お姉さん社労士のこれが私の生きる道

中小企業の労務管理に奮闘する社労士が、知っておくと得する労務の最新情報や法改正などを、独自の視点を交えて解説しています。

試用期間を設ける意味は

2013-04-23 10:10:08 | Weblog
来週はもう5月だというのに、まだまだ冬物をしまえない、
また寒くなるのかが不安な今日この頃です。

日々のことばかり考えていると気付きませんが、確実にカレンダーは進んでいる
のだと思うと、その早さに焦ってしまいます。

あなたの会社では、従業員を雇い入れたときに「試用期間」を設けていますか?

就業規則がある会社で、試用期間を定めていない会社のほうが少ないかもしれませんね。

就業規則を作成するときは、この期間の長さの設定にこだわる会社もありますが
いざ、採用したあと、実際にこの試用期間を有効に使っているかどうか、
というと、意識している会社は、実は案外少ないのではないでしょうか。

勿論、働きぶり、会社になじんだかどうかを気にかけてはおられるのですが。

試用期間は、会社から見れば従業員としての適格性があるか判定する期間であり、
教育期間でもあります。

解約権留保付きの本採用契約と解されているため、
もし従業員として不適格であり、雇用の継続が難しいときは本採用をしません、
という意思表示を会社はする必要があります。

本採用拒否(=留保解約権の行使)ですね。

すでに14日を超えて使用していたときは、少なくとも30日前に予告をするか、
30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労働者の責による解雇事由で
労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合は除きます)。

よって、見極めの第一段階である採用から14日(歴日数)の間に
大きな問題がないかを確認し、必要に応じて対処することがまず必要です。

14日間というのはかなり短期間のため、実務的には、みなさんの会社で
規定している試用期間内に判断することが求められるということになります。


■試用期間の確認(判断)事項

具体的には、従業員に労働能力があるか、
業務適性があるか、
勤務態度・言動に問題がないか、
協調性はあるか、
といった基本的事項を確認(判断)することになります。

たとえば、出勤率について試用期間中は一般社員と比べて厳しく判断することも妥当です。

出勤率が90%に満たないとき、3回以上無断欠勤をした場合の本採用拒否による解雇は、
判例でも正当としています。

協調性の有無についても、今後職場で長く働いいく上では重要な要素です。
判例では、暴言や軽率な発言により同僚多数の反発を買い、協調性が欠けている
として解雇したのは有効としています。
 
業務適格性があるかどうかについても、コンクリートミキサー車運転手の著しい安全作業の怠り
を理由として不適格と判断したのは不相当とは言えないとしています。

通常の解雇について「教えてもダメなので解雇してもよいでしょうか」
という相談を受けることがあります。

この場合、会社として教育、指導、注意は適切にされていたかどうかが大切な要素となります。

では、試用期間はどうでしょうか。本採用拒否はできるのでしょうか?

最高裁判例(三菱樹脂本採用拒否事件)では 試用期間における留保解約権に基づく解雇は、
通常の解雇と全く同一に論じることはできず、通常の解雇よりは、広い範囲における解雇の
自由が認められるとしています。

ただし、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由があって、
社会通念上相当として是認されうる場合のみ許されるとしています。

試用期間中の指導、教育をしても十分な職務能力を発揮できないという場合でないと
留保解約権の行使(本採用拒否)は難しいと言えます。


■試用期間の延長は可能でしょうか

試用期間の長さに法律上の制限はありません。
しかし試用期間は従業員にすれば、その地位が不安定な期間であり、あまりに長いと
労働者に不利益を強いることになり、公序良俗違反とみなしてその期間が無効になり得ます。

では延長することは可能でしょうか。
以下の場合を除き、原則として延長することはできないと考えられています。

1 試用期間の延長について就業規則等に明文化されている

2 長年にわたり会社の慣行として試用期間の延長の制度がある場合

3 本人の許諾がある場合

4 本人の適格性に疑問があり、その採否についてなおしばらく本人の勤務
   態度を観察する必要性・合理的理由がある場合


■中途採用者と試用期間

試用期間の設定は、新卒者の場合に用いることが多く、即戦力=中途採用と考える会社が
試用期間を設けることはあまり多くはありません。

ただし、中途採用者においても、能力、適格性など、あなたの会社の従業員としての
適格性に関して判断を必要とすることは、新卒者となんらかわりなく、むしろ中途採用者こそ
この判断が必要かもしれません。

判例においても、中途採用者について、就業規則に定める試用期間の適用を受けることを
当然の前提としています。

以下のような場合は、試用期間の適用は受けないとされています。

1 試用期間の適用をしない旨を明確に特約として定めた場合

2 最初から正社員として採用した場合
 
3 最初から管理職として役付きで採用した場合

 
※管理職で採用する場合は、あらかじめ期待される能力や成果、適格性を
具体的に雇用契約に盛り込んでおくことが後々の紛争を避けるうえで重要です。
 

 今週末からゴールデンウイーク(GW)に入ります。
 試用期間はあっという間に過ぎてしまいます。

 あなたの会社に試用期間中の従業員がいるのであれば、
 しっかり適正等を判断していただくためにも、

 GW明けの緊張の糸がほぐれて少し疲れが出てくる時期こそ、
 まずは声がけ、コミュニケーションをとるように心がけてください。
 その後、教育、指導、 それから最終的に判断 ですね。


鈴木社会保険労務士事務所

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