久し振りに「我らが貧民の友」の話,すなわち例のブックオフ・ネタを持ち出してみる。何やら寝た子を起こすようなネタ(略してネタネタ)で恐縮ですが,いえいえ,ワタクシ的には単なる備忘録の書き付け(ボケ防止ワークの一環)に過ぎないものでありますゆえ,何とぞ御承知おき下さい。
腰痛にともなう蟄居状態のさなか,自転車で外出できない鬱々とした気分を紛らわすために,室内にて硬軟取り混ぜさまざまな本を読んでいたのだが,そのなかに『Cycle Styleサイクルスタイル』というタイトルの写真集が含まれていた。この本が,そうさな ここ数ヵ月ほど前からだろうか,本県内のあッちこッちにあるブックオフの店内においてやたらと目に付くようになっていたのである。その話を少々。
本の内容は,主としてデンマーク・コペンハーゲン市内で撮影されたという触れ込みの,自転車ライフ写真集である。市街地でのスナップ写真ゆえ,被写体はロードバイクやマウンテンバイクに代表されるスポーツ自転車などではなく,いわゆるママチャリ的なごく普通の自転車(=町乗り自転車)がほとんどだ。モデル,というか自転車に乗っているヒトは老若男女さまざまだが,やはり「見栄え」の点からか,若いオネーチャンが多くピックアップされている。要は「北欧の町の自転車&ファッション本」といった小洒落た感じがミエミエの本だ。なかには何故だか 我がニッポン国内で撮影された自転車スナップが何枚か挿入されているのだけれども,そのうち見開きの大きな一枚は,どこかの河畔サイクリングロードを10数台で列をなして走るオッサン・ローディたちが 日傘をさしてサンダル履きのママチャリ・オバチャンとすれ違うといったシュールな絵柄で,それはそれで皮肉っぽくて笑える風景だ。 といったことは,さておき。
他の都道府県にあるブックオフ事情については当方ほとんど承知しないが,恐らくはどこの地方のどこの店でも同じように本書が並んでいるのではなかろうかと推察する。本の流通形態というものは結構オザナリで杓子定規なものである。本県内のブックオフにおいては,各店ともプロパー(半額本)として並んでいる。黄色の厚い背表紙がよく目立つので,棚を一瞥するとすぐにわかる。ヒドイ店,もとい,シンセツな店では,分類別の棚を変えて(スポーツ,ファッション,雑誌)計3冊並べているところもあった。だいたいがいつまでも棚ざらしになっていることから見て,ほとんど売れてはいないようだ。さすがに単C(105円本)まで落ちているのは,少なくとも私自身は見たことがない。
この写真集は今から一年半ほど前に出版された本である。定価は 2,310円とかなりお高い。しっかりしたハードカバーの分厚いオールカラー写真集なので そのくらいの価格が付けられても当然だとは思うが,その内容からして,やはりこんなスタイルの本を出版したこと自体がマーケティングのミスだったのだろう。時代のトレンド追従ぶりがイイカゲンというか,異文化に対する基本的なカンチガイというか,そもそも歴史認識が甘いと申しましょうか,まぁ何でもよろしいが,社会経済的背景を考慮しない表向きの「異文化摂取」は,いつの世であれ万人には受け入れ難きものだ。よっぽどの変人・道楽人・酔狂人を別とすれば,少なからぬ金銭的対価を払うに値しないと判断するだろう。今日び,自転車マーケットの最大顧客,すなわち常日頃頻繁に湯水のごとくお金を散財するヒトビトは言うまでもなくロードバイク・サイクリストなわけであるが,その彼らにしてからがこんな本をわざわざ購入するはずもない。フェティッシュでチャラチャラしたロードバイク月刊誌なら喜んで買うのかも知れないが,オシャレ・ママチャリの世界にまで思いを巡らすほどお人好しではない(と思う)。といって,現在,本邦自転車世界における最強・最良のプロパガンダの一人であろう疋田@ピカピカ氏などにしたところで,少なくとも自腹を切ってまでこの本を定価購入することはないだろうな(それとも早々に出版元から寄贈されているのかナ?)。
で,手前の察するところ,同書は 取りあえず自転車本イケイケブームに便乗して出版してみたものの,結局のところドジョウにもウナギにもミミズにさえもならず,恐らくゼンゼン売れないままに月日を重ね,やがて在庫が倉庫の場所塞ぎとなった挙げ句,版元としても苦渋の決断をおこなって,さるルートなどを通じて市中にドドッと流れ出た,そんな末路を辿ったのだろうと勝手に想像している。ま,よくある話だ。ちなみに,その出版社は雑誌『シクロ・ツーリスト』などの自転車モノで一部のサイクリストから強く支持されているグラフィック社である。残念!
