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韓国ドラマ「病院船」から(連載182)
「病院船」第17話➡病院船の危機⑤
★★★
ウンジェのカバンの中で携帯が鳴った。警察署の中だった。
「電話に出てもいいですか?」
担当刑事は頷いた。
「手短に願います」
少し離れた場所でウンジェは電話に出た。
「今、どこ? 警察署?」
「ええ」
「なぜ僕に黙って1人で行くんだ」
「必要ないから。もう行かなきゃ」
「僕も駆けつける」
「いいわ。あなたが来ても何も変わらないわ」
「そんなことない。僕の立場から話せることもある」
「…私より診療を優先して。それが大事よ」
「僕が恋人を心配して言ってるとでも?」
「クァク先生…」
「そんな無責任な医者だと思うのか?」
「いいえ、そうじゃなくて…」
「聞いて! ソン先生! 僕は手術に立ち会った医者として言ってるんだ。警察は間違ってる。あの子が重体になった経緯を調べてるなら、まず、僕に話を聞くべきだ」
「…」
「あの子の処置は、生まれた瞬間から集中治療室に搬送されるまで僕が担当した」
「…」
「意味は分かる?」
「ええ」
「刑事には僕が処置したと答えて」
「そうするわ」
「分かってくれたらいい。診療を終えたら迎えに行く」
ヒョンと電話を終えた後、ウンジェはほっと息をついた。
落ち着きを取り戻すと待っていてくれた刑事に従って歩き出した。
★★★
道庁の課長は医療設備をおいた部屋で事務長を前に言った。
「1か月の間に手術が2件。はっはは、まったく…」
データーファイルを事務長の前にぽんと投げ出す。
「危険なうえに効率の悪い医者だ」
「効率ですか?」
「年俸4000万以上の医者が…」
課長は周囲を見た。
「高価な設備を買い、行った手術が2件。しかも手術費は無料。まったくふざけた話だ」
「その手術で2人の命を救いました。いや3人か…その命の値段が4000万程度だと?」
「1人は密輸犯だろ」
課長は声を荒げ、顎をしゃくった。
「犯罪者でも尊い命です。どんな大物かは関係ない。患者か否かが重要です」
「いや~、毎日、大海原を渡ってるせいか、はっは、浮世離れしてるな」
「課長…!」
「道議会は事務長の考えに賛同するかな?」
「道議会?」
「道知事が、病院船の放漫な運営を議会に問題提起したんだ」
「目的は何です? どうして病院船を攻撃するんですか!」
「攻撃などしていない。我々は道庁の効率的な運営のために、税金の無駄遣いを防ぎたいだけだ」
「…」
課長はデーターファイルを再び手にする。事務長の前にかざした。
「この監査結果が節税に役立ちそうだ。君はどう思う?」
事務長は呆れて声を返せなかった。
「”病院船は税金の無駄遣いの極みだ”…」
タブレットで病院船に触れた記事を読みながらチャン会長は呟いた。
車で移動しながら秘書が言葉を添える。
「ソン・ウンジェの記事と併せて掲載をさせました…」
チャン会長は秘書を見た。
「なかなかやるな…」
「ありがとうございます」
チャン会長は運転手をせかした。
「もっと早く走れ! 道知事が待ってる」
チャン会長は道知事と握手を交わした。
この道が”遠隔診療の試験運用地に選定”されたからだった。
「どうも。感謝します」
周囲で拍手が起こった。カメラのフラッシュが焚かれた。
チャン会長は遠隔診療による医療の”効率化”について記者たちの前で語った。
「遠隔診療は医療機関の利用が難しい離島など、医療が行き届かない地域に必要な制度です。遠隔診療の支援事業は私が引退する前に、これまでの集大成として実現したい私の宿願であります。我々は全社を挙げて、遠隔診療システムの定着に向け、最善を尽くすことをお約束します」
そうしてチャン会長指揮のもと、”ドゥソン電子 ノートPC”販売促進の事業が離島をターゲットにして開始された。
ウンジェを欠きながら、病院船の医療活動も今まで通り続いた。
ヒョンはいつものように離島の患者のもとを訪れた。
「おじいちゃん…」
「おお、来たか」
老人は収穫したカボチャを並べた台の上に座っていた。
ノートブックを手にしている。
ヒョンも台に腰をおろした。
「それは何です?」
「遠隔…何とかだよ」
「遠隔診療ですか?」
「おお、それだ。それに使えとこれを渡された」
「…」
「孫が喜びそうだろ」
ヒョンは苦笑いする。
「さあ、血圧と血糖を測りましょう」
老人はノートブックを横に置いた。
「遠隔診療のおかげで保健支所に通わずにすむか?」
「いいえ。毎日、保健支所で血糖を測り、食事療法もしてください」
ヒョンはていねいに説明を行った。
「管理を行って低血糖が起きたら―大変なことになりますよ」
老人は首を傾げた。
「だけど、通わなくていいと言われたぞ」
先方の話を信じ込んでる老人の様子にヒョンは言葉を失った。

ジェゴルも別の家を訪問した。
するとそこにはPC医療のスタッフらが先に訪れていた。PC操作の指導が始まり、取材班も同道して撮影を行っていた。
「ここに…腕を入れて巻くだけです…ボタンを押して…」
現場の状況にジェゴルは面食らった。
「何だ、これは…?」
ノートブックを持たされたお年寄りらが順番待ち状態で座っている。そのうちの1人が看護師らしい若い女性にノートブックの扱いを学んでいたからだ。
「この場合はこれ、下のボタンを…」
「これ?」
「その隣です」
「これ?」
「いいえ、青いボタンです」
「無理だよ。早く出て」
脇から指示が出る。指導員はカメラの視野からさっと逃れた。
「何だ?」
その光景にジェゴルは呆れた。
「まったく…」
指導員が引き下がったとたん、お年寄りのおばさんはノートブックの使い方が分からなくなっている。

「どれを押すんだっけ…? これ?」
あれこれ迷って何かボタンを押すと周囲からいっせいに拍手が起こった。
「そうです。お見事です」
ジェゴルは思わず爆笑しそうになった。