日本国際救急救助技術支援会: JPR理事長 諌山 憲司コラムページ

NPO法人 日本国際救急救助技術支援会 理事長 諌山憲司コラム

UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)

2019-08-13 13:09:17 | 理事長コラム
2017年、ASEAN加盟国及び日本は連携及び協力をより一層深め、日・ASEAN UHCイニシアチブの下、「持続可能な開発目標(SDGs)の一つとして定められた“2030年までの持続可能なUHCの達成”のための取り組みを推進する」と発表された。また、これらの連携及び協力の目標は、1) 持続可能な UHC の基盤となる質の高い健康医療データ及び研究システムの構築 2)UHC 実現に向けた保健システム改善のための人材開発と知見の共有、とされた。
我々もSDGs、UHCの実現に向けた支援が必要とされるでしょう。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage : UHC)とは、
全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指します。2015年9月の国連総会で定められた「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットの1つとしてUHCの達成が位置づけられており、全ての人々が基礎的な保健医療サービスが受けられ、医療費の支払いにより貧困に陥るリスクを未然に防ぐことが重要であることが確認されています。

世界全体でUHC達成の重要性について認識が高まっていることから、毎年異なるテーマが設定されている4月7日の世界保健デーにおいて、2018年は、UHCが掲げられた他、2018年10月25・26日にはカザフスタンで「プライマリ・ヘルス・ケアに関する国際会議:アルマ・アタからUHCとSDGsへ」という国際会議が開催される等、世界中で様々な取組が行われています。さらに、2019年9月には国連において「UHCに関するハイレベル会合」の開催が予定されています。
(出典:厚生労働省ホームページより筆者編集)

シンギュラリティ

2019-08-11 15:17:14 | 理事長コラム
シンギュラリティ(技術的特異点)が、実際2045年にくるかどうかは別にして、今後、テクノロジーの進歩が加速していくのは間違いないでしょう。NPOとしてもそんな時代にキャッチアップする必要があり、たとえテクノロジーの分野に携わっていなくても、シンギュラリティと向き合うことは避けては通れなくなるでしょう。

シンギュラリティ(Singularity)とは、
人工知能研究の世界的な権威で、米国の発明家、未来学者であるレイ・カーツワイル博士により、2005年刊行の書籍の中で提唱されたもので、人工知能(AI)の発達により、私たち人間には予測できないスピードで社会が変化することを表す考え方です。シンギュラリティは、「1,000ドルで手に入るコンピュータの性能が全人類の脳の計算性能を上回る時点」、「人間の知性をAIが超え、加速度的に進化する転換点」、とされています。〔参考:ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき(The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology)〕

シンギュラリティが訪れると、
1)AIが人間を超えて地球上でもっとも賢い存在になる 2)AIがより賢い人工知能を生み出すようになる 3)爆発的なスピードで世の中が変化すること が予測されています。
シンギュラリティの影響はテクノロジーの分野だけにとどまりません。シンギュラリティの到来は、私たちの社会や生活に大きな影響を与えるとされることから、最近、特に注目されるようになっています。カーツワイル博士は、「シンギュラリティは2045年に訪れる」としています。しかし、議論や研究が進んだ現在では、シンギュラリティの到来時期について様々な可能性が考えられています。
2045年は、「半導体の集積密度は、18~24ヶ月でおよそ2倍になる」という法則に則った予測です。およそ半年から2年のサイクルでコンピュータの性能は2倍になるという考えです。「ムーアの法則」と呼ばれるこの法則に従うと、2045年にはシンギュラリティが起きるだけの土台ができあがるだろうとの予測がされているのです。
2045年に、シンギュラリティは訪れないと唱える研究者もいます。現在、人工知能は過大評価されていると指摘し、シンギュラリティが訪れることはないとの考えを述べているのです。しかし近年、シンギュラリティは来ないどころか、その到来が早まるのではという見方もされるようになりました。コンピュータおよびAIがより早いサイクルで発達することにより、2029年にはシンギュラリティが到来するのではといわれているのです。このようにシンギュラリティの到来時期については、さまざまな意見があり、日々議論がなされています。

