上を見なさい、マリカ。
そのうち―――。
しっかり者の理由
「うわぁ…、この夢、久々にみたわ…」
夢から覚めてからの第一声。
なんとなく寝たまま、周りを確認する。
日が昇り始めたばかりらしく、空気は澄んでいて、どこか肌寒い。
闘いの連続で、とても平和とは言えない状況なのに。
今は、その争いの気配さえない。
はぁ、とため息をついて身なりを整える。
自分がエンジンをかけないと「あいつら」は全然ダメなのだ。
「起きなさい、ジェイル」
「……」
「睨まない! さ、起きる!」
むくりと体を起こすもののまだ眠そうだ。
いつものことなので、放っておくことにする。
たった一言言えば、仕方ないといった風に諦めるからだ。
「あいつ、起こしに行くでしょ?」
「ああ」
あいつとは、この集団を纏め上げる幼馴染のこと。
どういうわけか、彼の考え方は偉い方々に好評らしく。
ガキ大将はあっという間に団長になってしまった。
自分にとってみれば「兄弟」みたいな奴なのに。
団長室とされている部屋に入る。
部屋の前には、なぜかキテレツ娘。
いつものことなので無視する。
彼女が自分より早く起きることはまず、ない。
「起きなさい!!!朝!!」
「うおっ…!!」
耳元で叫んでやる。
寝てれば、団長も世界を救うかもしれない救世主もない。
ただの寝起きの悪い男の子だ。
文字通り「飛び」起きたはずだが、次見ると、いつもの笑顔を作って。
「おはよう、マリカ」
まったく…。
背中に不穏な気配を感じて、助言してやる。
「それだけじゃないでしょ」
「おお、おはよ、ジェイル」
「…ああ」
う~んと伸びをひとつして。
あくびをかみ殺す幼馴染を見て不思議な気分に襲われる。
なんだろう?
「んじゃ、リウ起こしに行くか!」
「はいっ、起きる!!」
「ふぎゃっ!!」
問答無用に掛け布団を剥ぎ取る。
しっかり抱き込んで寝ていたリウは引きずられるように床に落ちた。
うお、すげえ音、と聞こえた気がしたが無視する。
いまさらだからだ。
「またおなか出して寝てたわね!!」
「もとからっ!!」
リウの悲鳴に、ついに耐え切れなくなったジェイルが噴出す。
この男、意外と笑いのつぼが広い。
ふぅと息をついて、声をかけなおす。
「さぁ、ご飯食べに行くわよ」
食堂に着くと、既に父と姉が席についていた。
シトロ村にいるときと変わらない、いつもの光景。
自然と声が出た。
「おはよう、お姉ちゃん、お父さん」
『…おとうさん』
『今日も泣いているのか?』
『…マリカ、下ばかりみていると悲しい気持ちは消えないんだよ』
『……』
『上を見なさい、そうすればそのうち涙は乾くから』
「おはよう、マリカちゃん」
「おはよう」
「お父さん、今日ね、お父さんの夢見たの」
お母さんが亡くなってすぐの頃だったと思う。
泣いてばかりいた私に、父が「上を見なさい」と言ってくれた。
シス姉も沈んだ気持ちをそれで吹っ切ったらしい。
姉妹にとって、私個人にとって、そして家族にとってきっかけになった一言。
私が泣いてばかりいた時期は、大変だったらしい。
ジェイルとあいつは、どう私に接するかでモメて。
ディルクが自警団に身が入らなくて怪我して。
みんな、上の空でしっちゃかめっちゃか。
私がしっかりしなくちゃ。
そう思ったら、世界が灰色からいつもの青空に戻った。
ああ、上を見るってこういうことかと幼心に思ったものだ。
今でも、気が滅入ることはある。
不安になることも、嫌なこともある。
でも、そういうとき。
「なんだよ、マリカ。
後ろみてないで、前見ろよ!」
ああ、もう、こいつは。
こういう奴だから、「団長」なんだろうな。
**************************
やってることは、シトロにいるときと変わらないのに。
立場が「救世主」とか「団長」とかになっちゃって。
戸惑いが生じて、昔の夢をみた朝。
「昔のことより、前(今)見てろ」という団長に。
マリカが自分なりの納得をするまでの話。(長い)
一番書きたかったのは。
「おなか出して!」
「もとからっ!」のくだり。
あとはおまけだよ、おまけ。
こんな調子で昇華していくですのー。
そのうち―――。
しっかり者の理由
