2008年2月におこなわれた「第9回芸術文化コース公演」の演劇脚本及びにビデオです。
第9回芸術文化コース公演演劇ビデオ
タイトル「人形」原作脚本監督著作KF
第1章
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第2章
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第3章
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第4章
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第5章
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第6章
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第7章
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第8章
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「人形」
原案 松尾恵 原作・脚本 藤村恭一
第一章 夢の裂け目
緞帳が上がり、舞台は暗転。中央にピエロ人形がたって、オルゴールの音にあわせて踊る。
舞台中央に光の裂け目がありその周りをピエロ人形が踊る。
女の子の声が聞こえる
女の子 「ねえ ピエロ人形さん 今日も ゆかりの大きくなったときの夢をみせて 」
ピエロ人形 「うん 今夜は ゆかりちゃんが 高校生になった時の夢だよ さあ!この夢の裂け目を開けるよ。」
女の子 「ゆかりは ゆかりのおばあちゃんみたいに日本舞踊踊っているの?」
ピエロ人形 「今夜は日本舞踊がいいの?じゃー ゆかりちゃんが 日本舞踊踊っているところを見せてあげよう。」
女の子 「ホンと ゆかり おおきくなったら日本舞踊も踊っているの?楽しみだな~」
ピエロ人形が光の裂け目を開く
舞台暗転し、緞帳が下りる。
説明の後 日本舞踊
第二章 エアロビクス
舞台中央に光の裂け目がありその周りをピエロ人形が踊る。
女の子 「ねえ ピエロ人形さん 今日は おおきくなったゆかりたちがダンスしているときの夢をみせて 」
ピエロ人形 「今夜もかい?そうだね。じゃーゆかりちゃんやお友達がエアロビクスをしているところを見よう。この夢の裂け目を今日も開けるよ。」
女の子 「ピエロさんが教えてくれたダンスなんかをおどっているの?」
ピエロ人形 「エアロビクスは体を鍛えるためのダンスだよ。」
女の子 「ゆかりダンス大好き。」
ピエロ人形が光の裂け目を開く。舞台暗転
歌とエアロビクス
第三章 裁判
舞台に人形たちが集まって今から裁判が始まろうとしている。
中央にはピエロ人形が座っている。
裁判長カンガルー 「静粛に ただいまよりピエロ人形の裁判を始めます。ピエロ人形の罪状を 検察の怪獣君。」
怪獣のぬいぐるみ 「はい 被告人のピエロ人形は、五歳のゆかりちゃんに、未来がのぞける光の裂け目を夢の裂け目と偽って、ゆかりちゃんの夢の中で、ゆかりちゃんの未来の姿の一部を見せました。これは、ぬいぐるみ法に違反する行為で、懲役十年以上の刑に値するものです。」
裁判長 「被告人であるピエロ!検察側の申し立てに意義があれば答えてください。」
ピエロ人形 「はい!光の裂け目を 夢の裂け目と偽ってゆかりちゃんの未来を見せたことは間違いありませんが、ゆかりちゃんが未来を見たいと何度もおねだりしたのでつい見せてしまいました。」
裁判長 「罪は認めるのですね。」
ピエロ人形 「見せたのはあくまで夢の中です。それに未来が見える裂け目だとは言っていません。ゆかりちゃんはまだ五歳ですし、きっと未来を見たことはすぐ忘れてしまいます。お許しください。」
