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◆【 春告鳥《 はるつげどり 》 】
春は遠すぎると呟く傍らでは、既に暦の上で季節風は裏腹に訪れている
窓硝子のカーテン越しに映し出された影絵だけは寒さしのぎの光景ありて
いつものように夜通し起きてしまうひとの声が、ずっと冬ごもりのままでいることを数ミリ先の野鳥すら知らないだろう
カーテン布地は光の中で、織られた布地の隙間が繊細な影を作り、それらの隙間を通り抜ける冬の朝焼けが身代わりの声を上げる
無言になった声の微粒子だけが、その隙間を縫うように境界線を抜けていく
どれだけの冬が続いているのだろう
長すぎた冬ごもりが無言の悲鳴をしながら、朝露の中へ向かうとき
滴り落ちる裸木の細い枝先が、未だに凍りついたままであることを知りながら
長すぎた冬ごもりが無言のままで、いつも室内を練り歩いている
東側を向いた窓硝子だけが、意識とは反対方向に行くようで、我が視線はうろついて眩しげな光を閉ざしたままで
春告鳥が訪れるらしいというけれども、春は遠すぎて手は届かず、心と意識は未だに冬ごもり
長すぎた冬の万年雪に繋がれたままの鎖で、春を描くには寒すぎて
《 きっと、冬だけの人生吹雪( じんせいふぶき )が厳しすぎたんだね 》
他人事みたいに呟く傍らで、未だに鳴き声すらしない春告鳥の画面だけの花が咲いている二月
夜通し起きていたひとが微かな溜息を漏らす先には、いつもの壊れた蛍光灯の小さな明かりが、ぼんやりと俯いている
昼間の小さな明かりが何かを呟いている
🌸 春を告げる鳥である鶯《 うぐいす 》は、別名【 春告鳥《 はるつげどり 》 】とも呼ばれるそうです。
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🟣【 作成日 】
◆【 2023年2月9日《 木 》 】
📚 上記の詩作品は【 詩集/昼間の蛍光灯 】に載せて、全てまとめてあります。
その詩集の中の1作品です。
🟢【 作者名 】
◆【 鏡乃 琴禰 】
◆【 ルシアン=マリア=バイオレット・ホワイトローズ 】
🌸 私のデザインアート写真名は【 ルシアン=マリア=バイオレット・ホワイトローズ 】と名乗っています。
⚠️ 私の詩作品、およびデザインアート写真の無断転載、無断使用は一切お断りします。
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