雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載117)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載117)



「30だけど17です」第14話(2人きりの夜)②


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)

★★★

 ヒスは天井を見上げた。両手で膝を抱え込んだ。
「お姉さんやチャンによれば、よく笑う明るい性格だったらしいの。無愛想になった理由は私にもわからない」


 ヒスの言葉を受け、ソリはウジンの話を思い浮かべた。


― 昔、僕は―ある少女に取り返しのつかないことをしたんだ…


「最近のコンを見ていると―元々は明るい性格だったと思える節が時々感じられるのよね」
「えっ?」
 ヒスは顎に拳を当てた。意味深にソリを見つめた。
「思うにソリさんのおかげで変わったかも…」
「私で、ですか?」とソリ。
 ヒスは首に手をやった。ソリを見てて、その手を横に振った。
「気にしないで」
 笑みを浮かべてから切り出した。
「そうだ、コンに電話したら?」
 携帯を指さす。
「充電できてるはずよ。私はお風呂に入る」
「はい」
 2人は腰を上げた。

★★★


 ソリは充電器から携帯を取り上げた。
 時間が遅いのを気にする。
「寝てたら起こしちゃうわね」


 ウジンも部屋でうろうろした。
 電話を待つよりこっちからかけようとなった時、時間が遅いのが気になった。電話をかける直前、思いとどまってつぶやく。
「寝てるかな…」
 携帯を机上に戻す。
 その時、MPプレーヤーが目に留まった。手に取った。
 ソリとのやりとりを思い起こす。


「おすすめの曲は?」
 訊ねるとソリは乗り気になった。
「ありますよ、たくさん」
「…」
「感傷的なショパンの曲はどうです?」
 と切り出すや、ソリの口からはドビュッシーやベートーベンなど、たくさんの音楽家のたくさんの曲が泉のごとく飛び出してきたものだった。
「ちょっ、ちょっと待って。もう、目を輝かしちゃって〜。そんなにまくしたてられても一度で覚えきれないよ」
「…」
「まずは簡単な曲からお願い」
「それなら〜」
 ソリはしばし考え、ウジンを見た。
「家具の音楽がいい」
 ウジンは怪訝そうにソリを見つめ返した。
「なぜ、”家具”が出て来るの?」
 ソリは笑って答えた。
「エリック・サティの”家具の音楽”です。サティの室内音楽で”生活に溶け込む音楽”です」
「…」
「特におすすめの曲は ― ”ジュ・トゥ・ヴ””」
「”ジュ・トゥ・ヴ””? 意味は?」
「”あなたがほしい”」
 ソリはそう答えてウジンを見つめた。ウジンもしばしソリを見つめ返して動かなかった。


 ”ジュ・トゥ・ヴ””に聴き入りながら、ウジンはソリのことを考えていた。 


 この日はソリにとっても眠れない夜となった。
 隣ではヒスが寝息を立てている。
 外の雨と風はすべての時間を運び去った。
 ソリは布団のの上に座り込み、物思いに耽った。
 彼女の心では、これまでのウジンとの出来事が行きつ戻りつし、ウジンの言葉が動き回っていた。
「いい物だ。大切に使います。ありがとう」


 眠れないウジンは外に出た。庭先に立って月を眺め、風に舞う百日紅の花びらを見やった。




 チャンから朝の挨拶を受けたウジンは切り出した。
「今日から合宿だったな。常備薬や下着など、ちゃんと準備したか?」
 チャンはウジンを怪訝そうに見た。
 顔に手を伸ばし、顔を覗き込んだ。
「まさか、母さんが乗り移った?」
 手を放した。しかめた顔で言った。
「驚かさないでよ」
 ウジンは手にした財布からお札を抜き出した。
「ヘボムやドクスと美味い物でも食え」
「気を遣わなくてもいいのに…ありがとう」
 チャンは照れくさそうにお札を手にする。
 ウジンはポケットから携帯を取り出す。
「ああ、カン代表、船に乗った?」
 チャンもすぐ反応する。
「おばさんに代わって」
 チャンを見てうなずくウジン。
「もう、最悪よ」とヒスの声。「波浪注意報が解除されず、船を出せないって」
「じゃあ、今日も帰れないの?」
「何だよ」
 チャンは嘆息する。顔をそっくり返らせる。
「11時半から会議なのにどうしよう…ヒョンと行ってもらえる?」
「11時半だな。よし、わかった」
 
 ウジンは支度して家を出た。
 庭で害虫駆除を始めていたジェニファーがウジンを見て言った。
「明日の午後まで休暇をいただいてもよろしいですか?」
「えっ? どうぞ、かまいません。行って来ます」
 ウジンは運動靴を引っかけ、ケンケンしながら往来へ飛び出していった。


「三週間後にここで大会だ。手を抜くな。気合をいれろ」
 コーチが声を枯らす中、チャンたちは来る大会に向けてモーレツな練習に入った。
「もっと長めに息を合わせろ。水をキャッチするんだ」


 練習が終わるとチャンは空模様にぶつぶつ文句を並べた。
「波浪注意報め、いい加減にしろってんだ…」
 前方に子供の姿がある。
「あっちは立ち入り禁止だが…」
 携帯を覗き込んでいたセボムが足を止めた。ドクスに続いてチャンも足を止めた。
「アイドルと女優が熱愛だって…”ジュニョクとソンミンの熱愛”が検索1位だ」
「女優は11歳も年上だぞ」
 ドクスの言葉にチャンミンは気を取られた。
「そんなに年の差があるのか?」
 チャンは2人の話に割り込んだ。
「おい、11歳上で何が悪いんだ。ふざけるんじゃない」
 あまりの剣幕にドクスたちは怖気づいた。
 その時、チャンは子供やまりの音の気配が消えたのを感じた。
 見ると姿もない。
 慌てて子供の歩いていった方向に駆けだす。
 突堤の横で波紋が立ち、まりが浮いている。
 チャンは走っていって突堤から水中に飛び込んだ。もぐって水中に沈んで行く子供に向かって突進した。
 その間にヘボムたちが救急車を呼んだ。
 子供は救急車の中に運び込まれ、駆け付けた隊員に対してチャンは説明した。
「人口呼吸をしたら水を吐きました」
「一緒に乘って下さい」
「はい」
 チャンは救急車に乗り込んだ。
 そこに駆け付けてきた中年女性が言った。
「ミンギュよ。そこの生花店の息子」
「すぐ来るよう伝えてください」
 救急車はサイレンを鳴らして走り出し、中年女性は生花店に向けて引き返して行った。
 


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