怪獣のぬいぐるみ 「裁判長!光の裂け目を夢の裂け目だとピエロ人形は、ゆかりちゃんにうそをついてもいます。われわれ人形が子供にうそをついて危険な未来を見せる行為は、重罪に値します。」
裁判長 「では、ピエロ人形は 五歳のゆかりちゃんに、うそをついて光の裂け目を夢の裂け目と偽って見せたことは認めるのですね。」
ピエロ人形 「確かに、うそもついたと思いますが、ゆかりちゃんに未来の楽しさを見せてあげたかったんです。・・・」
裁判長 「見せたんですね。」
ピエロ人形「・・・・・・」
裁判長 「反論はないようですね。それでは、この裁判をお聞きの天の声を聞きましょう。」
天から声が聞こえてくる。
天の声 「有罪 子供に夢を与えるべき人形が、子供に未来の現実を見せるとは重罪に値する。」
裁判長 「では 天の声にしたがって判決を申し渡す。ピエロ人形は有罪!光の裂け目の効力がなくなる十二年間、光の裂け目の中に監禁の刑とする。そして、ゆかりちゃんからピエロ人形の記憶をすべて消し去ることにする。」
ピエロ人形 「待ってください!ゆかりちゃんが赤ちゃんの時から、毎日のように夢の中で、私の歌やダンスを見せてきました。私がいなくなったらきっとゆかりちゃんは寂しがります。なにとぞお許しください。」
裁判長 「決まりどおり、ゆかりちゃんから、ピエロ人形の記憶はすべて消し去ります。光の裂け目もゆかりちゃんからは見えなくなります。もちろん光の裂け目の中のピエロ人形も光の裂け目から出られるまでの十二年間はゆかりちゃんからは見えなくなります。」
ピエロ人形 「許してください。裁判長!お願いします。」
裁判長 「ぬいぐるみ法に従った裁判です。これで裁判を終了します。」
ピエロ人形「ゆかりちゃんと二度と会えないのはいやです。お願いします。赤ちゃんの時からいつも一緒だったんです。お願いします・・・・・・・」
裁判長 「では、刑をすぐに執行します。執行委員!ピエロ人形を光の裂け目に監禁しなさい。」
サンタの衣装を着た刑の執行委員が無表情で二人登場し、光の裂け目を開き、ピエロ人形を両脇をかかえ光の裂け目に入っていく。三人が入っていくと光の裂け目は閉じる。
暗転
ダンス・歌
第四章 十二年後
十二年がたった。ゆかりがダンスの自主練習をしている。
そこへ綾香がやってくる。
綾香 「ゆかり!まだ練習してるんだ。」
ゆかり 「うん」
綾香 「ゆかりってホンとにダンス好きだよね。その情熱に感心するよ。」
ゆかり 「うん 自分でもなんでこんなにダンス好きかワカンなるときがある。小さいころ夢でいつもダンスしていたような気がする。」
綾香 「夢で!いつごろの夢?」
ゆかり 「わかんないけど、誰かがいつも一緒にダンス踊ったり、歌を歌ったりしてくれたような気がするんだけどいつのときだったか思い出せないの。」
綾香 「ゆかりのお母さんが一緒にダンスしていたとかじゃないの?」
ゆかり 「お母さんはダンスも歌もしてないし、子供のとき周りにダンスしていたような人いなかったんだけど、たしかに記憶あるのよね!誰だったんだろう!」
綾香 「なんか不思議だね!じゃーわたしバイトあるからお先に!」
ゆかり 「バイトがんばって!私はもう少し練習してから帰る。バイバイ!」
綾香 「バイバイ!」
ダンス・歌
第五章 人形の悩み
ピエロ人形 「あれから、もう十二年たつのか、光の裂け目の効力がなくなってここからは出られるけど、ゆかりちゃんはすっかり大きくなって、僕のことは忘れてしまって、この光の裂け目を見つけてくれないし、夢の中で話しかけても、僕には気づいてくれない。ここから自分では出られないんだよ。お願い!ゆかりちゃん僕に気づいて!・・・・・・・・・・だめかな?高校生がピエロ人形の夢なんか見ないよな!」
