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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「朱蒙」第18話

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 召西奴はサヨンと連れ立ってペマン率いる塞に向かった。
「何者だ」
「頭に伝えろ。私はヨンタバル商団の召西奴だ。私がきたと伝えなさい」

 召西奴は朱蒙と同じ牢に入れられた(同じ牢に入るのを望んだといった方がいいだろう)。
「ほんとうにすすんでここへこられたのですか」
「ええ・・・」
「いったい、どうして・・・」
「ケガはありませんか」
「アガシー」
「山塞に行くとどうして言ってくれなかったのですか・・・頭を殺しにいったと聞いて本当にびっくりしました」
「申しわけないです。私の判断が間違って・・・商団とアガシーに危険な目にあわせて」
「私が山塞にやってきたのは頭と取引するためです。王子様がいなかったら思いもよらなかったでしょう」

「頭、召西奴が山塞にやってきました」
「召西奴が?」

「いくら商人とはいえ、命を担保に取引するとは無謀すぎます」
「無謀なのは王子様も同じです。・・・私は王子様に自分の運命をかけました」
 二人は見つめあった。
「取引に失敗して命を失うことがあっても、後悔などしたりしません」 

 牢があいた。召西奴が連れて行かれようとする。
 彼女に向かって朱蒙は言った。
「私も自分の運命をアガシーに賭けます」
(第17話より)


 召西奴は頭目の前に引っ張り出された。
 頭目は目の前に召西奴を座らせて言った。
「お前の度胸は認めてやる。だが、ここへ出向いてきたのはどういうつもりだ」
 召西奴は答えた。
「私との取引のせいで将軍を辞めさせられたと聞きました。もうしわけありません」
「黙れ! 口先だけの謝罪ですまそうというのか。私が受けた恥辱を思えば、お前の首をもらっても気がすまない」
「自分でやってきたのです。私の首を切るなり焼くなり好きにしてください。ただ、その前に将軍と取引がしたい」
「取引だと」
「ええ。私が率いている商団がどこに向かっているかご存知ですか」
「それを知ったところで何の意味がある」
「我が商団はコサン国に向かっています」
「コサン国だと?」
「とても遠くて貧乏な国です。商団がいっても取引する商品がないくらいだと聞きました。そんな国になぜ行くのか知りたくありませんか」
「・・・」
「将軍は私によってすべてを失ったと言いました。私が将軍が失ったすべてをこれからお返しします」
「ふむ・・・」
「私と取引しましょう」


 マリが朱蒙に訊ねた。
「召西奴アガシーはここへ何しにきたのでしょうか」
「取引をするためにきたそうだ」

 その頃、トチはヨンポのもとを訪ねていた。
「遠征中の朱蒙王子が匪賊の手で死ぬ羽目に陥りました」
「どういうことだ。最初から話してみろ」
「ヘンイン国に私と取引があるペマンという者がおります。一時はヘンイン国の将軍として羽振りをきかせていましたが、不祥事があって匪賊頭に落ちぶれてしまい、そいつの本拠地に捕まっている王子を手下のハンダンが見てきたのです」
「それで」
「朱蒙王子を殺してくれとハンダンがペマンに頼んできたので、今頃はたぶん・・・これでしょう」
 トチは手で自分の首を切る仕草をした。
「それを誰かに話したか」
「いいえ、誰にも」
「このことは誰にも話すな。いいな」

