「うちだけじゃないんだよ。下の人たちにも聞いてたよ」
話し込んでいたのは下の奥様連中に捕まってたらしい。なんでもその人は隣村に住んでた人で10年くらいぶち込まれてたらしい。
「10年も・・・・そんな悪いことしたんだ」というと、「なんでも自分の娘を犯したらしいよ」とのこと。ダンナはその人の顔は知っているけど、話したことはないという。
私「でもタナコのそういうことまで事前に住民に知らせちゃうもんなんだ」
ダンナ「そりゃそうさ。ここは個人経営のアパートだし。いつもっていうわけじゃないよ。今回は事情が事情だし。奴は隣村に住んでて、この辺の人は顔や素性をみんな知ってるし。下の連中とも話したけど、みんな反対してたよ。俺ももちろん反対。下手したら毎日顔を見合わせるしね」
私「それにしても、なんで戻ってくんだろうね。新しいとこの方が都合がいいじゃん。みんな知らないし」
ダ「なんでだろうね。でも母さんがこの情報を事前に掴んでいたよ。最近パーマ屋に行ったしね」
村の情報は村のパーマ屋で仕入れるらしい。
私「それにしてもこの辺、ムショ帰り多くね?夏に散歩してたときもそういう人みかけたよね」
ダ「そうかも。でもみんなアネキんとこの村からだね」そして「そうそう、俺なんか車2、3回くらい盗まれてる。あと原チャも」と自分の被害の歴史を語ってくれた。
おじさんとの隣の家の息子もムショの出入りが激しいらしい。彼は15、6歳のときにダンナの車を盗んだらしい。ダンナは腹いせにぶん殴っている。今は別のところに引っ越したかまたムショ入りしているかは不明らしい。
それからダンナは防犯対策としてエンジン部分に小細工をした。盗まれても車が速く走れないようにしたらしい。盗まれた事が発覚した朝、とりあえず仕事には行かなきゃならないので、警察に連絡した後バイクで出勤。実はダンナの盗まれた車はちょっと離れた空き地で燃やされてたらしい。速く走らないことに腹を立てたのか定かじゃないけど、この小細工がアダになったようだ。警察がこのことを知らせようとしたけど、ダンナは留守だし、とりあえずいつも人がいる村の入り口にあるおじさんのレストランに立ち寄った。この当時ダンナのいとこはおじさんところでフルで働いていて、午前中はペンションの掃除をしていた。いとこが電話で「お前の車が見つかったらしいよ。半分くらいになってるかもしれないけど・・・」
ダンナとお買い物道を通ったときちょっとガタイのいい人会った。お互い「Hallo・・・」といってすれ違う。
私「どこの人?」
ダ「奴はアネキんとこの近くに住んでる。奴は俺の原チャを盗んだことがあるんだよ。ぶん殴っといたけど」
彼とはそうは年齢は違わないようだ。ガッコも一緒で遊んでたのかもしれないのに・・・・。知り合いからも盗むのか・・・・。
とりあえず試してみて巧くいったら儲けもん、巧くいかなかったら「運がなかった」と開き直る。これはバスや路面電車での無賃乗車でよく見かける。「とりあえず試してみる。バレたらバレたで・・・・」という精神はこういうところにも現れているのかもしれない。