ゆかりがやってくる。
ピエロ人形 「あ!ゆかりちゃん!」
ゆかり座って
ゆかり 「誰だったのかな?小さいころダンス教えてくれた人?思い出せないな?なんか引っかかるんだよね。」
ピエロ人形 「僕だよ!ゆかりちゃんが小さいころ、夢の中でダンス教えたのは!僕だよ!」
ピエロ人形の声は聞こえない。
ゆかり 「近所にダンスしている人いなかったし、お母さんに聞いてもそういう人いないって言うし。」
ピエロ人形 「僕だよ!この光の裂け目から出して!誰かがだしてくれないと僕は自分ではでられないんだよ!」
ゆかり 「あ!宿題あったんだ!」
ゆかり立って去る。
ピエロ人形 「ああ!僕 永久にここから出られそうにないな!」
合唱
第六章 身代わり
ピエロ人形が光の裂け目で眠っている。そこへ下手から カンガルーの裁判長人形がやってくる。
裁判長 「ふー ここまで 誰にも見られずにやってくるのは大変だ。おい!ピエロ人形!ピエロ人形!」
ピエロ人形 「あ!裁判長!お願いします。光の裂け目から出してください。もう十二年もこの中にいるんです。」
裁判長 「お前を光の裂け目から出してやるためにはるばる、隣町から誰にも見つからないよう歩いてきたんだ。今すぐそこから出してあげよう。」
ピエロ人形 「ありがとうございます。」
裁判長 「はしゃぐでない。座っておれ。今 そこから出す呪文をとなえる。」
裁判長 「むにゅむにゅ はいほれ おぷん おぷうん」
ピエロ人形は、光の裂け目が消えて 前かがみに倒れる。
裁判長 「だから座っておれと言ったではないか。」
ピエロ人形 「ありがとうございます。これで自由に動き回れます。ゆかりちゃんと夢の中で会える。」
裁判長 「残念だが。ゆかりちゃんと夢の中で遊ぶことはもうできん。ゆかりちゃんはもう十七歳じゃ。人形の夢などみん。」
ピエロ人形 「え!ゆかりちゃんと夢の中で一緒にダンスすることを楽しみに今まで光の裂け目の中でがまんしていたのに。」
裁判長 「しかたあるまい。人形の夢は子供しか見ないものだ。これで、お前の姿はゆかりちゃんに見えるようになった。でも、・・・・・ゆかりちゃんは長いことここにはかえってこない。」
ピエロ人形 「ゆかりちゃんが自分の部屋に帰ってこない?どうしてですか?」
裁判長 「うーーーーん それは言いにくいことなので・・・」
ピエロ人形 「え!言いにくい?なぜ?」
裁判長 「しかたないいずれはわかることじゃ。今のゆかりちゃんの姿を見せてあげよう。」
ピエロ人形 「え?何?」
裁判長が呪文を唱える「はれほれ ゆかりちゃんの今の姿をみせたまえ はれほれ。」
ゆかりちゃんが歩行器でリハビリしている姿が映る。
ピエロ人形 「何?あそこどこ?なんでゆかりちゃんは歩けないのですか?」
裁判長 「おまえは 光の裂け目の中だったからわからなかっただろうが ゆかりちゃんは二ヶ月前交通事故にあって、今は、病院でリハビリ中である。」
ピエロ人形 「え!・・・病院でリハビリ?歩けないのですか?」
裁判長 「そうだ。」
ピエロ人形 「じゃーダンスも・・・・で・き・な・く・な・つ・た・・・」
裁判長 「そうだ。もう二度とダンスはできない体になった。」
ピエロ人形 「それはあまりにもゆかりちゃんがかわいそうです。ダンスあんなに好きだったのに。」
裁判長 「きのどくにな」
ピエロ人形 「ゆかりちゃんを助ける方法はないのですか?」
裁判長 「特にこれといってない!」
ピエロ人形 「ああ!どうすればいいんだ!」
裁判長 「まったく 方法がないわけじゃない」
ピエロ人形 「え!どんな方法ですか?」
裁判長 「身代わり人形というのを知っているか?人形がその人の身代わりになると その人の不幸を少なくすることができる。」
ピエロ人形 「身代わり人形?」
裁判長 「そうだ 人形が人の身代わりになる」
