em-Pits : 千葉研究所

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エンジンの動力性能の見方を書きながら整理する-3

2022年07月04日 | 
 さて、日産のBEVサクラも発売されたことなので改めてこの話題を。

 エンジンの「最大出力」とはどういうことか? これはレシプロエンジンの特性に依存した言い方で、『新型ロードスターのすべて』から引用した特性グラフは以下の通り。

kWで表される出力の値は、エンジンの回転速度(エンジン回転数)に伴って右肩上がりになっている。これは機構上の特徴から“各部品が最高の連携をするタイミングで動いている限りは最大の力を発揮する”が、“それ以外の時は能率が落ちる”ことの結果と言える。

 では、前回の「990 kgの物体を2秒間で100 km/hに加速する」ことはこのエンジンには可能なのか? ということを考えると、それは不可能とは言えない。一方で、「マツダロードスターを、自走で2秒間で100 km/hに加速する」というのは不可能になる。
 この差を生むのが、自動車がエンジンの力をどう使うように設計されているかという制約によってくる。それは主に下の二つで、
1. 車輪とエンジンを、変速機を介して接続して駆動する
2. 変速機は6段のものを使う
ということになる。
 それを踏まえて、理論的なNDロードスターの加速感をグラフ化すると、以下の通り(こちらの力不足で、X軸が時間になっていない)。

そして、例としてこの中でエンジンが90 kW以上を発揮している部分を抜き出すと

これだけになってしまう。

 自動車の加速においてエンジンの最大出力が使われるポイントは、各ギアにおいて“エンジンが吹け切る”直前に限られるのだ。

雑記211230

2021年12月30日 | 雑記
 久々に文章でもとウェブログの投稿画面を開くなど。なんとなくローマ字入力が煩わしくてDvorakJで新下駄配列をこれまた久々に使ってみているが、配列の記憶が結構怪しいのでこれはこれで煩わしくないわけでもない。そして同時打鍵の立てる指の構えが少し腕と手首に負担。高さのあるリストレストが欲しくなる。

 9月からの仕事に無駄に労力をかけ過ぎた。労力の配分はダメなところが多い。急かされて色々やったものの、結局は案外余裕が多かった。生産設備における電気部は設計も施工も終盤なので、スケジュールを振り返るともっとエレガントなものにすることはできたのだった。
 師匠のスタンスは基本前倒し、後ろに出来た空きには容赦なく別の仕事を入れていくという方針なのでまあ、あるだけ時間をかけてしまいがちな俺には良いレギュレーションにはなっている。見切りのつけ方も身に付けばいいのだけど。
 結果的に設計として煮詰めきれなかった部分が目についた仕事であった。

 放置している仕事率と力の話も書こうかなという思いはありながら資料の用意が面倒だしイマイチ頭がスッキリした状態で机に向かえないしで今に至っている。仕事サイドでも俺なりにまとめておきたいプログラムの話があったりするのだけども。新しいPCにもiQWorks入れたしなぁ。

 とりあえず食って昼寝して考えよう。できるかな。

引力発電装置の主張とは(サンテル株式会社)- 3 それが問いかけるものは?

2020年09月14日 | ネタ
 これまで2回にわたり取り上げてきた株式会社サンテルの「引力発電装置」ですが、前回のJoerg Fricke氏のコメントがほぼ全てだと思います。
 間違いの指摘としては十分ではあるのですが、僕の方ではもう少しだけ具体的に問題点を見てみましょう。

「仕事」の概念がない
 サンテルの資料には「力」と「仕事率」に関する記述はありますが、「仕事」への言及はありません。力に関しても単位を「kg重」ではなく「kg」としており、質量と区別していません。まあ、この装置の力は全面的に重力に依存するため、あまり問題はないと言えるかもしれませんが。
 回転運動の力は「モーメント」または「トルク」として統一的に扱うのが便利なのですが、そうしていません。
 また、「落下重量」という謎の概念を用いています。第1回で取り上げた以下の部分です。
>上図の計算式
> 150cm÷13cm=11.53倍
> 20kgx11.53=230.6kg
1行目の除算はてこの原理のレバー比ですね。2行目と合わせて、アーム水平の時にタンクで20 kg重の鉛直下方向への力がシャフトへ伝わるときには230.6 kg重になることを示しています。
> 落下重量(1m当たり2倍となる)20kg×6倍=120kg
> ※落下距離が3mなのでx2で6倍となる。合計350kg
問題の箇所です。何を言っているのかわかりません。計算を見る限りは落差3 mの運動により力が増えると言いたいようですが、よくわかりません。加速度の計算を誤解しているのかもしれません。

