<倒産と賃金債権>
使用者が倒産した場合の賃金債権の取扱いは、倒産手続の種類により異なります。清算を目的とする破産の場合、手続開始前3カ月間の賃金債権、および退職前の3カ月間の賃金額(手続開始前3カ月間の賃金額の方が多い場合はそれによります)に相当する額の退職金債権が財団債権となり(破産法149条)、配当手続を待つまでもなく、随時弁済を受けることができます。また、財団債権とならない部分についても、雇用関係に基づき生じた債権であるかぎり(民法308条参照。ただし、社内預金は通常これに当たらないとの理解が有力です)、優先的破産債権となり、配当手続では優先的に弁済される可能性がありますし(破産法98条1項)、配当前に裁判所の許可を受けて弁済がなされる場合もあります(同101条)。なお、破産宣告後に労働契約につき解約が申し入れられた場合には、契約が終了するまでの労働に基づく賃金債権は全額が財団債権となり(同148条1項8号)、随時弁済を受けられます(倒産 賃金債権)。
次に、再建を目的とする会社更生手続においては、手続開始決定前6カ月以内および手続開始後に生じた賃金は共益債権となり(会社更生法130条1項。退職金については同条2項・3項により制約があります)、更生債権や更生担保権に先立ち、随時弁済を受けることができます(同132条)。それ以外の賃金債権は更生債権となりますが、一定の優先的取扱いを受けることができます(同168条1項2号)。これらの扱いは、会社再建のために労働者の待遇を強化したものです。
他方、新たな再建型の倒産手続である民事再生法のもとでは、雇用関係に基づき生じた債権(民法308条)として優先的な取り扱いを受ける債権であれば、一般優先債権として随時弁済を受けることができます(民事再生法122条)。再生手続開始後に生じた賃金債権も、共益債権として随時弁済されます(同119条2号)。これに対し、優先権のない社内預金債権は、民事再生計画のもとで弁済が制約されることがあります(同85条1項)。
<賃金の立替払い>
さて、以上とは別に、「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃確法)のもとで、政府が、未払賃金の立替払を行う場合があります。すなわち、事業主が倒産した場合(破産宣告や更生手続開始決定などがあった場合)や、中小企業につき事業活動が停止して再開の見込みがなく、また支払能力がないことが労働基準監督署長により認定された場合には、一定の要件を満たす労働者の請求により、政府が未払賃金の一定部分を立替払いするものとされています(賃確法7条、「賃金の支払の確保等に関する法律施行令」(賃確令2条))。
こうした手続により立替払の請求をなしうるのは、破産等の申立てがあった日または中小企業についての事実上の倒産の認定申請がなされた日の、6カ月前の日から2年以内に、当該事業を退職した労働者です(賃確令3条)。また、立替払の対象となりうるのは、請求日までに支払期日が到来している2万円以上の賃金債権で、原則として未払分の8割に相当する額です(賃確令4条。退職時の年齢に応じた上限額が設定されています)。この手続の利用については、労働基準監督署で相談してみるとよいでしょう。
以上の未払賃金の立替払は、労災保険法による社会復帰促進等事業の一つとして行われます(労災保険法29条1項3号)。立替払の費用は全額事業主負担である労災保険料によって賄われ、労働者健康福祉機構が事業を実施しています。
なお、建設業においては、建設業法により、一定の請負業者に対し、その下請業者の労働者の賃金につき支払が滞った場合に、建設大臣または都道府県知事が立替払を勧告できる制度があります(建設業法41条2項)。
使用者が倒産した場合の賃金債権の取扱いは、倒産手続の種類により異なります。清算を目的とする破産の場合、手続開始前3カ月間の賃金債権、および退職前の3カ月間の賃金額(手続開始前3カ月間の賃金額の方が多い場合はそれによります)に相当する額の退職金債権が財団債権となり(破産法149条)、配当手続を待つまでもなく、随時弁済を受けることができます。また、財団債権とならない部分についても、雇用関係に基づき生じた債権であるかぎり(民法308条参照。ただし、社内預金は通常これに当たらないとの理解が有力です)、優先的破産債権となり、配当手続では優先的に弁済される可能性がありますし(破産法98条1項)、配当前に裁判所の許可を受けて弁済がなされる場合もあります(同101条)。なお、破産宣告後に労働契約につき解約が申し入れられた場合には、契約が終了するまでの労働に基づく賃金債権は全額が財団債権となり(同148条1項8号)、随時弁済を受けられます(倒産 賃金債権)。
次に、再建を目的とする会社更生手続においては、手続開始決定前6カ月以内および手続開始後に生じた賃金は共益債権となり(会社更生法130条1項。退職金については同条2項・3項により制約があります)、更生債権や更生担保権に先立ち、随時弁済を受けることができます(同132条)。それ以外の賃金債権は更生債権となりますが、一定の優先的取扱いを受けることができます(同168条1項2号)。これらの扱いは、会社再建のために労働者の待遇を強化したものです。
他方、新たな再建型の倒産手続である民事再生法のもとでは、雇用関係に基づき生じた債権(民法308条)として優先的な取り扱いを受ける債権であれば、一般優先債権として随時弁済を受けることができます(民事再生法122条)。再生手続開始後に生じた賃金債権も、共益債権として随時弁済されます(同119条2号)。これに対し、優先権のない社内預金債権は、民事再生計画のもとで弁済が制約されることがあります(同85条1項)。
<賃金の立替払い>
さて、以上とは別に、「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃確法)のもとで、政府が、未払賃金の立替払を行う場合があります。すなわち、事業主が倒産した場合(破産宣告や更生手続開始決定などがあった場合)や、中小企業につき事業活動が停止して再開の見込みがなく、また支払能力がないことが労働基準監督署長により認定された場合には、一定の要件を満たす労働者の請求により、政府が未払賃金の一定部分を立替払いするものとされています(賃確法7条、「賃金の支払の確保等に関する法律施行令」(賃確令2条))。
こうした手続により立替払の請求をなしうるのは、破産等の申立てがあった日または中小企業についての事実上の倒産の認定申請がなされた日の、6カ月前の日から2年以内に、当該事業を退職した労働者です(賃確令3条)。また、立替払の対象となりうるのは、請求日までに支払期日が到来している2万円以上の賃金債権で、原則として未払分の8割に相当する額です(賃確令4条。退職時の年齢に応じた上限額が設定されています)。この手続の利用については、労働基準監督署で相談してみるとよいでしょう。
以上の未払賃金の立替払は、労災保険法による社会復帰促進等事業の一つとして行われます(労災保険法29条1項3号)。立替払の費用は全額事業主負担である労災保険料によって賄われ、労働者健康福祉機構が事業を実施しています。
なお、建設業においては、建設業法により、一定の請負業者に対し、その下請業者の労働者の賃金につき支払が滞った場合に、建設大臣または都道府県知事が立替払を勧告できる制度があります(建設業法41条2項)。