 ヨンポはすぐさま王妃と帯素のもとに駆けつけた。
「母上、兄上、聞いてください」
「どうしたの」
「朱蒙が死にました」
「今、何て言った・・・朱蒙はヨンタバル商団と遠征に出ているではないか」
「それは私も存じています。遠征中、ヘンイン国の匪賊に殺されたそうです」(話のまた聞きは怖い。ハンダンは、殺してくれと頼んできた、とトチに伝えた。トチは、今頃はこれに、と首を切る仕草をした。それを受けてヨンポはとうとう朱蒙を亡き者にしてしまったわけです)
「それほんとなの」
 王妃は嬉しそうに訊ねた。
「ほんとです。私の手下がそれを確認してきました」
 帯素は疑わしそうな目を向けた。
「一緒に行った商団はどうなったのだ。商団も匪賊に捕まってしまったのか」
「そこまではわかりません・・・」
「自分で確かめもせず、むやみに口にするな 」
「それはほんとです。私を信じてください」
「黙れ。今までの自分の行動を思いなおしてみろ」
 帯素はヨンポを叱り付けて行ってしまった。

 ユファ夫人のところをプヨンは訪ねた。もちろん、朱蒙の危機を伝えるためである。
 プヨンを部屋に通し、ユファは息子の非礼をわびた。それを黙って聞いていたプヨンは切り出した。
「お妃様。私のことは大丈夫ですから心配しないでください。・・・今日、おうかがいしたのは朱蒙王子様のことでです」
 ユファは表情を変えた。
「朱蒙の身に何かあったの」
「お妃様・・・」
 言いよどんでいるプヨンにユファの顔に不安の色が浮かんだ。
「何なの、いいから早く言ってみなさい」
「遠征に出かけた朱蒙王子様が匪賊に捕まって命があやうくなっているようです」
 それを聞いてユファ夫人は動揺した。

 帯素はヨンポからもたらされた情報の真偽のほどを確かめるべくヨンタバルのもとを訪ねた。
「連絡もなくどうなされました」
 帯素はヨンタバルに訊ね返した。
「遠征に行った召西奴と商団が危機に陥っていると聞いたが」
「王子様。商団が遠征に出かければ、さまざまな危機に直面します。匪賊に出くわし死にそうな危機を乗り切ることも多いのです。商人ならそのくらいのことは覚悟しなければなりません。召西奴は王子様が心配されるよりずっと強い子です。もし、危機に直面したとしてもうまく乗り切るはず。心配ご無用です」
 帯素はため息をついた。
「首長は召西奴を過信しておられるようだ。ヘンイン国に人を送って事情を調べた方がよろしかろう」
 ヨンタバルは笑い声をあげた。
「召西奴は遠征中に生まれた子です。召西奴の母が陣痛を起こしているその瞬間も匪賊に襲われていました。そうして、幾多の死の危機を乗り越えてきたのです」


 話しあいをすませて帯素が引き揚げようとしているところへユファ夫人が現れる。ヨンタバルの表情はさすがに強張った。異変を感じたらしい。
 部屋に通されたユファ夫人は帯素と同じ話を切り出した。
 ヨンタバルは、世間知らずの王子様には今回の遠征いい勉強になるでしょう、悠長な説明をするが、ユファ夫人は厳しい表情になった。
 ヨンタバルは続けた。
「帯素王子様もどこで聞きつけたか、商団が危機に陥っているとの伝令を持ってきましたが、私は少しも心配しておりません。一緒に行ったのは経験豊富な商団の人夫たちです。王子様を安全にお守りするので心配なさらないでください」
 ユファはその言葉をたしなめるように言った。
「首長は事態の深刻さをご存知ないようですね」
 ヨンタバルは怪訝な顔になった。
「朱蒙が匪賊に捕まって死ぬ危機に直面しています」

 ヨンタバルは急いでウテのところへ行った。
「商団が危機にひんしているらしい。今すぐ護衛武士を率いてヘンイン国へ行け」
「お嬢さんが危険なのですか」
「詳しい状況はわからない。早く行け」
 ウテは護衛武士を率いて馬を走らせた。

 召西奴の交渉は終わったらしい。朱蒙らは牢の外に出された。
 朱蒙に対し、ペマンは敬意を表して詫びた。
「ご無礼をお許しください」
 
 朱蒙や召西奴らは商団一行の本所に戻った。
 山塞行きをあれほど反対したのに、サヨンは手のひらを返した。事態を収拾した召西奴の器量をほめた。
「驚きました。召西奴アガシーは首長以上の器かもしれません」

