端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

馬威駆乗りDK

2012-05-31 00:00:00 | BASARA
「さぁ、どいつが毒虫だ。前出ろ、前」
「Be coll. とりあえず、一輪車から降りろ」
「器用ですなぁ」

Dragons の場合

片倉小十郎が一輪車から降りる。
自宅からここまでほぼノンストップ且つトップスピードだったため。
全身から汗が噴き出し、息も荒い。
真田がスポーツタオルを手渡すと「助かる」と受け取った。
汗を拭けるくらいに落ち着いたのを見て、ようやく猿飛佐助が合流する。
この目立つ登場をした同行人と同類と思われたくなかったのだろう。

「む、佐助も来たのか」
「ちょっとね~」
「アンタが『サスケ』か。
 名前だけはかねがね聞いてるぜ」
「……誰?」

猿飛が冷ややかな視線を長曾我部に向ける。
とりつく島もないといった雰囲気だ。
さっと引くと、名乗るだけにとどめた。

「長曾我部元親だ。政宗と同じ学部だ」
「まぁさぁむぅねぇ~!?」
「いえ、伊達くんと同じ学部です」

片倉が地獄から来たような睨みを利かせて長曾我部を見る。
ぶっ殺すぞといった雰囲気だ。
さっと言葉を変えると、逃走態勢に入った。

「あ、そろそろ次の授業なのでこれでしつ…」
「次は休講になったろ、長曾我部くん」

がっしと背後から右肩を掴んで、伊達が笑う。
目が一切笑っていない。
言外に『逃がさねぇよ』と聞こえてくる。

「てめっ…、俺様を巻き込むんじゃねぇよ」
「Shut up. 先に逃走経路塞いだのは、てめぇだろうが」
「それは謝る、謝るから手を離せ」
「ひとりだけ逃げる気か!?」

小声でのやりとりをしながら、ふたりはビシバシと片倉の視線を感じていた。
伊達が離れた瞬間、長曾我部を斬り捨てそうだ。
大学での傷害事件なぞ笑えない。

「政宗様、毒虫はどこです?」
「Ah? お前、さっきも言ってたが『毒虫』ってなんだ?」
「シラを切られるおつもりか!!
 文化祭より様子がおかしいのは目を見るより明らか。
 入れ込む前に化けの皮を…」
「Stop. お前、勘違いを…」
「てめぇ、知ってるか?」

ぎろりと片倉が長曾我部をさらに睨む。
知っている、が、信じてくれそうもない。
伊達が『幸村』の話をすればよかったのだ。
だが、常日頃から必要最低限しか話さない彼は。
私生活でもやっぱり必要最低限だったため話題にしなかったのだろう。

「片倉さん、政宗は虫なぞ研究しないですよ」
「……こいつといい、てめぇといい。
 政宗様を呼び捨てにするたぁ、いい度胸だ」
「旦那に何かしたら、俺様、怒っちゃうよ?」

矛先が真田方面に向いた隙に『眼帯同盟』は打ち合わせ。
この場をどう納めたものか。
片倉が『伊達に質の悪い女ができた』と思っているのが問題だ。

「幸村が話題になったことはあるか?」
「夏休みに一度」
「もうちょっと話す努力をしろ」
「なんでそんなこと…」
「写真、みせたよな?」

写真と言われて、伊達は全てを理解した。
伊達と真田のツーショット。
彼自身でもみたことない笑顔を浮かべていた。
メールを打つとき、電話するとき。
『その顔』をしたとしたら?

「それでか……」
「自業自得だ、バカ野郎」
「Ah..., 盗んだバイクで走り出してぇ」
「盗むなよ!?」
「お前の乗りにくいから、別のにする」
「乗ったことあんのかよ!?いつ!?」
「高校の時に、いろいろ試乗したんだよ」
「なんだ、脅かすなよ」

あからさまにホッとする長曾我部とは対照的に。
伊達の顔は冴えない。
真田側で保護者対決が勃発しているようだし。
当事者である自分が決着をつけねばならない。
友達の呼び方を変えるってこんなおおごとだったのか。

「Hey, 小十郎」
「今、忙しいのですが」

ぴらっと写真を取り出す。
長曾我部にプリントアウトしてもらい、持ち歩いているもの。
はうっ、と目のいい幸村が赤くなる。
猿飛は怪訝な顔をして、伊達の手元に注目する。

「これが?」
「メールと電話の相手はこいつ、幸村。
 女は残念ながらいない」
「はっ…!?」

片倉は写真と本人を見比べる。
だらだらと汗の止まらなくなった真田と。
写真に写った真田。
そして、写真に写った伊達の表情。
真田はともかく、伊達は『電話しているとき』の顔。

「男…ですか…」
「おい、妙な勘ぐりしてねぇだろうな?」
「ねぇ、旦那とはどういう関係?」

猿飛が面白くなさそうに写真をみつめている。
その問いに面白くなそうに伊達が答える。

「友人だ」
「ふぅん?ま、いっけど」

ひらひらと手を振って、ヘルメットをかぶる。
真田が追う。

「帰るのか?」
「うん、旦那が楽しそうにしている理由が分かったからね」
「そうか」
「……みんなと仲良くね」
「うむ!」

一方の片倉は。

「納得したら帰れ。Go home!!」
「政宗様、その、電車賃貸してくれませんか…」
「一輪車で帰れよ」
「殺生な!」
「知るか!」

すっと離れたところに避難した長曾我部の元へ真田がやってきた。
何か言いたげにしている。

「……写真か?」
「う、よく分かったな」
「何枚?」
「2枚。見つかったら、破られるかも知れない」
「はいよ、じゃあ、明日渡すわ」
「ありがとう」

伊達と片倉の言い合いを見つめながら。
真田は、3日後のレポートについて考えていた。

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君といると楽しい。
趣味をバイクにしてよかった。

よくわからない修羅場を迎えたある日。
大学生ずは、全く意味が解らなかったはず。
小十郎は、いたって平常運転です。

> 友達の呼び方を変えるってこんなおおごとだったのか。

ええ、あるコンビのときはそれのせいで心臓がえらいことになりました。
友達はいるけど、少ない政宗にとっては未知の領域。

佐助は写真を見て、伊達の深層心理に気付いてる。
「友人」にこんな顔するかよ。
自覚があるかどうか確認して、結果的になかったので様子見。
幸村をとられたみたいで寂しいけど。
それよりも。
>「旦那が楽しそうにしている理由が分かったからね」

一輪車で来たはいいけど、頭が冷えたら恥ずかしくなった小十郎。
財布を持ってくるのも忘れて、暴走一輪車。
勢いっておっかない。

伊達とのツーショット写真。
部屋に飾りたいけど、佐助の様子からいい顔されなそうだと察した真田。
予備に1枚を隠し持って、持ち歩くことにしました。
大事な大事な、トモダチ。

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