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「理想的な海水水槽」 3.2.3. ろ過システム 前編



デュプラメソッド「理想的な海水水槽」

3.2.3. ろ過システム 前編



アクアリウム愛好家たちの間で、ろ過技術ほど激しく議論されるテーマは他にないだろう。誰もが自分はコロンブスの卵を発見したと信じ、自分の理論を主張する。しかし残念なことに、ろ過技術の評価はあまりにも主観的過ぎる。一般的なアクアリアナーには、あらゆるろ過技術の効果をきちんと測定し、その評価を下すことは不可能である。
魚が産卵し、サンゴが成長することはアクアリウムにとってもちろん良い結果の一つではあるが、それは特別にあつらえた水槽のフィルター(ろ過器)の効果によるものなのだろうか?つまり他の人が、自分と同じ方法で同じ結果を得ることができるだろうか?この本の課題は海水アクアリウムのための「魔法の指」を作り出し、他の人も同様に十分な成功を収めることができるようなろ過技術、あるいはろ過技術の組み合わせを少なくとも1つ冷静に選び出すことである。

次章以降の各章で様々なフィルターに関するテクニックについて述べるが、今なお最も優れたろ過技術は無脊椎動物などによる自然の生物学的ろ過システム(生物ろ過システム)であることを忘れてはならない。無脊椎動物、中でもサンゴは水質に良い影響を及ぼし、さらにろ過まで行う。もちろん無脊椎動物はものの数秒で水を汚して濁らせることもできる。そんな時すぐに汚れを取り除くためにも、私たちは素晴らしいろ過技術を水槽に投入しよう。

ここではっきりさせておかなければならないのは、多くのフィルターは常時海水が通る仕組みになっているため、そこがゴミ溜めになってしまうということだ。フィルターが水槽から取り除いた目に見える不要物の多くはフィルターの中で分解され、再び除去できる形態となりフィルター内にとどまる。ここで私たちはプロティンスキマーやバクテリアの力を借りてろ過を行うことになる。

一般的なフィルターの多くは好気性および嫌気性バクテリアの存在なくしては正しく機能しないと言えるだろう。これらのバクテリアは、生存可能な環境であればフィルター内だけでなくどこにでも定着する。つまり好気性バクテリアは酸素がある所ならどこにでも、そして嫌気性バクテリアは酸素のないゾーン、つまりフィルター内なら厚い層になっている所、水槽内なら底砂の中などにいるということだ。海水アクアリウムにおける微生物学は研究され尽くしているわけではなく、最新の専門書を読むとまだまだ多くの素晴らしい発見がある。例えば海水アクアリウムが完全な微生物の生態系を獲得するまでには最低8-12週間必要であり、これが設置直後の水槽においてろ過システムが機能しない理由となっているのだ。特にハードコーラルに共生する褐虫藻は海水中からアミノ酸や硝酸塩などの不要な物質を取り除く働きを持つ。そしてハードコーラルはこれらの物質から栄養を得ているのである。フィルターを設計する際には、サンゴのこの習性も考慮しなければならない。

もう一つ忘れてはならないのが、海水アクアリウムにおける海草の働きである。もちろん水槽内での海草の過剰な繁茂は抑えなければならないが、私たちが目指す水槽は海草なしでは完成しない。状態良く成長した海草は、私たちが誤ったメンテナンスを行ってしまった場合に水槽の状態を修正してくれる。この海草の機能を代行してくれるフィルターは存在しないので、私たちは適切な海草の選択と手入れを行わなければならない。水槽のどの場所にどのように海草を植えるべきか、またどのような手入れが必要になるのかについては後述する。

  
Amphibrion bicincfus(ツーバンド・アネモネフィッシュ)



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3.2.3. ろ過システム 後編に続く




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