きょ年の今頃
熱烈な片思いをしていた
彼はあたしなんか相手にしないくらい年上で
おまけに美人でスタイルばつぐんの恋人がいた
毎日毎日
切なくて苦しくて
違うことを考えていてもいつのまにか
その人のことを想っていて
他のことなんか何も考えられなかった
ちょっと話をするだけでも嬉しくて
お世辞ていどの褒め言葉に舞い上がって
電話が通じないだけで嫌われたのかもと怖くなった
飲む約束をしたときは
10日以上も前から
化粧や洋服や靴に迷って
可能性はないとわかっていても
一張羅のランジェリーを選んだ
そして
会えば必ず奢ってくれるお礼に
持っていくプレゼントに悩んで
嬉しすぎて前の日の夜は寝られなかった
当日は当日で
胸がいっぱいで
せっかく勧めてくれるごはんもお酒も
のどをとおらなくて
マスカラがちょっと落ちているのに気付いただけで
慣れないお酒に酔って顔が染まっているだけで
死んでしまいたいくらい恥ずかしくて
緊張のしどおし
帰りには
プレゼントを気に入ってくれたかが気になり
マスカラのことでまたも落ち込み
お礼メールは何回も推敲して
そのくせ
一緒の時間を過ごせたことですごく満たされて
しあわせだった
彼のひとことで、しぐさで
あたしは天にも昇るし地獄にも堕ちる
でも肝心な人は気がつかないまま。
彼の中であたしの存在は
たまに会う年下のただの女友達
この位置は一ミリも動かない
何時間も何日も何週間も何ヶ月も
がんじがらめな日々を送って
好きになってしまった自分をうらんで
出会ってしまったことを呪って
でも
彼を想う時間はものすごく幸福を感じ
会っているときは他の何時より楽しかった