イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

絵画が動く理由(わけ)ーPalazzo Pitti (ピッティ宮殿)

2021年09月12日 16時22分23秒 | イタリア・美術

La Velata di Raffaello "si muove"... 
ラファエロ作「ヴェールを被る婦人の肖像」が動きだす…

写真:Wikipedia
別に怪奇現象ではありません。
ピッティ宮殿(Palazzo Pitti)にあるいくつかの絵画、中には非常に大きいものもあるのだが、には非常に優れた仕掛けが施されたものがある。
それはイタリア語で"bilicatura”と呼ばれている。
この単語はイタリア語の動詞 “bilicare”から来ていて、日本語の意味は「平衡状態を保つ」。
ラテン語の“umbilicus”→イタリア語の”ombelico”、つまり”へそ”から派生した”中心”を表す語から来ているらしい。
今でこそなんということはないこのシステムは絵画と壁の平衡を保つために付けられた、回転可能なボルト、所謂蝶番(ちょうつがい)のことだ。

1883年、トスカーナ大公レオポルド2世(Granduca Leopoldo II di Lorena)はピッティ宮のギャラリー(Galleria)を一般公開した。
当時ウフィツィ美術館の館長だったRamirez de Montalvoは、コレクションの中でも特に重要な作品にこの“bilicatura”(蝶番)を付けることにした。
このアイデアは、研究者、絵を写しに訪れるアーティストや著名人など訪問者がより作品に近づける画期的な仕掛けだった。

絵画を窓から差し込む光の方へ向けることも可能になったため、宮殿はいつも賑わっていた。
日光の方に絵画を向けるなんて保存上あまり推奨出来る話ではないけど、当時の館内はかなり暗かったことは想像に難くない。
特に多くの芸術家の卵たちがイーゼルを立て、筆を動かしていた。
ラファエロの「ヴェールを被る婦人の肖像」などはちゃんとした自然光の元で研究されたのである。
模写された作品の中で特に館長に認められた作品は、キャンバスの後ろに判が押され、市場に出て行ったという。

というのが本日のUffizi 99 secondi(ウフィツィ 99秒)という動画の内容で、ちょっと面白かったので載せてみた。


p.s. 先日山科様からご指摘があった、トスカーナ大公レオポルド2世の遺産の1つとして、以前はピッティ宮のパラティーナ美術館(Galleria Palatina)に有った「ドーニ夫妻の肖像画(Ritratti di Agnolo e Maddalena Doni )」だが

2018年6月5日、館内の大改修の時にミケランジェロ(Michelangelo)の「トンド・ドーニ(Tondo Doni)」のそばに移転された。
移転と同時にこの展示スタイルになったのだが、これ実は裏側も見られるようになっている。
裏には



写真:https://www.uffizi.it/en/artworks/portraits-doni-raffaello
この2枚が描かれている。
これはラファエロの協力者マエストロ・ディ・セルミド(Maestro di Serumido)の作と考えられている。



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