 朱蒙たちも杯を酌み交わし、事態が無事収拾されたことを喜び合った。
 ヒョッポが言った。
「兄貴。独り者のまま死ぬかと思いましたよ」
「だけど、好きになってくれる人がそばにいたじゃないか」
「オイと俺は寂しく死ぬところだった」
「おいおい、いい加減にしろよ、まったく」
 みなは爆笑しあった。
 朱蒙は訊ねた。
「ヒョッポを好きになってくれる人って誰だ?」
「いやいや、兄貴、それは冗談ですよ」
 オイが真顔に戻って言った。
「でも、どうやって出てこられたんでしょうか」
 ヒョッポが受けた。
「そうだな・・・アガシーはペマンをどうやって説得したんだろう」
 マリは陽気な声で言い出した。
「そんなことより、気になることがある・・・」
「何だ?」と朱蒙。
「兄貴。召西奴アガシーが自分から山塞にやってきた。考えれば考えるほどすごいじゃありませんか。死を覚悟して匪賊の頭と取引する。番頭の責任感だけでやれたでしょうか」
「何が言いたいのだ」
「いっひひひ・・・つまりです、召西奴アガシーが王子様に気がなかったら絶対できなかったことだ」
 ヒョッポを見て言った。
「だろ」
「うんだ」
「余計なこと言わず、酒を飲め」

 翌日、商団はコサン国めざして出発した。途中、ペマンの一隊が合流して商団の護衛についた。

 その頃、夫余の町中は不足する塩でパニック状態が広がり出していた。このことは夫余宮でも議論された。
「このままでは夫余に見切りをつけて逃げ出す者も出てきかねません」

 民の塩の奪い合いを目の当たりにしたヨンタバルは金蛙王に会いに出向いた。
「陛下。危機に直面した夫余と陛下のため、微力ながらお助けしたく参上いたしました」
「・・・」
「商団が保有している塩ニ千石を差し出しましょう」
「それは願ってもないことだが、首長は商売人だ。ただじゃあるまい」
「あっははは。それでは助けるのではなく商売になってしまいます」
「はっはは。かまわぬ。望みを言ってみよ」
 少し間合いがあった。
「・・・陛下。卒本国の桂婁部に鉄器工房を作るのが私の長年の夢でした。・・・鉄器工房の房長を卒本国に送り、鉄製武器が生産できる技術を伝授してください」
「わかった・・・夫余に塩が入ればすぐわしが鉄器工房の房長を派遣する」
「ありがとうございます」

 金蛙王に会った帰り、ヨンタバルはユファ夫人に朱蒙王子と商団の無事を伝えた。報告が後回しになったのは無事を確認していたからだろう。

 
金蛙王とヨミウルの折り合いがうまくいかないことに苛立つ王妃は、ナンバー2のマウリョン神女を代わりに立てようと画策を始める。
「いっそ、マウリョン神女あなたがなってくれればいいのだが・・・」
「王妃。滅多なことは口にしないでください」
 否定的に応じるマウリョン神女なのだが・・・。

 無事、コサン国に入った朱蒙らは塩山を探してまわるが、まずしそうな民はおびえて塩山のことを話したがらない。商団は焦りの色を深くしていった。
 ジャーナリスティックな見方をするサヨンは例によって厳しい言葉を口にした。
「危険をおかしてここまでやってきたのに、これが徒労に終わったら、この責任は誰が負いますか」
 朱蒙に向けられていることは間違いない。
 最後に帰ってきたケピルも悲観的な情報を持ち帰ってきた。
「飢え死にする者は多く、疫病が流行っているところもある。戻った方がよさそうです」

