樹霧の詩集と物語

❤️【 樹霧《 きぎり 》の詩集と物語 】【 作者名🌹 詩人/鏡乃 琴禰 】【 別名/樹霧《 きぎり 》】

詩【 春告鳥《 はるつげどり 》】【272】

2023-02-09 10:05:00 | 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





◆【  春告鳥《 はるつげどり 》 】


春は遠すぎると呟く傍らでは、既に暦の上で季節風は裏腹に訪れている

窓硝子のカーテン越しに映し出された影絵だけは寒さしのぎの光景ありて

いつものように夜通し起きてしまうひとの声が、ずっと冬ごもりのままでいることを数ミリ先の野鳥すら知らないだろう

カーテン布地は光の中で、織られた布地の隙間が繊細な影を作り、それらの隙間を通り抜ける冬の朝焼けが身代わりの声を上げる

無言になった声の微粒子だけが、その隙間を縫うように境界線を抜けていく

どれだけの冬が続いているのだろう
長すぎた冬ごもりが無言の悲鳴をしながら、朝露の中へ向かうとき

滴り落ちる裸木の細い枝先が、未だに凍りついたままであることを知りながら

長すぎた冬ごもりが無言のままで、いつも室内を練り歩いている

東側を向いた窓硝子だけが、意識とは反対方向に行くようで、我が視線はうろついて眩しげな光を閉ざしたままで

春告鳥が訪れるらしいというけれども、春は遠すぎて手は届かず、心と意識は未だに冬ごもり

長すぎた冬の万年雪に繋がれたままの鎖で、春を描くには寒すぎて

《 きっと、冬だけの人生吹雪( じんせいふぶき )が厳しすぎたんだね 》

他人事みたいに呟く傍らで、未だに鳴き声すらしない春告鳥の画面だけの花が咲いている二月

夜通し起きていたひとが微かな溜息を漏らす先には、いつもの壊れた蛍光灯の小さな明かりが、ぼんやりと俯いている

昼間の小さな明かりが何かを呟いている






🌸 春を告げる鳥である鶯《 うぐいす 》は、別名【 春告鳥《 はるつげどり 》 】とも呼ばれるそうです。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


🟣【 作成日 】
◆【 2023年2月9日《 木 》 】

📚 上記の詩作品は【 詩集/昼間の蛍光灯 】に載せて、全てまとめてあります。
その詩集の中の1作品です。

🟢【 作者名 】
◆【  鏡乃 琴禰  】
◆【 ルシアン=マリア=バイオレット・ホワイトローズ 】

🌸 私のデザインアート写真名は【 ルシアン=マリア=バイオレット・ホワイトローズ 】と名乗っています。

⚠️ 私の詩作品、およびデザインアート写真の無断転載、無断使用は一切お断りします。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