しかしながら,ここにきて事態は新たなる方面へと展開をみせる。古本流通業界の新興かつ最強最大勢力たる「アマゾン・マーケット・プレイス」において,この写真集が続々と出品されるようになってきたのだ。しかも既にして過当ダンピング値崩れ状態となっており,現段階での最安値をアマゾンMPのサイトで今しがたチェックしてみたら,何とタッタの 9円ポッキリ(送料込みでも259円)でありました。おお,安い! すこぶる安い。牛丼一杯より安い。笑っちゃうくらいに,悲しいほどに安い。これじゃあまるでニッセンのカタログみたいなもんデハナイカ! 実は私自身は,去年の秋に同書がブックオフに出回りはじめた頃,某店でのセールの際に同書を450円で即購入して秘かにほくそ笑んでいたという経緯があるだけに,現在の状況にはまことに隔世の感を覚えるのである。これまた,残念!
ところで,知っている人は知っているでしょうが,アマゾンMPというのはブックオフの店頭在庫とほぼ連動しているような流通市場であるからして,当然ながらBO→AMPといった具合にアカラサマに商品移動しているのは間違いない。ちなみに,ネット古書販売の老舗たる「日本の古本屋」や「スーパー源氏」のサイトには同書はまったく出品されていないし,また,「ヤフー・オークション」にも今現在は出品されていないようだ。要はアマゾンMPの一人勝ちか。
かくして,高額な写真集が 現在では大変安価に入手できる状況になっているわけだ。平和なニッポン社会であります。本自体はソレナリニ興味深く楽しいものであるからして,さぁ,自転車マーケットにおけるキラー・コンシューマーたるアナタも,そしてアナタも(誰とは申さぬが),なんたらアイス,なんたらスィーツの誘惑をほんの一度だけガマンすれば このステキでゴーカな写真集が入手できるというシアワセを是非享受されてみては如何でしょうか(昨今ハヤリの糖質制限にもなりましょうし)。なお,本書の前書きには「サイクル・チック・マニフェスト」という10箇条のマニフェストなるものが記されている。わたくしは,そのうち4項目に同意,6項目に不同意であった。 さて,アナタは?
あれま,最後までヨタ話で尽きてしまった。病は人をしてその精神を堕落せしむること斯くの如し,であります。本当は,日本全国各地における『ママチャリ写真集』(「ニッポン各地のネコ写真集」のたぐい)といったものへの期待と展望なんぞを記そうと思っていたのですが,それはまた改めて別の機会に。。。
腰痛にともなう蟄居状態のさなか,自転車で外出できない鬱々とした気分を紛らわすために,室内にて硬軟取り混ぜさまざまな本を読んでいたのだが,そのなかに『Cycle Styleサイクルスタイル』というタイトルの写真集が含まれていた。この本が,そうさな ここ数ヵ月ほど前からだろうか,本県内のあッちこッちにあるブックオフの店内においてやたらと目に付くようになっていたのである。その話を少々。
本の内容は,主としてデンマーク・コペンハーゲン市内で撮影されたという触れ込みの,自転車ライフ写真集である。市街地でのスナップ写真ゆえ,被写体はロードバイクやマウンテンバイクに代表されるスポーツ自転車などではなく,いわゆるママチャリ的なごく普通の自転車(=町乗り自転車)がほとんどだ。モデル,というか自転車に乗っているヒトは老若男女さまざまだが,やはり「見栄え」の点からか,若いオネーチャンが多くピックアップされている。要は「北欧の町の自転車&ファッション本」といった小洒落た感じがミエミエの本だ。なかには何故だか 我がニッポン国内で撮影された自転車スナップが何枚か挿入されているのだけれども,そのうち見開きの大きな一枚は,どこかの河畔サイクリングロードを10数台で列をなして走るオッサン・ローディたちが 日傘をさしてサンダル履きのママチャリ・オバチャンとすれ違うといったシュールな絵柄で,それはそれで皮肉っぽくて笑える風景だ。 といったことは,さておき。
他の都道府県にあるブックオフ事情については当方ほとんど承知しないが,恐らくはどこの地方のどこの店でも同じように本書が並んでいるのではなかろうかと推察する。本の流通形態というものは結構オザナリで杓子定規なものである。本県内のブックオフにおいては,各店ともプロパー(半額本)として並んでいる。黄色の厚い背表紙がよく目立つので,棚を一瞥するとすぐにわかる。ヒドイ店,もとい,シンセツな店では,分類別の棚を変えて(スポーツ,ファッション,雑誌)計3冊並べているところもあった。だいたいがいつまでも棚ざらしになっていることから見て,ほとんど売れてはいないようだ。さすがに単C(105円本)まで落ちているのは,少なくとも私自身は見たことがない。