「うわぁ…、この夢、久々にみたわ…」
夢から覚めてからの第一声。
なんとなく寝たまま、周りを確認する。
日が昇り始めたばかりらしく、空気は澄んでいて、どこか肌寒い。
闘いの連続で、とても平和とは言えない状況なのに。
今は、その争いの気配さえない。
はぁ、とため息をついて身なりを整える。
自分がエンジンをかけないと「あいつら」は全然ダメなのだ。
「起きなさい、ジェイル」
「……」
「睨まない! さ、起きる!」
むくりと体を起こすもののまだ眠そうだ。
いつものことなので、放っておくことにする。
たった一言言えば、仕方ないといった風に諦めるからだ。
「あいつ、起こしに行くでしょ?」
「ああ」
あいつとは、この集団を纏め上げる幼馴染のこと。
どういうわけか、彼の考え方は偉い方々に好評らしく。
ガキ大将はあっという間に団長になってしまった。
自分にとってみれば「兄弟」みたいな奴なのに。
団長室とされている部屋に入る。
部屋の前には、なぜかキテレツ娘。
いつものことなので無視する。
彼女が自分より早く起きることはまず、ない。
「起きなさい!!!朝!!」
「うおっ…!!」
耳元で叫んでやる。
寝てれば、団長も世界を救うかもしれない救世主もない。
ただの寝起きの悪い男の子だ。
文字通り「飛び」起きたはずだが、次見ると、いつもの笑顔を作って。
「おはよう、マリカ」
まったく…。
背中に不穏な気配を感じて、助言してやる。
「それだけじゃないでしょ」
「おお、おはよ、ジェイル」
「…ああ」
う~んと伸びをひとつして。
あくびをかみ殺す幼馴染を見て不思議な気分に襲われる。
なんだろう?
「んじゃ、リウ起こしに行くか!」
「はいっ、起きる!!」
「ふぎゃっ!!」
問答無用に掛け布団を剥ぎ取る。
しっかり抱き込んで寝ていたリウは引きずられるように床に落ちた。
うお、すげえ音、と聞こえた気がしたが無視する。
いまさらだからだ。
「またおなか出して寝てたわね!!」
「もとからっ!!」
リウの悲鳴に、ついに耐え切れなくなったジェイルが噴出す。
この男、意外と笑いのつぼが広い。
ふぅと息をついて、声をかけなおす。
「さぁ、ご飯食べに行くわよ」
食堂に着くと、既に父と姉が席についていた。
シトロ村にいるときと変わらない、いつもの光景。
自然と声が出た。
「おはよう、お姉ちゃん、お父さん」
『…おとうさん』
『今日も泣いているのか?』
『…マリカ、下ばかりみていると悲しい気持ちは消えないんだよ』
『……』
『上を見なさい、そうすればそのうち涙は乾くから』
「おはよう、マリカちゃん」
「おはよう」
「お父さん、今日ね、お父さんの夢見たの」
お母さんが亡くなってすぐの頃だったと思う。
泣いてばかりいた私に、父が「上を見なさい」と言ってくれた。
シス姉も沈んだ気持ちをそれで吹っ切ったらしい。
姉妹にとって、私個人にとって、そして家族にとってきっかけになった一言。
私が泣いてばかりいた時期は、大変だったらしい。
ジェイルとあいつは、どう私に接するかでモメて。
ディルクが自警団に身が入らなくて怪我して。
みんな、上の空でしっちゃかめっちゃか。
私がしっかりしなくちゃ。
そう思ったら、世界が灰色からいつもの青空に戻った。
ああ、上を見るってこういうことかと幼心に思ったものだ。
今でも、気が滅入ることはある。
不安になることも、嫌なこともある。
でも、そういうとき。
「なんだよ、マリカ。
後ろみてないで、前見ろよ!」
ああ、もう、こいつは。
こういう奴だから、「団長」なんだろうな。
**************************
やってることは、シトロにいるときと変わらないのに。
立場が「救世主」とか「団長」とかになっちゃって。
戸惑いが生じて、昔の夢をみた朝。
「昔のことより、前(今)見てろ」という団長に。
マリカが自分なりの納得をするまでの話。(長い)
一番書きたかったのは。
「おなか出して!」
「もとからっ!」のくだり。
あとはおまけだよ、おまけ。
こんな調子で昇華していくですのー。
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