八ヶ岳南麓の杜から

by 鳩川須三夫

山麓冬景色

2007年12月28日 | 森の便り

 

山麓も雪の季節になりましたが、今年もまた暖冬のようです。
あまり降りません。
天気予報ではまもなく天気が崩れるということですが
この写真は3日ほどまえの散策の折に小淵沢で、ちょっと気に入ってパチリ。
静かな林の際に、3軒ほどが肩を並べて建っています。
町の分譲団地をそのまま持ってきたような、にぎやかな別荘地も
ありますが、こうした風情が好きですね。
このあたりの一軒家にでも引っ越したいところです。
いまの山小舎も似たり寄ったりなんですが,一所不住こそ理想。


[詩] まど

2007年12月28日 | 小詩編

            

                窓

   

    丸めたコーモリ傘を振りながら
  子供たちが帰ってゆく日暮れ
  空は百年前のあかね雲だ
  わたしの憂愁は北向きの窓に
  紙魚(しみ)のように張り付いている
  
  過ぎ行くものは懐かしい
  わたしがわたしに別れる時に
  眺める世界は淋しかろうね
  山のなぞへを風が吹き
  湖(うみ)はただ忘却の波光にゆれる

 
   酔っぱらいと犬の合唱にはうんざりだ
  裏山の雑木林に黄金の雨が降っている
  
    黄落やわが誕生はあやまてり
    かすかに父祖のささやきをきく 

 
   さてそうして いまわの際に夢見るものは
    
    降りつむ 田毎の月の雪・・・
  
    唱(うた)いつつ 焼かれし僧よ 山つつじ・・・  
 
 


雪化粧 八ヶ岳

2007年12月16日 | 森の便り

                                                                        (長坂町小荒間から)                        

枯れすすきの彼方に、雪化粧の八ヶ岳。この標高1000Mあたりの麓では

あられがひととき降りました。夜はもう氷点下。晴天の外気温は5度くらいでしょう。

冬は寒いけれど、山の輪郭が美しい季節です。

 霜つよし蓮華とひらく八ヶ嶽 (前田普羅) 

普羅がこの句を作ったのは昭和11年11月。甲府から佐久方面に出るおりのこと。.

いつも見慣れている地元の人には作れない、鮮烈な心眼の作といえるでしょう。


[ 詩]  広場にて

2007年12月08日 | 小詩編

             広場にて
          
         ー ヴェネツィア・サンマルコ

     
     ここでは人間より鳩が威張っている
     餌をやらぬと糞を落とす
     ナポレオンの頭にだって

     
          下手なしゃれで座布団欲しがる
     にやけたご当地ガイドなんぞ放っといて
     ふたりでカプチーノを飲もう
     カフェ フローリアンのテーブルが
     潮に流されないうちに

    
         ほら 鐘が鳴る
     獅子の影が地上に落ちる
     彼方ブロン(鉛屋根)に張り付いているのは
     カサノヴァだ
     たったいま脱獄したばかり 女の家から

     
          ヴィバルディの調べがながれ
     広場の真ん中でアンソールが手招いている
     僕らも仮面をつけて
     仲良く踊るとしようか 月の下
     骨を鳴らしながら
     夢の世のひと踊り

 

        *なつかしいアドリア海の真珠ヴェネツィア。
         ナポレオンが「世界一美しい広場」と言ったサン・マルコ。
         その近くのリストランテでは、愛想のいい親父に、ぼられたっけ。
         やがては海に沈むまえにもう一度行きたいけれど。無理かな。
         だが夕暮れのラグーナ(潟)をリード島に渡るとき、
         私の胸内で鳴っていたマーラーのシンフォニーは今も消えない。


         
         


初冬八ヶ岳・山麓暮色

2007年12月05日 | 森の便り

                              (標高900M レインボーライン付近から)

いかにも寒そうな風景になってきました。

最近は雪も少ないのですが、12月も下旬になれば麓も降るかもしれません。

落葉松林には葉が残っていますから、風が吹けばまだ当分は

「黄金の雨ふる」・・・というぐあいです。


[ 詩 ] 幻 花

2007年12月01日 | 小詩編
          幻 花

   なべてはゆくのだろう
   葬列のように
   夢の世の 遅い午睡から覚め
   野末行く馬のまぼろしを見る

  
   なべては消えるのだろう
   舞台劇の燭火のように
   一瞬の悲しみの心だけが
   墓標になって 潮風に吹かれている
 
 
   なべてはやすらうのだろう
   一輪の花になって
   夢の世の川辺にそよぐ
    しろい まぼろし