韓国ドラマ「イケメン(美男)ですね」第1話(4)
コ・ミニョはお腹から搾り出すような悲鳴をあげた。
あたりはばからないコ・ミニョのひしり声にマ・フニ(キム・イングォン )は一瞬たじろいだ。うろたえた。
しかし、自分はそんなに怪しい人間じゃない。
フニはミニョの前に進み出た。彼女の口を手で押さえながら言った。
「ど、どうしたんです?」
ミニョは反射的にフニの腕を取り、彼の股間を蹴り上げた。
急所を蹴り上げられてフニは悶絶しそうになった。
やってしまってからミニョは我に返った。自分の行為を恥じた。しかし、どうしていいかわからない。
急所の痛みに飛び跳ね続けながらも、フニの目的心は衰えていない。
ヘルメットを差し出しながら痛みをこらえた。
「ちょっ、ちょっ、ちょっと、タイム・・・!」
コ・ミニョはヘルメットを取り戻した。
フニは顔を上げた。サングラスを外した。人なつっこい愛嬌のある顔が表れ出た。彼は精一杯の抗議に出ようとした。
「い、いったい俺が何をした・・・」
しかし次の瞬間には彼女のヘルメットパンチが彼の顔面に炸裂した。
フニは草むらに顔を埋めこむように倒れた。
衝動的な行為の反動を恐れて、コ・ミニョはあわててスクーターに飛び乗った。エンジンをかけて逃げ出した。
相手が逃げ出すのを察してフニには使命感が蘇る。股間の痛みに耐えて起き上がる。
ヨタヨタ車に戻り、彼女を追いかけ出す。
どうあっても彼女を事務所に連れていかねばならない。できれば今日のうちにだ。
田んぼの追走劇が始まる。逃げるスクーターを軽乗用車が追う。
必死で逃げるコ・ミニョにクラクションが鳴り響く。
フニは窓から顔を出しマイクで呼びかける。
「待ってください。話を聞いてください」
耳をかさず逃げようとするコ・ミニョ。
「シスター! シスター! 待ってください」
後ろからではラチがあかないと見たフニはコ・ミニョのスクーターに並びかけた。
この時フニがしているのはサングラスではない。白ブチのメガネだ。サングラスで彼女を恐れさしたと見たのか。
「止まってください。オートバイを止めてください、シスター!」
口をつぐんだまま彼女はエンジン全開で彼の車を振り切ろうとする。
「まいったな・・・話を聞いてくれようともしない」
コ・ミニョはスピードをあげて交差路を通り過ぎた。
フニもそこを通り抜けて追走を続けようとしたが、交差路に侵入してきた耕運機に前方を阻まれてしまった。
しかし、彼はあきらめず追走を続ける。
コ・ミニョは雑草の刈り込まれた林の中に逃げ込んでいった。枝の間に張られたクモの巣にトンボがかかっている。
フニは執ようにコ・ミニョの追走を続けた。林を抜けて田んぼ沿いに出た。
フニは再び彼女の横に並びかけた。
「シスター、シスター・・・コ・ミナムを知りませんか? ええ、知りませんか?」
その言葉にコ・ミニョの耳もとはピクンと反応した。
スクーターのスピードは緩む。
彼が何か話すと耳が反応してしまう。
「双子のお兄さんのコ・ミナムを知っているでしょう?」
どうして、お兄さんのことを・・・? どうして私たちのことを・・・?
気持ちが混乱しだしたところに彼は続けた。
「今、そのミナムが大変なことになっているんです」
それを聞いてコ・ミニョはスクーターを止めた。
「いったい、この人は私たちの何を・・・!?」
アン社長の演説は続いていた。
「彼はA.N.JELLの4番目のメンバーになる。反論は許さないぞ。これは神の意思である。コホン」
彼はスタッフを見回した。得意満面で両手を上に突き上げた。
「オー・マイ・ゴッド! これで最高のスーパースター誕生だ。わかるな」
話を聞くことにしたコ・ミニョはフニから兄の写真を見せられた。
「お兄ちゃんだ」
顔が似ているだけじゃない。口元のこのホクロ。兄さんに間違いはない。
「だけど、確かにやつれて見えるわ・・・お兄ちゃん、きちんと食事とってるの?」
頃合を見てフニはミニョに話しかけた。
「シスター、俺が・・・」
ミニョはフニを振り向き、かしこまった口調で言った。
「私はまだシスターではありません。修習生です」
「そうですか」
フニはひと呼吸入れ、本題に入った。
「妹さん、俺が今日訪ねてきたのは、ミナミのために大切な話があるからです」
「兄に何があったんです?」
「ものすごいことです」
「・・・?」
「あなたの兄さんがあの有名なA.N.JELLのメンバーに選ばれたのです」
彼女に喜べといわんばかりの態度を見せるが、コ・ミニョはそれが何のことか分からないでいる。
「エー・・・何ですか?」
フニは拍子抜けする。
「シスターはA.N.JELLを知らないんですか?」
「シスターじゃありませんよ」
「それはどうでもいいでしょうが」
フニは苛立たしそうに上着を脱いだ。
「ミナミがとうとう・・・ミナミが、あの有名なA.N.JELLの、一員になったと言ってるんですよ」
「ああ、そういうこと・・・だけど、それがなぜ問題なんです?」
「すみません。切羽つまっていまして・・・」
フニはとつぜんしゃがみこみ、地面に両膝をつけた。頭を下げた。
「じつは・・・お願いがあってやってまいりました」
「あの・・・どうしたというのですか? そんなことはよしてください」
「シスター」
フニは顔をあげた。
「私はまだ正式な・・・」
「ああ、もう・・・じゃあ、何と・・・聖女様・・・でもない・・・どうしますか? そうだ、神様がいい。神様、どうかお願いです」
「・・・」
「シスターの唯一の肉親であるコ・ミナムを助けてやってください。お願いします。どうか、どうかお願いします」
おっとり性格のコ・ミナムにはさっぱり事情が読めない。わけがわからない。
「何を・・・? どうやってですか?」
「どうやって?」
「ええ」
「あなたがミナミになってください」
コ・ミニョは思わず黒目が飛び出しそうになった。
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