グッド・バー

多くの方に愛されている老舗バーの物語

マスターが僕に残してくれたもの

2006-08-25 | 偉大なグッドバーマン
今日正確には24日は僕の師匠の命日である。
毎年、一年間を振返り一番好きなお店でお酒を頂く。
今回は最近お付き合いさせていただいているSバーへ。
伺うと早くに店じまいをなさっておられる。
Sさんのご好意でバランタインの30年を頂戴する。

その後、Sさんと特別の日なので
北新地の名門店バーべッソへ。2時間ほど楽しみ解散。
帰宅しマスターの写真を眺めながら今までを振返る。

僕はマスターのような”人格”に近づいているだろうか?
マスターのように
お客様のサポート役になりきれているだろうか?

この世界に入り8年。まだまだではあるがそれなりの経験を
積んできた。もちろん”経験”とは技術や知識のことも
そうではあるが僕が思う”経験”とは

「どれだけの人に出会ったか!」
これこそもっとも大事な”経験”であると僕は思う。

最近お客様からお誘いを受けることが多くなりよく
様々なお客様とご一緒させていただくがお客様が皆様
おっしゃるのは
「”出会いの大切さ”。この世の中に無駄な出会いなど
存在せず必ず一つ一つの出会いにドラマがある。
自分自身の一番価値のある財産になる」と。

その通りである。出会いが出会いを生み、
それがまた違う出会いを生む。それが”経験”。

マスターに憧れて今の店の門を叩いたのが6年前。
マスターが他界して4年。

その月日の中で数多くあった出会い。

様々なお客様がカウンターで勤務する僕に
多くの出会いを経験させてくださる。
このご好意が、どれほど素晴らしいか僕は
身にしみて感じている。

以前在籍していたお店を退職する際、当時は
まだ21歳と若かったが
「今までお世話になったのだから今後の進路についても
 お客様にちゃんとお伝えしないといけない」と思い、
当時親しくさせていただいていたお客様に現在のお店で
今後は勤務することを報告した。

だったが・・・。

ほとんどのお客様にお越しいただけなかった。

そんなこともあり、お客様がご来店いただけるということが
どれほど素晴らしくまた数回お越しくださる方、
週に数回お越しいただく方、ほぼ毎日来てくださるお客様が
本当に当店を支えてくださったいることを
僕は身にしみて感じている。

”出会いを素晴らしいものにしていくのは
              自分自身である”と思う。

こんな僕を天国のマスターはどう思っているだろうか?


僕の思い過ごしかもしれないが昨日の深夜24日に
まさにマスターがつなぎ合わせてくれたかのような
僕とある方の出会い。
僕はこの方との出会いをずっと続いていけるような
素敵な出会いにしていこうと思う。

”これからももっともっと出会い、出会い続けていけたら”と
思う。この記事をご覧頂いている方との出会いも
大切にしていきたいと思います。

独立まで後、2年である。

天国のマスターに合掌。

一瞬の出来事

2006-08-23 | バーでのお話
昨日、このブログで4月13日に紹介した18年ぶりに
当店にお越しになったお客様が
会社の方と共にご来店。

”勝手なお願いですが以下の記事を読まれる際、
 まず4月13日の記事をご覧下さい。”

お連れの方に先日ご来店頂いたお客様は
一生懸命自分と当店との出会いをお話なさって
おられる。通常ならすぐにご注文を
伺うが状況が状況だったのでしばらく
そのお話を伺っていた。

ひと段落されたのでご注文を伺うと
お二人ともジントニック。

ご注文通りカクテルを作っていると
先日のお客様が
「あとレバーペースト一つお願いします」と。

ここで僕は

「でしたらオールドファッションを
 お作り致しましょか?」と。

そのお客様は大変びっくりされたご様子で
「うれしい~な~僕のこと覚えてくれていたのですか?」

「もちろんですよ今回は18年ぶりではなかったですからね!」

そのお客様は帰られる際、
「今回は出張で大阪にきたのですがまた用事を作って絶対に
 また来ます!」と。

バーマンがお客様からお聞きして一番嬉しい言葉である。

お客様がレバーペーストをご注文なさりそうだったのは
始めにいらした際、お連れの方に話をされていたので
僕はタイミングを見計らっていた。普段であれば
始めに受けたオーダーのジントニックをすぐ作るのだが
レバーペーストをオーダーなさるのをあえて待つかの
ように普段よりは数段ゆっくり、回りから見れば慣れていない
新人君かな?と思うかのようなスピードで!
結局、それが的中し作り終える前にレバーペーストの
ご注文を頂く。
ジントニックを作り終えてしまうと今回のような
奇跡を起こせなかったからである。