この写真集は今から一年半ほど前に出版された本である。定価は 2,310円とかなりお高い。しっかりしたハードカバーの分厚いオールカラー写真集なので そのくらいの価格が付けられても当然だとは思うが,その内容からして,やはりこんなスタイルの本を出版したこと自体がマーケティングのミスだったのだろう。時代のトレンド追従ぶりがイイカゲンというか,異文化に対する基本的なカンチガイというか,そもそも歴史認識が甘いと申しましょうか,まぁ何でもよろしいが,社会経済的背景を考慮しない表向きの「異文化摂取」は,いつの世であれ万人には受け入れ難きものだ。よっぽどの変人・道楽人・酔狂人を別とすれば,少なからぬ金銭的対価を払うに値しないと判断するだろう。今日び,自転車マーケットの最大顧客,すなわち常日頃頻繁に湯水のごとくお金を散財するヒトビトは言うまでもなくロードバイク・サイクリストなわけであるが,その彼らにしてからがこんな本をわざわざ購入するはずもない。フェティッシュでチャラチャラしたロードバイク月刊誌なら喜んで買うのかも知れないが,オシャレ・ママチャリの世界にまで思いを巡らすほどお人好しではない(と思う)。といって,現在,本邦自転車世界における最強・最良のプロパガンダの一人であろう疋田@ピカピカ氏などにしたところで,少なくとも自腹を切ってまでこの本を定価購入することはないだろうな(それとも早々に出版元から寄贈されているのかナ?)。
で,手前の察するところ,同書は 取りあえず自転車本イケイケブームに便乗して出版してみたものの,結局のところドジョウにもウナギにもミミズにさえもならず,恐らくゼンゼン売れないままに月日を重ね,やがて在庫が倉庫の場所塞ぎとなった挙げ句,版元としても苦渋の決断をおこなって,さるルートなどを通じて市中にドドッと流れ出た,そんな末路を辿ったのだろうと勝手に想像している。ま,よくある話だ。ちなみに,その出版社は雑誌『シクロ・ツーリスト』などの自転車モノで一部のサイクリストから強く支持されているグラフィック社である。残念!
しかしながら,ここにきて事態は新たなる方面へと展開をみせる。古本流通業界の新興かつ最強最大勢力たる「アマゾン・マーケット・プレイス」において,この写真集が続々と出品されるようになってきたのだ。しかも既にして過当ダンピング値崩れ状態となっており,現段階での最安値をアマゾンMPのサイトで今しがたチェックしてみたら,何とタッタの 9円ポッキリ(送料込みでも259円)でありました。おお,安い! すこぶる安い。牛丼一杯より安い。笑っちゃうくらいに,悲しいほどに安い。これじゃあまるでニッセンのカタログみたいなもんデハナイカ! 実は私自身は,去年の秋に同書がブックオフに出回りはじめた頃,某店でのセールの際に同書を450円で即購入して秘かにほくそ笑んでいたという経緯があるだけに,現在の状況にはまことに隔世の感を覚えるのである。これまた,残念!
ところで,知っている人は知っているでしょうが,アマゾンMPというのはブックオフの店頭在庫とほぼ連動しているような流通市場であるからして,当然ながらBO→AMPといった具合にアカラサマに商品移動しているのは間違いない。ちなみに,ネット古書販売の老舗たる「日本の古本屋」や「スーパー源氏」のサイトには同書はまったく出品されていないし,また,「ヤフー・オークション」にも今現在は出品されていないようだ。要はアマゾンMPの一人勝ちか。
かくして,高額な写真集が 現在では大変安価に入手できる状況になっているわけだ。平和なニッポン社会であります。本自体はソレナリニ興味深く楽しいものであるからして,さぁ,自転車マーケットにおけるキラー・コンシューマーたるアナタも,そしてアナタも(誰とは申さぬが),なんたらアイス,なんたらスィーツの誘惑をほんの一度だけガマンすれば このステキでゴーカな写真集が入手できるというシアワセを是非享受されてみては如何でしょうか(昨今ハヤリの糖質制限にもなりましょうし)。なお,本書の前書きには「サイクル・チック・マニフェスト」という10箇条のマニフェストなるものが記されている。わたくしは,そのうち4項目に同意,6項目に不同意であった。 さて,アナタは?
あれま,最後までヨタ話で尽きてしまった。病は人をしてその精神を堕落せしむること斯くの如し,であります。本当は,日本全国各地における『ママチャリ写真集』(「ニッポン各地のネコ写真集」のたぐい)といったものへの期待と展望なんぞを記そうと思っていたのですが,それはまた改めて別の機会に。。。