『食材を探すため、実家に帰らせていただきます』
一枚の紙切れがそこにあった。
いつもの食卓、いつも彼女の座る位置に。
申し訳なさそうに、されど存在感は抜群で。
二人の男は顔を見合わせる。
「…どうみたほうがいい?」
「…出ていったんじゃないの?」
前田家家訓!
「あああ!!ああ! ま、まつ~!!!」
「落ち着けって、トシ」
「だ、っで、まつが出ていったんだぞ!一大事だ!」
慌てふためき、その場をぐるぐるしだした利家を。
慶次は冷静に制した。
涙目になっている利家は、威厳も何もちり紙の中だ。
「こういう時にこそ、冷静に。
時には強引にってな」
「では、どうすればよいというのだ」
「そうだな」
慶次がいつもの湯呑みを右手に持ったので。
それを利家は目で追った。
ぐいっと煽ろうとして。
「まつねぇちゃん、お茶~」
「…お前、もしかして動揺してる?」
「ん、んな、わけあるかよ。
あー、腹減ったな。
まつねぇちゃん、なんかない~?」
沈黙が二人の空間を支配する。
どちらともなく、叫ぶ。
「ああああああああ、まつ~!!!」
「どうしよう!! 出て行っちまった!!」
「愛想尽かされたんだ!」
「働き疲れたんだ!!」
「わがままを言い過ぎたか」
「心配かけすぎたか」
「任せすぎたか」
「「帰ってきてくれ~!!」」
「うるさいですよ!」
振り返ると、仁王立ちした女房の姿。
後ろにはどどんと食材の山が積みあがっていた。
「だいの大人の叫び声がするので。
家ではありませんようにと思いましたが。
やはり家でしたか」
「ま、まつ~!!!」
「出ていったんじゃないのか!?」
慶次の言葉に思いっきり、はあ?という顔。
びしっと食卓を指差す。
指した先には、あの紙。
「書き置きをしたでしょう?
読めなかったのですか?」
「え、あ、読んだけど…」
「読んだけど?」
「あ、いや、その…」
まつの背後に黒い気配がした。
間違いなく怒っている。
口元は笑っているが、目の笑っていないにっこりだ。
二人は、うしろに下がっていく。
手をついたまま、ずりずりと二人揃って下がっていく。
まつは、どんどん追いつめる。
壁際まで追いつめたところで、笑顔をさらに煌めかせる。
「置き手紙を読んだにも関わらず」
「このまつが出ていったと」
「そう思うほど」
背筋が凍る。
二人が抱き合う。
「何か後ろめたいことがあるということですね?」
「ま、まつ…!」
長刀振り回し、雄々しくまつが構える。
振り回した刃が利家の頭上をかすめた。
本気である。
「覚悟なさいませ!」
前田家家訓
妙な勘ぐりはやぶ蛇呼ぶ
***************************
こんなんでも、彼らは幸せだ。
風魔とオクラ、さて、どうやろうかなぁ。
一枚の紙切れがそこにあった。
いつもの食卓、いつも彼女の座る位置に。
申し訳なさそうに、されど存在感は抜群で。
二人の男は顔を見合わせる。
「…どうみたほうがいい?」
「…出ていったんじゃないの?」
前田家家訓!
「あああ!!ああ! ま、まつ~!!!」
「落ち着けって、トシ」
「だ、っで、まつが出ていったんだぞ!一大事だ!」
慌てふためき、その場をぐるぐるしだした利家を。
慶次は冷静に制した。
涙目になっている利家は、威厳も何もちり紙の中だ。
「こういう時にこそ、冷静に。
時には強引にってな」
「では、どうすればよいというのだ」
「そうだな」
慶次がいつもの湯呑みを右手に持ったので。
それを利家は目で追った。
ぐいっと煽ろうとして。
「まつねぇちゃん、お茶~」
「…お前、もしかして動揺してる?」
「ん、んな、わけあるかよ。
あー、腹減ったな。
まつねぇちゃん、なんかない~?」
沈黙が二人の空間を支配する。
どちらともなく、叫ぶ。
「ああああああああ、まつ~!!!」
「どうしよう!! 出て行っちまった!!」
「愛想尽かされたんだ!」
「働き疲れたんだ!!」
「わがままを言い過ぎたか」
「心配かけすぎたか」
「任せすぎたか」
「「帰ってきてくれ~!!」」
「うるさいですよ!」
振り返ると、仁王立ちした女房の姿。
後ろにはどどんと食材の山が積みあがっていた。
「だいの大人の叫び声がするので。
家ではありませんようにと思いましたが。
やはり家でしたか」
「ま、まつ~!!!」
「出ていったんじゃないのか!?」
慶次の言葉に思いっきり、はあ?という顔。
びしっと食卓を指差す。
指した先には、あの紙。
「書き置きをしたでしょう?
読めなかったのですか?」
「え、あ、読んだけど…」
「読んだけど?」
「あ、いや、その…」
まつの背後に黒い気配がした。
間違いなく怒っている。
口元は笑っているが、目の笑っていないにっこりだ。
二人は、うしろに下がっていく。
手をついたまま、ずりずりと二人揃って下がっていく。
まつは、どんどん追いつめる。
壁際まで追いつめたところで、笑顔をさらに煌めかせる。
「置き手紙を読んだにも関わらず」
「このまつが出ていったと」
「そう思うほど」
背筋が凍る。
二人が抱き合う。
「何か後ろめたいことがあるということですね?」
「ま、まつ…!」
長刀振り回し、雄々しくまつが構える。
振り回した刃が利家の頭上をかすめた。
本気である。
「覚悟なさいませ!」
前田家家訓
妙な勘ぐりはやぶ蛇呼ぶ
***************************
こんなんでも、彼らは幸せだ。
風魔とオクラ、さて、どうやろうかなぁ。
わかりやすくどたばた動揺するいぬちよさまと見た目ばかりは落ち着いているように見える慶次。
いいなー前田家。
幸せだ前田家。
小さい紙片を目の前に、ちんまり正座する二人が素敵。
なぜ字面を字面通りに受け取れないのか…!
いや、逆に考えるんだ。やましいことがあったんじゃなくて大好きで大好きで仕方ないから心配だったんだよ!
きっとそうだったんだよ!!
毎日毎朝そんなどたばたがありそうな雰囲気が素敵。
最強まつねえちゃんといぬちよさまは本当最高の夫婦。
そんな二人と一緒にいられる慶次は幸せ。
前田家は本当に癒しだなあ…!
また是非書いてくだされ(*´∀`)vv