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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載73)




韓国ドラマ「30だけど17です」(連載73)




「30だけど17です」第8話(13年前の少女)⑦


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)

★★★


 ウジンは出来なかった。2人を別人とクールに認識することはできなかった。
 ウジンは自分を見失いヨロヨロと歩き出す。
 その時、携帯が鳴った。電話をかけてよこしたのはウ・ソリだった。
「もしもし、おじさん…もしもし」
 ウジンは握っていた携帯を下に落とした。ウ・ソリの声は続く。
「もしもし、おじさん、聞こえますか? 私です」
 混乱の中でウジンは何とか携帯を拾い上げる。
「何ですか?」
「ソリです。聞こえてないのかと思いました。カン代表が明日11時から会議だとおっしゃってます。遅刻したらぶっ飛ばすそうです」
 ソリは明るい声で言った。
「それと車がありましたけど、こちらに戻るなら一緒に帰りませんか?」
 言葉が喉の奥につまったまま出てこない。
「もしもし、おじさん」
「先に帰って」
 拒絶と愛おしさの混じった複雑な感情でウジンは答えた。


★★★ 


 リビングルームに顔出したジェニファーは、風船の飾りつけを見て目を白黒させた。
 三角帽をかぶって準備に勤しんでいるのはチャンだった。
「どうしたんです?」
 チャンはジェニファーの前に歩み寄った。
「おばさんの就職祝いをしてあげたくて」
「ただいま〜」
 そこへソリの声がした。
 飾りつけを見てソリも驚いた。
「サプライズだょん!」
 そう答えた後、口にくわえた吹き戻しを鳴らす。
 ソリはあんぐりとなった。何がなんかわからない。
 2人に見つめられてチャンは我に返った。
 チャンはすかさずジェニファーの口に吹き戻しを押し付ける。
 ジェニファーに呼吸を合わせて吹き戻しを鳴らす。
 ソリも悲鳴で笛の根に合わせた。


 ソリの就職祝いをしてやれてチャンはひとりご機嫌だった。リビングに1人出てきて、上品な曲を口笛で奏でる。するとピアカが塒から顔出した。ピヨピヨと鳴いた。首をかしげてチャンを見ている。
「ピアカー、なぜ、そんな目で見るんだ」
 ピアカは何か尋ねるように鳴いた。
「ピヨピヨピヨ → あの人が好きなの?」
「違うってば〜、そんな年上の女性を俺が…」
 ピアカはすぐまたピヨピヨピヨと鳴く。
 チャンは床に膝をついてピアカの巣箱を覗き込む。
「いいか、聞いてくれ。お前を気遣うのはここに連れて来たからだ。おばさんも同じ。お前もおばさんも俺は同じくらい好きなんだ。わかったね」
 チャンの笑顔に応じてピアカはピヨピヨピヨと鳴いた。
 
 その夜、ウジンはなかなか寝付けなかった。頭の中で鈴が鳴り続け、波のように押し寄せる13年前の事故の記憶に翻弄された。
 車の多重衝突によってウジンの乗ったバスも事故に巻き込まれた。
 あの日はほのかに好意を寄せていた少女と初めて言葉を交わした日だった。今までで一番良き日になるかも知れなかった日だった。
 それがその多重衝突事故によって暗転した。少女は”よかれ”と思った自分の言葉を信じ、次の駅までとバスに乗り続けた。少女の友達の声がかかり、はにかみ急いでバスをおりた時、少女のリュックについていた鈴が自分のリュックに引っかかってついてきた。鈴を少女の許へ返そうとウジンはバスを追いかけた。バスのひと駅などウジンにとってすぐだった。疲れなど感じず、逸る心で追いかけたのだった。
 しかし、そのバスは…少女を待っていた運命は…。
 事故の悪夢にうなされてウジンは記憶を閉じ込めた倉庫の中に入った。あの事故で犠牲になった少女との記憶に悔恨とともに浸った。
「ここじゃなくこの次のバス停でおりてください…!」


― 自分のせいで死んだんだ! 自分のせいで…! 


 自分の言葉を思い返し、ウジンは深くうな垂れた。


 
 ソリは任された仕事のことで頭がいっぱいだった。内職の手はつかず、欠伸をしながら音楽祭のアイデアをめぐらしたりした。
「一度は聴いたことのある…有名なクラシック曲を…」 
 頭をつかいながら何度も眠りに落ちそうになった。
 その時、外で物音がした。
 ドアをあけてリビングをうかがう。
「ジェニファー?」
 尋ねかけても返事がない。シーンとしている。
「空耳かな?」


 空耳ではなかった。ウジンが2階から支度しておりてきて外へ出かけていく物音だった。
 
 朝が来た。リビングに出てきたソリは昨日は見かけなかった紙袋に目を止めた。
 紙袋を覗くと”祝 就職”となっている。
 ジェニファーからの”贈り物”で、”お礼の言葉は省略希望”とコメントがついている。
「ジェニファー…」
 ソリは口に出さず、心で”ありがとう”とつぶやく。
 
 ジェニファーからプレゼントされた靴の履き心地を確かめているとチャンがおりてきた。
「どうしたの?」
「出勤です」
 チャンは柱時計に目をやった。まだ朝の5時を回ったところだ。
「バスも走ってないけど…」
 ソリはにこにこして答える。
「早く出社したくて…どうせ、歩いて通います。行ってきます」
 ソリは手を振る。
「歩きじゃ遠い…あっ!」
 チャンは手を叩いた。
「何て偶然なんだ。俺もこれから早朝トレーニングなんだ」
「…?」
「いつもこの時間は自転車に乗るんだ。知ってる?」
「えっ、そうなの?」
「今日、知ったね。ついでに送ってあげますよ」
 チャンは急いで庭を探し回った。
「どこかに転がっていたはずだ…」
 自転車を物置から引っ張り出してきた。
「さあ、乗って」
 ソリは自転車を見てしばらく動かない。
「…古い自転車だけど、本当に毎日乗ってるの?」
「も、もちろんさ。ビンテージだ。お祖父ちゃんが、昔、乗ってたやつなんだ」
 ソリはしどろもどろで答えるチャンに話を合わせた。
 そして、ふと見て「おっ!」と声を出す。
「どうしたの?」
「シールのポロロ
に覚えが…」
「シール? ああ〜、ポロロ。子供の頃、このアニメが大好きだったんだ。まだ残ってたのか」
「…」 
「おばさんも好きでした?」
「いいえ、ちょっと思い出しただけ…行きましょう」
 ソリは荷台にひょいとまたがった。
「行きますよ」
「はい」
 ソリはチャンの腰に腕をまわした。
「うひゃうひゃ、こそばゆい」
 ソリは腕を離した。
「くすぐったいのね」
「…」
 
 チャンはギコギコ自転車を漕いだ。スピードは出ないが自転車は重い二人を載せて目的地に向かって順調に走った。
 ソリを後ろに乗せてチャンはご機嫌だった。




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