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人生の生き甲斐と空しさを共有させたこのドラマ、見始めたらぐいぐい最後まで引き込まれていってしまう。
生活のかかった役者たちや制作陣のエネルギーというやつだろうか…。
寝不足になりながら最後まで視聴を付き合わされてしまった。
見終えての感想は、とってつけたようなラストが物足りなかったといえば物足りなかったものの、主要人物たちの節目節目の死が妙に輝きを放った。それらの死がつながって絵巻物のロマンが生まれてきた。自分の生き方を生き、燃焼しきっての死だったからだろうか。
話の中身だが「客主」というタイトルからどんな話かと思ったら行商人の物語だった。
行商人と言ってもピンからキリまである。商いに従事する者を大勢抱えている大店(今でいう大手の商社)もあれば、小商いの者たちが集まって結社(組合)を作り、行商に励んでいるのもある。それでは儲けられないというので徒党を組み、法の網をくぐって一発ぼろ儲けの綱渡りをやってる行商人も登場する。
このドラマ「客主」はそんな連中が商いで生じる利益をめぐって争い、入り乱れる物語である。
話の主人公であるチョン・ボンサムは、世の中の人たちが少しでも楽な生活が送れるような善行の行商人になろうとする。子供の頃に不遇の死で失った父の教えが心に残っていた。
しかし、時は暴利を貪る悪徳商人とそこに寄生する貴族と役人が世を動かす暗黒の時代だった。
真っ当な商売を嫌う悪徳商人らは結託してチョン・ボンサムの前に立ちはだかった。彼らの罠や謀略に遭いながら、ボンサムはそれらの試練を乗り越えていく。
繰り広げられるのは商いをめぐる利権だけではない。出生あり、恋あり、友情あり、出会いあり、横恋慕あり、数々の死あり、裏切りあり、で波乱万丈の物語をつむいでいく。
近代化の波は静かに押し寄せだしているのに、この物語の主人公たちは背中に荷を背負っている。物品の移動を可能にしていたのはほとんどが当人の健脚だったのだ。
ここから見えてくるのはこの時代の行商人たちがいかに苦労して商売を行ってきたかである。
子供(昭和)の頃、実際にいろんな行商人を見た。家々を一軒一軒まわって薬を売っていた富山の薬売り、衣服売り、ろばに荷を引かせてパンを売りまわっていたパン屋、毎日自転車でやってきてアイスクリームやお菓子を売ったあと紙芝居を見せてくれた人たち…。
これらは物品交流が乏しく各村々に店も娯楽もなかった時代のなごりを示すものだったのだ。
ドラマの主人公チョン・ボンサムと彼の父チョン・オスの思い描いていた人々の豊かな暮らし…延々と40話を費やして描かれている意味が最後になってようやく解けてくる。
このドラマのラストで物品の大量輸送を可能にする鉄道を敷く話が出てくる。
物品が大量に動く時代に向かって近代化の波が押し寄せる中、チョン・ボンサムはじめ、主要キャラたちは命がけの闘争心みたいなものは失っているように感じられる。
むしろ、過酷で厳しい時代の礎となって死んでいった者の方が印象を強くしてくるのはどこか奇妙でもある…
来る世を見つめ不動産業を始めたチョン・ボンサムは、新たな時代の商いについてわが子たちを集めて学習塾(学校の前身?)を始めている。
重要なのは教える内容より、生きるのも厳しい時代にもまれながら息子たちは無事に育ち、未来に向けて夢や大志を抱きだしているということ。
時代の真っ只中を夢中で走ってきたチョン・ボンサムも激動の主役の座から静かにおりようとしていく…ラストシーンの中からそんなものを感じた。
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