
チョルスは警察に出向いていた。
「じゃあ、失踪届けはまだ出てないんですか?」
「ええ。指紋も照会したが該当する者はいませんでした。さいわい、前科者ではないようです」
「…捜査はしてもらえますか?」
「何の情報もないでしょう? どうにもなりません。名前さえ覚えてないんですから。失踪届けが出たらすぐ連絡を入れますよ」
チョルスはうなだれて警察を後にした。
「一人くらいは親しい人間がいてもいいはずだが…どうして彼女を捜す者が出ないんだ…?」
ビリーは車を走らせ、チョルスの住む町を目指した。
「アンナが既婚者だと知ったら驚くだろうな・・・」
やたらに喉が渇く。傍らのスポーツドリンクはもう空になっている。
ビリーとアンナのツーショット写真もそこに置かれている。
ドリンクを買うため、店に車を横付けした。妙な女のいた店だ。
ビリーはあたりをうかがってつぶやいた。
「今日は…あの変な女はいないようだ…よかった」
ビリーに店に入った。
この時、カンジャはビリーの車内を覗き込んでいる。写真立てに収まったビリーとアンナのツーショット写真をすかさず見つけてしまう。
「お姉さん、なぜそこにいるの? 私がいいところに連れてってあげる」
ビリーはスポーツドリンクを買って店から出てくる。
車に乗り込んでいざ出発しようとした時、ビリーは写真立てが消え失せているのに気付いた。
「写真は? どこに消えたんだ!」
ふと顔を上げるとカンジャが店の前に立っている。
「また君か」
「こんにちは」カンジャはビリーに向かって頭をさげた。「ご結婚おめでとうございます」
ビリーは車の外に出た。
「写真を私に返してください」
カンジャは首を横に振る。
「早くバッグを出して」
ビリーはカンジャに近づいて要求する。
カンジャは突然ビリーの前から逃げ出した。
「待ちなさい」
二人の鬼ごっこが始まった。
「待って、待ってくれ」
ビリーは必死で逃げるがカンジャの逃げ足は速かった。
カンジャは両手をふりあげ大きな声で叫びながら逃げ続ける。
「おじさんとお姉さんは結婚した――!」
「やめて、黙って!」
ビリーは必死にカンジャの後を追った。
「ワーイ…おじさんとお姉さんは結婚した――!」
ビリーは泣き笑いで追いかけながら弁解する。
「はははは、冗談はやめて!」
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