 ペマンまで戻ってきて召西奴を責め立てた。
「答えてみろ・・・俺を騙したのか」
「騙すなんてとんでもない」
「だったら何しているのだ。お前たちを信じてきたのにこのザマは何だ。もう我慢がならない。塩山はいったいどこにあるというのだ」
「せっかく来たのだから、もう少し探してみましょう」
「まったく・・・ない塩山をどうやって探すんだ」
 やりあっているところに横から声がかかった。顔を出したのは白髪の老人だった。
 彼は小屋で塩山の話を朱蒙らに説明した。
「そこへ案内していただけますか」
「わかった」
 翌朝、老人の案内にしたがって商団は出発した。

 マリらはさっそく偵察を開始した。山は兵士らが守りを固めているようだった。
「兵の数は多くありません。始末できる数です」
「戦をする気でなければそれはなりません」
 サヨンが言った。召西奴も同調した。
「夜を待って行動しましょう」
 老人は朱蒙らをある洞穴の前に案内した。そこで老人は中に入っていった。やがて白い物をかかえてもどってきた。
 朱蒙らはそれをなめて塩だと確認し、歓喜しあった。その時、一本の矢が飛んできて老人の胸を貫いた。朱蒙らは捕らえられ、牢に閉じ込められた。

 番頭の召西奴が山を守る神女の前に引っ張り出された。
 召西奴は言った。
「コサン国に塩山があると聞いて塩の取引にきました」
「何をいう。チョユソン、コサン国の神女塩山はコサン国を守る霊山。ここに来て取引云々などもってのほかだ」
「今の私にはコサン国の塩山は民を守る霊山ではなく、民を苦しめる呪われた山に見えます」
「だまらっしゃい」
「私は幼い頃から商団について多くの部族や国を訪ねてきましたが、このように貧しく苦しむ人々を見たことがありません。私と取引するなら、コサン国の塩を渡していただけるなら、コサン国の民は豊かな生活を得られます」
「・・・」
「天地神明の意にしたがってコサン国を守るべき神女様が、どうして民の苦痛を見て見ぬふりをするのですか」
「生意気な女だ」
「・・・」
「座りなさい」
「召西奴と言ったな」
「はい」
「この塩山の持ち主は私でもコサン国の民でもない。昔、ソンビ族の侵入で国が滅びる危機に瀕したことがある。その時、このコサン国はハベク族の助けで生き残った。私はその恩返しとして塩山をハベク族に捧げると天地神明に誓った。この塩山の持ち主はハベク族なのだ」
「ハベク族はハンナラ軍によってすでに滅びました」
「私も知っている。だが、どこかでハベクの子孫が生きているだろう。その子孫に会う日まで私は塩山を守るつもりだ」
 神女の話を聞き終わった召西奴は、ハッと朱蒙の言っていた言葉を思い起こした。
 そして、にっこりほほえんだ。
 朱蒙が神女の前に呼び出された。
 召西奴が朱蒙を紹介すると、神女は上段からおりてきて朱蒙の前に額づいた。

 夫余では塩の補給問題が急を告げていた。金蛙王はオクチョとの戦を決断した。それを聞いて帯素は、自分に兵を率いさせてください、と申し出た。

 夫余がオクチョに兵を出すとの伝令をきいてヤンジョンも受けてたつ気構えだった。オクチョに兵をさしむけ、応戦の準備に入れと命令を出した。

 ヨミウルは出兵時間のお告げを行った。
 金蛙王が臣下を鼓舞しているところに朱蒙が戻り、面会を求めた。
 朱蒙は召西奴とともに金蛙王の前に進み出た。
「二人で何しにきたのだ」
 朱蒙は切り出した。
「陛下。今すぐオクチョへの出兵をとりやめてください。オクチョと戦う必要はもうありません」
 全員は何事かという顔になった。
「私はヨンタバル商団の召西奴番頭とコサン国の遠征に行ってまいりました。コサン国には夫余が代々使える塩山がありました。陛下。これから夫余は塩のためにハンナラの圧迫を受けなくてもいいのです。夫余が必要なだけ、いくらでも塩が調達できるのです」
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