雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載119)




韓国ドラマ「30だけど17です」(連載119)




「30だけど17です」第14話(2人きりの夜)④


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)


★★★

 その頃、チャンはヒスに電話を入れていた。
「ヒスさん、明日は帰れる? おばさんは?」
「帰れるも何も、船が出たからソウルに戻って来たわ」
 チャンは足を止めた。
「ほんとに? わかったよ。電話切るね」
「待って」とヒス。「コンの鼻は大丈夫?」
「鼻? 鼻がどうしたの?」
「実はね…ソリさんがボタン付けをしながら、お凸をぶつけたの」
「そうなの…何も言ってなかったけど。大丈夫なんでしょ。じゃあ、また」
 チャンはジェニファーに電話を入れた。
「おばさんに代わって」
「私は今、外出中です」
「そうですか…だったら、おばさんに電話してと伝えて…」
「私は明日、そちらに戻る予定です。用事があって休暇をいただきました」
「わかりました。ではその時に」
 ジェニファーとの話はすんだ。
「それじゃあ、ミスター・コンに電話しよう…」
 そこまで来て、チャンは気づいた。
 待てよ…ジェニファーが不在なら、家には…二人きりってこと〜?

★★★


 家に入るとトックが飛び出してきた。
「ペン、元気だった? お待たせしちゃったね」
 トックの顔を両手で挟み、ソリはジェニファーを呼んだ。
「ジェニファー、ただいま〜」
 返事がない。
「チャン君〜」
 次も返事がない。
「チャンは今日から合宿です」
 後ろから入ってきたウジンが答えた。
「そうですか」
 ソリは腰を上げた。
「ジェニファーは2階かしら?」
 もう一度、ジェニファーを呼ぶ。
 やっぱり返事がない。横を見て壁の張り紙に気付いた。
「これは何かしら…?」
「そうだ、ジェニファーも休暇で明日、帰ってきます」
「ああ、そうなんですか…」
 ソリは残念そうにウジンを見た。
 顔を見合わせた時、ソリはハッとなった。
 ソリの緊張にウジンもハッとなった。
 2人は一瞬、目をそらし合った。
「明日、帰って来るのね…」
「ええ」
 目をそらしたままウジンは頷く。
「明日…」
 トックは突っ立って動かない2人を怪訝そうに見上げている。
「セミが…」
 ソリは外を気にした。
 ウジンも外を見やった。
「ええ、な、鳴いてますね」
「では失礼します」
 目をそらしたままソリは他人行儀に頭を下げた。
「どうも」
 ウジンもぺこりと挨拶を返した。
「お気をつけて」
「はい、失礼します」
 深々と頭をさげてソリは自分の部屋に向かう。
 ウジンも階段を上がっていく。
 ソリはドアを開ける時、ウジンを見上げた。
 たまたまウジンもソリを見た。
 目が合って、ソリは礼をする。
 ウジンも慌てて頭を下げた。いそいそ階段を上がっていく。途中でソリを見たら、ソリも目を上げて視線が鉢合わせする。
 2人は黙ってまたも頭を下げ合った。
 今度はとばかり、ソリは頭を下げたまま後ずさりで部屋に入った。


 部屋で我に返ったソリの顏は赤らんでいる。
 ソリは頭に手をやった。
「私って、どうかしてるわ…」 


 自分の部屋に入るなり、ウジンも顔をしかめた。
「何が”気を付けて”だ。カッコの悪い…」
 髪の上から額を押えてため息をついた。


 夜が深まる時刻、チャンはランニングに精を出した。気持ちのもやもやを振り払うためだった。
 しかし、いくら走ってももやもやは解消されない。
 チャンは走りながら祖父とのやりとりを思い出していた。


― 売らない? ミスター・コン(おじさん)が不在ならーお祖父ちゃんが家の管理を?
― いや、家が好きになったと言っていた。もう、放浪はしない、と言ってたよ。


 チャンは思っていた。ミスター・コン(おじさん)の心境の変化は、ソリさんに会って起きたんじゃないか…と。ヒスさんから聞かされたボタン付けのエピソード、2人の楽しそうなツーショット写真、じかに仲睦まじい姿を部屋で目にしたこともあった…
 チャンは走った。走って走り疲れるまで走った。
 そしてゼイゼイ息を切らし、ハアハア息を整えてから顔を上げた。


 ウジンはマグカップを握って階段を降りてきた。そしたらソリも出てきて鉢合わせした。
「水を飲もうかと」
 ウジンは先に説明した。
「ああ、お水ですか…」
 一礼してソリは行き過ぎようとする。
「何だ⁉」
 ウジンが声を出す。
 ソリは振り返る。窓辺で飛び回っている虫がいる。
「蛾だわ。家の中に蛾がいる。どこから中に?」
 ソリは窓辺に先に走り寄る。
「あ、大きい。物凄く大きいよ」
 ウジンは近くの冊子を握った。それを振り回す。
「出て行け、こいつ!」
「パタパタしてヒトリガかな」
 蛾を落とせなかったウジンは明かりを落とした。部屋は真っ暗になる。
 ウジンは言った。
「電気を消したから、すぐに出て行くはずだ」
「そうですね」
 暗闇の中でウジンはソリを見た。少しずつソリの姿が浮かび上がる。
「家が好きになったんだ」
 ウジンは父に話した言葉を思い出した。
 同時にこの家でみんなと会話を弾ませるウジンの姿を思い起こしていた。
 そんな気持ちを持つようになったのはウ・ソリがここへ来てからだ。
「あそこで過ごす時間、あの空間を残しておきたいんだ」


― 最近のあいつは笑顔を見せるでしょ。ソリさんのおかげで変わったみたい。


 ソリは言った。
「出ていったみたい…」
「電気をつけないで」
 明かりを入れようとするソリの手をウジンは握った。
「えっ?」
「もう少し、このままで―。まだ出ていってない」
「ああ…」ソリは頷く。「すみません、手を」
「手…」
 ウジンは手を放す。
 2人に緊張の時間が戻った。時間はゆっくり流れ、2人から虫の存在は薄れていった。そのうち、虫のことは気にならなくなった。
 ソリはウジンの方に身体を向けた。窓から差し込む明かりで2人の姿はくっきり浮かび上がった。
 2人は互いを見つめ合った。2人だけの世界が出現した。
 2人は重力の力を借り無意識に顔を近づける。
 その時、2人の空間に蛾が飛び込んでくる。ソリが悲鳴を上げた。
 蛾は2人を混乱に陥れて飛び去った。
 ウジンの両手はソリの身体を支えていた。ソリの手もウジンの腰に回っていた。混乱の中で2人は互いの身体を支えようとしたのだ。
 ウジンはソリの肩に手を置いた。
 蛾も離れた場所で2人を見ていた。
 2人の顏が近づこうとした瞬間、グ〜ッと誰かのお腹が鳴った。
「すみません」ソリが謝る。「お腹がすいてて……あれっ? さっき食べたのに」
 ウジンが答えた。
「鳴ったのは僕のお腹だ」





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