シンギュラリティが訪れると、以下のような変化が起きるとされています。
1)雇用形態がガラリと変わる 2)あらゆることが自動化されモノの価値が下がる 3)人類のあり方そのものに変化が起きる
シンギュラリティが訪れると、仕事のあり方や雇用形態はガラリと変わると考えられます。
AIが私たち人間よりも賢くなったときには、今ある職業のほとんどはそのあり方が大きく変わる可能性が大きく、その過程では、ベーシックインカムが導入されることで、全員が働かなければならない社会すらも形を変えていくと考えられます。

シンギュラリティの到来は、モノの価値にも影響をおよぼすはずです。AIの発達によりあらゆることが自動化されることで、あらゆるモノの生産コストが大きく下がると考えられます。生産や流通などに人が関与しなくなれば、これまで人に割いていたコストはグッとおさえることができます。そのため、シンギュラリティの到来によって爆発的なデフレが起きると考えられているのです。シンギュラリティは、人類のあり方そのものすら変えてしまうと考えられます。AIがより発達すれば、人間の意識をデータベースにアップロードしたり、記憶を他の人に引き継いだりすることも不可能ではありません。また、生活のほとんどをVR(仮想現実)の中で過ごす人も現れてくるかもしれません。このように、人間が担ってきた高度で複雑な知的作業の大半をAIが代替するようになり、経済や社会に多大なインパクトをもたらすと考えられています。

〔参考〕
1. シンギュラリティとは何か?技術的特異点の概要をわかりやすく説明(https://ec-orange.jp/ec-media/?p=24145)
2. 日本経済新聞2019年7月21日:シンギュラリティとは AIが人知を超える転換点
(1.2.より筆者編集)

発展途上国

2019-08-10 12:59:56 | 理事長コラム
先進国ではない国として、後発開発途上国(Least Developed Countries:LDC)、そして世界銀行による分類で、発展途上国は国民所得により「低」「下位中」「上位中」の3つに分かれています。
JPRの支援国である1)ザンビア、カンボジア、ラオスはLDC、2)スリランカ、インドネシア、アルメニアは下位中所得国、3)ドミニカは上位中所得国です。例えば、中国は、すでにGDP世界2位の国にもかかわらず、上位中所得の発展途上国です。このことから、定義や分類は、ある年代のある基準によって決まっているだけで、基準や分類も常に時代に合わせ変化する必要があり、何よりも自分自身が偏見にとらわれないことが重要となるでしょう。

発展途上国とは、
「発展途上国」は経済が「発展」する「途上」にある国であって、「先進国」は経済発展によって経済が世界でも「先進」的な水準に達している国です。発展途上国と先進国を分ける基準として、OECD(経済開発協力機構)が発表している「ODA(政府開発援助)受け取り国リスト」があります。OECDでは3年毎に「ODA受け取り国リスト」を発表しており、このリストにのっている国は、ODAを受け取る資格があります。

経済発展のための援助を受ける側ということで「発展途上国」ということになるでしょう。最新のリストは2018-2020年を対象にしています。リストにのっているのは、下の2つの基準のどちらかに当てはまる国々です。
1. 世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々(2016年時点の一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以下の国々)
2. 国連によってLDCに分類される国々(一人当たり国民所得(GNI)、人的資源指数(HAI)、経済脆弱性指数(EVI)によって判断される)    

世界銀行による分類では、発展途上国は「低所得国」「下位中所得国」「上位中所得国」の3つに分かれています。低所得国はGNIが1,005米ドル(約11万円)以下の国、下位中所得国は1,006米ドルから3,955米ドル(約43万5,000円)までの国、上位中所得国は3,996米ドルから12,235米ドル(約134万5,000円)までの国となります。国連によって「後発開発途上国」に分類される国のほとんどは、世界銀行の分類では「低所得国」となります。
(出典:日本貿易振興機構:ジェトロ、アジア経済研究所ホームページより筆者編集)



