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彼是、ココに記。

お前百までわしゃ九十九まで。

40年以上も前の話。

当時どこの家にも飾ってあった様々な人形や置物が、例に洩れず、私の実家にもあった。
その中のひとつ、年老いたおじいさんとおばあさんが対になったすべてが茶色の(せともの?)置物は、なんだか気になる存在だった。
ある時、母にこの人形についてたずねた。
そして「お前百までわしゃ九十九まで、ともに白髪の生えるまで。」という言葉を知った。
子供である自分には全然関係ないと思いながら、でもなぜか強烈な印象で、この言葉は私の心の中に残った。

50代になった今、夫も私も白髪が増えた。
百歳なんてまだまだなのに である。
夫は色の変化を自然に任せているのだが、私はまだその域には達しておらず、どうすればうまいこと白髪を隠せるかを真剣に考えている。
美容院から勧められたマスカラタイプのものを使って地道に作業することが多いのだが、前髪や分け目の根元は自分でなんとかするにしても、後ろの部分はかなり難ありである。

夫に後頭部の白髪隠しを頼んだ時の話。
「なんとか隠れる程度でいいから。ささっとお願いします。」
私の後ろに立って、細かくマスカラを動かし始めた夫。
‥‥‥なかなか終わらない。
「出掛ける時間になっちゃう 丁寧でなくていいから、ささっと!」
夫は鏡越しに困った顔を見せながら、きっぱりと言った。
「隠せる量ではないよ

これ以降、夫には後頭部の白髪が目立ってきたら教えてもらうことにして、髪全体を染めるタイミングを調整するようにしている。


白髪が出始めた40代前半頃から、実家にあったあの対の人形の姿を思い出すようになった。
実家もあの人形も、無くなってしまってから久しい

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