「落下重量」に関する部分ですが、距離を乗じる点では仕事の計算に似ています。しかし仕事の計算であれば、力の加わった点の移動距離でなくては正しい値が得られません。230.6 kg重の力は半径13 cm、26 cmの高低差の間しか加わらないのです。この差し引きの結果が「1,5 m * 196.2 N * 2 = 588.6 Nm」と書かれていたFricke氏の発言の要点ですね。
 ともあれ「落下重量」というのは、運動の高低差に応じて力を増す作用のようです。これ、0.5 mの場合は1倍、0.25 mの場合は0.5倍になるんでしょうか。なるんでしょうけど。やっぱり加速度というより仕事みたいだなあ。

 いずれにせよ、ここまでで出てくるのは「kg重」単位であらわされる力の概念のみです。「落下重量」も、結局は力の大きさを左右するだけの無次元の概念です。

「仕事率」の概念はある
 一方、単位「kW」で表される仕事率には言及があります。そして出力から逆算して、装置に必要な力とサイズを求めています。
>例)9Mw(9000w) ロータ径164m
> 受風面積(82mx82mx3.14)x1.225(風速15m時)=25,864
応用事例の試算と思われます。9 MW、ローター直径164 mはMHIヴェスタスの洋上風力発電機( https://rief-jp.org/ct4/67593 )ですね。これをモデルに、必要な「引力発電装置」の規模を算出するようです。
2行目の「1.225(風速15m時)」ですが、標準大気の海上密度を代表値として採用しているようです。これを面積に乗じることで、えーっとローターの回転円上に空気を敷き詰めたときの、厚さ1 mあたりの重さが分かりますね。単位はkg/m。
> 258,64÷40%(有効面積)=10,345
> 10,345÷54(テコの倍数30+落下重量24)=191.584
>当社の場合(芯から芯12mの時)荷重191kgでよい。

この辺りの計算には単位がありません。どの程度自覚的なのかはわかりませんが、辻褄が合っていないので当然です。面積に空気密度を乗じたところで、その面積の厚さ1 mあたりの空気の重量になるだけです。「風速15m時」と記述がありますが、これは計算結果に影響していません。言及があるということは風の速度に応じて力が変わることは理解しているようですが。風速が変わった場合、空気密度の値を変えるのでしょうか……。
 そのあと「有効面積」やレバー比や「落下重量」を乗じていますが、平たく言って回転に必要な錘の重量を求める計算になっていないわけです。

 逆に、この計算が可能なのであれば、現在の試作品の想定出力が算出できるはずです。

20 kg * (11.53(レバー比) + 6(「落下重量」)) = 236.6
236.6 * (100 / 40) = 591.5(受風面積)
591.5 / 1.225 ≒ 3.14 * 12.4 ^2
なので、半径12.4 m、直径約25 mの風車に匹敵するわけです。これは出力250 kWクラス( 甑島風力発電所 )になるようです。

 ちなみにこの計算だと、試作品の消費電力は3.9 kWなので効率は64倍となります。250 kWのモーターといえば、テスラのモデル3が近い値です。そして試作品にこのクラスの発電機を想定しているとすれば、それだけで予算も数百万円になってしまうのではないでしょうか……。

回転力の測定法

 前回指摘したように、サンテルが回転力の値として採用しているものは、出力シャフトに巻いた静止したベルトスリングの張力ですが、これはブレーキ装置への入力にすぎません。自転車のバンドブレーキの構造に似ていますね。回転への抵抗の大きさを比較する際の目安にはなりますが、回転力と一致するわけではありません。この値はベルトの素材による摩擦力に大きく依存し、例えばゴムのような滑りにくい表面のベルトを使えばもっと小さい値で回転が止まってしまいます。

15組のユニットの根拠は?
 サンテルの主張に付き合っていると忘れてしまう要素として、錘のユニットが15組あるということがあります。20 kgの重量をベースに計算されているのですが、実際には15組、300 kgの水が行き来してシャフトの回転運動を作っています。この「15」という数に関しては、何の言及もなく、力の計算にも使われていません(消費電力計算にはちゃんと組み入れられている)。
 前述の力の測定にしても、15組で稼働しての値です。試算の350 kg重に近い値は出ていますが、試算自体は1ユニットで行われています。

速度の概念はあるか?
 回転速度に関しては、このコメントに言及がありますが、出力につながる重要な概念だという理解はなさそうです(速度も仕事率も「時間あたり」の概念)。
>使用モーターは動滑車2個 使用の為 1/4になる。47.75kg
>したがって、50kgを持ちあげるモーターでよい。