後発開発途上国(LDC)

2019-07-28 20:22:45 | 理事長コラム
国際的な活動を行うNPOであるJPRとして、後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)の定義や基準、LDCのリスト国を知っておく必要があるでしょう。

後発開発途上国とは、
1 定義
国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々。3年に一度LDCリストの見直しが行われる。

2 基準(2012年)
以下3つの基準を満たした国がLDCと認定される。ただし、当該国の同意が前提となる。
(1)一人あたりGNI(2011~2013年平均):1,035米ドル以下
(2)HAI(Human Assets Index):人的資源開発の程度を表すためにCDPが設定した指標で、栄養不足人口の割合、5歳以下乳幼児死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化したもの。
(3)EVI(Economic Vulnerability Index):外的ショックからの経済的脆弱性を表すためにCDPが設定した指標。

3 現在のLDC(2017年6月に発表)
以下の47か国。なお、近年では2014年にサモアが、2017年に赤道ギニアがLDCから卒業。また,2012年に南スーダンがリストに追加。
アフリカ(33):アンゴラ,ベナン,ブルキナファソ,ブルンジ,中央アフリカ,チャド,コモロ,コンゴ民主共和国,ジブチ,エリトリア,エチオピア,ガンビア,ギニア,ギニアビサウ,レソト,リベリア,マダガスカル,マラウイ,マリ,モーリタニア,モザンビーク,ニジェール,ルワンダ,サントメ・プリンシペ,セネガル,シエラレオネ,ソマリア,南スーダン,スーダン,トーゴ,ウガンダ,タンザニア,ザンビア
アジア(9):アフガニスタン,バングラデシュ,ブータン,カンボジア,ラオス,ミャンマー,ネパール,イエメン,東ティモール
大洋州(4):キリバス,ソロモン諸島,ツバル,バヌアツ
中南米(1):ハイチ

(出典:外務省ホームページから筆者編集)


ICF(国際生活機能分類)

2019-07-27 20:21:17 | 理事長コラム
障害に関する国際的分類法としてICFがあります。福祉関係では、基本情報のひとつになるでしょう。
ICFでは、「環境因子」を「人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子のことである」と定義しています。
そのため、自然災害は、物的な環境や社会的な環境を急激に変える因子であり、災害関連死などの対策を考えると、ICFの環境因子からのアプローチも重要になってくるでしょう。

ICFとは、
障害に関する国際的な分類としては、これまで、世界保健機関(WHO)が1980年に「国際疾病分類(ICD)」の補助として発表した「WHO国際障害分類(ICIDH)が用いられてきました。ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害の分類法として、2001年5月のWHO総会において採択されものです。ICFの特徴は、これまでのICIDHがマイナス面(身体機能の障害による生活機能の障害、社会的不利)を分類するという考え方が中心であったのに対し、ICFは、生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、さらに環境因子などの観点を加えたことです。

ICFは、人間の生活機能と障害に関して、アルファベットと数字を組み合わせた方式で分類するものであり、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つの次元及び「環境因子」などの影響を及ぼす因子で構成されており、約1,500項目に分類されています。
ICFの考え方は、今後、障害者はもとより、全国民の保健・医療・福祉サービス、社会システムや技術のあり方の方向性を示唆しているものと考えられています。

ICFの活用により、
1. 障害や疾病を持った人やその家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野の従事者が、ICFを用いることにより、障害や疾病の状態についての共通理解を持つことができる。
2. 様々な障害者に向けたサービスを提供する施設や機関などで行われるサービスの計画や評価、記録などのために実際的な手段を提供することができる。
3. 障害者に関する様々な調査や統計について比較検討する標準的な枠組みを提供することができる。
などが考えられています。
(出典:厚生労働省ホームページより筆者編集)