詩【 微粒子の声 】【271】

2023-02-09 02:19:00 | 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





◆【 微粒子の声 】


夕暮れに近い光が窓硝子の数ミリ隔てた境界線から素通りしたまま、時計台の針を動かしている

窓硝子を覆った布地が薄っすら見えており、微かに動き始めた証であるかのように隣の部屋に移動して
西陽は冬暦一日の終わりを示すとき

何処かで誰かが《 昼間の寒さは以前よりも暖かい 》と告げた声がしている

こちら側の境界線では、ひたすら繰り返される冬暦の巡りがあるだけだと薄っすら消えゆく声を噛み砕く

噛み砕いたまま飲み込んだ声の行き先が不明なふりをして、タバコの煙を吸っては壁に貼り付けている

かつて決して届かなかった夢の名残りが嘲笑って、夜の街路樹の通りをゆく
その背中合わせの肌一枚ほど隔てた、もうひとりの己が夢の名残りを撫でている

叶うはずはなかったのだと言い聞かせては、傍らにある吹雪いた北風の通り道を眺めて声を忘れたままで

暗すぎた室内で、かつての長すぎた暦を見るたびに、言いようがないほどの言葉が散乱しては
砕かれた微粒子の声が寒げに震えている

室内での寒さは以前より増しており、既にもう体温計は破壊されているらしい

私の両腕と両肩を抱きしめる人すら居なかったことを知るのは、長すぎた暦の空間だけかもしれない

相変わらず冷え性だと言っては冬ごもりした人の傍らに、タバコの灰皿が山積みされている

気がつけば、既に遠ざかった夕暮れの光が隣の部屋からも消えていく

その背中合わせにある暦の空間が、叶わない夢咲絵図を壁に貼り付けている

あれからもうどのくらい過ぎたのか
砕かれた微粒子の声が寒げに震えている
それを知るのは私一人だけなのだろう
哀しげに夢の名残りが笑う

この両肩の寒さが山ほどあり過ぎて声すら破壊されている
長すぎた冬暦は告げる《 やはり両腕と両肩を抱きしめる人は居なかったのかい 》
振り返る冬ごもりの夕暮れに









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

🟣【 作成日 】
【 2023年2月5日《 日 》 】

🍀【 詩集 / 昼間の蛍光灯 】より。

🌸【 作者名 】
💁‍♀️【 鏡乃 琴禰 】
💁‍♀️【 ルシアン=マリア=バイオレット 】

⚠️ 私はデザインアート写真のみだけ【 ルシアン=マリア=バイオレット 】と名乗っています。

⚠️ 私のデザインアート写真の無断転載、無断使用を一切お断りします。

🌸 私の詩作品、およびデザインアート写真をご覧いただきありがとうございました。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

















詩【 空模様 】 【270】

2022-08-28 14:00:00 | 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ◆ 【  空模様  】


朝から降り始めていた雨が秋めいた風を呼び込むらしく、開け放った窓硝子が既に夏ではない様子で

窓際の風鈴音色が中途半端な顔をしながら弱々しく鳴っている


何度目の秋が過ぎていったのか
数えても仕方がない暦を置き去りにしては、終わらないメモ書きを何度も記して

声のない暦だけが秋を迎えている
遠くで呼んでいるひとの、迎えが来ないかと待ちわびては夏を数える

降っては止む雨の滲む空が中途半端な空模様のままでいるせいか、秋を忘れたがるふりしては
いつぞやの紅い葉色を心に浮かべては、懐かしいひとの姿を暦に埋め込んで、いつまでも手触りする意識がここに

もうすぐ秋の紅い葉色になるのかと切なさを抱えたまま、我が意識だけが秋を傍らに居座らせる

君と約束した秋の暦が、いつまでも終わらないメモ書きになったままで

何度目の秋を傍らに居座らせているのかと、中途半端な空模様を見つめている
秋めいた風が吹いては夏がゆく


いつまでも私は未来の暦時計を意識の中へ置いておく
声のない暦だけが秋を迎えている

いつぞやの紅い葉色を心に浮かべては、懐かしいひとの姿を暦に埋め込んで、いつまでも手触りする意識がここに











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

🔵【  詩集 / 森の家  】より。

🔴【  上記の、詩作品の作成日  】
📌【  2022年8月28日《 日 》 】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【  デザインアート写真  】
📌【  月鏡画廊《 幻想館 》 】ホームページ

⚠️ デザインアート写真の無断転載、無断使用は一切お断りいたします。

【  デザインアート写真名  】
💁‍♀️【  ルシアン=マリア=バイオレット・ホワイトローズ  】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

🔴【 文章名 】
💁‍♀️【  鏡乃 琴禰《 別名/樹霧 》 】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







詩【 途中下車 】【269】

2022-08-27 21:36:00 | 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ◆ 【  途中下車  】


夏が過ぎてゆくというのに、忘れ去られたままのひとの傍らに、
未だ留まったまま夏の花が咲く記憶だけの中で

手触りの記憶すら留まることがない意識だけが、夏から秋に変わる真ん中で途中下車して

顔なきひとの記憶だけが秋の気配と一緒に宝箱にしまい込んである

秋になってしまえば、すぐに冬が追いかけて来て秋の記憶から、また遠ざかろうとするから

夏と秋の気配がする真ん中で、いつも途中下車する
途中下車してしまえば、忘れ去られたままの季節が戸惑って振り向くかもしれぬ

置き去りにされたのか捨てられたのか、それらに返答なき声の代わりに冬が来るから、
ずっと、長いこと冬籠したままの一年が繰り返されていることを、あなたは知らない

行方知れずのひとの手が小さな両足に絡みつくような気がして、記憶を探るけれども
偽者の別人がすり替わろうとするから、また夏と秋の気配の真ん中で途中下車していく

あゝ そろそろ初秋なんだろうね
ここには居ないひとの記憶を探しては、またいつも同じ場所へ行くとき
私はまた、途中下車している










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

🔵【  詩集 / 森の家  】より。

🔴【  上記の、詩作品の作成日  】
📌【  2022年8月27日《 土 》 】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【  デザインアート写真  】
📌【  月鏡画廊《 幻想館 》 】ホームページ

⚠️ デザインアート写真の無断転載、無断使用は一切お断りいたします。

【  デザインアート写真名  】
💁‍♀️【  ルシアン=マリア=バイオレット・ホワイトローズ  】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