ピエロ人形 「じゃー 僕がゆかりちゃんの身代わりになれば ゆかりちゃんは交通事故にあわないのですか?」
裁判長 「いいや 違う!ゆかりちゃんが交通事故にあったことは変えられない。 しかし 事故のけがが何もしないより早く直る。しかし、どのくらい早くなるかは、身代わり人形がどのくらいダメージを受けたかによって変わる。」
ピエロ人形 「もし もしもですよ 僕がばらばらになったら?」
裁判長 「お前は、二度と立つことも話すこともできない。それでもいいのか?」
ピエロ人形 「・・・・・・」
ピエロ人形 「それでもかまいません ゆかりちゃんがダンスをできる体に回復するなら。」
裁判長 「ゆかりちゃんは、お前のことはまったく覚えていないし、お前が身代わりになったことも知らないのだぞ。」
ピエロ人形 「・・・・・ゆかりちゃんのためなら・・・かまいません。」
裁判長 「わかった 身代わり人形として認めよう。覚悟はいいか!」
ピエロ人形 「い!痛いですか?」
裁判長 「痛い?気を失うくらいな。」
ピエロ人形 「はい!お願いします。」
歌
第七章 赤ちゃんの時の人形
ゆかりが自分の部屋に入ってくる。歩いている。
ゆかり 「長いこと自分の部屋あけたのにずいぶんきれいにしてあるなー。きっとおかあさんが掃除したんだ。」
そこへ妹のゆりが入ってくる。
ゆり 「おねえちゃん退院おめでとう。部屋きれいでしょ。おかあさんとわたしで掃除したんだよ。」
ゆかり 「ありがとう。」
ゆり 「しかし、おねえちゃんすごいよね。病院のお医者さんも歩けなくなるかもしれないって言ってたのに、リハビリがんばってすっかり治っちゃったんだから。お医者さんびっくりしたぐらいだし、尊敬しちゃう。」
ゆかり 「私も、本当は歩けなくなるんじゃないかって心配だったの、でも、リハビリはじめて二ヶ月過ぎから何とか歩けるようになってきた。自分でもしんじられない。お医者さんもダンスしてもいいて言ってくれた。」
ゆり 「おねえちゃん ダンス好きだものね。・・・・あ!そうだ!これ。」
そういって、ゆりがゆかりに古びた人形を渡す。
ゆかり 「何?人形?ずいぶん古い人形ね?どうしたの?」
ゆり 「おねえちゃんの部屋の真ん中に、手足がちぎれて置いてあった人形。おかあさんに聞いたら。お姉ちゃんが赤ちゃんのときに買ってあげた人形だって。」
ゆかり 「私が赤ちゃんのとき?なんで今頃出てきたの?」
ゆり 「おかあさんも何でおねえちゃんの部屋の中で手足がちぎれて今頃出てきたのかわかんないって。きっと部屋の隅にしまってあったのを、野良猫か何かが来て手足を噛みちぎったんじゃない?」
ゆかり 「赤ちゃんの時の人形?手も足もついてるよ。」
ゆり 「私が、ちゃんと縫っておきました。でもちょっときたないね。いらないんだった捨てる?」
ゆかり 「うーーん ・・・・おかあさんが買ってくれたお人形だったら捨てるのまずいでしょ。一応、そこらにおいておいて。」
ゆり 「うん。じゃー。ここにおいておくね。今日は、退院したばっかりだから、ゆっくりしてたほうがいいよ。」
ゆかり 「ゆっくりなんてしてられないよ。もうすぐダンス発表会だから、ダンスレッスン明日からいくんだ。」
ゆり 「ホンとに、おねえちゃんダンス好きなんだから、でもあんまり無理しないこと!じゃーね。」
そういって、ゆりは部屋を出て行く。
ゆかり、部屋を見回し、人形を手に取り、
「赤ちゃんの時の人形か!こんな人形もってたんだ。」
ゆかり、人形をながめ、オルゴールになっていることに気づく。
ゆかり 「あ!これ!オルゴールなんだ!」
ゆかり、ねじを巻き、オルゴールの音を聞く。
暗転
ダンス
第八章 エピローグ
暗転の中でスポット ピエロ人形を照らす。
ピエロ人形は、座っていたが、よろよろと立ち上がる。
照明が消える。
フィナーレ