端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

痛みを伴う愛2/5

2012-06-08 00:00:00 | テキスト(よろず)
「ただいまー」
「おかえり、お兄ちゃん!」
「うん、菜々子元気だね。
 堂島さんは?」
「……今日は帰れないかもって」
「へぇ、そう」

痛みを伴う愛 1st

鳴上は自室に花村を押し込むと、笑った。
扉を後ろ手にして、逃がさない意思表示。
花村の顔からは血の気が失せた。
今、彼に渦巻いているのは。
堂島不在の絶望、これからの不安、鳴上への。
恐怖。

「ということで、堂島さんはいないってさ。
 よかったね、泊まっていけるよ」
「……何が目的なんだよ」
「言ったろ?陽介は俺だけに仕えるべきだって」

何でもないような口調で。
鳴上は花村をどんどん絶望へ追い込んでいく。
思わず座ってしまった花村にゆっくり近付く。
立て膝になって胸ぐらを掴む。

「ねぇ、抵抗したら監禁って言ったけどさ。
 どうせだったら飼ってもいいよね?」
「お断りだ」
「そんな権限ないだろう?」

今日だけで何回掴まれたか分からないシャツ襟。
伸びきってしまってベロベロだ。
鳴上の左手の平が花村の頬を滑る。

「俺のものだもんね?」

花村は、違うと叫びたかった。
だが、徐々に胸ぐらに力が入っていくのを感じて諦めた。
眼を伏せると、右頬に痛み。
平手でぶたれたらしいことを、鳴上の腕の状態で知る。

「返事は?」
「……そうです」
「よし、ご飯持ってきてあげるよ」

胸ぐらを離して立ち上がる鳴上。
花村が安堵するのを見計らったかのように絶望を贈る。

「ケータイは没収、必要ないから。
 ここは2階で、この部屋の鍵は俺が持ってる。
 だから籠城も窓からの脱出も無理。
 トイレと風呂は許可するけど、テレビはダメだ」
「泊まるのはいいけど、親に連絡くらいさせてくれよ…。
 捜索願いが出ちまう」
「それは困るな」

手渡されたケータイ。
これの使い方が命運を分けそうなことは、花村でも理解できた。
チャンスはおそらく一度きり。
花村は、アドレス帳を呼び出して耳に当てた。

「もしもし?俺。
 急なんだけど今日、先生のとこに泊まる。
 大丈夫、うん、分かってるよ」

一言、二言言ってから切ると、鳴上が腕組みをして怪訝な顔をしている。
花村の言葉を検分しているらしい。

「先生?」
「いきなり友達の家に泊まるって言うより許可が出やすいだろ?」
「なるほど」

今度こそ背を向けて部屋を出ていく。
しっかりケータイ電話は取り上げられた。
大丈夫、花村はそう信じるしかなかった。


一時間ほどして、鳴上が食事を持って戻ってきた。
一人前の食事だったので、花村が自分の分はいいのか?と問う。
小机に食事を並べながら、こともなげに答えた。

「食べてきたよ。菜々子を1人にする気か?」
「……いいえ」
「それに、陽介は俺だけ見ていればいいから。
 菜々子でも譲れないなぁ」

鳴上の眼は真剣そのもので。
口角だけが不気味に上がり続けていた。
狂気じみた満足感。
花村は、黙々と食事を続けながら脱出する術を考える。
まさかこんなところで参謀役が活きるとは。
相手は学年一の秀才である。
出し抜くには、運要素が絡んでくる。
食事を終えそうなタイミングで切り出す。

「鳴上、俺はどこで寝るんだ?」
「ん?布団使っていいよ」
「お前は?」
「ソファ使う」
「そっか」
「その代わり」

花村が安堵するのを見計らったかのように絶望を贈る。
催眠術を使うように同じ手法を繰り返す。
何度でも。
花村が青ざめるのを嬉しそうに見つめる。

「首輪と手錠してもらうから」

ガタッと思わず後ずさるが、すぐに壁にぶつかる。
肩を押さえつけられて、どこから取り出したのか鳴上は首輪をさっとつけてしまう。
ガチャッと音がしたかと思うと、もう手錠も填まっていた。

「マジかよっ……」
「ははっ、似合う似合う。癖になりそう」

花村は舌なめずりする『男』を見上げる。
誰だ、こいつは。

「ずーっと、ずーっと愛してあげる。
 ここで、ずーっとね?」

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ここが鳴上くん病み度MAXです。
手錠は足立さん辺りからかすめ取ったんでしょう。
失くした足立さんは始末書、南無。

> 手渡されたケータイ。
> これの使い方が命運を分けそうなことは、花村でも理解できた。

さぁ、誰に電話をかけたのでしょうか。
ありったけの運をかき集めろ、陽介!!


無駄に脳内でコマ割りして話を書いてるのですが。
イメージは出来ても、文字にできないことが多く。
語彙を増やしたいなぁと思う今日この頃です。

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