🔴【 文章名 】
💁‍♀️【  鏡乃 琴禰《 別名/樹霧 》 】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















詩 【 苦いタバコ 】《 鎮魂歌 》 【268】

2022-03-07 11:48:00 | 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

🔴 一番下に、この詩作品についての説明書きが書いてあります。
詩の文章には、普通は必要ないのですが、この作品は特別なものですので、あえて詩の文章に説明書きを載せました。

それらの説明書きをお読みくだされば幸いに存じます。

【  詩人/鏡乃 琴禰  】 記



詩 【  苦いタバコ  】 鎮魂歌

ネオン瞬く西の暗闇に横顔を向けては
小刻みに震えている友の微かな視線が
髪の毛で半分だけ隠されたまま、
二人で東の空に背を向ける

その背中の後方で、微かに、けれども
裸足のままの小走りがしていることを
送り出していた友の横顔が、そのとき
小刻みに震えていたのを知っている

その瞬間に二つに切り分けられた絵図
それが、その瞬間の苦い砂が集まって
友の横顔は失われていく道を
諦めながらいたのだろう

私は、小刻みに震えている友の横顔を
目の片隅にとらえては、
友の吸うタバコの煙が顔を隠そうと
揺らぐ瞬間までも見ていた

どうしようもないとは知りつつも
二人で吸ったタバコの煙が
横顔を揺らいで流れ、ネオンの街へと
遠ざかるのを見つめていたのだった

亡き友よ、おそらく私の生涯で一度、
これほど苦いタバコを吸うことは
もう決してないだろう

砂まじりのタバコの煙が遠ざかる
二つに切り分けられた先で

ネオン瞬く街の片隅に立ったままの
二人が苦いタバコを吸いながら



🟣【  この作品についての話  】⬇️

🟣 上記の詩作品は、ある複雑な事情により、まだ30歳の若さで亡くなった幼なじみの友の事を文章にした作品です。
友は結婚もしないまま子供すらおらず、若い年齢のまま亡くなった女性です。
まだ30歳という若さでした。
私の中学時代からの幼なじみです。
地方から上京してからも仲が良くて、ずっと繋がりがあった友でした。

Twitterには、数ヶ月前から載せてはありましたが、今回、改めて詩集ブログに記すことにいたしました。

亡くなった友は優しい女性でした。
そうして【 亡くなった友 】は亡くなる寸前に、私ひとりだけに対して【 遺言 】を託していきました。
友からの遺言は、私だけでした。
家族にも他の誰ひとりにも遺言は遺さなかったのですね。

私ひとりだけに託された遺言でした。
友から託された遺言を、友の願い通りにすることが出来ないまま、歳月は過ぎていきました。

今回この詩作品を載せて、深い悲しみと辛さを背負ったまま死んだ友に手を合わせたいと思います。

いつか幼なじみの友が、この地上に生まれ変わる事が出来たなら、今度こそ友が願ってやまなかった【 特別な人生などいらない、ただ普通の平凡で静かで穏やかな人生が良いんだ。】と願ったとおりの人生があるようにと、ひたすら私は願うばかりです。

この詩の文章は、友が亡くなる直前に、私に対して【 遺言 】を遺した瞬間の出来事を描いたものです。
そのときの彼女は、彼女自身が死ぬ瞬間を理解していました。
哀しい笑みを浮かべており、本当は彼女自身は笑ってなどいなかったのですね。
精一杯の作り笑顔だったのでしょう。

だからこそ、あえて私は友の遺言を静かに聞いていました。
友と二人で、東京の街の片隅に立ちながら、共にタバコを吸っていました。
哀しき友が死ぬ最期に、友が私と二人だけでタバコを吸いたいと願ったので、街の片隅に立ったまま、友にセブンスターのタバコをあげて二人で吸ったことを、今なお胸に残っています。

それまで私もタバコを吸ってはいましたが、あの時ほど、我が生涯に一度だけの、本当に苦いタバコでした。
ですから、私は未だにずっとタバコを吸うのですね。
私がタバコをやめる事はないでしょう。
彼女が私に託した遺言を思いながら。
友が亡くなった複雑な事情については、友の冥福を祈って書かないでおきます。

友が願ってやまなかった人生が、いつか彼女自身で叶えることができますように。
人間は生まれ変わって地上へ戻るという話を、私は信じたいと思います。

【 合掌 】

🟣【 2021年9月20日 】作成。
【 詩人/鏡乃 琴禰 】

🟣 友へのメッセージをこめて、白い薔薇の写真にいたしました。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