一日四弦

デカダンレトリヲおかげさまで全員元気だった

ハングリー・ウィッチ

2017-06-18 22:01:00 | 日々の事柄
スタジオ練習の途中で厠にたち、帰ってくると、メンバー達が私を抜きに勝手にミッシェルガンエレファントを合わせていた。

重い二重扉を開けて、その音を聴いたときはライブハウスの扉を開けたように思ったし、
例えるならば、図書室でしか見かけたことがなかった男子が、ある日ダッシュで下校して行く物凄い足の速さを初めて知ったような、そんな奇妙な衝撃がありました。
そんなふうに唄い、そのように叩き、そうやって弾く場合もあるのか。

ああっ、と我に返り、ベースを持ってジョイントした。なんとかせねば、いや、なんとかなるな、と思った。





やたらとやたらと空腹になる。
長い時間をかけて食事をして帰ってきたはずなのに、また空腹になってサンドイッチを買って帰った。
体内サイクルの巡りがそうなっているせいもあるかもしれないけども、だいぶだいぶハングリーです。



幼稚園の頃
兄が持っていた英語の教材テープをよく聴いていました。
がきの体感サイズでエフェクターケースくらいの箱を開けると、色とりどりのカセットテープがぎっしり入っていて、1話ずつストーリー仕立てになっています。
別梱包で、それぞれのカセットに対応した絵本があって、それを見ながら学べる、といった趣向のものでした。

その中に、
The hungry witch (はらぺこまじょ)というタイトルのものがあった。


お腹をすかせた魔女がひとり、魔法のステッキをふって欲しい食べ物を言うと、なんでも手に入る、というお話でした。

問題はその食べ物の出どころで、
魔女はファミレスの裏手で魔法を使い、呼び出される食べ物は、今まさにそれを食べようとしていたお客のものが宙を飛び、かっさらわれていく、というものだったのです。

おじさんからパスタを。
おねえさんからハンバーグを。
こどもたちからアイスクリームを。
次々に奪い取って魔女は幸せそうに食べる。


その魔女は、やせた少女の魔女でした。猫のような緑色の目をして、桃色の肌をしていた。

最後は、事情を知ったシェフに、塩コショウをしこたま効かせたステーキをお見舞いされ、water、water、と欲しがるけども、しびれた唇ではうまく発音できず、いつまでもお水は飛んできませんでした、
という終わりだった気がする。


なんでだかこのテープに執着して、何度も何度も聴きました。子どもは時に、しつこいものだ。ラジカセにくっつき、聴きながら寝たりもした。感覚的に腹がへっていたのかもしれないし、自分自身を、重ねていたのかもしれません。

おじさんからパスタを。
おねえさんからハンバーグを。
こどもたちからアイスクリームを。
奪って、もらって、生きてきた。
だけど絵本の表紙のハングリーウィッチは、えらく不満そうな、憂いを帯びた顔つきをしていた。


私は、魔法が使えなくなって良かったわ。
ある程度の食べたいものを食べるために、やりたいことをやるために、働くことに変えた。無かったら、私もあなたもいつまでも、ハングリーウィッチだったのかもしれない、よ。










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