小さな奇跡だったかもしれないがお客様には喜んで
いただけたのが何よりも嬉しい。


”たった一言の一瞬の出来事で始まった
                 奇跡である”


MACK ■兎我野町■

2006-08-23 | お気に入りのお店
最近親しくさせていただいているSバーのSさんと
お盆の締めくくりで飛び込みで入ったバーである。

以前からSさんはお店の存在をご存知だったが
なかなか一人では扉を開けることができなかったらしく
3件目で4時過ぎだったので勢いで入ってみた。

カウンターには女性のバーテンダーが3人。
店内は広く落ち着いている。
僕自身バーへ入った時チェックする”清潔感”も
申し分なく掃除が行きとどいている。
このあたりは男性バーマンは是非見習って欲しい。

当店はお客様もよくご存知の通り清潔感100点満点である!

店内と女性バーテンダー達の心地いい空間に
引き込まれカクテルを飲みたくなったので
ネグローニというジンとベルモットとカンパリをあわせた
カクテルを一口飲んだ瞬間

「うっ、ウッ、ウマい!!」

Sさんも無言でうなずいている。

是非皆さんもご自分の味覚で判断なさってみては
いかかでしょう?

女性バーテンダー達の雰囲気も抜群である。

今宵は素敵な夜と素敵な出会いに乾杯である!

ハードとソフトのバランス

2006-08-07 | バーでのお話
昨日、東京で有名店ステーキハウスPバーをなさっておられた
Nさんがご婦人と次男さんを連れ当店にいらっしゃる。

以前、当店でしばらく奉公なさっておられたそうで僕の大先輩
である。そんなNさんが他に誰もお客様がおられなかったので
僕やマスターにお話をなさった。

「このお店のハードは東京でもないと思う。そんな
 お店は絶対に残していかなければいけない。
 でもそれに見合うソフト(僕とマスターである)は
 ここのお店だけでなく、あなた方のグループは
 銀座に比べ劣っている。特にお客様との接し方、
 カクテルの作り方、どれをとってもまだまだである。
 もっともっと勉強しなさい。」

Nさんも大阪から頼れる相手もいなかったが
お話を頂き、銀座へ。当時は周りから批判され、批判され
続けて必死で勉強し、努力してこられたそうである。

そして数年後には銀座の名店にまで成長された。
数年前にビルの建て替えで閉店。年齢を考慮して
引退された。

そんなNさんからのお言葉は的を得ておられると僕は
先輩方には申し訳ないが思う。

今、僕達のグループは昔の栄光を捨て、新しい物を
取り入れ今後につなげていかなければいけない。

されど街場のバーではあるが老舗という看板を背負って
いる。歴史がハードを作りあげるものであり当店は
開店数十年、他のグループ店も歴史が古く
まさに老舗である。

はたしてそれに見合う
ソフトを僕達は持ち合わせているだろうか?

ホテルのようなきっちりとしたサービスを身につけないと
いけないのではないか?
ホテルマン達が日々繰り広げるサービスが僕達に今、
もっとも必要な”おもてなし”ではないだろうか?

ハードとソフトこの2つのバランスが
調和してこそ、お客様がお見えになると思う。

ではソフトとは何なのか?
僕達バーマンの”人格”である。


Nさんは僕達に「もっともっと勉強しなさい。
そしてバーの本質を知りなさい」とおっしゃった。

僕達老舗で勤務するソフトの甘さ、つまり弱点を
よくご存知で理解されている。

今、バーだけに限らず老舗のお店が閉店していくのは
このソフトで遅れをとっているからだと思う。


今日は少し、厳しいお話をしましたが今、僕達が
真っ先に取り組まないといけない最重要課題である。