2014年に亡くなった父は、晩年よく母に「シラサギが見たい」とねだり、母の運転する車でシラサギを見に行っていたそうだ。
そんな話を聞いてから、私も羽生市内をジョギングしていて、シラサギを見る度に父を思い出していた。
岩瀬を走っていて、林の緑を背景に静かに田んぼの水面すれすれに飛ぶシラサギとその水面に映った姿があまりにも美しい場面に遭遇したことがあった。
父を象徴とする存在であったが、ある日アオサギに出会った時、父が「シラサギを見たい」と言っていたのは、実はアオサギこそが父の象徴ではないか、と思うようになった。
アオサギを意識するようになったのは2021年頃だったと思う。
東京でも千鳥ヶ淵で遭遇したり、浅草近くの吾妻橋で私の上を飛ぶアオサギを見たこともあった。
「アオサギなんだよね」と宮崎駿氏が久しぶりに作ったという「君たちはどう生きるか」の映画ポスターを見ながら妻が言った。
私は身体に衝撃が走ったのを自覚した。「これは観なくては!」
というのも、私が10代の頃、父親から吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を贈られたことがあったからだ。
そして地元の映画館でそれを観た時、さらに衝撃的な出来事があった。
映画の中で主人公の母親が息子にやはり「君たちはどう生きるか」をメッセージ入りで贈ったとわかる場面があったのだ。
それからというもの、私は自宅や帰省した高知の実家を探したが、ついに見つけることができなかったのだが、弟に贈ったものが見つかり、記憶通りメッセージが書かれていた。
私にとってはとても幸せな体験だった。