用の臍帯血を保管する民間のいわゆるプライベート臍帯血バンクについて。 基本的には、米国内で繁盛するこの商売、自己移植用のプライベート臍帯血バンクの有効性にギモンを投げかけている内容です。
最近、家族と自分自身で”子作り”について考えなければならない機会があり、そんな中で読んだ記事なので、関心が引かれました。 そこで、臍帯血バンクについて、そこいらのいい加減ライターみたいに、ちょこちょこっとwebで調べて、もっともなことを書いてみます。
まず、プライベート臍帯血バンクの問題点として、記事では

・臍帯血に含まれる移植利用可能な幹細胞の量が少なく、幹細胞の培養増殖は不可。乳幼児の治療を賄えたとしても、成人の治療に対しては不足。
・遺伝性の疾患に対しては、その疾患の要因となった遺伝情報を有しているので無力。
・自己移植の事例はそれなりにあるが、移植と回復の因果関係が実証されていないされつくしていない。

と、いったことが述べられています。 日本国内の事情について調べて見ると、臍帯血バンクには私的と公的なものの2種があるようです。

・他人のため－公的
骨髄バンクのように難病を抱えた他人への提供を目的としたもの
他人間の移植では、当然、適合しないと利用できない
仮に提供した臍帯血を自己移植で利用したい場合、利用できる保障はない（→既に他の人に使われてしまっているかもしれない）
公的機関や医療団体が主体 提供者の費用負担は無い

・自分の子供自身のため－私的
提供した子供自身が、将来的に難病になった場合に行う自己移植を目的としたもの
自己移植なので、適合・不適合の問題は無い
私企業が主体、日本国内では数社が提供
費用は、保管期間によるが、20年で30万円、10年で25万円くらいが相場

検索でヒットしたところでは、以下の会社がありました。
http://www.stemcell.co.jp

http://www.saitaiketsu.com/service.htm#01

ちなみに、ココで「利用者の声」が載っていましたが、イザというときのための「安心」を手にすることができた満足を述べたものほとんどで、実際に自己移植において利用した、または自己移植によって病状が回復したという事例は載っていません。 自己移植の発生有無は勿論、それが有効であった事例の有無は書かれてないです。 自己移植の事例はあるけど載せていないのか、事例がないからなのか、どっちでしょう？ 一方、日本の公的バンクのサイトで、自己移植用の保管の根拠について、自己移植の有効性を示すデータが乏しいことや、疾病リスクの発生可能性、費用効果等からプライベートの臍帯血バンクの利用に関して「注意」を促しています（但し2002年時点の記述）。

https://www.j-cord.gr.jp/ja/03/cbb/private.html

まあ、20万円からというのが、なかなかウマイ額なのかも。 無理すれば、何とかなりそうだし、これである意味、一生涯の保障がされると思えば安いと思えるし。 保険と同じで、使う必要に迫られなかったら、それに越したことはありません。
ただし、入手・保管できるタイミングが、出産時のみということが、この”商売”のキモ。この”一瞬”を逃したら、リカバリーショットはあり得ない。そこで不安が掻き立てられ、ついついお金払ってしまいたくなる、と穿った見方をしてみる。
ちなみに自身の長子が1年前に生まれた際、プライベートの臍帯血バンクの利用を産科で案内受けましたが、やめました。そこの産科医もあんまり熱心に勧めなかったし（その産科自体がヤル気に欠けていたわけではありません）、何よりもお金無かったから。