 上の試算からも、モーターにかかる力を減じることによって速度が落ちてしまうことの心配はしていません。このモーターの選定で重視すべきは、装置の回転に追いつかれない速度で錘を移動させることだと思うのですが……。

概念が繋がっていない穴だらけの論理
 サンテルの主張は、論理の接続がところどころ途切れており、前提から結論までがきちんと繋がっていません。
 おそらく“アイディアへの確信”が先行して、機械や理論一般にはあまり関心がないのではないのでしょうか。例えば日常的に利用している自動車が、「引力発電装置」より遥かに高度なエンジニアリングによって成り立っていることに気が付かなかったり。自転車が本質的にはテコの原理で変速していることを見過ごしてしまったり。
 サンテルのページに「My Stubborn Uncle: A Midlife Tale of Regrets- 平成の頑固叔父の反省物語」という記事があります。Fricke氏は「It's o.k. that you don't listen to other human beings (one might call it perseverance; this way it's a virtue).」と述べましたが、僕は多分よほど他人の話を聞かなかったのだろうなという気がします……。
 1980年代半ば、または平成に入ってすぐ。30年余り前、現在79歳であれば当時40代後半。働きながら機械設計を学び直すには遅すぎたのでしょうか。物理学も機械製図も顧みず、錘を使った永久機関の動くモデルを作ろうと30年。おそらくは漠然とした錘のアイディアを頼りに、実際に動きそうな構造を模索しながらの30年だったのでしょう。幸か不幸か、回転を継続する試作品が完成しても現在に至るまで出力を測定して効果を検証する機会はありませんでした。そして今、クラウドファンディングにより発電機接続の可能性が浮上してきました。

 僕に言わせれば、この「引力発電装置」(まだ発電してないけど)はあてずっぽうの集大成です。前の職場を連想するのでつい口調が辛辣になってしまいますが、これはとても技術開発とは呼べないものです。ないものねだりをせず手持ちで工夫するのは大切なことですが、それは先人に学びながら自分の思い付きを一つ一つ確かめていくことです。これがアートだったら少しは人の心を動かす何かになったのでしょうけど……。あ、もしかして出資者の人はこれをアートと捉えているのかな。ちょっとテオ・ヤンセンみたいな雰囲気ないこともないし。


 一種のアウトサイダーアート、エネルギー技術を問いかけてくるオブジェ。それがこの装置なのかもしれません。

引力発電装置の主張とは(サンテル株式会社)- 2 Joerg Fricke氏のコメントを軸に

2020年08月23日 | ネタ
 さて、今日も「引力発電装置」について見ていきます。

Kickstarterのコメント
 KickstarterのプロジェクトページにはJoerg Fricke氏からのコメント(英語)がついています。内容は物理的に真っ当な指摘です。とはいえ、物理も英語も基本的に高校どまりの僕には少々高度です。まずは最初のコメント
>Generally, the gravitational field is a conservative field (curl = 0).

一般に回転場0の重力場は保存力場らしいです。ブロードバンドと最新サーチエンジンの力を借りても、訳語を探すだけで一苦労です……が、要するにエネルギー保存の法則に照らして錘を上下させてもエネルギーは行ってこい、駆動部の効率を加味するとエネルギーは減っていくという説明。そしてこの装置はいわゆる第一種永久機関だろうと書き添えていますね。

サンテル側の返信、動画から読み取れる測定方法
 これに対する返信です。
 基本的に、前回取り上げた内容の繰り返しになっていますが1点新しい情報があります。
>The prototype stopped spinning at 410 kg.

おそらく動画4のこの画像の測定結果のことを言っていると思われます。

クレーンスケール、吊り下げ重量計で測定されているこの数字は何でしょうか。ヒントは動画3にありました。

出力シャフトにベルトスリングを巻き付けて張り、張力を表示させているようです。ちなみに動画5では見やすい場所に移設されています。

うん? この画像は始動前ですが、既に「230」の表示がある……?

