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無介助分娩は危険 日本助産師会が警告

2010-09-20 14:38:50 | 本・雑誌・新聞
日本助産師会(東京)が先月二十六日、「無介助分娩(ぶんべん)」の危険性を訴える警告を一般向けに出した。「妊婦主体の自然なお産」を考える人が増える中で、医師や助産師が立ち会わない無介助分娩までも肯定的にとらえるムードが出てきたためだ。同会や専門医に、お産のリスクを聞いた。 (稲熊美樹、安藤明夫)

 日本助産師会は「医師や助産師の介助なしに、夫婦だけで出産する無介助分娩が、あたかも自然な出産であるかのように吹聴されるケースが見受けられる」と、事故の危険性を強調している。

 同会によると、無介助分娩の問題が出てきたのは一九九九年。大阪府の育児文化研究所が、医師や助産師の関与を排除した家庭出産を奨励し、同研究所の勧める「二十四時間ぶろ」で生まれた赤ちゃんがレジオネラ菌に感染死する事故があり、社会問題になった。その後も無介助分娩を勧める動きはしばしば見られ、本も出版された。

 今年八月末、民放局の人気チャリティー番組で、無介助の自宅出産が紹介されるという情報が同会に寄せられたため、テレビ局に配慮を求めるとともに、一般向けの警告を出したという。

 同会の岡本喜代子専務理事は「番組ではテロップを流して危険性を呼び掛けるなどの配慮はしてくれたが、影響力が大きいので、こうした放送は今後やめてほしいと申し入れた」と話す。番組で紹介された女性は八人目の出産で、これまでも自宅で産んできたという。「出産回数の多い人は、出血が多くて母体に危険が及ぶ場合もある」と岡本専務理事。テレビ局は「番組の内容については答えられない」とコメントしている。

     ◇

 「妊婦自身が積極的に出産に取り組む『アクティブバース』の考え方は尊重したい。しかし、助産師や医師の介助があってのアクティブバースだ」と指摘するのは、岐阜市の国立病院機構長良医療センター周産期診療部長、川鰭(かわばた)市郎医師(55)。

 妊娠中の経過が順調な人でも、分娩中に急変する可能性はある。産後の大量出血や、胎盤早期剥離(はくり)は突然に起きる。こうした場合に、すぐに対処できる施設で出産することが必要だ。

 「六十年前、出産に伴うトラブルで亡くなる妊婦は、年間四千人以上いた。今は数十人。医療によってお産が安全になってきたことを分かってほしい」と川鰭医師は訴える。

 全体の90%の人は何ごともなく出産を終えるが、残り10%の人には何らかのトラブルが起こる。かつては出血による死亡例が多く、輸血や出血を抑える対処法など、医療技術の進歩によって命を救えるようになった。「いざというときには、助産所や診療所から病院へ搬送する体制が整ったこと、妊婦健診で小さなリスクも見つけられるようになったことが大きい」

 出産十万件当たりの妊産婦死亡率は日本が四・八人(二〇〇九年)。国連児童基金の〇五年調査では、アフリカ平均で八百二十人、アジアの平均は三百五十人に達しており、日本は飛び抜けて少ない。

 ただ、安全を追求するあまり、帝王切開が増えたのも事実。「自然なお産」志向は、それに反発する形で広まってきた。川鰭医師は「分娩のあり方は多様化していいが、あくまでリスクと隣り合わせだと忘れないでほしい」とくぎを刺す。

2010年9月18日(土)中日新聞より

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