塩屋煙霧
たかぬ日ハ霧立替る塩屋哉 重 英
しほ釜や焦れて霧も立やらん 涼 雅
柏崎の海岸では概ね何処でも塩焚(製塩)をしていたようで、かなり記録が残っているようだ。「瀘鞴夜光」に登場した大久保の鋳物師が製塩用の釜を作っていた。釜とて安くないものでそれを貸して財を成した者もあると聞く。実際働く者の苦労は別にして、たなびく煙の眺めとは風流に違いない。
三石潮音
潮音や馴て昼寝の薄原 郁 翁
夕浪の音に呼出す時雨かな 宇 曲
築港や後の道路拡張のため、現在は地名(交差点名)しか残っていないが、「凹凸のはげしい岩礁が海へ突き出て、夫を北海の荒海が洗ふので壮観である(今は昔四十八題)」で、その付近に別荘まで出来ていたそうだ。幼い頃見てたはずだが記憶に無いのが残念。
屋型(おくがた)岩窟
汐めくる花藻や岩に藤巴 筌 滉
ところてん岩屋則氷室かな 重 英
鯨波の鬼穴の辺りともう一説、番神岬の下に豪族が住んでいたらしい館跡をさすというが、句からすると鯨波鬼穴辺をさしているらしい。
岩島苔摘
雪のりハ鷺か烏と成にけり 重 英
のり摘や手の胼(ヒゝ)吹て番代(カハリ) う 曲
句にあるとおり寒中に採り「雪海苔」と呼んでいた。自然に岩についた海苔を摘むもので、番神から笠島まで採っていたと言われる。現在は「笠島の岩海苔」が有名で、毎年岩を洗って種を蒔くと聞く。これもまた寒中に働く姿、見ているだけなら風情があろう。
(陸)