雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載118)







韓国ドラマ「30だけど17です」(連載118)




「30だけど17です」第14話(2人きりの夜)③


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)

★★★


 練習が終わるとチャンは空模様にぶつぶつ文句を並べた。
「波浪注意報め、いい加減にしろってんだ…」
 前方に子供の姿がある。
「あっちは立ち入り禁止だが…」
 携帯を覗き込んでいたセボムが足を止めた。ドクスに続いてチャンも足を止めた。
「アイドルと女優が熱愛だって…”ジュニョクとソンミンの熱愛”が検索1位だ」
「女優は11歳も年上だぞ」
 ドクスの言葉にチャンミンは気を取られた。
「そんなに年の差があるのか?」
 チャンは2人の話に割り込んだ。
「おい、11歳上で何が悪いんだ。ふざけるんじゃない」
 あまりの剣幕にドクスたちは怖気づいた。
 その時、チャンは子供やまりの音の気配が消えたのを感じた。
 見ると姿もない。
 慌てて子供の歩いていった方向に駆けだす。
 突堤の横で波紋が立ち、まりが浮いている。
 チャンは走っていって突堤から水中に飛び込んだ。もぐって水中に沈んで行く子供に向かって突進した。
 その間にヘボムたちが救急車を呼んだ。
 子供は救急車の中に運び込まれ、駆け付けた隊員に対してチャンは説明した。
「人口呼吸をしたら水を吐きました」
「一緒に乘って下さい」
「はい」
 チャンは救急車に乗り込んだ。
 そこに駆け付けてきた中年女性が言った。
「ミンギュよ。そこの生花店の息子」
「すぐ来るよう伝えてください」
 救急車はサイレンを鳴らして走り出し、中年女性は生花店に向けて引き返して行った。


★★★


 チャンの他、コーチやドクスたちも病院に駆けつけて子供の様子を見守った。チャンが子供の身体から水を吐かせたこともあり、命に別状はなかった。
 しかし、ベッドの上で動かない。
「大丈夫ですよね?」
 チャンの質問に看護師は頷いた。
「異常はなく、眠っているだけです。母親もこちらに向かっています」
「よかった」
 ドクスたちは口々に声をもらした。
 チャンたちは集中治療室を出てきた。1人の女性がチャンに肩をぶつけて中へ走りこんでいった。


 先ほどチャンたちのいたベッドに女性が駆けつけた。
 子供に顔を寄せて呼びかける。
「ミンジュ、大丈夫?」
 ベッドの対面にいた看護師が訊ねる。
「お母さまですか?」 
 返事をして顔を上げたのは、ソリの捜している叔父の妻、クク・ミヒョンだった。


「6時です。夕飯でも」
 ヒョンの声にウジンは顔を上げた。
「6時って…時計が遅れてないか?」
「遅れてないよ」
 ヒョンは人差し指を振った。
「今日はいつも以上に変ですね」

 ウジンはため息をつく。
 事務所を出て市街に出たウジンに女学生が声をかけてきた。
「おじさん、今何時ですか?」
 携帯を出してウジンは時刻を確認する。ため息をつく。
「まだ6時半なんだけど…」
 女学生は気味悪がって行ってしまった。
 とろとろ歩き出したウジンに後ろからまた声がかかる。
「おじさ〜ん」
「6時半だってば〜」
「おじさ〜ん」
「だから6時半…」
 虚ろな声で振り返ったら、聞こえて来るのは別の方角からだ。
 そっちを見たら対面の歩道から両手を振ってる女性がいる。ウ・ソリだ。
 ウジンの表情はぱっと明るんだ。思わず手を振り返している。
 ソリの大きな声にウジンは走り出した。
 向こうに渡る陸橋がある。そこに向かって走り出した。
「おじさ〜ん」
 ソリもウジンに合わせて走り出す。
 ウジンは陸橋の階段を全速力で駆けあがる。
 ソリも陸橋を走り上がってきた。ソリにとっても昨日から今日にかけては長い空白の時間だった。
 ウジンは走ってきてソリの前に立った。息弾ませて訊ねた。
「どうやって来たの? 船は出ないって…」
 それに答えずソリは言った。
「おじさん、会いたかった」
 ソリの弾んだ声はいつになく瑞々しい。ウジンはその声に言葉を失った。
代わりに胸がときめいた。ずっと忘れた不思議な感情だった。
 驚いているウジンにソリは我に返った。
「だから、その…」
 ソリはとっさに手を出した。コン家の人たちを数えだす。
「チャン君と、ジェニファーとペンと…みんなに会いたかった」
「…」
「早く帰って来たかったの」
 目の前ではしゃぐソリをウジンはじっと見つめた。さっき見た女学生よりも若々しいソリを不思議に思える自分がいる。…
 ソリは笑顔で訊ねる。
「どうかしました?」
 ウジンはその時、姉の言った言葉を思い起こしていた。


― あなた、彼女のことが好きなのね?


「そうだと思います…」
「何がです?」 
 ウジンは黙ってソリを見つめた。
 ウジンのまっすぐな目から自分の心をそらしてソリは言った。
「疲れたから帰りましょう」
 ウジンに会って元気が出たのにソリはそう言って横をすり抜けた。ウジンの視線を気にしながら先を歩いて行った。




 その頃、チャンはヒスに電話を入れていた。
「ヒスさん、明日は帰れる? おばさんは?」
「帰れるも何も、船が出たからソウルに戻って来たわ」
 チャンは足を止めた。
「ほんとに? わかったよ。電話切るね」
「待って」とヒス。「コンの鼻は大丈夫?」
「鼻? 鼻がどうしたの?」
「実はね…ソリさんがボタン付けをしながら、お凸をぶつけたの」
「そうなの…何も言ってなかったけど。大丈夫なんでしょ。じゃあ、また」
 チャンはジェニファーに電話を入れた。
「おばさんに代わって」
「私は今、外出中です」
「そうですか…だったら、おばさんに電話してと伝えて…」
「私は明日、そちらに戻る予定です。用事があって休暇をいただきました」
「わかりました。ではその時に」
 ジェニファーとの話はすんだ。
「それじゃあ、ミスター・コンに電話しよう…」
 そこまで来て、チャンは気づいた。
 待てよ…ジェニファーが不在なら、家には…二人きりってこと〜?


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