
ユギョンは思わずつぶやいた。
「この女…彼女の写真がどうしてここにあるの?」
出張の支度をすませ、チョルスはアンナに声をかけた。
「行ってくるから子供たちを頼むよ」
アンナはでかけようとするチョルスを呼び止める。
「一週間なのに荷物はそれだけ?」
「ああ」
チョルスはアンナのそばに歩み寄る。ズボンのポケットから封筒を取り出して差し出す。
「これは一週間の生活費だ。ジャージャー麺ばかり食べないでな」
背を返したチョルスをまた呼び止める。
「私が昨日言ったことはどう思ってるの? 話はないの?」
「当分、やめないんだろう? 感謝してるよ」
あっさり言ってチョルスは出かけていく。
「何よ」
話を簡単に片付けられたことが腹立たしい。
ドアを開けて出ていこうとするチョルスに向かってアンナは叫んだ。
「やめてやるわ!」
言い終わらぬうちにドアは閉まった。
アンナはチョルスの後を追って外に出てきた。
「チャン・チョルスのバカ、待ってよ」
そう言ってチョルスに追いつく。
「そう言われたら記憶があるなしに関係なく…引き止めるべきじゃないの!」
「記憶が戻れば引き止めはしないよ」
アンナはチョルスの言葉に面食らった。
「えっ?」
「記憶が戻ったら、お前は元の場所へ戻るべきだ。最初に騙した俺が悪いのに…引き止められるわけもないだろう。だから、捜しに行くと言ったんだ」
「捜してどうする気かはっきりさせて」
「気になるなら早く記憶を取り戻せ」
「ええ。だったら取り戻して絶対に捜せない所へ行くから。捜してみてよ」
「サンシルーッ、わかってるくせになぜ聞きたがるんだ?」
「何言ってるの。言わなきゃわからないでしょ。私にわかるわけないじゃない。この腰抜け野郎」
チョルスは背を返し戻ろうとするアンナの肩を押さえ、自分に向き直らせた。
「好きだ。ほんと俺も変わってるよな。でもお前が好きだ」
好きと言われ、アンナの意地っ張りな表情は緩む。その顔を両手で押さえてチョルスはキスをした。長いキスをした。
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