<script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?cb=googleTranslateElementInit"></script>
google-site-verification: google3493cdb2db9ede
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/a9/6a93e2d619daa519ab3db569ab57ea94.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/75/fb8b717af3e70bcf211f013196a2a58f.jpg)
韓国ドラマ「病院船」から(連載170)
「病院船」第16話➡退院祝い⑤
★★★
ヒョンは診察台に腰をおろした。
「病室に顔を出さなかったのは、患者のフォローをしてたから? メモの整理まで」
「…人数が多すぎてまだみんな連絡しきれてない」
ヒョンはニコニコしている。
余計なことをほんとに言わない人だ。感心もする。父親を世話したことはこちらが聞くまで話さないかもしれない。
ウンジェは咳払いして引き出しの中から四角い包みを取り出した。
「これを」
ウンジェは両手で受け取る。
「何?」
「開けてみて」
ヒョンは笑いながら紙の箱を開ける。
聴診器が入っていた。ヒョンが今まで使って来たのは事件の際に壊れてしまった。
「聴診器か」
ヒョンは意外そうにする。
「あなたのは壊れて使い物にならないから」
「…いいやつだな」
「大金をはたいたわ。心臓内科医が使うからいい物にしたの」
ヒョンはニコニコしてウンジェの話を聞いている。照れ臭そうな話ぶりだから、言葉のすべて心地よいのらしい。
「退院、おめでとう。ではあとは自分でやって」
立ち上がって行こうとする。ヒョンはウンジェの手を掴んだ。引っ張り寄せた。顔が近づき、ウンジェは緊張する。
「僕に会いたくなかった?」
一瞬、返事につまる。すぐ思い直す。
「いえ、それは…」
「なぜ目を見ない」
ウンジェの目は揺れた。ヒョンを見つめ返す。
額の裏に熱を感じる。浮かびかかる言葉は即座に燃え尽きる。
「どこか具合でも?」
「いえ、大丈夫よ」
ヒョンは腕を引く。ウンジェに聴診器を当てる。そして目をつぶる。
★★★
ウンジェの心音に耳を澄ませる。やがて目を開ける。
「具合はよくないな」
ヒョンはウンジェを見た。
「心臓内科医の所見では、心拍数が正常範囲を超えてる」
白い歯を覗かせる。
ウンジェは聴診器を当てられたまま無心で立っている。
「激しい鼓動は誰のせいかな?」
ウンジェはヒョンをじっと見つめる。
自分の気持ちを隠すつもりはもうない。
ヒョンは笑みでウンジェを見つめ返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/c3/260cbf5952e69a1de34abb156cc2ed1b.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/91/317560cc71c832f460edeb4d8928d70c.jpg)
「付き合おうか…僕たち」
「…」
「恋人同士になろう」
ウンジェは笑顔を返し、ヒョンを見つめたまま頷く。
ヒョンは立ち上がる。笑顔でウンジェを抱きしめる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/36/e8f6b2326461a88d2f4fe5418ceed3fc.jpg)
船員や医療スタッフらが業務の準備に勤しむ中、操舵室で船長がマイクを握った。
「ついに本日、病院船の修理が終わり、再び出航できるようになりました。…離島の生命線である病院船がその役割を果たせるよう、医療と船舶チームが一丸となり、最善を尽くしてください」
乗船チームらは準備を進めながら船長の訓示に耳を傾けている。
「ここで私が一曲、歌いたいところですが…」
ゴウンがやっと外れたとばかり笑い出す。
「安全な航行のために省略いたします」
ジュニョン、アリム、ヒョン、ウンジェも笑い出す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/0b/995377c83deea19abd52dfce4263953b.jpg)
「病院船の外科をなくせというのですか?」
事務長は道庁の課長を追いかけて部屋に入って来る。
「そんなのとんでもない話です」
課長は事務長を振り返る。居丈高に言った。
「さもないと病院船も廃止になるぞ」
「課長!」
「道知事が…替わったの知ってるだろ」
「…」
「以前とは違い無駄な支出は―出来るだけ減らそうとしてる」
事務長は悲痛な顔になる。懸命に訴える。
「病院船に”無駄”はありません。医師たちが努力して節約しています」
「知事が”一番のお荷物だ”と言ってる」
「なぜですか?」
「無料じゃないか」
「…」
「診療、往診、薬はもちろん…手術まで無料とは、ありえない話だ」
「…」
「廃止しないと私がクビになる」
「すぐ手術しなければ―命に危険の及ぶ緊急時のみ行っています。病院船は無料診療が原則でしょう」
「だから、それを見直すんだ。今後は消防機関に患者を回せばいい。搬送費用は国が出す」
「…」
「だから手術費は自己負担にしろ」
「可能ならばそうしますが…」
事務長は眉間にしわを寄せる。
「指示通りにしろ」
「課長」
課長はため息をつく。
「君とは長い付き合いだからこうして事前に伝えてる。問題が大きくならないよう―船長と相談して廃止しろ。それに外科医のソン・ウンジェは、あちこちから引く手あまただろ。帰れ」
課長は逃げるように部屋を出て行った。
「まいったな…」
事務長はしょげ返った。
収穫のない帰り道の足どりは重かった。
船長は事務長の報告を電話で受けた。
「えっ! そんなに頑ななのか?」
「今回は切り抜けるのが難しいようです」
「分かった―濃霧で客船が動いてないから、寮で休んでろ。戻り次第、そっちに向かう」
やり取りが終わると後ろで話を聞いていた甲板長が訊ねた。
「どうしたんです? 誰が頑なだと?」
「何でもない。気にするな」と船長。
「…?」
「ありゃ~、霧はどんどん濃くなって来てる。前方がぜんぜん見えないからもどかしい。どうしたものかな…」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/86/7b71ae4b06b17f702fb00fabc8309afd.jpg)
ヒョンが紅茶で休憩を取っていると、そこへウンジェがやってきた。肩や首を押さえている。
「疲れた?」
「少し」
「患者が多くて?」
ウンジェは首に手を回したまま顔を上げる。
「濃霧で漁船同士が衝突して―負傷者が多く出て座る暇もなかった」
「ふむ~、たたいてあげたい」
ウンジェはヒョンを見つめ返す。
「君の肩を」
「本気でいってる?」
「ダメか」
ウンジェは首にやっていた手をおろす。
「私たちには明確なルールが必要ね」
「ルール?」
「同僚である時と…」
「恋人である時…」
ウンジェは慌ててヒョンの口を両手で押える。
「人に聞かれるわ」
「ルールか」
頷いて辺りを窺うウンジェ。
「分かった」とヒョン。「いつ決める? 土曜日はどう? その日は勤務もないだろ」
「いいわね」
ウンジェは気分よく応じた。