
二人は現実と車に戻った。
「乗れよ。家まで送ってから出かける」
「平気よ。ここで別れましょ」
チョルスはアンナを見る。
「じゃあね、チャン・チョルス」
チョルスはアンナの笑顔にほっとする。
「ああ、行ってくる」
チョルスは車に向かうが、呼ばれて立ち止まる。振り返ったチョルスにアンナは手を振った。
「バイバイ」
チョルスも手を振った。
「じゃあな」
車に乗り込んでエンジンをかけた。
アンナはチョルスの車が小さくなるまで見送った。
歩き出そうとした時、アンナはふと思い出した。
「言い忘れたわ。”私も好きだ”って言いたかったのに…だけど、帰ってきてからでも、まあいいか」
アンナは車の走り去った方角を気分よさそうに見つめ続けた。
出張モードに入って走っている時、ユギョンから電話が入った。
「ああ、ユギョンか、どうした?」
「チョルスさん、今どこ? 急いで伝えたいことがあるの」
「じゃあ、事務所に来て」
電話はすぐに切れた。チョルスは首をかしげた。
ユギョンはチョルスの家から事務所に向かって走った。
途中で家に戻ってくるアンナとばったり鉢合わせした。
「花束女、チョルスに会いに来たの?」
「そうよ。チョルスさんにあなたのことで大事な話があるの」
「それなら私に話して。何なの?」
ユギョンはじっとアンナを見つめた。社長のヴィラ棟で見た写真の女と目の前に立つ女の顔を重ねた。
「あなたは…何の記憶もないのにどうしてそんなに自信満々なの?」
「だったら、あんたこそ過去に執着するのはやめなさい」
ユギョンは薄笑いした。
「ほんと、何も知らないのね。あなたと彼は結ばれないわ。なぜなら…」
「笑わせないで。私は最後まで放さない。チャン・チョルスだって同じよ」
アンナの言葉にユギョンはチョルスの言っていた言葉を思い出した。
――”最後まで俺に頼れ”って約束したから。
ユギョンは思わずアンナから目を背けた。しかし彼女は引き下がらない。
「自分が誰だか知らないからよ」
「そうよ、自分が誰かは知らない。それは記憶が戻ればわかるわ。でも、チョルスと終わるわけじゃない」
――あいつが去っても…終わらないかもな。
戻ってきたチョルスの言葉にユギョンは再び打ちのめされた。
「記憶が戻ってもずっと彼のそばにいるわ」
「最後までそう言える?」
「”終わらない”と言ったはずよ。だから自信満々なの」
ユギョンはアンナの言葉を意地で笑い飛ばす。
「そう信じてるけど…私が終わらせるのは悪いわね。口出ししないでおくわ」
「花束女、あんたとは二度と会いたくないわ。お互い格好悪いもの。じゃあね」
行こうとするアンナをユギョンは呼び止める。
アンナは渋い表情で振り返る。
「もしかして、”チョ・アンナ”って人を知ってる?」
「ん? その人、誰?」
「私も知らない女性だけど、あなたももうすぐ会うことになるわ。会ったら面白くなりそうだわ。それじゃ、行きます」
ユギョンは自信満々の表情を残して歩き去った。
「チョ・アンナ…?」
アンナにとってはなぜか気にかかる響きの名前だった。
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