
韓国映画「ビューティ-・インサイド」から⑪
窓から差し込む光を感じてイスは目覚めた。眩しそうに光の差す窓をうかがい、ウジンの方を見た。彼女(彼)は昨夜のままでまだ眠っている。
そっと身体を起こす。寝床を離れ、クローゼット用の部屋を覗いた。ハンガーラックに衣服が隙間なく並んでいる。ハンガーラックの前に立ち、それらを一つ一つ見ていく。色彩からサイズまで、さまざまの用途に応じて衣服がそこにかかっている。他にも視力検査器具、多種多様の眼鏡、靴などが部屋の一部を占有している。それらはすべて、昨日一日家を出なかったウジンの話を裏付けるものだった。
キッチンも同様、さまざまの趣向に応じた食器やグラスの類が並んでいた。それらを一つ一つ確認しながら、イスは呆れるというよりほほえましい笑みを漏らした。
そして最後にイスが気になるのはウジンの姿だった。彼は今日、どんな容姿で自分の前に立つのだろう。
イスはソファに腰を沈めた。ノートパソコン画面で過去のウジンたちに見入りながら、静かにその時がやって来るのを待った。
そして後ろから人影が近づいてくる。
彼の気配を感じてイスは振り返る。立っていたのは長身の若い男性だった。
「ウジンさん?」
イスに見つめられ、彼は照れ臭そうに笑った。




その後、二人は馴れ初めからのフレッシュなひと時を持った。
「昨日は日本人女性だったわ」
「あっは、そうだった。君と寝床を共にし、忘れられない一日だった…」
━ 今日会った女性と———明日も来週も会えるのは、平凡なことだけど、僕には奇跡のようなこと…。それから、毎日イスに会った。小さなことも僕たちには話のネタになる。僕はイスがいるから、行きたい所やしたいことが増えた。
格闘技系の風貌を持った時、ウジンはイスの見ている前でうなじにタトゥーを入れた。
「痛くない? ウジンさん」
ウジンは痛みに耐えて声も出ない。どうやら終わったようだ。やっとの思いで訊ねる。
「どうだい?」
「悪くないわね。でも読めないわ。”イス”ってハングルで大きく入れてください、うふふ」
最後に記念写真を撮った。
いつも短い一日、その日が永遠であることを願った。そして一人だった写真の中の風景は変わり始め、これまでとは違う日常性が加わりだした。
イスはウジンから送られてきた画像を鑑賞する。
「あら、今日はおじさんだわね。うっふ、近所で見かけたことのあるような…」
イスはウジン宅の冷蔵庫内を見ていう。生活感がまるでないわ。今度はウジンを振り返り見て、両手で顔を挟み付ける。まじまじ観察する。
「何?」
「別に…今日のウジンと仲良くする儀式みたいなものかな…」
ぐりぐりいじり、眺め回す。
「仲良くなれた?」
「まだ…」
イスは両手を話す。横を向く。
「毎日見てもなかなか慣れない。なぜ、慣れないのかしら。すっかり変わっちゃうからヒントも得られない…」
「すみません」
イスの後ろに立ち、申し訳なさそうなウジン。
「ねえ」
「ん?」
「どんな姿が一番イヤ?」
「そうだな…一人前の人間となってヨジャチングまでいる身だから、子供にだけはなりたくないかな…子供時代には自分のスタイルがあった。なかなか慣れないんだ」
翌日、ウジンはよりもよってなりたくなかった姿でイスと過ごす羽目となった。
翌日、ウジンはよりもよってなりたくなかった姿でイスと過ごす羽目となった。
そっと身体を起こす。寝床を離れ、クローゼット用の部屋を覗いた。ハンガーラックに衣服が隙間なく並んでいる。ハンガーラックの前に立ち、それらを一つ一つ見ていく。色彩からサイズまで、さまざまの用途に応じて衣服がそこにかかっている。他にも視力検査器具、多種多様の眼鏡、靴などが部屋の一部を占有している。それらはすべて、昨日一日家を出なかったウジンの話を裏付けるものだった。
キッチンも同様、さまざまの趣向に応じた食器やグラスの類が並んでいた。それらを一つ一つ確認しながら、イスは呆れるというよりほほえましい笑みを漏らした。
そして最後にイスが気になるのはウジンの姿だった。彼は今日、どんな容姿で自分の前に立つのだろう。
イスはソファに腰を沈めた。ノートパソコン画面で過去のウジンたちに見入りながら、静かにその時がやって来るのを待った。
そして後ろから人影が近づいてくる。
彼の気配を感じてイスは振り返る。立っていたのは長身の若い男性だった。
「ウジンさん?」
イスに見つめられ、彼は照れ臭そうに笑った。




その後、二人は馴れ初めからのフレッシュなひと時を持った。
「昨日は日本人女性だったわ」
「あっは、そうだった。君と寝床を共にし、忘れられない一日だった…」
━ 今日会った女性と———明日も来週も会えるのは、平凡なことだけど、僕には奇跡のようなこと…。それから、毎日イスに会った。小さなことも僕たちには話のネタになる。僕はイスがいるから、行きたい所やしたいことが増えた。
格闘技系の風貌を持った時、ウジンはイスの見ている前でうなじにタトゥーを入れた。
「痛くない? ウジンさん」
ウジンは痛みに耐えて声も出ない。どうやら終わったようだ。やっとの思いで訊ねる。
「どうだい?」
「悪くないわね。でも読めないわ。”イス”ってハングルで大きく入れてください、うふふ」
最後に記念写真を撮った。
いつも短い一日、その日が永遠であることを願った。そして一人だった写真の中の風景は変わり始め、これまでとは違う日常性が加わりだした。
イスはウジンから送られてきた画像を鑑賞する。
「あら、今日はおじさんだわね。うっふ、近所で見かけたことのあるような…」
イスはウジン宅の冷蔵庫内を見ていう。生活感がまるでないわ。今度はウジンを振り返り見て、両手で顔を挟み付ける。まじまじ観察する。
「何?」
「別に…今日のウジンと仲良くする儀式みたいなものかな…」
ぐりぐりいじり、眺め回す。
「仲良くなれた?」
「まだ…」
イスは両手を話す。横を向く。
「毎日見てもなかなか慣れない。なぜ、慣れないのかしら。すっかり変わっちゃうからヒントも得られない…」
「すみません」
イスの後ろに立ち、申し訳なさそうなウジン。
「ねえ」
「ん?」
「どんな姿が一番イヤ?」
「そうだな…一人前の人間となってヨジャチングまでいる身だから、子供にだけはなりたくないかな…子供時代には自分のスタイルがあった。なかなか慣れないんだ」
翌日、ウジンはよりもよってなりたくなかった姿でイスと過ごす羽目となった。
翌日、ウジンはよりもよってなりたくなかった姿でイスと過ごす羽目となった。