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「理想的な淡水水槽」 9.2. 自然と異なる人工的生態系

デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

9.2. 自然と異なる人工的生態系


実験室で熱帯河川の水を精密に分析した結果、さらに多くのことが明らかになった。水草が自生する熱帯の小川では、その水に含まれる構成要素は完全な調和を保っており、水道水に比べ栄養素が広範囲にむらなく分布している。水道水では陽イオンの80%以上をカルシウムとマグネシウムが占めているが、熱帯の小川ではその割合が50%程度であった。
しかし、水道水中にはカリウムのような水草の成長に必要不可欠な栄養素はまったく含まれていないか、含まれていたとしてもせいぜい水道水中の陽イオンの3%程度を占めるに過ぎない。これに対して熱帯の小川では、平均17%のカリウム含有値を測定した。また陰イオンの領域でも、その割合は熱帯の小川の方が水道水よりもはるかにバランスが取れている(下のグラフ参照)。

 
[図を拡大する]


水槽内で植物を健康に育てるためには、水の化学的構成要素やそのバランスに十分配慮しなければならない。

我々が水槽で育てている水草はアジアのみならず、様々な国や大陸を故郷としている。従ってこれらの水草の自然下での、また人工環境下でのそれぞれの状態を知り、互いに比較することは、その植物に対する適切な世話を行うために非常に有意義である。そのため我々はセイロン(スリランカ)やマレーシア、ボルネオなどで数多くの調査を行い、水の化学的作用による水質の相違をある程度までは理解することができた。

例えばセイロンの小川は比較的高い石灰含有率を示し、pHもやや高めであり、その石灰含有率によって水中の栄養素配分も大きく影響を受ける。つまりセイロンの小川は、栄養素の配分割合の面から見ればタイの河川よりもドイツの水道水に近いということだ。このことは、なぜセイロン産のクリプトコリネが他の地域産のものと比べて水槽内で良好な状態を保ちやすいのかという以前からの疑問の答となる。そして栄養分の配分割合が栄養生理学的作用と同様に、細胞生理学的作用を有することが推測できる。

我々が行った生物を取り巻く周辺環境の調査から、水草の成長にとって非常に重要なデータを広範囲にわたって記載したリストが完成した。我々がこのリストを作成するにあたり、アクアリアナーにとってできる限り有意義な結論を出すことに全力を尽くしたが、その結論を実践する際にはいくつもの大きな問題にぶつかった。これは自然と人工的な生態系である水槽が構造的にまったく異なっているためである。

自然界の様々な場所で、あるいは実験室で行った調査や分析、そして数え切れないほどの実践と失敗を経て我々が出した結論は、ついに「理想的な水槽のための10のチェックポイント(本書2章)」として具現化された。次の章では水槽における様々な領域の問題を扱う。



タイ南部の小川に生息するCryptocoryne cordata(クリプトコリネ・コルダータ)の花。
特に水位が低くなる乾季にクリプトコリネの開花は盛りを迎える。





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