今の場所に越してきて三年になる。職場までは車で十五分ほどで行き着くが、最初は分かりやすい道路を通って出勤していた。要するに抜け道でなく大きな道路である。多少、遠回りなのが難点だった。そこの交差点の右折が煩わしいと感じるようになったのは間もなくのことである。直進して来る車が多く信号が変わる頃でないとなかなか右折できない。その上、道を戻っていく按配なのがやっぱり気に入らなかった。
そうしたある日、信号待ちしている時、直進車が続くなか、後ろの車と車間距離を開けて走って来るトラックが見えた。そのトラックが走り抜けた後、右折すれば大丈夫だと思って待ち構え、通り過ぎた後、右折に入った。するとその斜め後ろをオートバイがついて走って来たのが思いがけず驚いた。焦った。とっさに急ブレーキを踏み、オートバイをやり過ごしてから、今度はその後ろから走ってくる車を交わさねばならない。急ブレーキからオートバイをやり過ごし、すぐアクセルを踏み込んで右折して事なきをえたが、そのあと額からどっと汗が噴き出た。
後ろから走ってきた車の運転者が安全運転の人だったからよかったものの、飛ばし屋の運転手だったら、僕の車の横っ腹はガシャンとやられ、ひどいことになっていた。しかも悪いのは右折しようとした自分である。
トラックの後ろを走って来るオートバイを予測していなかったからだ。これは免許更新の際、危ない例として映像で流されたりもした。ドライバーはふだんから気をつけねばならない事項である。
そういうことがあって、そこの交差点は利用しなくなった。時に危ない思いをし、急いた気分でそこを右折するより、抜け道を通ってそこの街道に出るようにしたのである。
この間までその道路を使っていた。だが、たまたまその道路を使えないことがあった。インターネットで地図を開き、別の道を探してみたら、道幅は狭いようだが、高校のすぐ近くを通って行く道路が見つかった。ためしに走ってみると、これが意外と便利な道だった。職場まで近道である上、僕が通勤していく時間帯にそこの道路を利用する車が実に少ないのだ。前後を走る車はたまにあるだけだし、道幅が狭くなる場所もあるが対向車はほとんど現れない。
職場に出かけて行くのはこの道路を利用することにした。距離は近いし、信号もない。当然、通勤時間も短縮である。帰りはここの道路の一部は高校生の下校道になるので、今までどおりの経路を使うがそれは仕方がない。
そうして走るようになって早くも一週間が経った。今はどうやらこのことに満足している。
得な通勤路を確保するまで三年かかったことになる。何事も起きなかったなら、最初の道路を今も漫然と通勤している自分の姿が見えないでもない。
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