 この動画、1分15秒過ぎの「今から荷重を増やします」、1分55秒過ぎの「さらに負荷をかけたいと思います」の声を受けてレバーブロックを回してベルトの張力を増やす動きがあります。つまり、先ほどの動画4の「410kでとまりました」とは、この張力が410kg重でシャフトの回転が継続できなくなったということでしょう。

 どうやら、この張力をシャフトの回転力だと判断しているようです。

続くコメント
 Fricke氏のコメントはこの後も続いています。“力は確かに大きくすることができるが、作用する距離はその分小さくなる。得られる仕事は同じ”と、前回よりいくぶん易しい書き方になっています。
 そして、専門家の助言を得ずに費やした30年の努力について嘆いています。例えば近くの大学で“求・優秀な物理学生、発明について意見を交わしたし(豪華な夕食の用意あり)”と掲示を出してはどうか、なんて言っているようですね。
 また、1525年の「重力機関」を紹介しています。これも水を利用したアイディアです。

 さらにFricke氏は続けて、今更そんなことで大野さんが納得しないであろうと思い直します。
 そして提案するのは「an experimental solution」、動画を見る限り出力シャフトの力を測定しているのだから、それを改良してエネルギーに換算して確認してみるようにということです。まず発電機より安上がりだからと言っていますが、先ほど見たように測定しているのはシャフトの回転力ではないので、ちょっと難しいでしょう。

サンテル側のさらなる主張
 これに対してサンテル側の回答は相変わらずの調子で、風力発電をベースに負荷と出力を試算する例の主張を繰り返します。このような明白で簡潔な理論があるのだから、回りくどい指摘に丁寧に反論するまでもないという感覚なのでしょうね。

 Fricke氏は、プロジェクトが8月18日に目標額(10万円)を達成したことに寄せて、祝辞としてこのようにコメントしています。
>Here comes my last advice:
>捕らぬ狸の皮算用
>If I understand correctly, this means something like "Don't count the chickens before they have hatched." Adapted to your work:

日本のことわざまで引用して呼びかけを続けてくださっています。頭が下がる思いです。
 40 kWか50 kWの発電機を入手し、きちんと試作品の性能を実験で評価するようにということで、僕もそうなることを期待します。そして、Fricke氏の言う通り、人の話は聞かなくてもいい(それは時に長所だから)ので自然の声を聞き届けて欲しいものです。


 ところでプロジェクトの説明に
>3)同期発電機の入手
>主軸の回転エネルギーを電力に変換する同期発電機を購入します。これにより、引力発電装置の実用化にまた一歩と近けることができます。

とあるのですが、これは第1回の範囲なのでしょうか……? どうも「1)」のPR、「2)」の設計図起こしよりも優先順位を低く置いている雰囲気があるのですが……(Fricke氏の「Don't build bigger versions of your prototype.」という心配ももっともだ)。


(2020年9月14日「株式会社サンテル」を「サンテル株式会社」に修正、その他語順等表現の一部見直し)

引力発電装置の主張とは(サンテル株式会社)- 1

2020年08月22日 | ネタ
 株式会社サンテルの「引力発電装置」について、自分なりに読み解いてみました。

 今回の話題の発端は8月18日、Twitterのプロモーションに表れたクラウドファンディング計画のようです。

 この分野に関心のある人なら、名前だけで怪しいと直感し、連想するものがあると思います。いわゆる永久機関ですね。名前に「重力」や「磁力」とつくのが典型的なパターンですし、当然クリーンなエネルギーを自称します。他にはてこや滑車の増減速による力の変換、出力軸の回転方向を制限するためのラチェットを伴うことが多いですね。再生可能エネルギーに注目が集まった2011年以降はときどき話題になります。
 
 とはいえ引力(重力)は主に水力発電で利用されていますし、それだけで永久機関だと結論できるわけではありません。
参考:Wikipedia 永久機関
 この前に2020年5月17日に茨城新聞に紹介されており、また研究は30年にわたっているためこれ以前からご存知の方もいるでしょう。

引力発電装置とは?
 控えめに言うと、複合的エネルギー変換器です。主な動力は揚水ポンプ、制御用にエアー回路と電気回路を持つようです(消費電力にコンプレッサーが記載されている)。
 電気エネルギーを水をタンクにくみ上げることで位置エネルギーに変換し、この位置エネルギーを利用して出力シャフトを回し、この回転で発電します。少ない水でシャフトをまわすため、「てこの原理」に則ってタンクは回転体の再外周部に配置されます。
 ちなみに、この出力シャフトに合わせた発電機はまだ用意できていないようです。おそらく「タービン」との表記があるのはこのためです。

 簡単に説明したいのは山々なんですが、要約すればするほど苦しくなるんです。わかってください。

 要するに、永久機関という名前で括られているものと志を同じくしたカラクリで、上記の通り電力を浪費した上で回転運動を得られます。

引力発電装置をさらに理解する
 国際特許に関しては、下の指摘の通り主張が認められていません。


「当該記載は、『発電装置10に使用する電気量に対して、約30~100倍の電気量を提供することができる。』という、エネルギー保存則に反する記載となっている。(略)どのような計算によって、『約30~100倍』もの電気量を発電することができたのかも不明である。」
 この辺りに、WEBサイトの情報からもう少し迫ってみようと思います。

