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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載94)






 韓国ドラマ「病院船」から(連載94)






「病院船」第9話➡三角関係のはじまり④




★★★




「ソン先生、大変だ。早く来てくれ」  
 外に飛び出してきたジェゴルが叫ぶ。
「爺やじゃないか」
「そうだよ。キム先生の爺やだ」と船長。
 そこへウンジェが飛び出して来る。
「早く診察室へ」
「下腹が痛むそうだ」と船長。
「なぜ、連絡しなかったんだ」
 すぐ横でジェゴルが爺やを叱りつける。
「何かあったら電話しろと言ったろ」
 事務長は”ヒイーヒー”言いながらパク・スボンをベッドにおろす。
 ゴウンが事務長の労をねぎらう。
「腰痛が悪化しちゃうわね、事務長」
 ウンジェがゴウンに指示を出す。
「血液検査を」
 ジェゴルがパク・スボンの病気について話す。
「長いこと、肺気腫を患ってる」
「熱は?」
「38.5度です」
 ウンジェは腹部の触診を行った。
「ヘルニアだわ。手では戻せない。熱も高いからおそらく絞扼性イレウスね…腸に血液が行かず壊死を」
「手術すれば助かる?」とジェゴル。
「まずは検査しないと…」
 ウンジェは超音波で症状の確認を行った。
「絞扼性イレウスだわ」
 アリムが血液検査の検査表を持ってきた。ヒョンが手にして見た。表情は曇る。
「脈拍が速いわ」ゴウン。
「手術を急ぐわ」とウンジェ。 
 聴診器を外し、手術の準備に移ろうとするウンジェの腕をヒョンがつかむ。目が合うと首を横に振る。
 ウンジェは検査票を受け取った。
「INR数値が…」
 ヒョンを見つめ返すウンジェの顔は青ざめた。


★★★


 ”手術は無理”とヒョンはジェゴルに説明した。それは対症療法しかないのを意味している。
 ジェゴルはこれを無念そうにした。
 2人の話に聞き入り考え込んでいたウンジェは、”出来る”と切り出した。
「できると言ってるじゃないか」
「僕は反対だ」とヒョン。  
「なぜ、反対する? たかがヘルニアの手術だ。彼女なら目隠しでもできる」


「世の中に簡単な手術なんてない。特に今回は―無理だ」
「重度肺気腫で、全身麻酔に耐えられない」
「腰椎麻酔を…脊椎に麻酔を打てば…」
「ダメだ」
「なぜか、分かるだろう?」
「ワーファリンか。脳梗塞の手術以来、抗凝固薬を飲んでるから」
「止血ができない。脊椎内で出血すれば合併症の恐れもある。それに敗血症もあるから麻酔の段階で…」
「死ぬというのか? では、ソン先生の意見は? なぜ”できる”と言ったんです?」
 ウンジェは答える。
「局所麻酔で…」
「何だって?」
 ジェゴルは悲痛な顔になる。
「僕は反対だ」とヒョン。
「何もしなければ敗血症で死ぬ」


「局所麻酔での開腹も危険だ。患者が緊張して力めば、患部まで到達できない」
「鎮静剤を併用して…1時間で切開を最小限にすればいい」
「そんなのバカげてるよ」
「お父様のノートに似た症例があった。だからやれる」
「あれは戦場で何の設備もないから…」
「あっても使えなければ同じよ」


「待て」とジェゴル。何か閃いた顔になる。「つまり、麻酔だけが問題なんだな?」
「だったら俺に手がある」
「どんな手?」とウンジェ。
「ソン先生は決して認めないだろうが、鍼で麻酔をやる」
「…」
「研修医の頃からこれを専門にしてきた」
「ジェゴル」とヒョン。「気持ちは分かるが」
「鍼麻酔だけで手術するのは無理でも」
 ジェゴルは鍼麻酔のレポートを手に必死に説明する。爺やを助けたい一心でだった。
「局所麻酔と鎮静剤を併用すればいい。全身麻酔に―近い効果は出る」
「ジェゴル…」
「疑うのも無理はない。だが、もし効果がなくても―試す価値はある。脊椎を傷つけないから患者に負担もかからない」
 ジェゴルはウンジェを見た。
「やるだろ?」
「…」
「先生は―患者を失えないはず。俺も失いたくない。俺には―父より大切な人だ」
「…」
「クァク…いや、ヒョナ…俺は…」
 ジェゴルは目頭を押さえた。



「ジェゴル」とヒョン。「やってみようか、俺たち」
 そう言ってウンジェを見た。
「先生は止めても手術するだろう? 手術を強行するならできるだけ安全策を用意したい」
「鍼麻酔が安全策になると?」
「ああ。他に手段がない状況だ。痛みを減らせばリスクも下がる。だから、少しでも痛みを軽減できるなら、僕はどんな手でも試すつもりだ。最悪でも患者に害はない」
「ソン先生」
  ジェゴルは訴えるような目をウンジェに向ける。今までに見せなかった真剣なまなざしだった。  

 ウンジェは立ち上がる。2人と顔を見合わせる
「わかったわ」
「ほんとに」
「やってみましょう、それを」
 3人は決意を漲らせて頷きあった。 







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