《朝日新聞》
ガス壊疽発症3万5千人 感染症の流行懸念 四川大地震
【北京=峯村健司】
中国・四川大地震の被災地で、致死率の高いガス壊疽(えそ)を発症した患者が少なくとも3万5千人に上ることが27日、中国政府当局者の話でわかった。中国政府はこれまで、ガス壊疽患者は58人と公表しているだけだった。衛生環境が悪化し、結核や肝炎なども報告されており、感染症拡大の阻止が急務となっている。
四川省成都市の病院関係者によると、地震発生1週間後からガス壊疽患者が増え、9歳の子供もいたという。すでに感染者全員を病院に収容、隔離して治療したというが、壊死(えし)を食い止める効果が高い高気圧酸素治療器約100台が地震で壊れ、治療が遅れていた事情もあるという。
中国衛生省の斉小秋・疾病対策局長は27日の会見で「気温が急激に上昇、被災地の衛生状態は悪化し、被災者の体力も落ちている」として感染症流行への懸念を示した。
軍は26日、特殊衛生防疫隊員約200人を派遣した。これまでに1万5千人の防疫作業員が消毒にあたり、26日までに被災地の99%の地域の消毒作業を終えたという。中国政府はコレラとA型肝炎、出血熱のワクチンを被災地に緊急配布、約100万人に予防接種をすることを決めた。
中国政府の27日の発表によると、死者は6万7183人、行方不明者は2万790人となった。被災者は4561万人に上り、避難者も1500万人を超えた。
中国地震局によると、27日午後4時3分ごろ、四川省青川県を震源とするマグニチュード(M)5.4の余震があった。同4時37分には、その5キロ北東の陝西省寧強県を震源とするM5.7の余震が起きた。青川県だけで42万戸以上が倒壊した。
〈ガス壊疽〉
細菌が傷口などから体内に入って感染、筋肉など体の一部の組織が死んでしまう(壊死する)感染症。壊死した組織で毒素が作られガスを発生させながら全身に影響が広がる。進行が急速で、切開でうみを出して壊死部分を切除するなど早期治療ができないと死に至る確率が高い。災害や戦争での外傷で起きる例が多い。
2008年05月28日03時02分