彼らの主張内容
試作品の説明
このようなPDF文書が公開されています。が、難解です。
 どのように難解かというと、論理展開の形式をとっておらず、各記述の主張が読み取りにくいことです。
 そこで僕なりに言葉を補ってみたいと思います(誤っているかもしれません)。

>試作品の説明
>・アームの長さ 300cm(タンクの芯から芯)
>・回転軸 中心から爪まの芯まで 13cm(基準寸法)
>・水20ℓを15台分

水の重量からモーメントを得る部分の説明ですね。回転半径1500 mm(150 cm)の位置に容量20 lのタンク、シャフトに力を加える部分は回転半径130 mm(13 cm)の部分ということです。この構造物を15組使っているようです。

>・タンク 30ケ ポンプ30台 コンプレッサー1台
> 消費電力 三相 1031A 200w 80ℓ/min(常時15台稼働)
> 15台x200w=3kw  TECコンプレッサー 900w 合計 3.9kw

ここは駆動設備の説明ですね。2行目の「1031A」はポンプの型番のようで、200 Wはちゃんと定格消費電力でした。基本的な消費電力を、すべて足して3.9 kWと算出しています。これは最大値で実際には負荷変動によりもう少し低いでしょう。

>上図の計算式
> 150cm÷13cm=11.53倍
> 20kgx11.53=230.6kg

1行目の除算はてこの原理のレバー比ですね。2行目と合わせて、アーム水平の時にタンクで20 kg重の鉛直下方向への力がシャフトへ伝わるときには230.6 kg重になることを示しています。

> 落下重量(1m当たり2倍となる)20kg×6倍=120kg
> ※落下距離が3mなのでx2で6倍となる。合計350kg

問題の箇所です。何を言っているのかわかりません。計算を見る限りは落差3 mの運動により力が増えると言いたいようですが、よくわかりません。加速度の計算を誤解しているのかもしれません。
 とりあえず、試作品についての記述はここまでです。

>例)9Mw(9000w) ロータ径164m
> 受風面積(82mx82mx3.14)x1.225(風速15m時)=25,864

応用事例の試算と思われます。9 MW、ローター直径164 mはMHIヴェスタスの洋上風力発電機( https://rief-jp.org/ct4/67593 )ですね。これをモデルに、必要な「引力発電装置」の規模を算出するようです。
2行目の「1.225(風速15m時)」ですが、標準大気の海上密度を代表値として採用しているようです。これを面積に乗じることで、えーっとローターの回転円上に空気を敷き詰めたときの、厚さ1 mあたりの重さが分かりますね。単位はkg/m。

> 258,64÷40%(有効面積)=10,345
> 10,345÷54(テコの倍数30+落下重量24)=191.584
>当社の場合(芯から芯12mの時)荷重191kgでよい。

この辺りはかなり難解ですが、2,3行目の記述から、アーム半径12 mの「引力発電装置」で代替する場合の必要荷重を出したいようです。「有効面積」の根拠が分かりませんし、風速の数字を置き去りにしていますし、算出しているのは空気の重量(の一例)であって回転力とは直接関係ないですし、風車の原理を根本的に誤解しているように思えます。

>使用モーターは動滑車2個 使用の為 1/4になる。47.75kg
>したがって、50kgを持ちあげるモーターでよい。

ポンプでないのは、茨城新聞の記事にある「水の代わりに滑車を使って鉄製ブロックを上下に移動させる装置」を想定しているからでしょう。モーターの定格負荷の重量換算値は滑車部以外の巻き上げ機構でも変わりますし、速度に関する試算が必要でしょう。

>9,000kwの最適な発電量は80%なので、7,200kw
>7,200kw÷5kw(モーター)を15台使用=96倍

定格9000 kWの発電機の効率は、7200 kWで最大になると言いたいようです。「5kw(モーター)を15台」とは、錘を引き上げるモーターの消費電力のことでしょう。
 つまり、先ほどの洋上風力発電機と同等の規模の装置では、入力に対して96倍の出力を得る電力増幅器になると主張しているようです。

 一気に書いてちょっと疲れたので、今日はここで区切りたいと思います。
 次回は他の情報も併せて、彼らが理解していないことについてまとめていこうと思います。


(2020年9月14日、「株式会社サンテル」を「サンテル株式会社」に修正)